01. 2013年9月06日 02:01:48
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>アジアは優勢JBpress>海外>The Economist [The Economist] アジア経済:90年代の金融危機の嫌な思い出 2013年09月06日(Fri) The Economist (英エコノミスト誌 2013年8月31日号) 1997〜98年のアジア金融危機との類似点は多々あるが、ミスリーディングだ。 同じ川に2度入ることはできない。だが、忘れ難いほど馴染みのある川に見えることがある。このため、アジアの通貨と株式市場が最近急落したことを受け、投資家や評論家が1997〜98年の金融の嵐の幽霊を呼び覚ましたのも意外ではない。 当時の危機では、まずタイが、次にインドネシアと韓国が国際通貨基金(IMF)に救済を求めることになった。地域経済は大打撃を受け、インドネシアでは32年間に及ぶスハルト独裁政権が転覆した。フィリピンとマレーシアは大きな痛手を負いながら、やっとのことで危機を乗り切った。 そして今、アジア地域の市場の揺れが再び伝染するようになっている。予想される米国主導のシリアへの軍事介入がもたらす影響への懸念が増すにつれ、状況はさらに悪化するだろう。それでも川は一変しており、危機当時ほどは無用心な人を押し流しそうにない。 目を見張るような類似点 確かに、1997年の危機前の数カ月間との類似には目を見張るものがある。特にインドネシア、マレーシア、タイが再び危機の瀬戸際にあるように見えるからだ。 1997年当時も今回と同じように、米国の金融政策が最大の関心事だった。同年3月に米連邦準備理事会(FRB)は金利を引き上げた。利上げとドル高――ドルは1995年初頭以降、1997年半ばまでに円に対して3割上昇していた――が重なり、資本は新興国市場から米国へ流れ込んだ。 現在は、ドル高基調に加え、FRBが巨額の債券購入プログラムの「テーパリング(逓減)」を検討するなかで金利が上昇する恐れがあるというだけで、マネーが再び安全とされる先進国の資産に向かっている。 当時も今と同じように、多くのアジア諸国で輸出が伸び悩んでいた。どちらの場合も、輸出の減速は部分的に中国のせいにできた。ただし、理由は大きく異なっていた。 1990年代半ば、中国は世界の工場としての地位を確立しているところだった。中国の輸出力は、同国より先に工業化を果たした国々の市場シェアを食いつぶしていった。香港、韓国、台湾といったアジアの「虎」のみならず、マレーシアやタイなどもシェアを奪われた。 それから16年経った今、中国は驚異的な成長によってアジア地域の最重要市場の座を確立した。今では、オーストラリア、インドネシア、日本、マレーシア、韓国、タイ、台湾にとって最大の輸出相手国になっている。このため中国の成長の鈍化は――それがたとえ、これまでに見られた比較的緩やかな減速であっても――地域に大きな打撃を与える。 驕りと慢心 1997年とのもう1つの類似点は、経済的な成功がある種の驕りを生んだことかもしれない。1990年代初頭に大半のアジア諸国で見られた何年にもわたる急成長は、部分的には過小評価された通貨に依存した持続不能な好況だと見なされず、生得権として受け止められていた。中にはこれを、倹約、勤勉、規律といった「アジアの価値観」の優位性を示す証拠と見なす人さえいた。 同様に、アジア地域が2008〜09年の世界不況を比較的無傷で乗り切ったことも慢心をもたらした。特にインドとインドネシアの政策立案者は、自国のファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)は極めて健全なため、必要な構造改革を次の選挙(来年に予定されている)後に先延ばしできると主張した。 問題が生じた時に両国が最初に示した反応は、1990年代後半と同様、諸外国、特に米国の政策を非難することだった。 だが、やはり1997年当時と同じように、インド(1997〜98年には概ね影響を受けずに済んだ)やインドネシアなど、多額の経常赤字を計上する国は今も外国からの信頼喪失に脆い。 インドでは、通貨ルピーが下げ、ドルに対して史上最安値をつけた。1997〜98年に最も深刻な被害を受けたインドネシアでは、輸出業者向けの減税など、8月23日に発表された政策措置は通貨ルピアの下落を食い止められなかった。同国の外貨準備高は過去2年間で20%減少している。 1997〜98年の金融危機に苦しめられた国のうち、マレーシア、フィリピン、韓国、そしてタイは皆、1990年代に経常赤字を計上していたのとは対照的に、近年は経常黒字を出している。それなのにマレーシアリンギット、フィリピンペソ、タイバーツもここ数週間で下落した。