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中国「景況感改善」に疑惑 金融市場、9月末に混乱? 問題先送りでリスク増大(ZAKZAK) 
http://www.asyura2.com/13/hasan82/msg/280.html
投稿者 かさっこ地蔵 日時 2013 年 9 月 03 日 22:04:43: AtMSjtXKW4rJY
 

大気汚染で煙る北京の都市部。中国経済の先行きもいまだ視界不良だ(ロイター)


http://www.zakzak.co.jp/society/foreign/news/20130903/frn1309031810005-n1.htm
2013.09.03


 中国の経済危機は本当に去ったのか。製造業の景況指標が改善の兆しをみせ、政府当局者は経済成長率7・5%の目標達成に自信を見せる。しかし、楽観論を信じ込むのは危険だ。専門家は「問題を先送りすれば危機はさらに大きくなる」と警告、財テク商品「理財商品」の償還期限が集中する9月末や、理財商品に関する金融当局の報告が出てくる年末に向けて市場の混乱も懸念されている。

 英金融大手HSBCが8月22日に発表した8月の中国製造業購買担当者景気指数(PMI、季節調整済み)速報値はサプライズとなった。事前の予想の平均である48・2を大きく上回る50・1を記録、4カ月ぶりに50を上回った。9月2日発表の確定値も50・1だった。

 1日には中国国家統計局と中国物流購買連合会が8月のPMIを発表したが、こちらも前回の50・3からさらに改善した51・0で、事前の予想を上回る結果となった。

 PMIは景気の先行きを示す指数で、企業に受注や生産の状況をアンケートして算出する。50を上回ると景況感の改善を、下回ると悪化を意味し、国内総生産(GDP)との相関関係も強い。

 国家統計局とHSBCは別々にPMIを算出しているが、国家統計局版の調査対象は大企業中心で、景況感が良い方向に数値が振れやすい傾向にある。市場関係者が首をかしげたのは、中小企業中心で景気の実態をより反映しているとみられてきたHSBC版のPMIまで不自然なほど大幅に改善したことだ。

 第一生命経済研究所の西濱徹主任エコノミストは「HSBCのPMIは、国家統計局のPMIより信頼性があるとされるが、今回は不自然な動きで、半信半疑の数値と言わざるをえない」と語る。

 それでは中国経済はどこが変わったのか。西濱氏は指標の中身を分析してこう指摘する。

 「内需が回復しているが、その要因は国内投資一辺倒で、消費が増えているのかは疑問だ。輸出関連の受注や雇用も悪化したままで、このまま生産を拡大して大丈夫なのか懸念は残る」

 中国が作れば作るほど儲かったのは過去の話。供給過剰に苦しんでいるはずの中国がさらに供給を増やし続けるという構図で、景況感が改善といえるのか、はなはだ疑問だ。

 経済成長についても中国当局は強気だ。中国国家統計局の盛来運報道官は8月26日の記者会見で、2013年の国内総生産(GDP)成長率を前年比7・5%増にする目標は達成可能だと語った。

 今年に入って以降の急減速で7%達成すら危ういという観測が広がっていた。李克強首相は当初、経済構造の改革を重視する「リコノミクス」を掲げ、成長率ありきの政策運営をしない方向性を示していたが、7月下旬に「経済成長率は7%がボトムラインであり、それを下回る成長率を容認することはできない」と述べたと伝えられた。これをきっかけに、経済成長を維持する方針に回帰したのか。

 ただ、国家統計局が掲げる7・5%というのは相当ハードルが高い。

 前出の西濱氏は、「実現するには、年後半は相当景気を加速させないといけない。これを短期的にやるには景気対策を打つしかないが、過剰な在庫や設備の問題を改革しようという李首相の方針と逆行することになる」と危惧する。

 中国経済に詳しい企業文化研究所理事長の勝又壽良氏は「中国は7・5%成長を達成するために、鉄道建設にカネを出そうとしているが、これから作られるのは明らかな不採算路線で、新たな不良債権になるだけだ」と語る。

 中国を揺さぶる「影の銀行(シャドーバンキング)」問題もくすぶったままだ。金融当局は焦げ付きリスクがある高利回りの金融商品「理財商品」の規制を始めたにもかかわらず、大手銀行の理財商品の残高は増え続けており、銀行の不良債権問題も深刻度を増している。

 市場関係者の間では、「理財商品の償還期限が集中する9月末、そして理財商品について調査している金融当局の報告が出てくる年末に向けて金融市場が混乱する可能性がある」(国内証券アナリスト)との見方もある。

 前出の勝又氏は「中国政府は短期金利が急騰しないように金融市場にカネを流すだろうが、本質的な問題は何も解決していない。成長率を維持しようとして問題を先送りすればするほど、リスクも大きくなる」と警告する。


 

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コメント
 
01. 2013年9月04日 02:29:28 : ZPWRfxEoWA
中国政府は強い。国家の損失はすべて人民に転嫁すれば解決する。主流派が関係する
あらゆる機関には中国元を印刷して配れば良い。天安門事件を思い出せ。自由主義国家
とは違う。共産党に逆らう人民や反主流派は踏み潰せば良い。
毛沢東は大躍進や文化大革命で8000万人の中国人を殺した。それでも中国はビクとも
しなかった。カネ次第で人民解放軍が1億や2億の反逆中国人は殺してくれる。その為
の軍拡だ。
人民解放軍は強い。チベットや東トルキスタン、内モンゴルなど武器を持たない丸腰の
人々には機関銃やAK47の一斉掃射で連戦連勝だった。武器を持って逆らったベトナムに
は負けたけど。

