03. 2013年9月07日 23:22:06
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ところで消費税増税分はフルに価格転嫁されますか? 必要なMB残高は一段と膨れ上がる 【海外株式市場・経済指標】 〜自動車販売が好調〜 4日の米国株式市場、NYダウ平均株価は続伸。前日比+96.91jの14930.87jで取引を終了。好調な自動 車販売が好感され自動車株を中心に買いが広がった。ベージュブックのインパクトは限定的。 ベージュブックでは、景気は8つの地区で緩やか(moderate)に拡大、残る3地区(ボストン、アトラン タ、サンフランシスコ)は緩慢(modest)なペースで拡大、1地区(シカゴ)は改善と評価された。自動 車・住宅関連支出が経済活動を牽引するなか消費者は観光や旅行などにも支出を増やした、と評価した。居 住用不動産については、「緩やかないしは強いペースで増加」としていた前回から幾分慎重な表現に変更さ れ「緩やかなペースで増加」となった。 8月自動車販売台数は1609台(SAAR)と市場予想(1580万台)を上 回り、2007年10月以来の水準となった(図)。オートローン金利上昇 の影響は今のところ限定的と判断して問題ないだろう。 【外国為替相場・債券市場】 〜再度100円の攻防戦へ〜 4-5日の海外市場は、円が主要通貨に対して売られる展開となった。ドル円は100円突破の攻防戦に移行 しており、99円台後半で売り買いが交錯。雇用統計を前にして一方的に売りこまれる展開にはならなかった が、先進国を中心にリスク選好が復活しつつあり、円が独歩安の様相を呈しつつある。CFTCデータでは6週 ぶりに円のネットショートポジションが膨らんでいた。ユーロドルは特段の材料が見当たらないなか、ユー ロにまとまったボリュームの買いが入った。GDPが市場予想を上回った豪ドルも強かった。 米10年金利は4bp上昇の2.90%。独10年金利は前日比フラットの1.94%。サービス業PMI(60.5)が上 方サプライズだった英10年金利もフラット(2.88%)。一方、政治リスクが嫌気された伊10年金利は8 bp上昇の4.42%。日10年金利は相変わらず米欧の金利上昇トレンドから距離を置いている(図)。 【国内マーケット・経済指標】 〜日銀MPMは無風通過〜 5日の東京株式市場、日経平均株価は続伸。前日比+10.95円の14064.82円で取引を終了。前日の欧米市場 がリスク選好に傾斜したことに加えて為替の円安基調が崩れなかったことが好感された。ただ、直近3営業 日に急伸した反動もあり上値を追う動きは乏しかった。日銀MPMは無風通過。 目先は雇用統計が山場となるが、今晩は前哨戦となるADP雇用統計(市場予想:18.2万人)が発表さ れる。ADP雇用統計は昨年の推計方法変更以降、本雇用統計に対する予測精度が高まっており、注目度 も徐々に高まっているように見受けられる。サプライズには注意が必要だろう。 【注目点】 〜フル価格転嫁が今後のテーマになるかもしれない〜 本日のMPM結果は大方の予想どおり金融政策の「現状維持」が決定された。物価・成長率見通しが日銀 シナリオから逸脱していないほか、金融市場も落ち着いているため金融政策を変更する必要性に乏しかった ためとみられる。声明文の変更も景気判断のみで特筆すべき点はなかった。消費税に関する言及もなかった。 昨日、日銀が消費税率引き上げのショックを吸収するための金融緩和を検討、との旨の報道があった。こ の報道にサプライズはなかったが、消費税率引き上げに関連してCPI統計と日銀シナリオの関係に新たな論争 が浮上するかもしれない。現時点における日銀の物価見通しは消費税率引き上げ分がフルに価格転嫁される ことを前提にしているが、現実問題として企業(特に小売各社)が消費税率引き上げ分をフルに価格転嫁す る可能性は低いだろう。8月ロイター短観と同時に実施された 調査(調査期間:8/2-19、対象:大企業400社、回答270社)に よれば、非製造業では「全額価格転嫁する」との回答は36%に 留まっている(図)。