これは1997年にパニックを広めたような伝染を思わせる。シンガポールドルさえ米ドルに対して下落した。 危機当時よりはずっと堅調 とはいえ、アジア地域は今、当時よりずっと堅調だ。各国通貨ももはや、遊園地の射的コーナーに並べられたココナッツのように、ヘッジファンドに闇雲に撃たれるのを待っているわけではない。 1997年には、大半の通貨は多かれ少なかれ、米ドルにしっかりペッグ(固定)されていた。名目上は「フロート(浮くの意)」するとされていた変動相場制の通貨も、実際にはペッグ制を真似て中央銀行が管理していた。現在は、これらの通貨は本当に浮くし、沈みもする。 前回の危機を経験したこともあって、各国は以前より次の危機への備えができている。どの国も少なくとも6カ月分の輸入を賄えるだけの外貨準備を持っている。また、1997年の暴落の大きな原因――特に不動産に対する現地通貨建ての投資を賄うためのドル建ての大規模な借り入れ――は流行遅れだ。そのため危機の伝染も昔とは異なる。 1997〜98年には、バンコクで不動産バブルが弾けると、タイの経営運営のダメなところと、国内の銀行と企業、政治家の腐敗した関係が露呈した。調べてみると、同じような病が多くの近隣諸国を苦しめていることが見て取れる。「アジア」の価値観はアジアの欠陥になってしまったのだ。 メード・イン・チャイナ 今回、金融リスクの認識に対する世界的な変化は、すべての新興国市場に影響を及ぼしている。アジア諸国はアジアにあるがゆえに特に脆弱だというわけではない。むしろ一部の国は自国政府が下した政策の選択のせいで困難に直面している。 例えば、インドはいつまでも財政赤字の解消に取り組めず、8月には取り乱した様子で小規模な資本規制を導入した。インドネシアは豊富な自然資源について、外国人投資家に次第に厳しいアプローチを取っている。また、タイは市場の相場を上回る価格でのコメの買い入れという好評だが高くつく政策を取っている。 このため、少なくとも今のところは、川の水は止められないうねりにはなっていない。だが、最近の混乱はより長期的な疑問を提起している。前述の通り、1997〜98年の危機は部分的に、中国の驚異的な成長が招いた二次的な被害だった。そして現在の不安は、中国の成長の緩やかな鈍化に続いて生じたものだ。 アジア地域が現在直面している大きな脅威は、FRBの「テーパリング」に対する、もしかしたら早計な差し迫った不安だけではない。中国の減速が一段と長引き、ことによればもっと急激に落ち込むリスクもそうなのだ。 http://jbpress.ismedia.jp/articles/print/38634
JBpress>海外>Financial Times [Financial Times] インド中銀、ラジャン新総裁の「ビッグバン」 危機に脅かされる銀行システムの自由化を優先 2013年09月06日(Fri) Financial Times (2013年9月5日付 英フィナンシャル・タイムズ紙) インドルピーが過去最安値、対ドルで60ルピー割り込む インドはルピー安とインフレ、成長鈍化に苦しんでおり、中央銀行のラグラム・ラジャン新総裁は難しい舵取りを迫られる〔AFPBB News〕 ラグラム・ラジャン氏のインド準備銀行(中央銀行、RBI)総裁就任は、ルピーを救済し、経済成長を取り戻し、インフレを抑制するために同氏がどのような金融措置を講じるのか期待する投資家たちが首を長くして待っていたものだ。 だが、ラジャン氏は中央銀行総裁に就任した初日、米連邦準備理事会(FRB)の政策決定会合直後の9月20日まで金融政策に関するコメントを先送りした。 実際この日の会見では、ラジャン氏はほぼ終始して、銀行部門を自由化する計画について語った。世界で最も銀行利用者の少ない国の1つであるインドでは、貧困軽減や長期的成長のためには銀行部門の自由化が不可欠だと同氏は考えている。 銀行にのしかかる不良債権問題 経済成長の鈍化と急激な通貨下落が資産の質を脅かし、企業の資金需要を減退させているなかで、インドの銀行システムの健全性に対する不安が高まっている。 モルガン・スタンレーによると、不良債権と貸出条件緩和債権の水準は過去1年間で資産の約9%まで増加しており、今後2年間で15.5%に達する可能性があるという。特に一部の大手事業会社が融資の返済に苦しんでいることから、成長鈍化、景況感の悪化、ルピーを下支えするためのRBIの措置が資産の質をさらに傷つけるだろう、とアナリストらは話している。 クレディ・スイスの最近の調査は、最も多額の負債を抱えた企業グループ10社――GVK、GMR、ランコといったインフラ企業やベダンタ、エッサールなど――の債務総額が前年度に初めて合計で1000億ドルを超えたことを示していた。 