http://www.asyura2.com/13/hasan82/msg/207.html
Tweet |
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/38585
2013.08.30 2013年8月29日付 英フィナンシャル・タイムズ紙 JBpress
中東の標準からすると、シリアの石油産業は極めて小さい。内戦が3年目に入ろうとしている今、シリアの産油量はとっくの昔に微々たる水準に落ち込んでいる。
だが、シリア政権の責任とされている化学兵器の使用に応じて西側諸国が空爆を協議し始めると、国際指標のブレント原油の価格はわずか2日間で7ドル、率にして6%以上も上昇した。
ブレント原油は28日、1バレル117.34ドルという6カ月ぶりの高値をつけた。この原油高騰は、折しも新興国の通貨が対ドルで急落したタイミングで世界中の政府と企業、家計のエネルギーコストを上昇させている。
原油はさらに上昇すると見る向きもある。ソシエテ・ジェネラルのアナリストらは、西側が空爆を実施したらブレント原油は恐らく1バレル125ドルに達し、生産に混乱が生じたら150ドルの高値をつける可能性があると話している。
西側諸国によるシリア介入の公算が高まったタイミングは、原油市場が多くの人が予想していたよりずっとタイトな時期と重なった。
■原油市場が予想以上にタイトな時期に軍事介入が追い討ち
北米のシェール革命で供給量が急増する一方、成長の鈍い世界経済の原油需要の伸びは比較的落ち着いていることから、十分な余剰生産能力が生じるはずだった。
ところが実際は、北海やナイジェリアで相次ぎ生じた供給混乱のために、原油価格は夏中、上昇傾向をたどった。リビアではこの2カ月間で日量ほぼ100万バレルの原油生産が中断された。従業員のストライキと武装集団の活動で輸出ターミナルと油田が閉鎖に追い込まれたからだ。
「現物市場は非常にタイトで、シリアに関するニュースの見出しはまさに、市場が本気で買い持ちに動くのに必要な合図だった」。20億ドル相当のコモディティー(商品)資産を抱え、ブレント原油の一段高を見込んだポジションを取る英国の資産運用会社ハーミーズのドナル・オシア氏はこう話す。
原油市場では、シリア空爆の可能性は特に2つの国に関心を集めることになった。
1つ目はシリアと隣接するイラク。日量300万バレルの原油を生産し、世界の供給量の3%以上を占める国だ。
シリアでバシャル・アル・アサド大統領の体制と戦っているスンニ派戦闘集団は国境を越えて自由に活動している。8月半ばには、シーア派が支配するイラク南部のバスラに近いウム・カスル港の埠頭でトラック爆弾が爆発した。イラクの主な産油地域では一時的に暴力が落ち着いていたが、石油関連施設はシリアからの飛び火に脆いという不安が高まっている。
米中央情報局(CIA)の元アナリストで現在はバークレイズに勤めるヘリマ・クロフト氏は「西クルナとズバイル(イラクの2大油田)が攻撃されたら、市場にとって大惨事となる。最近の攻撃は、地理にも人の力が及ぶことを示している」と言う。
イラクのヌリ・アル・マリキ首相は28日、予想されるシリア攻撃に先駆けて、治安部隊に厳戒態勢を取らせたと述べた。
注目すべき2つ目の国はイランだ。イランの原油生産と輸出は米国主導の制裁によって著しく阻まれているものの、同国はアサド体制の最大の支援者だ。
一部のアナリストは、イランが西側の空爆に対抗してヒズボラによる報復を促す恐れがあると考えている。また、イランは核開発計画を巡る西側との対立の解決策をシリア紛争と結び付けるかもしれないし、原油タンカーの重要な中継地であるホルムズ海峡経由の輸送を混乱させる可能性もある。極端なことを言えば、イランはサウジアラビアといった湾岸産油国のシーア派のマイノリティに暴動を促すこともできるかもしれない。
エナジー・アスペクツのチーフ政策アナリスト、リチャード・ マリンソン氏は「イランが自国の裏庭と見なしている地域で同国と一番密接な関係を持つ同盟国を攻撃すれば、様々な問題に対するイラン政府の行動に影響を与える」と指摘する。
■原油高騰を正当化するには無理がある?
だが、一部の人の見るところ、こうした問題はあくまで理論上のものであり、今週の原油高騰を正当化するには無理があるという。
現物を扱う大手石油商社の幹部は、ブレント原油の上昇相場が長続きするかどうか疑わしいと考えており、「付加的な生産が影響を受ける場所がどこか分からない」と言う。
原油トレーダーらによれば、ブレント原油の上昇は少なくとも部分的には、他の資産から原油に資金が流れ込んだことが原因だという。
大手銀行で原油トレーディング部門を率いる責任者は「普段は市場に参加していない人たちが現在原油を買っている」と述べ、シリア紛争に対する西側の介入への不安で他の市場が急落しているため、株式や外貨のファンドマネジャーらが原油をヘッジとして利用している可能性があると話している。
By Ajay Makan
© The Financial Times Limited 2013. All Rights Reserved. Please do not cut and
paste FT articles and redistribute by email or post to the web.
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。