03. 2013年9月09日 15:27:27
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【13/09/14号】 2013年9月9日 週刊ダイヤモンド編集部 将来世代はいくらもらえる? ここまで減る! あなたの年金10月から始まる年金引き下げ 改革先送りで将来は暗黒 来月から、今、高齢者がもらっている年金が減らされる。 年金は本来、物価が上昇すれば給付額が増え、物価が下落すれば減るものだが、実はこれまで特例として、2.5%高い水準の年金が給付されていた。この特例水準の解消が、来月に始まるのだ。 年金の引き下げは3回に分けて実施され、2015年4月には、夫がサラリーマンだった老夫婦の年金が、現在より年間約7万円少なくなる予定だ。 年金を減らされる高齢者にとっては大きなインパクトとなるが、それでも今回の引き下げはあくまで、年金を本来の水準に戻すためにすぎない。 これまで高水準の給付を続けたことで、払い過ぎた年金の総額は累計で約7兆円とされている。過払い分は確実に、将来世代の負担となって跳ね返る。 現役世代には、より厳しい現実が待ち受けている。社会保険料が給料から天引きされるサラリーマンには実感しにくいが、負担する保険料率は年々上昇している。 厚生年金の保険料率は04年度の13.58%から毎年引き上げられており、17年度に18.30%になるまで続く。 支給開始年齢も、25年までかけて65歳に引き上げられている最中だ。負担増と給付の先細りは着実に進んでいる。 遅く生まれるほど 減る年金支給額 生活の糧には遠く 昨年11月から有識者で議論してきた政府の「社会保障制度改革国民会議」は、8月6日、安倍晋三首相に報告書を提出した。改革と銘打ったものの、年金分野については「制度の持続可能性が確認されている」など、年金財政の健全性を強調する表現であふれていた。 年金は本当に安心なのか──。 現行の年金制度は、12年度末時点で126兆円もある積立金を100年間かけて取り崩しながら、給付を続ける仕組みである。100年間、積立金が残るとしている根拠は、09年に厚生労働省が示した財政検証の経済前提だ。 その内容を見てみよう。積立金の運用で求める名目運用利回りが4.1%、名目賃金上昇率2.5%、物価上昇率1.0%のプラスが長期間にわたって継続するというものだ。 しかし、ここ5年間の実態は、長期金利は1%前後で推移し、他の先進国よりもずば抜けた超低金利を記録した。物価上昇率や実質賃金上昇率(名目賃金上昇率−物価上昇率)も、マイナスを含めゼロ近辺をさまよっている。 かつて政府が「100年安心」と喧伝した年金財政の健全性を担保するはずの経済前提が「狂いに狂っている」(ある民間経済アナリスト)のだ。 というよりも、経済前提が「100年安心」にこじつけるためのご都合主義だとの批判は、09年当時から強くあったが、これまでの政権や厚労省は耳を傾けず、見直しもしなかった。 そして先月終了した国民会議でも、こうした前提はより保守的に置くべきだとの意見が一部の委員から出されたが、報告書には盛り込まれなかった。 そこで、年金制度の抜本的な改革を訴えている鈴木亘・学習院大学経済学部教授の試算で、より現実的な経済前提に基づいて、将来の年金財政を検証した。 その結果、年金額を経済の実態に応じて自動的に抑制する「マクロ経済スライド」と呼ばれる仕組みが発動しても、運用利回りを堅く見積もれば、積立金の大半を占める厚生年金部分は、早ければ30年代後半には底を突いてしまう。 現在の水準で給付を続け、途中で積立金がなくなってしまえば、今とは桁違いに給付をカットし、保険料を増やさなければ、将来、制度が維持できなくなる。 制度の現状維持を主張する国民会議の報告書も一方で、改革につながる提言をしている。例えば、現在、インフレにならなければ発動できないマクロ経済スライドをデフレ下で発動したり、年金への課税の見直しに取り組むよう求めているのだ。 しかし、国民会議の報告を受けて政府が8月21日に閣議決定した、社会保障制度改革の「プログラム法案」の骨子は、こうした点が検討課題として列挙されただけ。公表された骨子の文書7ページ中、年金部分は、わずか1ページのうち12行だった。 「政治家がその気になれば、すぐできる」(ある社会保障の専門家)といわれる年金課税の見直しも、関係者によると、安倍首相周辺は報告書が出た直後から難色を示したという。 かねて政治家は、“票”に直結する高齢者の反発を恐れ、年金の給付カットや負担増に二の足を踏んできた経緯がある。 