02. 2013年9月04日 09:36:23 : niiL5nr8dQ
中国最西部まで広がる人手不足の深刻さ

新疆で地下街を運営する辰野元信・新疆辰野商貿董事長に聞く

2013年9月4日(水)  宮澤 徹

 中国景気が減速する中、内陸がこれからの成長の原動力になるとの見方がある。では日本企業にとってビジネスチャンスが広がっているのか。もちろん、そうした面はあるが、乗り越えなければならない問題も多い。新疆ウイグル自治区の中心地、ウルムチで15年前から地下街のショッピングセンターを運営する新疆辰野商貿の辰野元信董事長に聞いた。
(聞き手は宮澤 徹)
ウルムチと聞くと日本人はシルクロードや民族問題のイメージが強いですが、ビジネス面ではあまり馴染みがありません。


辰野 元信 氏
日本オラクルで8年間営業・ビジネスプラン作成の部署を経た後、イスラエル・デジタルペンの副社長兼日本販社社長に就任。亡き父の後を継ぎ、2009年に今のウルムチショッピングセンターの代表取締役に就任。現在、インドネシア市場を狙った新規事業も立ち上げ中。
辰野:中心部へ日本人を案内すると、多くの方はだいたい第一声で「普通に都市ですね」と言います。砂漠の上に月が出て、ラクダが歩いているイメージを持つ人が多いですが、実際はもう上海ですと言っても分からないぐらいです。人口は15年前の3.5倍で、車も増え、渋滞も問題になっています。

 中国政府はウルムチの公共投資にかなりの力を注いでいます。最近は地下鉄の工事も始まりました。2018年に完成の予定です。来年には北京と結ぶ高速鉄道も完成すると言われています。ネックだった物流がどんどん改善され、これから急激に伸びるマーケットであるのは間違いないでしょう。ガスなど資源も豊富で、エネルギー関係で儲けた富裕層も増えてきました。

人件費高騰に苦しむ沿岸部のような問題はありますか。

辰野:実はそれが頭の痛い問題なのです。先ほど述べたような発展に伴い、人件費が急騰しています。年20%増ぐらいで推移してきて、今は上海と同程度です。相当な高給を提示しないと来てくれません。働き手がとにかく足りていません。

 流通業でも、月給3000元(約48000円)以下だと人は来てくれず、月給はさらに上がる気配があります。社員をせっかく研修をしても、他社に引き抜かれてしまうこともあります。春節(旧正月)で実家に帰ったら、もう帰ってこないこともあります。沿岸部の企業の悩みとまったく一緒です。

日本だから、という売り方はやめた

15年前から事業を始めていますが、日本式のサービスや商品は通用しましたか。

辰野:当時は中国に出るといっても、みんな上海など沿岸部ばかりでした。ウルムチには外資がほとんどなかったので、市政府は諸手を挙げて歓迎してくれました。「成功するなら辰野に乗れ」というスローガンまでできたくらいです。

 日本並みの品質と価格とファッション性を持ち込み、高い評価を受けました。上海や香港でしか買えなかった商品をウルムチでも買えるということで、かなりセンセーショナルな話題になりました。そのころ中国にはサービスという概念すらないときですから、店員と目が合って、ニコッとされること自体が驚きだったようです。しかし、状況は変わりました。

やはり反日の打撃でしょうか。

辰野:正直言って、中国では地方に行けば行くほど反日の機運が高まる傾向にあります。上海などは国際都市なので、日本企業も日本人のこともよく知っており、そんなに影響はないでしょう。ただ、新疆では日本に触れる機会が少ないので、連日テレビで反日番組を放映されると、良いイメージを持たない人が増えてくるのはしかたがないかもしれません。

 私たちも、反日で店を壊されるということはなかったですが、日系だから買いたくないという人が少しはいて、売り上げにもそれなりに影響しました。これがずっと続くとまずいな、と思っていました。幸い、現在は昨年の売り上げに戻っており、ホッとしています。

 以前は、日本製品の品質はいいというイメージがあったので、それを利用したブランド戦略をとってきました。しかし今は、日本だから、という売り方はやめています。

原因は反日だけではない

反日が薄れれば解決する問題でしょうか。

辰野:日本企業がここで事業をする場合の問題は、反日だけではありません。日本企業のスピードの遅さにもあります。4、5年前にはウルムチの企業から、日本の大きな企業を紹介してほしいとよくお願いされました。しかし、最近は日本企業をもう連れてこないでくださいと言われるようになりました。

 どうしてですかと聞いたら、欧米企業ならオーナーが飛行機で飛んできて、その場で商談がまとまり、次の日には入金される。それなのに、日本企業は決断が遅いし、なかなか投資に踏み切らないと言うのです。こんなゆっくりやっていたら共倒れになってしまう、と敬遠している面があるようです。

 欧米や上海、北京から企業が続々と進出しているので、日本企業に頼りたいというニーズがだんだんなくなっています。

今から巻き返す手はありますか。

辰野:これからも伸びていく市場を取りにいくのなら、もっと事業のスピードを上げることが大切ではないでしょうか。それに、日本であろうがどこであろうが、モノやサービスの本当のよさで勝負すれば、それを評価する客が来るはずです。