仮にこの調査回答どおりの行動を企業が 選択すれば、インフレ見通しは日銀のシナリオ対比で下振れが 濃厚となり、日銀シナリオが下振れリスクに晒される。その場 合、日銀が重視しているとみられるフィリップス・カーブの 上方シフトに必要なMB残高は一段と膨れ上がることになる。 【予想レンジ(5営業日)】 NYダウ平均株価 14600〜15150j 日経平均株価 13700〜14300円 ドル円 98.00〜101.50円 http://www3.keizaireport.com/report.php/RID/194012/
特集:9月の憂鬱〜消費税と五輪招致 夏休みを終えて9月に入ったら、不透明要素が多いことに唖然としてしまいます。中で も日本経済の浮沈を握っているのは、「消費税と五輪招致」。いずれもアベノミクスの転 換点になりかねない大問題だと思います。 まずは消費税の増税日程が、10月上旬にあらためて決定することになり、先月末には集 中点検会合も行われました。今月は景気指標の一つ一つに注目しなければなりません。 続いて今週末、ブエノスアイレスのIOC総会で、2020年夏季五輪の開催都市が決まりま す。東京招致が実現するかどうかで、政治経済情勢は大きく違ってくることでしょう。 さらに週明け以降も、シリア情勢、米FOMCの判断、日中関係の行方など、不透明な要 素が一杯。当面の問題を整理してみたいと思います。 ●消費税:2つのリアリズムの相克 まずは消費税から。と言っても、筆者はこの問題を語ることにやや疲れがある1 。そこで 以下、9月2日朝の産経新聞「正論」欄に寄稿した拙稿「消費税めぐるリアリズムの相克」 をご紹介することにしたい。 ○1年前忘れたこの惑星の住人 缶コーヒーのCM風に言うならば、「この惑星の住人は1年前のことを全く覚えていな い」のではないだろうか。昨今の消費税論議を聞いていると、議論の時間軸が短かすぎる ように感じている。 1 特に 8月 31日『朝まで生テレビ』消費税特集に出て力尽きた感がある。
内閣府は集中点検会合を開催し、有識者から来年春からの増税の是非を問うている。景 気は大丈夫か、もっといい上げ方はないかという話が中心だが、そもそもなぜ増税が決ま ったかを思い出してみよう。 消費税増税法案は、昨年 8 月に民主党政権下で成立した。「社会保障と税の一体改革」 を実現するためには、まず財政再建を図らなければならず、そのためには増税が避けられ ない。社会保障改革は、時間がないから超党派の「国民会議」で議論しようということが 三党合意で決まった。立役者となったのは、当時の野田首相と谷垣自民党総裁という2人 の財務相経験者である。 この時点では、財政の安定こそが主眼であり、景気回復やデフレ脱却は大きな論点では なかった。増税が始まる 2014 年 4 月はまだ先のことであったし、社会保障制度への国民 の関心は高かった。法案は衆参ともに意外な大差で可決され、ただし民主党は分裂して小 沢一郎氏の一派が去っていった。この辺の事情は、去るものは日々に疎しというほかはな い。 それから1年。増税法案成立時点では、自民党の一議員に過ぎなかった安倍晋三氏は、 9 月の自民党総裁選に勝ち、さらに年末の総選挙にも勝って首相の座に返り咲いた。安倍 氏とその周辺の経済スタッフは、財政再建よりも経済成長やデフレ脱却こそが重要である との考え方である。アベノミクスには、それまでの民主党政権の方針に対するアンチテー ゼという意味が含まれている。 安倍政権の発足後、日本経済の状況は短期間に一変した。大胆な金融政策、機動的な財 政政策、そして民間投資を喚起する成長戦略という「三本の矢」により、円高は是正され、 株価は上昇した。実体経済も、年率3%前後の成長軌道に乗っている。 ○経済vs.政治の「現実主義」 注目の 4−6 月期実質 GDP は、年率 2.6%成長と事前予想をやや下回ったが、内容的に は悪くない。わずか 0.1%とはいえ、久々に名目成長率が実質を上回り、デフレ脱却に向 けて小さくとも意義深い一歩を踏み出した。