さらに安倍首相は、第1次内閣時代の07年、いわゆる「消えた年金」問題で支持率が急降下し、その後の退陣につながった。このため「なおさら年金改革に及び腰になっている」(前出の社会保障の専門家)。 かくして、抜本的な年金制度の改革は、先送りされそうだ。 本誌は、今回年金積立金を100年維持するために、給付カットを強化すると仮定して、厚労省より現実的な経済前提に基づいて年金の受取額を試算した。 残念ながら、遅く生まれた世代ほど、受け取れる年金額は減る。 平均月給が35.8万円の男性単身の場合で比較してみよう。 1960年度生まれの男性が65歳を迎える25年度には、厚労省試算では14万円、本誌試算でも12.7万円が受け取れる。09年度に65歳を迎えた男性の受取額が15万〜16万円だったわけだから、やや少ないとはいえ、まだ納得できない数字ではないだろう。 ところが1985年度生まれの場合は、なんと7.7万円まで下がってしまう。厚労省試算の13.1万円よりもはるかに少なく、「安心」とは程遠い結果だ。 特集では、本誌試算による年金額の一覧を掲載しているので、参照していただきたい。 国民会議の報告書は、このように世代別の負担と給付を現在価値で比較し、損得や不公平を主張するのは「世代間の連帯の構築の妨げとなっている」と主張する。 しかし、改革が先送りされればされるほど、将来世代の負担は重くなる。 年金が老後の生活の糧にならないほど少ないという、実質的な意味での制度の破綻──年金の暗黒時代は、どうやら現実のものとなりそうだ。 年金が危ない! 将来世代は いくらもらえる? 老後の生活を支える年金ですが、将来世代が今と同じ水準の年金をもらうのは難しそうです。なぜ減るのか? いくらまで減るのか?
自公政権が2004年に打ち出した“100年安心プラン”では、少子高齢化の進展に伴い自動的に年金を抑制するシステムを作ったはずでした。しかし、現在まで一度も発動されていません。そのために年金財政は予定より大きく悪化しています。そのツケはこれから年金を受け取る我々に回ってきます。 それだけではありません。 公務員の共済年金との一元化もサラリーマンの厚生年金を圧迫します。年齢構成が中高年に偏っている共済年金との合併で、将来の負担増を押し付けられるからです。 また、厚生年金基金という名の企業年金に加入している方は、要注意です。財政状態の悪い基金が少なくなく、今後5年間で解散してしまう可能性が大です。そうなれば、企業年金がもらえなくなる人も出てきます。 将来年金をもらう世代はいくら受け取れるのでしょうか? 年金の受取額は、経済状況や現役時代の収入で変わります。『週刊ダイヤモンド』9月14日号では、鈴木亘・学習院大学教授の協力を得て、経済シナリオ別、月収別に年金の受取額を試算し、年齢(生年)別に掲載しました。本誌読者のプレミアムサイト「デイリー・ダイヤモンド」では、誌面よりさらに詳細なデータを公開しています。ぜひ本誌をご購入の上、ご覧下さい。 年金の仕組みは実は大変複雑です。そこで、知っておくと得する年金ノウハウを一挙に大公開しました。パート勤めの人、海外勤務予定者、転職を繰り返した人などは必見です。不幸にも配偶者をなくした場合の遺族厚生年金のノウハウも紹介しています。 企業で加入している人だけでなく、企業年金がないサラリーマンや自営業の人にとって、個人型の確定拠出年金は節税メリットの大きい仕組みです。上手な活用法を取り上げました。 老後を真剣に考え始めた方だけでなく、まだまだ先のことと考えている方もぜひ、今週号の特集を手にとってください。年金の現実を見据えることは必ず将来の生活設計に役立つはずです。 第2特集では、音楽会社から脱皮し、音楽に依存しない事業基盤を作り上げたエイベックス・グループ・ホールディングスを徹底解剖します。松浦勝人社長の独占インタビューも掲載していますので、ぜひご覧ください。 (『週刊ダイヤモンド』副編集長 竹田孝洋)