 日本色は消して、グローバルイメージを前面に出せば、まだまだチャンスは広がっていると思います。仮に日本への期待は薄くても、とにかく出て行って、いいものやサービスを提供し、シェアを早めに取ってしまう。こうした積極性がないと、うまくいかないでしょう。

漢族とウイグル族の民族問題も気になります。

辰野:もちろん、今後も状況は注視していく必要はあります。ただ、中心部での大規模な暴動はここ最近では起きていません。私も出張ベースで行きますし、現地に日本人スタッフも常駐しています。基本的には安全です。以前暴動があったせいで、警備は大幅に増強されていますし。

 政府は他の地域との経済格差に問題があると見て、ウルムチでの公共投資をものすごく増やして全体の経済を底上げし、不平不満を減らそうとしています。その結果、経済成長が加速しているという面もあるようです。

このコラムについて
キーパーソンに聞く

日経ビジネスのデスクが、話題の人、旬の人にインタビューします。このコラムを開けば毎日1人、新しいキーパーソンに出会えます。

 


 

 


中国が有望な市場であることに変わりはない

チャイナリスク再考(第1回)

2013年9月4日(水)  黄 リン

 企業のビジネスを巡って日々流れるニュースの中には、今後の企業経営を一変させる大きな潮流が潜んでいる。その可能性を秘めた時事的な話題を毎月1つテーマとして取り上げ、国内有数のビジネススクールの看板教授たちに読み解いていただき、新たなビジネス潮流を導き出してもらう。
 9月のテーマは、日本企業が直面する「チャイナリスク」。2012年9月11日に日本政府が尖閣諸島を国有化してから1年。中国国民の間でくすぶり続ける反日感情は、現地に進出している日本企業の事業活動にどのような影響を及ぼしているのか。また、賃金の高騰などによって、「世界の工場」としての中国の位置づけは変わりつつあると言われるが、実態はどうなのか。国内ビジネススクールの教壇に立つ4人の論客がリレー形式で登場し、持論を披露する。
 トップバッターとして登場するのは、神戸大学大学院経営学研究科教授で、マーケティング・流通システムを専門とする黄磷(こう・りん)氏。チャイナリスクの本質と、それを踏まえて日本企業が取るべきリスクマネジメントのあり方について、2回にわたって論じる。
(構成は峯村創一=ライター)
 昨年9月の尖閣諸島国有化をきっかけとして、日中関係が緊張し、反日デモが起こって、中国国民の対日感情が悪化したため、日本企業が中国国内でビジネスを行うことに伴うリスク、いわゆる「チャイナリスク」がクローズアップされるようになっています。

 また、労働者の賃金の上昇や、中国経済の減速が明らかになり、生産拠点や市場としての中国の魅力も薄れてきたのではないかという声もあります。果たしてこれは本当でしょうか。

チャイナリスクに過敏な日本企業

 日本企業は、総じて中国の政治情勢や社会変動などによるカントリーリスクに対し敏感な傾向があります。私が中国に現地法人を設立している日米欧企業を対象に行った2000年の調査では、近い将来(5年以内)、中国の政治や社会の変動が現地法人の経営に大きな困難をもたらすのかという質問に対して、その可能性が「大きい」または「非常に大きい」と回答した日本企業の比率が26%と、欧州企業の11%と米国企業の22%より高い結果が出ました。

 その後、小泉純一郎政権時代の2005年に、反日デモが中国各地で起こり、一部が暴徒化したことをきっかけとして、日本企業はさらに中国におけるカントリーリスクに神経を尖らせるようになっていきました。

 そして、2年前のジェトロ(日本貿易振興機構)海外ビジネス調査の結果を見ると、52.7%の日本企業が、中国の政情不安が気になると答えています。

 さらに、ジェトロが2013年1月に実施した調査では、実に64.6%に上る日本企業が、日中間の現在の状況に非常に不安を感じ、中国の「政情リスクに問題あり」と回答し、危機感を募らせています。

 これらの数字を見れば、「あんな怖いところへ進出するべきじゃない」「もう中国での事業をやめよう」と、日本企業が一斉に中国から撤退しようとしているような錯覚に陥るかもしれません。

中国への投資が増え、現地法人業績の見通しが改善

 しかし、各種の最新調査を見れば、このような日本企業の心理と、実際の行動、現地市場の状況との間には、大きな隔たりがあることが分かります。

 2013年上半期の日本から中国への投資は対前年比で14.4%増の47億ドルと、2ケタの伸びを維持しました。日本企業の対外投資が拡大傾向にある中で、日本からの対中投資額が減ることはないだろうと見ています。

 またジェトロの日系企業活動実態調査、経済産業省の海外現地法人四半期調査、帝国データバンクの景気動向調査の結果を見ても、2012年10月から今年3月までの日系現地法人の売上高実績は十数%の大幅減を記録したものの、売上高の見通しも営業利益見込みも4月以降大きく改善しています。

 また、中国の経済成長率がスローダウンし、従来の10%台から7.6%に落ちたことが問題視されていますが、日本を含む先進国と比較して、7.6%というのは十分な高成長を示す数字だと言えます。中国が依然として有望な市場であることには変わりありません。

 中国では現在、2011年からスタートした国の「第12次5カ年計画」の3年目が進行中です。「5カ年計画」は、当初の2年間は助走期間であり急激な成長は見られませんが、3年目から成長が加速し、4年目には余った予算をどんどん投資していくというサイクルがあります。

