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すごくおいしいというほどではないけれど、ボリュームのわりに価格が安い“庶民の味方”……そんなイメージの食パンに今、異変が起こっている。
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20130903-01051762-trendy-bus_all
日経トレンディネット 9月3日(火)9時25分配信
すごくおいしいというほどではないけれど、ボリュームのわりに価格が安い“庶民の味方”……そんなイメージの食パンに今、異変が起こっている。
「金の食パン」以降、続々発売される“高級食パンサンドイッチ”
きっかけは2013年4月に発売された、セブン&アイ・ホールディングスの高級食パン「金の食パン」が爆発的にヒットしたこと。スーパーで売られている1斤6枚入りの食パンは、PB製品で100〜120円、有名ブランドの食パンでも150円前後。これに対し「金の食パン」は250円と、有名ブランドの食パンよりさらに100円ほど高い。にもかかわらず発売直後からバカ売れして、発売から2カ月間の販売累計は720万食。それ以降、高級食パンを使ったサンドイッチがコンビニで続々発売されているのだ。
ファミリーマートでは2013年7月16日から、「ファミマ プレミアムサンド」を発売。価格は280〜360円と、通常販売のサンドイッチ(「ジューシーハムサンド」250円)と比較するとやや高め。だが独自開発の耳の部分までやわらかな専用食パンを使用し、具だくさんに仕上げていることから特に女性に人気が高く、当初予想の3倍の売り上げ。現在は約6500店舗での販売だが、今後、発売地域を拡大していくという。
またローソンは2013年7月9日から、具材にこだわり既存の人気商品「ミックスサンド」をより上質にした「ローソン プレミアムミックス」を全店で発売。「30〜40代の男性によく売れていて、計画を上回る販売数。前年を大きく上回っているサンドイッチカテゴリー全体の売り上げ向上に寄与している」(ローソン)という。
2斤で840円の高級食パン!? 「セントル・ザ・ベーカリー」とは
このように高級食パンの人気が高まる中、2013年6月21日、銀座に、高級食パン専門店「セントル・ザ・ベーカリー」がオープン。2斤で735〜840円と「金の食パン」のさらに1.5倍という高価格だが、持ち帰り用とカフェ用を合わせて2斤サイズのパンを1日に少ない日でも200本、通常300本から400本は焼いていて、売り上げ全体の7〜8割以上を持ち帰り用の食パンが占めているという。
ブランド食パンの3倍もする食パンが、なぜそれほど売れているのか。普通の食パンと、いったいどこが違うのか。
「これだけ手をかけて作っている食パンは、世界中、ここにしかない」
セントル・ザ・ベーカリーは、有楽町線「銀座一丁目駅」から徒歩1分のところにある。運営は、フランスパンの専門店、VIRON(ヴィロン)などを展開している「ル・スティル」(東京都渋谷区)と、「美瑛ファーム 美瑛放牧酪農場」(北海道上川郡)。昼はカフェとショップで営業しているが、夜はVIRON(ヴィロン)のパンとワイン、チーズやシャリュキュトリ(肉の加工品)を楽しめる食堂「ラ・カンティーヌ サントル」になる。
なぜこうした店をオープンさせたのか。
「今、食パンは安売りのものだと1袋70〜80円からある。そのため食パンに対して『安価だけれど、味はそれなり』というイメージを持っている人が多い。しかし材料と技術をしっかり見極め、とことん追求して作れば、ここまでおいしい食パンができるということをわかってもらいたいと考え、この店を作った」(セントル・ザ・ベーカリー店長 高田淳氏)。
ターゲットは、「少しくらい高くてもおいしいものを食べたい」と考えている女性。男性ファンも増えていて、1人で週に3回来店する男性客もいるそうだ。
ショップとカフェで提供しているパンは、北海道産小麦「ゆめちから」を使用した「角食パン」(840円)、北米産小麦の角型「プルマン」(840円)、山型の「イギリスパン」(735円)の3種類のみ。
トーストしたときに最もおいしさが出せるのが、合計36時間かけてゆっくり熟成させている「イギリスパン」。さまざまな工夫をして国産小麦ならではの繊細な甘味を引き出しているため、耳の部分までやわらかくおいしいのが「角食パン」。これはもっちりした食感と小麦特有の甘さがあり、焼かずに生のまま食べてもおいしいという。生でもトーストしてもどちらもおいしいのが、力強く安定したうまみがある北米産の小麦を使用した「プルマン」だそうだ。
「これだけ手をかけて作っている食パンは、世界中、ここにしかないはず」(高田氏)と、胸を張る。
自分でトースターを選ぶシステムにびっくり。食べてさらに仰天!?
3種類の食パンのうち、2種類を選べる「セントル トーストセット」を食べてみた。
「エシレバター」、「美瑛放牧酪農場産バター」、「国内メーカーのバター」の3種類が食べ比べできる「バター食べ比べセット」(1050円)、3種類のジャムのほかはちみつ、レモンペースト、チョコレートクリームなどがついている「ジャムセット」(1260円)、どちらも味わえる「ジャム+バターセット」(1575円)があり、どのセットにも美瑛の放牧酪農場産の低温殺菌牛乳が付く。
とまどったのは、トーストセットのシステム。焼いた状態で提供されると思いきや、店内にはポップアップ式のトースターが約10種類、20台ほど用意されていて、好きなものを自分で選んでテーブルに運び、足元にあるコンセントにつないで自分で焼くようになっている。
せっかくなので、バターとジャムすべてが味わえる「ジャム+バターセット」を食べてみた。運ばれて来た時点でもう、イーストを感じさせる甘い香りが鼻を直撃。まず生のまま食べてみたが、特に国産小麦を使用した角食パンの、絹のようなきめの細かさ、しっとり、ふんわり、もっちりした食感に驚いた。噛みしめると小麦そのものの甘さ、イーストの香りが口中に広がり、あまりのおいしさにうっかり生で全部食べてしまいそうになった。
「生で全部食べたい」という気持ちを抑えてトーストしたが、しかし焼くと、そのおいしさがさらにアップしてまた驚いた。生で食べたときよりも、パンの個性もバターの違いも、くっきりと立ち上がるような気がする。パン好きの同行者も、「今まで食べたどんな食パンとも、まるで違う」と大興奮。この価格は決して高くないと意見が一致し、2人とも帰りに2斤サイズの食パンを購入した。
食パンの地位向上の発信基地に
別の日に家人と訪れ、今度はサンドイッチを注文。
サンドイッチは、切り分けやすくするために1日くらい置いたものを使用するのが一般的だが、セントルでは見た目や作りやすさよりも焼き立てのパンの風味を優先し、焼き立てパンで作っている。「BLT」と「フルーツサンド」を食べたが、特にフルーツサンドが絶品。パンに含まれるほんの少しの塩味がフルーツとクリームの甘味を引き立て、焼き立てならではのやわらかさがフルーツとよくなじみ、家人も大感動の味だった。BLTのパンは軽くトーストしてあるが、焼き立てでやわらかいため具が飛び出しやすく、味は申し分ないものの少々食べづらかった。卵など、パンと固さが近いもののほうが、焼き立てのパンとの相性がいいのかもしれないと感じた。
その日は週末のちょうどランチタイムだったため、席が足りず行列ができるほどの盛況だった。これだけ売れているのであれば、今後は多店舗展開をするのかと思いきや、店舗を増やす予定は今のところないとのこと。「この業態はここだけ。この店を、食パンの地位を上げるための発信基地にしたい」(高田氏)という。
(文/桑原 恵美子)
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