公務員制度改革、やるのは今でしょ! 稲田朋美・内閣府特命担当相に聞く(上) 2013年9月9日(月) 安藤 毅 課題山積の秋の陣を迎えた安倍晋三政権。幹部人事の一元管理を目指す国家公務員制度改革や規制改革論議の続編の行方も焦点だ。担当の稲田朋美内閣府特命担当相が改革の意義や課題を語る。1回目は国家公務員制度改革について聞く。 (聞き手は編集委員 安藤 毅) 安倍晋三政権は幹部公務員の人事を一元管理する「内閣人事局」の2014年春設置を柱とする国家公務員制度改革を進める構えで、10月召集予定の秋の臨時国会に関連法案を提出する方針です。そもそも、なぜ国家公務員制度改革が必要なのでしょうか。 縦割り行政の弊害を放置している余裕などない 稲田 朋美(いなだ・ともみ)氏 1959年福井県生まれ。81年早稲田大学法学部卒。85年弁護士登録。2005年の衆院選で福井1区から出馬し初当選。現在3期目。自民党副幹事長、政務調査会法務部会長などを経て昨年12月の第2次安倍晋三内閣の発足に伴い初入閣。行政改革、クールジャパン戦略などの担当も兼ねる。(写真:都築 雅人) 稲田:右肩上がりの成長社会の時代には各省庁がそれぞれ十分な予算と人員を持ち、部分最適でそれぞれの任務を果たしていれば良かったのでしょうが、今は違います。TPP(環太平洋経済連携協定)交渉が象徴するように、政府一体で、迅速に様々な政策課題に対応する必要があります。 それなのに現在、政府内には省庁横断的に効果的、かつ戦略的に公務員の人員配置や組織を設計・調整する場がありません。国難とも言える時期に縦割り行政の弊害を放置している余裕などないのです。 個々の公務員の能力を存分に発揮してもらうためにも、まずはマネジメント層である幹部人事を改革し、その幹部が各省で部下たちに時の内閣の方針を徹底する仕組みが欠かせません。 そこで内閣人事局を作り、各省庁の幹部職員(審議官級以上600人)の人事を内閣がチェックする仕組みとし、幹部職員の忠誠心を内閣に向けさせ、出身省庁の“ゼッケン”を外すようにしたいと考えています。 一方、民主党政権下での誤った政治主導や行き過ぎた官僚バッシングで公務員のモチベーションが低下し、公務員という職業に対する魅力が失われてきている面も見逃せません。 今回の改革では、若く優秀な人材の維持・確保に向け年功序列的な昇進制度の見直しや、海外や民間への研修制度の充実などにも取り組んでいます。また、深夜や休日までの勤務を強いる国会対応のあり方などについても改革が必要ではないでしょうか。 自民党内の議論を見ても、「公務員制度改革なんて後でいい」といった批判の声もありますが。 稲田:第1次安倍晋三内閣において、公務員制度改革は戦後レジームからの脱却の中核と位置付けられました。現在の第2次安倍内閣は崖っぷちの日本の再生に向けた闘いをしています。 縦割り行政の弊害を廃し、国家・国民のためのオールジャパン行政を確立する必要性は第1次内閣の時以上に高まっているのです。 「議論は尽くした。後は政治の決断」 「なぜ今なのか?」という声に対しては「今やらなくて、いつやるんですか?遅きに失しているんですよ」と問いたい。 また、「もっと議論すべきだ」という方にはこう言いたいのです。「議論は尽くされています。後は政治の決断ですよ」と。 2008年6月に「国家公務員制度改革基本法」が成立し、本来であれば、今回成立を目指す内閣人事局の設置や研修制度の充実、採用試験の見直し、能力実績に応じた処遇の徹底といった措置は済んでいるはずでした。これ以上、理由なく改革を先送りすることは許されないことだと思います。 内閣人事局を巡り、自民内などから「600人もの幹部人事を一元管理するのは無理だ」といった批判が根強く出ていますが。 稲田:先ほど述べましたように、出身省庁のゼッケンを外し、忠誠心を内閣に向けさせる幹部職員の規模は、組織や人事管理に大きな責任を有するマネジメント層である審議官級以上としなければ実効性が期待できません。 さらに、基本法では一元管理の対象となる幹部職員は「事務次官、局長、部長その他の幹部職員」と定めており、この規定を順守して制度設計を行う必要があります。安倍首相もここは一貫しています。揺らぎはあり得ません。 官邸が口を挟む人事の範囲が広がり、「官房長官や官房副長官ら官邸の顔色をうかがう公務員ばかりになる」との声もあります。 稲田:一元管理といっても、審議官級以上の任免について首相と官房長官が協議できる、つまりチェックできるという仕組みにするのであって、あくまで任命権者は各省の大臣です。なんでもかんでも官邸が人事に口を挟むという趣旨ではありません。 任命権者は各省の大臣 もちろん、公務員の中立・公平性の確保に関してはきちんと目配りしていかなければいけません。ですが、時代に適合した機動的な人事行政の積極的な意義について、是非理解していただきたいと思っています。 6月末に決定した制度改革の基本方針では、内閣人事局の具体的な制度設計が政府・与党内の調整が付かず先送りになりました。