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資料:財務省
消費税を上げたから税収が減ったと言う無茶苦茶な人々
http://bylines.news.yahoo.co.jp/ogasawaraseiji/20130902-00027760/
2013年9月2日 11時35分 小笠原 誠治 | 経済コラムニスト
突然ですが、こんな台詞を聞いたことがありますか?
それは‥「ほんまにも〜むちゃくちゃでござりまするがな」
知っています? 昔、あちゃこさんという芸人さんがいまして、その人がいつも言っていた台詞なのです。
何故、そんな話を私が持ち出すのか? というのも、私の記事対して余りにも理不尽なコメントがなされるからなのです。
私は、例えば経済政策に関して大いに議論が盛り上がることを歓迎します。どのような考え方であっても、です。消費税増税に関しても、賛成論もあり得るし、反対論もあり得る。どんなに自分と相容れないように思われる意見でも、相手が真摯に考え抜いた結果であれば、歓迎します。
しかし、昨今のネット上での議論を見ていると‥というか、議論というよりもただ批判のために批判をしているだけにしか見えないのです。いろいろ議論を闘わせることによって真実を探ろうという真摯な気持ちなど微塵も見えません。
要するに、まともに議論する気は最初からなく、自分が気に入らない議論は、ただ徹底的に批判するだけ。
でも、批判と言っても、それなりに筋が通っていれば、まだマシな方なのです。多くの意見は‥意見というよりも、ただ的外れな悪口を浴びせるだけなのです。
本日、私は何を言いたいのか?
消費税増税に反対する人々が指摘する理由の一つに、消費税を増税しても、税収が増えなければ何にもならないではないか、というのがあります。ご存知でしょうか?
例えば、消費税率を現在の5%から10%に引き上げたとして、仮にそのときに家計の消費が半分に落ちてしまったとしたら、どうなるでしょうか?
そもそもの消費総額が200兆円だったとして‥それに5%の消費税が課せられれば200×0.05=10。つまり、消費税の税収が10兆円となる訳です。
で、消費税が引き上げられた結果、200兆円の消費が100兆円に落ちたとすれば、消費税収入は、消費税率が10%に上がっても、同じく10兆円に留まるでしょう。
従って、もっと消費が落ち込むならば、消費税の税率の引き上げにも拘わらずむしろ税収が落ちることも論理的にあり得る訳です。
では、過去消費税率を3%から5%に引き上げた結果、税収がどのように推移したかを見ると、大雑把に言って、それまで6兆円程度あった消費税の税収が、増税後概ね10兆円前後で推移しているのです。
ということで、私は、増税しても、実際には税収は減ってはいないと指摘したところ、増税反対派とみられる輩が、消費税収入が増えるのは当たり前だ、などと言う訳なのです。
「は〜?」と私は言いたい。税収が減ると言ったのは、貴方がたではないのか、と。ラッファーカーブを意識して、そんなことを言ったのではなかったのでしょうか。
しかし、彼らは、増税によって景気が悪くなり、法人税や所得税が減収する、或いは、現実に大きく減ってしまったではないかと言うのです。
これおかしくありませんか? 都合の悪い事実を指摘されると、論点をはぐらかす。だって、消費税を引き上げて税収が落ちると言えば、誰だって、ラッファーカーブを意識しての議論だと思うからなのです。多分、ラッファーカーブのことを知らないのかもしれませんね。
まあ、いいでしょう。では、彼らが言うとおり、消費税を3%から5%に引き上げ、その結果景気が悪くなったから、現在も法人税や所得税が伸び悩んでいると言うのでしょうか?
もちろん、法人税や所得税は景気に連動するものですから、景気がよくなれば税収がタイムラグを伴いながらも増える傾向にあるのはそのとおり。逆に景気が悪くなれば、特に法人税の税収は落ちてしまうのです。
では、近年の法人税や所得税の減収は、皆過去の消費税率の引き上げが原因だと言うのでしょうか?
法人税の税収の推移をみてみたいと思います。
1997年4月に消費税率が5%に引き上げられる前の法人税の税収は、12〜13兆円程度ありました。それが、確かに、消費税率引き上げ後、一旦10兆円を切るまで落ち込んでいるのです。しかし、その後、15兆円程にまで回復し‥しかし、ご承知のリーマンショックがあって、6兆円台にまで落ち込み‥その後、持ち直して、9兆円程度で推移しているのが現状なのです。
つまり、幾ら今、法人税の税収が過去と比べて落ち込んでいるのが事実だとしても、消費税率の影響はとっくに終わっていると見るべきでしょう。
それに、もっと重要な事実を指摘しておきます。図をご覧ください。法人税率の推移を示しています。
消費税率が引き上げられた1997年4月以前の法人税率はご覧のとおりに37.5%であったのが、1999年以降30%に引き下げられているのです。単純に計算すれば、それで2割法人税の税収が減少してもおかしくないのです。
消費税の税率を5%に引き上げる前の法人税の税収が12兆円であったとして、それが今9兆円になっているとすれば、まあまあ理屈が合う訳です。
それに、企業の海外進出がどんどん進み、そうした海外の現地法人を利用した節税対策などが進むわけですから、益々法人税が伸びない理由にもなる。そうでしょう?
所得税の税率も似たようなことが言えるのです。近年、所得税率の刻みが簡素化されると同時に、最高税率が引き下げられる傾向にある訳ですから‥要するにお金持ちが昔と比べたら一段と優遇されている訳ですから、これでは所得税の税収が減収になるのは当然ではないですか?
それを消費税率が引き上げられたからだ、なんて根拠のない批判をする。
繰り返し言っておきますが、法人税や所得税の税収が景気に応じて波があるのはそのとおり。そして、消費税率を引き上げれば、景気にマイナスの影響を与えることもあり得る訳ですから、その結果、法人税や所得税の税収を少なくする効果を有するのもそのとおり。
しかし、その影響は、消費税の税率を引き上げることによる増収効果ほどではないのです。
そのようなことは冷静に考えれば分かりますよね? 違いますか?
まあ、そのようなむちゃくちゃな主張をする人々が、安倍さんを熱狂的に支持するので、私もまた「ほんまにもう、むちゃくちゃでござりまするがな」と言いたくなるのです。
以上
小笠原 誠治
経済コラムニスト
小笠原誠治(おがさわら・せいじ)経済コラムニスト。1953年6月生まれ。著書に「マクロ経済学がよーくわかる本」「経済指標の読み解き方がよーくわかる本」(いずれも秀和システム)など。「リカードの経済学講座」を開催中。難しい経済の話を分かりすく解説するのが使命だと思っています。
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