ラジャン氏が4日、「最初の大きなパッケージ」として説明した一連の措置は、国営銀行に支配されている金融部門を自由化し、競争力を高めることを目的としているが、同時に、銀行を政府や「プロモーター」――一般に銀行の最大の債権者である裕福な実業家たち――の介入から守ることも目指している。 「プロモーターには、いかにお粗末な会社経営をしているかに関係なく実権を握り続ける神権はないし、経営が破綻した自分たちの事業の資本を増強するために銀行システムを利用する権利もない」とラジャン氏は述べた。 ラジャン氏は、銀行の対外借り入れや金融市場でのポジション構築に関する規制緩和、新たな金利先物契約の導入、新たなモバイル決済システムやノンバンクが運営する「ミニATM」の設置などを提案した。また、インフレに対するヘッジとして伝統的に金輸入に頼ってきたインド人は、11月末から消費者物価指数に連動する政府貯蓄証券を購入できるようになる。 ラジャン氏はさらに、債権回収手続きを改善することや、多額の債権に対するエクスポージャーに関するデータ――RBIが商業銀行と共有する――をRBIに収集させることも計画している。それによって銀行は自行のバランスシートをきれいにし、必要な時に新たな資本を調達するよう促されることになる。 「不良債権問題はまだ急を告げていないが、対処しないまま放置すれば、悪化し拡大するだけだ」とラジャン氏は述べた。この見方はアナリストたちも共有している。バンクオブアメリカ・メリルリンチは今週のリポートの中で、インドをアジアで最も「金融面で脆弱な」経済大国と表現し、力強い成長を遂げた時期の過度な信用拡大を受けた不良債権に起因する問題を非難していた。 「2002〜07年の貸し出しブームは終わったが、不良債権という意味では、その結果は今姿を見せ始めたばかりだ」。株式ストラテジストのアジャイ・シン・カプール氏はこう書いた。「インドには多岐にわたる問題がある」 格付け機関フィッチによると、銀行部門の見通しはルピーの下落によって一段と暗くなっている。FRBが今月から資産買い取りを縮小し始める可能性があるとの憶測が飛び交うなかで、ルピーの対ドル相場は5月末から約18%下落している。 ドル建て債務を抱えたインド企業にルピー安の打撃 インド企業が約2250億ドルの米ドル建て債務を抱えている――その半分程度がヘッジされていないと見られている――一方、比較的大きなインドの銀行の中には、インドステイト銀行やICICI銀行のように、近年、ドル建て債券によって資金を調達してきたところがある。 こうした資金の一部は、その後、企業部門に貸し出されてきた。その企業部門の返済能力は今後、ルピーの急激な下落が全体的な景気減速を悪化させるにつれ、悪影響を受ける恐れがある。 「こうした状況が全部合わさると、必然的に大きな銀行危機に発展するのだろうか? 答えはノーだ」。CSLAのエコノミスト、ラジブ・マリク氏はこう言いつつ、「だが今は、心配なことに、そのような事態が起こり始めるかもしれないシナリオがいくつかある」と話している。 By James Crabtree and Victor Mallet http://jbpress.ismedia.jp/articles/print/38635
JBpress>海外>Financial Times [Financial Times] インドの轍を踏むインドネシア 経済的成功に甘んじて何もしなかったツケ 2013年09月06日(Fri) Financial Times (2013年9月5日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
雨期のジャカルタで、空一面に張り出した黒い雨雲 インドと同様、インドネシアも世界金融危機の嵐はうまく乗り越えたが・・・(写真はインドネシアの首都ジャカルタ上空を覆う黒い雨雲)〔AFPBB News〕 インドネシアはよく次のインドだと言われてきた。人口2億5000万人のインドネシアは意欲的な消費者になる莫大な人口を擁する。インドと比べると民主化がずっと遅かったとはいえ、同じく民主主義国だ。 また、やはりインドと同じように、経済成長の堅実な実績を牽引したのは、製品輸出ではなく内需だった。世界金融危機が勃発した時、両国の経済は大半の国よりもうまく嵐を乗り切った。 ところが、ここへ来て突如、インドとの比較があまり甘美に聞こえなくなった。アジアの経済国としては、インドネシアはインドに次ぎ、国の経常赤字と資本流入への依存を懸念する市場から厳しい目を向けられるようになった。 もっと根本的なところでは、市場の圧力は、持続的な発展のための政策基盤を築くことなく進んできたインドネシア経済の成長モデルについて厄介な疑問を投げかけている。こうした疑念は、低利資金と高いコモディティー(商品)価格の潮流で浮かんできたアジア、中南米、アフリカの多くの新興国にも同じように当てはまる。 