外的ショックさえなければ、景気は来年3月 までは安泰であろう。 問題はその先である。2013 年度は良いのだが、4 月になって 2014 年度に入った瞬間に 「日本版・財政の崖」が訪れる。 第一に消費税の増税効果がある。3%分となれば、8兆円弱の国民負担増となる。次に今 年、補正予算を打った公共投資の減少効果がある。さらに3月末の駆け込み需要とその反 動減を考えると、15 兆円程度、ざっくり GDP 比 3%分程度の景気抑制効果が出る。アベ ノミクスにとっては、ここが難所となりそうだ。 増税見直し論が浮上するのは、この1年で政治情勢、経済情勢がともに一変したからに ほかならない。経済的リアリズムから言えば、このまま増税に踏み切るのはちょっと怖い と思う。
他方、この問題には、「せっかく決めた増税日程を変えるのはもったいない」という政 治的リアリズムの観点もある。現下の消費税論議は、2 つのリアリズムの相克と捉えると 分かりやすい。 ○日本人は借金をとぼけない 政治的に言えば、安倍首相は実にもったいないことをやっている。増税は野田前首相が 決めたことで、自分は関係ないという態度をとることもできた。ところが、集中点検会合 をやって決めたとなれば、責任の所在は明らかに安倍首相にある。庶民の恨みを買うかも しれないし、景気が腰折れした場合は非難も浴びるだろう。 ただし前述の通り、消費税や日本経済をめぐる状況はこの1年で一変している。ここで リアルな論議の場を持つことは、国民の理解を深める上でも間違ってはいない。増税日程 を安倍政権のイニシアティブで決めることは、いっそ潔い態度だとも言える。 ところでアベノミクスの重要な立役者である黒田東彦日銀総裁は、「予定通り増税すべ し」との意見である。推察するに、日銀は大量の日本国債を買って「異次元の金融緩和」 を進めている。それは野田前首相が、あらかじめ消費税増税を決めてくれたお陰だという 面が無視できない。 わが国にはGDP の2倍に当たる1000兆円もの借金がある。国債の償還に疑念を持つ投 資家が居ても不思議はない。ところが日本国民は、増税を粛々と受け入れている。日本人 は借金をとぼけたりはしないのだ。そのことで、日本国債の信認が保たれている部分は小 さくないだろう。 ゆえに増税日程は変えない、来春には相応の対策を打つべし、というのが筆者の見解で あるが、それはさておいて安倍政権のリアルな判断に期待したい。 ●安倍内閣の「敵は財政当局?」
本件に関する筆者の見解は、上記でだいたい尽きている。が、せっかくなのでもう少し だけ加筆しておこう。なぜ安倍首相は政治的リアリズムを無視してまで、前任者が決めた 増税日程を変えなければならなかったのか、である。 ひとつは政策論としての視点である。次ページの図のように整理してみると、安倍氏の 考え方(左上)は野田前首相&谷垣前自民党総裁の考え方(右下)は対極にある。 増税を決めた「社会保障と税の一体改革」は、「日本経済は少子高齢化で成長は望みに くいが、とにかく社会保障は重要であるから、そのためには財政の安定が欠かせない」と いう発想であった。こうした考え方は、民主党内では少なくなかった。 これに対し、リフレ派は「もっと政策的に高い成長を目指すべきであって、そのための 手段は残されている。先に増税するとデフレを深刻化させるばかりで、財政安定の重要度 は低い」と考える。両者はおよそ相容れない発想なのである。 安倍首相は当初、リフレ論を唱えつつ総選挙を戦い、政権発足後は「3 本の矢」と説明 を変えたが、それは自民党内に多いA「財政出動派」と、経済界に多いB「成長戦略派」 を取り込んだものと考えるとか分かりやすい。そして「3 本の矢」という作戦は見事に当 たり、リフレ派、ケインジアン、構造改革派をすべて味方につける効果があった。 それと同時に、この1年間で「社会保障と税の一体改革」はすっかり忘れられた感が否 めない。民主党が衆参の選挙で派手に2連敗したために、三党合意もほとんど意味をなさ なくなっている。