内閣人事局長については現在3人いる内閣官房副長官から首相が指名する方向で調整するのでしょうか。 稲田:2009年に国会に提出し、廃案になった法案をベースにしていますので、その方向です。3人の中から最適な人間を首相が選ぶ立てつけになります。 付け加えますと、人事院の持つ級別定数管理、任用、試験・研修の企画といった機能や、総務省の持つ機構・定員管理の機能と必要な事務を内閣人事局に移管する予定で作業を進めます。一部で関心が高い幹部公務員の降任特例に関しては、基本法の条文に忠実に、幹部職の範囲内で特例的に降任する規定を盛り込む方向で調整します。 公務員制度改革はあくまで「霞が関の人材を使う」ことが主眼です。民間からの人材登用、欧米のような官民の「回転ドア」システムの確立についてはどのようなお考えでしょうか。 稲田:非常に重要な視点です。確かに霞が関の官僚の方々は優秀ですが、民間にも幅広い人材がいます。今後は幹部候補を育成する過程でより官民交流を増やし、公務員の見識を広げるとともに民間の人材を戦略的に政府のスタッフなどとして登用していくべきだと思っています。 そうして政府の役職を経験した方がまた民間に戻る際に評価されていく。そんなシステムの構築を後押ししていきたいです。また、霞が関ではまだまだ女性の幹部登用が少ない。内閣人事局設置に伴い導入する幹部人事の適格性審査という仕組みが、各省庁での女性登用や民間から積極的に手を挙げていただくことにつながればいいと思います。 行政改革に関しては、各省庁が予算の使い道を自ら点検する「行政事業レビュー」を実施中です。民主党政権下での「事業仕分け」と違い、今一つ、関心が高まっていませんが。 稲田:そもそもこのレビュー制度は、各省庁が約5000事業のすべてについて自ら予算が効率的に使われているかを点検し、外部有識者のチェックも受け、書面で公開するものです。民主党政権の2011年から始まっていますが、民主党時代より幾つかの点で改善しています。 民主党時代より改善した行政事業レビュー まずは各省庁のチェックと外部有識者のチェックを明確に区別し、有識者が独立して調査・評価する仕組みにしました。一般会計や特別会計から公益法人、独立行政法人などに支出する基金も私の発案で新たに対象に加えました。無駄遣いの温床との批判があったためです。 メリハリを付けるため、外部有識者の点検対象を絞り込み、今年度は約1000事業としました。 公開の場での事業点検に関しては、「廃止」判定をやめましたね。 稲田:公開の場で「廃止」と打ち上げても、結局は看板の掛け替えで存続させたものがいくつもあって国民の批判を浴びたことはご承知の通りです。それよりも新たな公開プロセスでは、各省庁と外部有識者が事業の改善策を一緒に考えることに重きを置き、その後の各省の取り組みを行政改革推進会議できちんと点検していくことの方が効果が高いと判断しました。 独立行政法人改革では、民主党政権で決めた整理統合案を取りやめ、年内に新計画をまとめることにしましたね。 稲田:民主党の基本姿勢は、独法自体が悪、だから独法を廃止したり、ほかとくっつけたりして数を減らしてしまえという考え方だった。そうではなく、組織を存続する必要がないものは廃止し、民営化が可能なものについては民営化を進める。そのうえで独法事務の特性や実態に即し、必要な組織の見直しをしていくという基本に立ち返って検討するということです。年内に各独法の改革案をまとめるべく作業を進めます。 焦点の1つである都市再生機構(UR)については、民主党政権時に賃貸住宅事業を分離して株式会社にするなどの改革案をまとめていますが。 稲田:当時の議論の様子を聞くと、有識者会議メンバーの意見も割れる中、結論を押し切ったきらいもあったようです。実効性が詰め切れておらず、その時に決めた方向性がベストだとは思いません。 現在居住している方々の保護や対応は重要とはいえ、13兆円ほどの負債を抱えるUR改革はやはり必要です。URが今後も今の事業を続ける意味はあるのか、民間に任せることはできないのかなど、様々な観点から検討を進めるつもりです。 ニュースを斬る 日々、生み出される膨大なニュース。その本質と意味するところは何か。そこから何を学び取るべきなのか――。本コラムでは、日経ビジネス編集部が選んだ注目のニュースを、その道のプロフェッショナルである執筆陣が独自の視点で鋭く解説。ニュースの裏側に潜む意外な事実、一歩踏み込んだ読み筋を引き出します。
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