 今回の中国経済のスローダウンは、始動したばかりの習近平政権が政治的に安全運転を行わなければならないという要因もありますが、内需型の経済成長への転換を図るという変化によるところが大きいでしょう。

 ですから、チャイナリスクについて議論する際には、雰囲気や一部の極論に惑わされることなく実態とデータに基づいて判断するとともに、これまで中国がたどってきた経済発展の歴史を踏まえて、将来を展望することが重要です。

戦略転換に成功した企業、失敗した企業

 まずは、中国がこれまでたどってきた市場開放の軌跡を簡単に振り返ってみましょう。

 1979年からケ小平氏が推し進めた「改革開放」路線の下、社会主義体制のまま市場経済へ移行するという難しい挑戦が始まりました。

 2001年に中国はWTO(世界貿易機関)に加入。2006年には市場開放をほぼ達成し、自由貿易体制への仲間入りを果たします。

 2006年から「第11次5カ年計画」がスタート。GDPの年平均成長率を7.5%とし、1人当たりGDP(国内総生産)を2000年比で2倍にする。エネルギー効率を20%高めるなどの政策目標が定められました。ところが、本計画3年目の2008年に、リーマンショックが世界中を襲います。中国政府は4兆元の財政出動によって経済成長を支えました。

 もっとも、先見の明があった多くの日本企業は、リーマンショック以前に、いち早く戦略転換に着手していました。生産拠点としての中国から、消費市場としての中国へと見方を改め、中国国内で売り上げを拡大し、シェアを高めていくための施策を実行したのです。

 例えば、従来の生産拠点としての現地法人を再編したり、中国の地域統括会社の本社機能を強化したりして、中国全土に販売網を広げ、マーケティング活動を強化して現地市場を攻略しようとしていました。

 一方、労働集約型の輸出加工、例えば、広東省で靴を作って輸出していた企業は、リーマンショックのあおりをまともに受け、およそ3000社のうち実に約7割が工場閉鎖に追い込まれるという壊滅的な状況に陥りました。

 追い打ちをかけるように、労働コストも2008年以降上昇が見られるようになったため、中国だけでなくベトナムやバングラデシュなどにも生産拠点を作ってリスク分散を図ろうという、いわゆる「チャイナプラスワン」の議論がこの頃から始まります。

粗雑なリスク論は無意味

 ここで明確にしておかなくてはならないのは、この時、輸出加工型企業が直面したリスクは、実はチャイナリスクではなく、ビジネスリスクと呼ぶのが正しいということです。


神戸大学大学院経営学研究科の黄教授(写真:山田 哲也)
 ビジネス環境が変化したために、労賃の上昇が始まった沿海部から、労賃の安い内陸部へと中国国内で生産拠点を移転するか、それとも国境を越えてベトナムに移転するかは、個々の企業の合理的判断に基づく選択の範囲です。

 本来、チャイナリスクとは、中国におけるカントリーリスクのこと。つまり一企業では対応しきれない政治や社会の情勢などによるリスクを指します。日本国内の一般的な議論は、そのあたりを混同しているために、混乱を招いていると思います。

 同様に、中国に進出している企業を十把一絡げに論じていることも意味がありません。

 現在、中国へ進出している日本企業は1万5000〜2万社あり、その4〜5割が製造業、約3割が卸業・貿易業などのB to B(企業間取引)、残りの約2割が中国国内市場をターゲットにしているサービス業です。

 リスクについて考える際には、中国に生産拠点を置いている輸出加工型企業と、中国市場をターゲットとしている企業との違いを意識する必要があります。

真のチャイナリスクとは何か

 では、ビジネスリスクの枠に収まらない、本当の意味でのチャイナリスクとは何でしょうか。

 それは、他国とは大きく事情が異なる中国市場の特異性です。英国も米国も、そして日本も100年や200年をかけて今日の成熟した資本主義市場を築いてきました。一方、中国は、社会主義計画経済から脱却してわずか30年しか経っていません。

 私はこの30年の中国の急激な経済成長を「圧縮成長」と呼んでいますが、様々なプロセスを圧縮して経済が発展し、消費市場を拡大しているため、ビジネス環境の変化が非常に激しい。1人当たりGDPは約6000ドルの中進国以下ですが、沿海部の一部地域では既に2万ドルを超え、先進国レベルに達しています。すなわち、沿海部と内陸部、農村と都市の格差が非常に大きい。

 中国市場の持つもう1つの特異性は、国土が広大であることです。ロシアを除いた欧州大陸より中国の方が広いと聞けば、そのスケールがお分かりいただけるでしょう。制度は全国一律であることが前提の日本とは異なり、各地域がそれぞれ独立して法律や制度を作っているために、地域による多様性が極めて高い。そういう意味で、リスクの高いマーケットであるわけです。

今後10年、中国は7%台の成長を維持し続ける

 中央政府の方針が決まると、各地方はその方針に沿ってそれぞれ特色ある施策を取り、成長率目標を達成していく。そこに、中国の社会主義市場経済ならではの強みがあります。

 2011年から始まっている「第12次5カ年計画」において、中央政府は、従来の成長至上主義を改め、バランスの取れた持続可能な発展を目指すことを方針としています。実質GDPの成長率も、7%台と低めに目標設定しています。過剰投資を抑えるとともに、低付加価値品の輸出依存から脱却して内需を拡大し、沿海部と内陸部、そして都市部と農村部の格差を是正するなど、様々な政策転換を行っています。