安倍内閣としては、この際、改めて自分の責任で増税を決めるというの は、考え方として間違っていないだろう。 もうひとつは政局運営の視点である。7 月の参院選で大勝したことで、とりあえず安倍 政権にとっては怖いものがなくなった。野党は小粒化し、弱体化した。当分は再編も望み 薄であろう。自民党内にも、当面は逆らう者はいない。内閣支持率も高水準を維持してい るから、マスコミもさほど怖くない。 となれば、警戒すべきは手足となる「霞ヶ関」ということになる。特に財務省は、増税 に向けて突っ走り過ぎた。安倍内閣は、役人のお膳立てに乗せられて動くようなことはし ない。ということで、財政当局に対する「お仕置き」が行われていると考えればいいので はないか。本誌の前号でも触れた通り、この秋のタイトな国会日程を考えると、増税日程 を変更するための法改正をねじ込むことは簡単ではない。 もっともこのような政治手法は、いささか傲慢であるように思える。端的に言えば、お そらく野田前首相は、「自分は消費税というバトンを次の政権に渡した」と思っているだ ろう。ところが安倍首相は、前の政権の政策をはっきり否定したい。だからわざわざバト ンを地面に落とし、もう一度拾い上げるようなことをやっている。 「何もそこまでしなくても…」と思うのは筆者だけではあるまい。むしろ「野田さんに 感謝している」とでも言っておいた方が得策なのではないだろうか。5 ●五輪招致の天国と地獄 さてこの消費税の問題、来週になったら状況は一変しているかもしれない。というのも、 今週末のIOC総会の行方が読めないからだ。 おそらく東京招致が成功した場合、増税の延期という意見は雲散霧消するのではないか。 2020年に大型イベントが行われることは、中長期的に景気にとってプラスであるだけでは なく、首都圏で大規模な公共投資が必要となることを意味している。海外からのお客様を 迎えるにあたって、予算が足りないなどということがあってはなるまい。恥ずかしくない ように、というのはいかにも日本人的なロジックだが、それだけに抗しがたいものがある。 前回の 1964 年東京五輪の際に慌てて作られた都市インフラは、すでに半世紀を経て老 朽化が進んでいる。地震への備えも必要だ。「この際、首都高を全部地下に埋めてしまお う」といった声も出るかもしれない。いずれにせよ、勝てば官軍とばかりにアベノミクス にはモメンタムがつくだろう。 ところが逆に負けてしまった場合、失われるものはかなり大きい。4 年前のコペンハー ゲンでのIOC総会では、招致活動が盛り上がっていなかったこともあって、さほど失望感 はなかった。しかるに今回、東京都が 2 連敗となれば、心理的ショックは大きいだろう2 。 消費税問題もしばらくは思考停止になるだろうし、アベノミクスにとっての転換点となる かもしれない。今週末のIOC総会は、それくらい掛け金が上がってしまっている。 この問題は本来、東京都の責任であったものを、安倍首相が招致活動にのめり込んだ結 果、自らの責任にしてしまったという点で、消費税の問題とやや重なって見えるところが ある。安倍首相はこの週末、G20会合への出席時間を削り、サンクトペテルブルクからブ エノスアイレスへ直行して最終プレゼンに臨む。これでダメだったら、せっかく高まった 安倍首相の求心力を弱めることになるのではないか。 ただし安倍氏は首相就任以来、歴代首相のペースをはるかに上回るペースで首脳外交を 展開してきた。おそらくそのほとんどの席において、「2020年五輪は東京をよろしく」と 言ってきたはずである。つまりそれだけの外交的資源を投入してきた。そのことを思えば、 最後は自分の手で勝利を得たいと考えるのも無理はないだろう。 確かにここで勝てば、今度は今月末の国連総会で各国に対して「謝意を伝える」という 形で安倍外交を発展させていくこともできる。今後の懸案である対中、対韓外交において も、「東京五輪」は使い勝手のいいカードということになるはずだ。 つまるところ経済でも外交でも、東京招致の成否で大きく違ってくる。日本時間 9 月 8 日午前 5 時に判明するのは、ここまで順調だった安倍氏の「運」がまだ続くのかどうか、 ということである。国運もまた、限りなくそれに乗っていると言えるだろう。 2 ちなみにマドリッドは 2連敗中だし、イスタンブールは過去に5回挑戦している。6