インドとインドネシアのよく似た経済構造 人口が世界で2番目に多いインドと4番目に多いインドネシアの類似点は多い。インドネシアは何年も続いた貿易黒字が昨年末に突然終わり、今では多額の貿易赤字を計上している。2012年以降の急激な景気悪化は主に石炭やヤシ油などのコモディティー価格が弱含んだ結果であり、インドネシア経済は輸出依存型ではないという概念が崩れた。 インドネシアと同じようにインドも、多額の外貨収入を生み出したり、同じくらい重要な雇用を創出したりする力のある高度な製造業を育成してこなかった。両国とも、人口ボーナスを享受しているはずだった。だが、経済が十分な雇用を生み出せない限り、若く、落ち着かない人口は恩恵というよりは呪いになり得る。 インドの方が極端なケースだ。同国ではサービス業が経済成長の大半を担い、労働人口のわずか3分の1程度で国内総生産(GDP)の3分の2を生み出している(成人人口の半分以上は農民だ)。こうしたサービスの一部は、インドの強大なハイテク産業を経由して輸出されている。 それでもインド経済は、すべての人が互いの洗濯をすることに依存したモデルの寓話上の南海の島と比較されても仕方ない。 結局のところ、「iPad(アイパッド)」から発電所に至るまで、意欲的な中流経済が必要とするモノを国が作れなければ、それらを輸入するためにお金を稼がなければならないのだ。 インドネシア経済はインドほどサービス業に偏っておらず、産業別のGDP構成比はサービス業が39%に対して工業が47%だ。それでも、インドネシアが潜在力に見合う製造能力を築くために十分取り組んできたと言う人はいないだろう。 インドと同様、工場の建設は、電力と輸送の制約、土地の取得に関係した問題、さらには収賄を促す過度に複雑な規制のせいで不必要に困難になっている。 インドは少なくとも、アウトソーシングや医薬品などの分野で世界に通用する起業家を誇る。これに対し、最も成功したインドネシアの実業家は、政治家とのコネと確立した独占のおかげで楽に財を築くことができる既得権者だ。 あまりに多くの人が原材料を出荷したり、免許に基づき外国製品を国内で売ったりすることに満足している。多くの場合、手っ取り早い金儲けの魅力が生産能力の改善や国造りの概念に打ち勝つ。 政治的にも多くの類似点 政治的な類似点もある。両国は指導者の2期目の任期の終わりに向けて躓きながら歩んでいる。インドのマンモハン・シン首相とインドネシアのスシロ・バンバン・ユドヨノ大統領は、両国が来年総選挙を実施する時点でそれぞれ10年務めたことになる。 インド政界を混迷させる携帯電話汚職疑惑 マンモハン・シン首相は1990年代初め、財務相としてインドの経済改革を推し進めた〔AFPBB News〕 シン氏はかつてインドの改革を担うスーパーマンとしてもてはやされた。2期目になると、クラーク・ケントに戻ってしまった。 小売りから保険に至るまで多くの産業を開放する試みが断続的に行われたが、外国人投資家は納得しなかった。外国勢はお役所仕事やころころ変わる租税政策、電力供給並みに当てにならない規制にうんざりしている。 実業家と政治家の腐敗した関係に対する国民の怒りは立派だったが、強い指導力が欠如する中では、麻痺状態に陥って終わった。 インドネシア国会、スクリーンに突然ハードコアポルノ 頭文字から「SBY」と呼ばれるスシロ・バンバン・ユドヨノ大統領〔AFPBB News〕 名前の頭文字から「SBY」と呼ばれる、陸軍大将から文民指導者に転じたユドヨノ大統領も2期目は惰性で進んできた。 構造改革や首尾一貫した産業政策はほとんど実施されなかった。大統領は国家のために既得権と戦うことよりも、国のパワーブローカーを満足させておくことで政治的移行を確かなものにすることに没頭した。 インドネシアは急進的な地方分権化を追求した。これは一定の優位性をもたらしたが、規制の階層と汚職の機会を増やすことにもなった。 インドネシア政府が可決した1つの改革は、財政を赤字に転落させた燃料補助金を削減する策だった。燃料の値上げはインフレ率を上昇させたが、正しい対策だった。 対象を絞れない補助金を通じて貧困層を助けようとすることもまた、インドネシアとインドに共通する政策のミスだ。 インドネシアの方が2倍以上豊かだが・・・ 6%未満に落ち込んだインドネシアの経済成長率は、インドほどには大きく低下していない。インドネシアの国民は既にインド国民より2倍以上豊かで、1人当たり名目GDPはインドの1500ドルに対し、インドネシアは3900ドルに上っている。 それでも、インドネシアはインドと同じく、前進しているべきだった時に足元の成功に甘んじて何もしなかった。新たな切迫感を持たない限り、長期的にその怠慢が高くつくことになるだろう。 By David Pilling |