 以前の中国では、中央政府が目標とする成長率を7.5%に設定していても、地方政府が貪欲に成長を追求するため、結果として10%を超えてしまうといった「スピード違反」がしばしば見られました。

 しかし、現在では、中央政府が地方政府に対して、経済成長率以外にも社会問題や環境問題への対応も含めた指導と人事評価を行うようになっています。

 従って、中国は今後も安定した経済成長を続けていくでしょう。今年6月に、マクロ経済の専門家を中国から神戸大学に招いて、今後の中国経済について議論しましたが、彼らの間でも「中国は、今後10年間、7%台の成長を続けていくだろう」という見方が主流でした。

リスクを見極め、リターンにつなげる

 ただし、リーマンショック後、中央政府が4兆元の財政出動によって一時的に経済成長を押し上げたことによる副作用は、現在も尾を引いています。中国市場は従来の輸出型の成長、あるいは投資を中心とした成長では限界に来ているということが、2008年頃から明確になりました。

 今後は、輸出型と投資型を中心とした経済成長から、内需型の成長へ転換を果たさなければなりません。これは、そうたやすく転換できるものではないことは、このテーマの研究者としてよく承知しています。

 しかし、過去30年間「中国経済は崩壊する」と言われ続けながら、次々と目の前に立ちふさがる試練を乗り越えてきたことは、紛れもない事実です。リスクのあるところには、大きなビジネスチャンスがあります。

 トヨタ自動車もダイキン工業も、イオンもユニクロを展開するファーストリテイリングも、1年前の尖閣問題で反日感情が高まったときにも、中国で積極的に事業展開する姿勢を変えませんでした。

 世界中の企業が、中国市場のリスクをマイナスとして評価するのではなく、事業の機会として冷静に見極め、そのリスクをコントロールすることで、大きなリターンの獲得を狙っています。韓国企業、ドイツ企業や米国企業など海外勢は日本以上の勢いで対中投資を再開しています。

 そこで問題になるのが、中国に進出している日本企業のリスクに対する考え方やリスクマネジメント手法です。次回は、その点について論じていきたいと思います。

(次回は明日に黄教授の論考の後編を公開します)

このコラムについて
MBA看板教授が読むビジネス潮流

 企業のビジネスを巡って日々流れるニュースの中には、今後の企業経営を一変させる大きな潮流が潜んでいる。その可能性を秘めた時事的な話題を国内有数のビジネススクールの看板教授たちが読み解き、新たなビジネス潮流を導き出していく。


03. 2013年9月04日 10:11:20 : niiL5nr8dQ
もう一度、企業業績から中国景気を読み解く

勢いはないが、落ち着きを取り戻した?

2013年9月3日(火)  張 勇祥

 6月に中国企業の業績から景気を探る試みをしてみたところ、お叱りを含めていくつかご意見をいただいた。それに悪乗りするわけでもないが、上半期(1〜6月)の数字もおおむね出揃ったので似たようなことを繰り返してみたい。

 8月分のマクロ統計データが出るタイミングではあるが、監査や投資家の目が光る企業業績を見ることで信用度を補完するという狙いは同じだ。

 まずは前回と同じ企業を取り上げていきたい。

「李克強銘柄」、発電と貨物輸送は横ばいどまり

 電力大手の華能国際電力。1〜6月の発電量は前年同期比で0.46%の減少だった。1〜3月期は2.44%のマイナス。会社側は景気減速と並んで、環境負荷を減らすよう政府からの要求があったとしているが、どのみち良い数字ではないのは明らかだ。ただ、4〜6月に限れば、落ち込みは緩やかになっているようにも見える。

 高速道路の江蘇寧滬高速公路。上半期の売上高は1.6%のマイナス。1〜3月期の発表と同様、春節(旧正月)期間中の通行料を減免した影響が大きいとしているが、車両の通行量そのものも横ばい圏という。交通運輸省が公表した上期の貨物取扱量(鉄道、道路、空運など含む、トンキロベース)は3.8%増。誤差の範囲と見るかは判断がつかないが、勢いがそれほどでもないことは分かる。

 李克強首相が重視すると言われているのが電力、貨物の荷動き、そして銀行融資。残る1つを中国建設銀行で確認すると、6月末時点の融資額は2012年末に比べ7.8%増加した。これは中国政府、中国人民銀行が掲げる通貨供給量の増加目標(13%)にほぼ沿った数字だろう。

 中国経済のリスク要因であるシャドーバンキングについてはあまり情報がないが、あえて言えば、理財商品の販売で52億元弱と円換算で800億円に上る手数料収入を得ていることが目を引く。販売額のどの程度の手数料を銀行側が受け取っているかは分からないし、残高に応じた収入もあるかもしれないが、仮に販売手数料を3%とすると、1700億元(約2兆7000億円)もの理財商品を建設銀行1行が半年の間に売ったことになる。

 鉄鋼大手、宝山鋼鉄は1.8%の減収、純利益は6割減だった。地方政府が主導する増産プロジェクトによる需給の崩れに悩む同社。「大手・中堅鉄鋼メーカー68社を合計した純利益は6月に初めて赤字に転落した」と嘆き節も堂に入っている。中国アルミの赤字続きも変わらないが、1〜6月期の最終赤字は6億元(約96億円)余りと前年同期より8割縮小した。海外販売が回復したことが主因だとしているので、米国の景気回復などの恩恵を受けているのかも知れない。