●不透明性の 9月 ということで、後は週明けに改めて考えるしかないのだが、9 月は以下のような日程に なっている。まことに不透明性が高く、落ち着かない日々となりそうである。
9月6日(金) 米雇用統計発表 ――NFP は 15〜17万人、失業率は 7.4%くらいか。 9月7日(土) IOC総会 (アルゼンチン・ブエノスアイレス) ――結果発表は日本時間 9月 8日(日)午前 5時頃。日曜朝のテレビはたぶんこれ一色に。 9月9日(月) 米議会が夏休み明け再開 ――シリア・アサド政権による化学兵器使用に対する懲罰攻撃を、認めるべきかどうか。米国 が「世界の警察官」を続けるかどうかが、この判断に懸ってくる。 9月9日(月) 内閣府が4-6月期GDP改定値を発表 ――法人企業統計を見ると、年率 1%程度の上方修正となる見込み。民間設備投資の寄与度も マイナスからプラスに転じるものと予想。消費税決断に一歩前進か。 9月10日(火) 日本政府が尖閣諸島を国有化してから1周年。 ――中国でどんな反響があるのか。ちなみに野田政権が閣議決定したのがこの日であって、実 際の手続きは翌日 11日であった。 9月15日(日) リーマンブラザーズ社倒産から5周年 ――あのリーマンショックから今月で丸 5年。米国経済は「中期悲観」から「長期楽観」へと 好転しつつあるが、Fedの出口戦略はまだこれから。 9月17-18日 米 FOMC ――結果次第では、”Tapering”が発動へ。新興国経済への打撃となる恐れも。 9月18日(水) 中国で柳条湖事件記念日 ――中国で最も反日感情が高まる日。ただしこの日を過ぎれば、雰囲気は幾分和らぐでしょう。 ちなみに筆者は、この直後の三連休で訪中してくるつもりでおります。 9月22日(日) ドイツ連邦議会選 ――メルケル首相が率いるCDU が勝つ見込み。 9月23日(月)〜28日(土) 安倍首相がカナダ、米国歴訪 ――25日にはニューヨークの国連総会で演説も行う。李克強首相との会談があるかも。 9月27日(金) 8月全国消費者物価指数 ――果たして 3か月連続のプラスとなるかどうか。 9月29日(日) 堺市市長選投開票 ――現職勝利だと「大阪都」構想がアウトになるので、橋下大阪市長の浮沈が懸っている。 9月30日(月) 自民党役員任期切れ ――ただし内閣改造も役員人事もなし、とのこと。 9月30日(月)鉱工業生産、失業率、有効求人倍率などの発表日。 ――消費税増税の判断材料としてはこれらの指標も重要。さらに翌日は日銀短観。
<今週の”The Economist”誌から> ”Bad memories” Banyan 「通貨危機の記憶」 August 31st 2013 *1997-98 年のアジア危機の記憶が頭をもたげてくるのは我々だけではないようです。で もそれは違う、というのがThe Economist誌のアジアコラム”Banyan”の見方です。 <抄訳> 昨今のアジア通貨と株の下落は、1997-98年の金融危機を思い起させる。最初はタイで、 インドネシアで、そして韓国へと飛び火し、最後はIMFが出動した。地域経済はガタガタ になり、スハルト独裁体制が倒れた。対シリア軍事行動で悪化はさらに加速しそうだ。 1997 年は 3 月に米連銀が利上げし、ドルは対円で 95 年から 3 割も上げた。これで新興 国の資金が干上がった。今もドル高と利上げ期待が、資金を安全な先進国へ戻している。 アジア諸国の輸出は伸びが止まっている。いずれも中国経済の減速が一因だ。90年代半 ばには中国は世界の工場を任じ、先行する香港、韓国、台湾などのシェアを食い荒らして いた。16年後の今、中国は地域でもっとも重要な市場となっている。