 ちなみに、中国「石油閥」の巣窟として、前トップの蒋潔敏氏はじめ幹部が相次いで取り調べを受けている中国石油天然気(ペトロチャイナ)は売上高、純利益ともに5%台の伸び。中国はガソリンなどの小売価格を実質的に統制しているため、原油価格が急騰した場合に利ザヤが圧迫されることがある(その後、政府から補助金を受け取ったりするが)。足元では原油の価格上昇はそれほど急ではなかったこともあって、まずまずの成績になったようだ。

 やや強引に「李克強銘柄」、および素材、資源各社の決算を見た。全く冴えないし、成長の鈍化をまざまざと示しているのは間違いない。これらの銘柄が投資対象になるかと問われれば大きな疑問符が付くが、景気を見通す材料とした場合には、少なくとも最悪期を脱しつつあるようにも読める。もちろん、景気がつるべ落としに悪くなっている状況ではないというだけで、かつてのように2ケタ成長が期待できる状況では全くない。

弱いはずの消費は健闘

 続いて、自動車などを含めた消費財。青島ビールは上半期だけで458万キロリットル(前年同期比9.6%増)のビールを販売した。これは日本市場の2012年通年(ビール類で555万キロリットル)とそれほど大きな違いはない数字だ。しかも、高価格品の割合が増えたことで売上高は11.7%増えた。贈答品として使われる高級白酒メーカーは振るわない一方、気軽に飲むビールは習近平・国家主席の倹約令にもかかわらず伸びている格好だ。

 紙おむつなどサニタリー大手の恒安国際の1〜6月期は15%の増収、純利益は14%伸びた。紙おむつは競争が激化しているが、ティッシュペーパーなどの需要が単純に伸びているのだという。粗利益率は45%台と世界でも屈指の水準だ。

 前回、高級品の鈍化を指摘した即席麺の最大手、康師傅(カンシーフ)はどうか。もう1つの柱である飲料は3割近い伸びなのに対し、即席麺は6%増どまり。カップ麺がやはり6%台の伸びなのに対し、高価格帯の袋麺は2%弱の増収にとどまる。ROE(株主資本利益率)は2012年通年が20%近い水準なのに対し、2013年1〜6月期は15%台。ビールと即席麺の購買層にどれほどの違いがあるかは甚だ疑問ではあるが、「ビールを飲める層」はまずまずで、「カップ麺をよく食べる層」は収入の伸びがそれほどでもないのかもしれない。

 自動車は相変わらず堅調だ。上海汽車の1〜6月期の販売台数は257万台。前年同期比で15%台の伸びだ。もちろん独VW(フォルクスワーゲン)や米GM(ゼネラルモーターズ)との合弁が主力なので上海汽車そのものの実力は割り引いて考える必要がある。しかし、少なくとも自動車市場の底堅さは認識する必要がある。中国の自動車市場はここ数年、年2000万台の壁に跳ね返されてきたが、上海汽車は今年、2100万台に届くという強気の見方を示している。

 ここからは数社、新しい企業を付け加えたい。中国のマンションデベロッパーと言えば万科企業。1〜6月期の売上高は413億元(約6600億円)と前年同期比で35%近く増え、純利益は22%伸びた。創業者で董事長を務める王石は、アリババ創業者の馬雲(ジャック・マー)などと並ぶ立志伝中の人物で、過去にも不動産ミニバブルの崩壊に合わせてブレーキをかけるなど絶妙な経営手法を見せてきた。米格付け会社のムーディーズやS&PからトリプルB格の格付けを取得するなど手堅い経営にも定評がある。その王石がアクセルを踏み込んでいるうちは大丈夫という奇妙な空気も漂うほどだ。

経済のサービス化は一層進む

 携程(シートリップ)は中国の航空券・ホテルなどのネット予約最大手だ。一言でいえば楽天トラベルの中国版。実際、楽天も出資していた時期がある。4〜6月のホテル予約件数は前年同期比で44%増え、航空券は34%増えた。売上高は28%増だ。コミッションを大きく下げているのでシェアが上昇した面はあるが、旅行需要が弱くはないのは明白だ。

 何度か利用したことがあるが、コールセンターは拙い中国語でも丁寧に対応してくれるし、予約システムはエラーが少なく信頼できる。いざ空港に行って航空券が取れていなかったり、ホテルの予約が入っていなかったりすると中国では割と大変なので、「信用できる」ことのビジネス面のメリットは大きいだろう。

 ビジネスホテルは如家(ホームイン)がベンチマークになる。同業を買収するなど2000近いホテルを運営(フランチャイズを含む)、新たに200カ所の開業を現時点で予定している。4〜6月期の売上高は10.5%の増加で、キャッシュフローに近いEBITDAも2割伸びている。

 最後に騰訊(テンセント)。中国のインターネットサービス大手で、時価総額は百度(バイドゥ)や日本のヤフーをしのぐ。かつてパソコンのチャットソフト「QQ」で市場を風靡したが、今はスマホ向けの微信(WeChat)で4億のユーザーを抱えるとされる。まさに中国版「LINE」で、月に1度以上の利用があるユーザーだけでも2億3000万人に上る。

 テンセントの1〜6月期は売上高が38%増の279億元(約4460億円)、純利益が77億元(約1230億円)。繰り返しだが、半年の数字だ。交流サイトの利用者に対しオンラインゲームや電子商取引など幅広いサービスを提供し、まさに全方位で稼いでいる。

 シートリップやテンセントは既に最大手の座を揺るぎないものにし、経営も実に洗練されている。ピンキリのピンで、すべてのネット系企業がこうだとは言い切れない。しかし、中国経済が全体としてはサービス化の方向に向かっているのは間違いない。すべての人が恩恵を受けてはいないとしても。

 ここまで見て、結論は前回とそう大きくは変わらない。中国経済は往時の勢いはないが、ゆるやかに高度を落としつつある。(地方政府の債務問題という火種は変わらずくすぶっているが)。その中で、わずかに安定化しつつある。

 貧富の差は変わらないが、都市部の中間層による消費はそれなりだ。ネット、スマホは完全に普及し、経済はサービス化が進んでいる。

 中国経済は、少なくともあと数年は「持ちそうだ」。高齢者向けサービスや医療分野で革新的な事業を手掛ける企業が現れれば、この感触はより確度が高まるだろう。

このコラムについて
記者の眼

日経ビジネスに在籍する30人以上の記者が、日々の取材で得た情報を基に、独自の視点で執筆するコラムです。原則平日毎日の公開になります。


04. 2013年9月04日 15:33:06 : niiL5nr8dQ
コラム:中国経済復調という誤ったシグナル=武者陵司氏
2013年 09月 4日 10:57 JST
武者陵司 武者リサーチ代表(2013年9月4日)

中国ではここ数カ月、予想外の変化が起こっている。それは、複数の統計指標に改善の兆しが見られることだ。

前月比0.7ポイント上昇して51.0と、1年4カ月ぶりの高水準を記録した8月の製造業購買担当者景気指数(PMI、中国国家統計局発表)もさることながら、一番意外だったのは鉄鉱石輸入が6月の低水準から一転し、7月に過去最高の7314万トンまで大幅に増加したことだ。7月の貿易額も、輸出入ともに予想を大きく上回った。中国が最大の需要家である銅などの国際的なメタル市況にも顕著な改善が確認できる。

筆者は当初、中国経済の息切れは間近だろうと考えていた。実質経済成長率は2010年の10.4%から、11年は9.2%、12年から13年第2四半期にかけては8%台を下回り、リーマンショック直後を除き、2000年代では最低水準まで落ち込んでいた。これを受けて、モノの動きもほとんど止まり、前年比2―3割増のペースで伸びてきた貿易額は前年並みの水準まで落ち込み、6月には12年1月以来1年5カ月ぶりに輸出が減少に転じた。複数の指標が、中国の景気失速を暗示していたのだ。

それだけに、7月以降の急改善はあまりに不自然な感じがする。世界貿易が大きく上向いているならば納得もいくが、その勢いはない。投資から消費主導への中国経済の構造改革が、結果を数字で示せるような段階に入っている証拠も見当たらない。要するに、この復調は権威主義的な「官製経済」の賜物なのだろう。具体的には、インフラ整備加速など当局による各種景気テコ入れ策を見込んだ、期待先行の受注増や生産増、在庫積み増しが起こっているものと見られる。

確かに、指標を信じる限り、ただちに景気失速から経済困難に向かうことはないとはいえそうだ。パッチワーク的な国策動員によって、しばらくは安定した時代が続くのかもしれない。しかし、公的支援への期待に頼る投資主導の経済成長は、端的に言えば、「騙(だま)し」であり、持続不可能であり、何よりさらに深刻な経済困難を招来する可能性がある。以下、中国経済の真の問題点を整理してみよう。

<成長率は4%下回る可能性も>

まず、中国にとって目下最大の問題は、経済成長をけん引してきた投資の採算性が悪化するに伴い資金不足が深刻化していることである。株価の低迷に企業収益の悪化も重なって、増加し続けてきた海外からの資金流入はこのところ、勢いを失っている。

たとえば、野放図とも言える高投資の源泉となってきた外貨準備の対名目国内総生産(GDP)比率は、1980年代の1%以下から、95年10%、2000年13%、10年49%と急上昇してきたが、12年には40%へと急低下、13年前半では38%程度である。

むろん依然として高水準だが、これは非合法な資金流入によって嵩(かさ)上げされてきたためだろう。具体的には、輸出額の水増しが主な裏ルートになっていた可能性が指摘されている。つまり、実額を上回る輸出額を申告し、為替管理が厳しい中国に海外から送金していた可能性がある。中国と貿易相手国における統計上の不整合もそれで説明がつく。

この非合法の資金流入は、中国当局が今年5月に輸出統計の管理を厳格化して以降、ある程度抑制されたと見られる。輸出額が減少した6月の貿易統計はそれを反映したのではないだろうか(7月は輸出入ともに増加したことを考えると、政策期待などによって当面は糊塗できるのかもしれないが)。

ちなみに、6月下旬に上海の金融市場で短期金利が跳ね上がったが、これも金回りが悪化したことと無縁ではないだろう。もともと国際投資家の対中投資が抑制されている中で、中国人のイニシアティブによる海外からの資金導入が細った。その結果として、クレジットクランチ(信用収縮)が一気に深刻化したと考えられる。短期金利の急騰を中国人民銀行(中銀)によるバブル抑制姿勢の表れと評価する向きもあるが、それは一面にすぎない。むしろ、中銀の予想を上回る信用収縮が生じていたためと考えるべきだ。