既に中国は豪州、イ ンドネシア、日本などにとって最大の市場であり、わずかな減速でも大きな打撃となる。 更なる類似点は、成功が傲慢さを生んだことだ。90年代のアジアの成功は、通貨安によ る持続不可能な熱狂ではなく、「アジア的価値」のお蔭とされた。同様に 2008 年危機で 傷が浅かったことは、地域の慢心を生んだ。ファンダメンタルズは良好で、改革は先送り して良い、と政治家は考えた。そして変調に際し、他国、特に米国を非難したのである。 しかし 97 年と同様、巨額の経常赤字の国は信認喪失に脆弱である。インドではルピー が対ドルで最安値をつけ、インドネシアでは外貨準備が2年前から2割減となった。 97 年組の中でも、マレーシア、フィリピン、韓国、タイは往時とは違って経常黒字を維 持している。それでも通貨は弱くなっており、1997年の「伝染」を髣髴とさせる。 だが、この地域はずっと良くなっている。少なくとも、通貨をヘッジファンドに狙い撃 ちされたりはしない。97年当時はドルペッグが多かったが、今は変動制が多くなった。 ひとつには危機の経験に学んだからだ。最低輸入6か月分の外貨準備を持っている。ド ルで借りて国内の不動産に投資する、などという取引も廃れた。バンコクの不動産バブル 崩壊は、タイ経済の様々な問題を表面化させた。アジア的価値は、アジア的弱点だった。 今回はすべての新興国市場に影響が出ている。アジアが特に問題なわけではない。イン ドは財政赤字減らしに失敗し、8 月には慌てて資本規制を入れようとした。インドネシア は外資による天然資源への投資に神経質になっている。 今すぐはともかく、長期的な課題は残る。97〜98年危機は中国の成長による副作用だっ た。そして中国の成長は緩やかになっている。この地域が警戒すべきは、米連銀の買い上 げ縮小ではなく、中国経済の減速がより長く、より厳しいものになることだろう。 http://www.sojitz-soken.com/jp/send/tameike/pdf/tame526.pdf
「今後の経済財政動向等についての集中点検会合」の概要報告 平成25年9月6日 内 閣 府 (1)消費税率引上げの判断 現在の経済状況について、数名が、景気は回復過程にあるとの見方を示した。 他方、デフレからの脱却が道半ばであり、アベノミクス効果により足下の成長 率は良いが、一度に3%の引上げが経済へ悪影響を与えるという見解があった。 労働需給は既に均衡しているとの見方がある一方、来年の春闘の賃金上昇がデ フレ脱却にとってクリティカルという見方があった。また、米国の量的緩和の 縮小や、新興国からの資金流出などの海外リスク要因の指摘があった。景気の 拡張局面において、短期的経済動向に拘泥すべきではないとの見解もあった。 消費税率引上げについて、多くは予定どおり引上げを行うことが適当との意 見を述べた。理由として、財政に対する信認維持による市場リスク、国債格下 げの回避、社会保障制度の維持による所得分配の重要性などが挙げられた。タ イミングについては、景気回復の初期が望ましいとの指摘があった。 他方、デフレ脱却途上では増税の刻みを小さくすべきであり、1%ずつ、あ るいは初めに2%、その後1%の引上げとすべきとの見解があった。また、小 刻みの引上げが物理的に困難であれば、景気対策とともに予定どおりの引上げ を行うことが現実的との意見があった。小刻みの引上げに対しては、政府に対 する信認の低下や、成長戦略実施に対する疑念、財政再建への支障、市場の混 乱などを理由に反対ないし慎重な意見が多かった。 (2)今後の経済財政運営の在り方 引上げ時の経済対策として、補正予算による下振れリスクへの対応、低所得 者対策、規制緩和・法人税減税等、機動的な金融政策による対応を求める意見 があった。これに加え、ポリシーミックスの観点から、成長戦略による成長力 の押上げ、1月の政府と日銀の共同声明にある政府の取組を再確認すべきとの 見解があった。他方、引上げの意味を無くしてしまうような、ばらまきの政策 になってしまうリスクを抑えなくてはいけないとの意見があった。 (3)その他経済財政運営に当たって留意すべき事項 1%ずつ増税する際の事務コストはさほど大きくないはずであり、税率変更 に伴う事務コスト増とデフレ脱却のバランスが問題であるとの意見があった。 若干名から、予定変更により市場が混乱し、社会保障の議論が振り出しに戻 るというコストの方が、増税の景気の押下げ効果に比して大きいとの指摘があ った。 若干名から、1997 年の景気後退は金融危機等が要因であることや、当時はビ ッグリスクが不良債権であったが、現在は財政赤字がビッグリスクであるとの 見解が示された。 財政を維持可能なものとし人々の安心が担保されるには、消費税率を 20%程 度まで引き上げると同時に、社会保障費を十分に抑制することが必要との意見 があった。http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/special/tenken/gaiyouhoukoku.pdf
2 0 1 3 年 9 月 6 日 日 本 銀 行 金融経済月報 (2013年9月) 【概 要】 わが国の景気は、緩やかに回復している。 海外経済は、一部に緩慢な動きもみられているが、全体としては徐々に持ち 直しに向かっている。そうしたもとで、輸出は持ち直し傾向にある。設備投資 は、企業収益が改善するなかで、持ち直しつつある。公共投資は増加を続けて おり、住宅投資も持ち直しが明確になっている。個人消費は、雇用・所得環境 に改善の動きがみられるなかで、引き続き底堅く推移している。以上の内外需 要を反映して、鉱工業生産は緩やかに増加している。 先行きのわが国経済は、緩やかな回復を続けていくとみられる。 輸出は、海外経済の持ち直しなどを背景に、緩やかに増加していくと考えら れる。国内需要については、公共投資が各種経済対策の効果から引き続き増加 傾向をたどり、住宅投資も増加していくとみられる。設備投資は、企業収益が 改善を続けるなかで、緩やかな増加基調をたどると予想される。個人消費も、 雇用・所得環境の改善に支えられて、引き続き底堅く推移するとみられる。こ うしたもとで、鉱工業生産は緩やかな増加を続けると考えられる。 この間、世界経済を巡る不確実性は引き続き大きい。 物価の現状について、国内企業物価を3か月前比でみると、国際商品市況や 為替相場の動きを背景に、緩やかに上昇している。消費者物価(除く生鮮食品) の前年比は、0%台後半となっている。予想物価上昇率は、全体として上昇し ているとみられる。 物価の先行きについてみると、国内企業物価は、当面、緩やかな上昇を続け るとみられる。消費者物価の前年比は、プラス幅を次第に拡大していくとみら れる。 わが国の金融環境は、緩和した状態にある。 マネタリーベースは、日本銀行による資産買入れが進捗するなか、大幅に増 加しており、前年比は4割台前半の伸びとなっている。 企業の資金調達コストは低水準で推移している。資金供給面では、企業から みた金融機関の貸出態度は、改善傾向が続いている。CP市場では、良好な発 行環境が続いている。社債市場の発行環境についても、総じてみれば、良好な 状態が続いている。資金需要面をみると、運転資金や企業買収関連を中心に、 緩やかに増加している。以上のような環境のもとで、企業の資金調達動向をみ ると、銀行貸出残高の前年比は、2%台前半のプラスとなっている。CP・社 債の発行残高の前年比は、プラスとなっている。企業の資金繰りは、総じてみ れば、改善した状態にある。この間、マネーストックの前年比は、3%台後半 の伸びとなっている。 金融市況をみると、短期金融市場では、オーバーナイト物コールレート(加 重平均値)は 0.1%を下回る水準で推移しており、ターム物金利は横ばい圏内の 動きとなっている。前月と比べ、円の対ドル相場は下落している。この間、長 期金利および株価は前月と概ね同じ水準となっている。 http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2013/gp1309.pdf |