そもそも中国の投資主導型経済は、常識的な限界を超えている。主要国の総固定資本形成の対名目GDP比率を見ると、そのいびつさがよく分かる。韓国の26.7%、日本の21.2%やドイツの17.6%、米国の15.8%に対して、中国は45.7%にも達する(12年)。固定資本形成がGDPのほぼ半分を占める計算だ。

経済合理性ではなく共産党の事情によって推進されてきた不動産投資、企業設備投資、公共投資は、その多くが不良投資化している可能性が高い。他方、過度の投資主導型成長が追求される中で資本分配率の適正化は図られず、労働分配率は異常なほど低く抑えられたままだ。富は国家と企業に集中する一方で、低所得者層が増え、都市部以外では消費力も高まっていない。

この状況は、非常に厳しい未来を暗示している。会計上の投資とは、端的に言えば、費用の資本化、つまり先送りである。将来の投下資本の回収義務、償却負担は発生するものの(つまりコストは決まっているが)、果実は不確定なのだ。

統制経済の中国の場合、需要に基づかない投資がより長期にわたり持続する可能性はあるが、永遠はあり得ない。いずれ限界に達したときは、成長率は5―7%割れどころでは済まない可能性が高い。消費は中国のGDPを4%程度押し上げているに過ぎず、投資の伸びが止まれば、一気に4%、もしくはそれ以下の水準まで落ちる可能性は十分あるのだ。場合によっては、中国経済の突然死、数十年にわたる長期停滞が起きても何ら不思議ではないということである。

実は米国もかつて20年間にわたってピークの需要を超えられないという長期の経済停滞に陥ったことがあった。1929年に540万台でピークを迎えた自動車販売台数が大恐慌を経て、その水準を超えたのは第2次世界大戦後の1949年のことだった。

むろん、消費主導型経済の米国とは単純に比較できないし、中国政府は恐らく様々な施策で市場をマニピュレート(操作)し続けようと試みるだろう。最後の頼みの綱は恐らく資産価格上昇に働きかけることだろうが、企業収益が悪化する中で、株価や不動産をいくら押し上げようとしても、限界がある。市場経済の「いいとこ取り」をしてきた中国が、市場のリベンジ(報復)を受けるのは時間の問題だと考えている。

<消費主導への脱皮は絶望的に困難>

筆者は、中国の消費主導型経済への脱皮の可能性についても悲観している。投資から消費への成長率の誘導は、減税や財政出動などで民間の消費力を喚起するケインズ的な政策によって可能になるが、中国ではそうした政策がうまくいきそうにない構造的事情がある。国営企業を中心とする既得権益層の存在である。

国営企業がインフラなど非常に重要な部分を占め、独占価格によって高い収益を得て、そこにぶら下がる形でいろいろな既得権益が広がっている。この仕組みを温存したままでは、民間主導の所得配分によって労働分配率を上昇させた日本型の持続的高度成長は実現できない。

また、戸籍制度など労働移動の制約もあって、労働力のミスマッチが国全体として調整できない点も大きな問題である。とはいえ、この国営企業改革と労働改革は、いずれも中国の特権階級の基盤そのものを揺さぶりかねない。

そうした中で現在、習近平政権が前面に打ち出しているのは、汚職摘発、あるいは「中国の夢」といった理想論だ。民主主義の強化や市場経済化の推進とは逆方向に求心力を動員しているように見える。これでは、経済構造改革は絶望的に難しいと考えざるを得ない。

<中国の地盤沈下は凶報ではない>

最後に、このように深刻な問題を抱える中国経済と、日本企業はどう付き合っていけば良いのか、持論を言い添えておきたい。突き詰めれば、その答えは、中国を生産拠点ではなく、最終需要地として扱うことだと思う。

経済成長のけん引役として消費が投資に取って代わるシナリオが期待薄だとしても、中国が巨大市場であることに変わりはない。市場的なメリットは依然として大きい。しかし、安い労働力の供給基地として期待を寄せる時代はすでに終わったということだ。中国進出のモティベーションは大きく変わる必要がある。

はっきり言って、容易にコモディティ化してしまいそうな商品を主力とする企業は、中国に本格進出しないほうが良い。圧倒的な技術優位性があり、それをブラックボックス化できる自信がある企業だけが中国に製造拠点を設けるべきだ。後はコンビニのような日本的なビジネスの仕組みが中国で根付くかどうかだろう。いずれにせよ、中国で成功するビジネスは今後ますます限定されていくのではないか。

ちなみに、中国経済の失速が世界経済にとって凶かと言えば、それは違うと考える。中国の地盤沈下は、同国が独り占めしてきた世界の供給拠点を他の地域に譲るということだ。その地盤沈下によって、他のアジア諸国やメキシコなどにチャンスが広がるということだ。これらの国は、中国やロシアのような権威主義型の経済ではなく、市場資本主義に非常にフレンドリーな新興国である。その興隆は、世界経済にとって吉報となるはずだ。

*武者陵司氏は、武者リサーチ代表。1973年横浜国立大学経済学部卒業後、大和証券に入社。87年まで企業調査アナリストとして、繊維・建設・不動産・自動車・電機エレクトロニクスなどを担当。その後、大和総研アメリカのチーフアナリスト、大和総研の企業調査第二部長などを経て、97年ドイツ証券入社。調査部長兼チーフストラテジスト、副会長兼チーフ・インベストメント・アドバイザーを歴任。2009年より現職。

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