04. 2013年8月30日 02:56:32
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JBpress>海外>USA [USA] オバマ大統領、インターンに賃金を払ってください! 米国で始まった古き良き文化の崩壊 2013年08月30日(Fri) 堀田 佳男 米国で新しい動きが起きている。 9月2日のレーバーデー(労働者の日)に合わせ、ホワイトハウスのインターンたちが正当な対価の支払いを求めてバラク・オバマ大統領に直訴しているのだ。 ワシントンの省庁や議会で働くインターンの数は2万人 「私には夢がある」 キング牧師の演説から50年、米首都で集会 米国の首都ワシントンD.C.(写真は故マーティン・ルーサー・キング牧師の有名な演説から50周年を記念する式典(8月24日)〔AFPBB News〕 民間企業や官庁などでインターンとして働く学生は、米国でも基本的には無給である。今夏ホワイトハウスには約150人のインターンが働いているが、首都ワシントンの省庁や議会を含めると約2万人になる。そのほとんどが無給だ。 歴史的にインターンは無給が当たり前と捉えられてきた。職業経験を得る代わりに、組織内の業務の手助けをするというギブ・アンド・テイクの精神で、インターンが賃金を求めることは稀だった。 筆者も30年前、首都ワシントンでインターンを経験した。当時、すでにインターンは卒業するための必須過程の1つで、インターンの経験なしでは卒業できなかった。もちろん無給である。 だが今春、インターンのあり方を変える事件が起きた。6月11日、ニューヨークの連邦地方裁判所が、企業側にインターンへの賃金の支払いを命じる判決を下したのだ。 訴えを起こしたインターン2人は2010年、映画配給会社フォックス・サーチライト・ピクチャーズ社でインターンシップを行った。業務内容はコーヒー提供やゴミ収集などの雑務。後に2人は会社側に賃金支払いの訴訟を起こし、勝訴したのだ。 勝訴の背景に、ジョージタウン大学ロースクールの学生が原告側に立って会社側の支払い義務を追求したことも大きい。訴訟の国らしく、この判決で全米のインターンに勢いがつき、雪崩現象が起きている。 2日後の6月13日には大手出版社コンデナストのインターンが、「賃金は時給1ドルにも満たなかった」として提訴に踏み切った。 6月17日にはワーナー・ミュージック・グループのインターンが、やはり賃金支払いの訴訟を起こした。このインターンが同社にいたのは5年以上前の2007年10月から2008年5月で、今になっての訴訟である。 こうした流れを受け、市民活動家のマイキー・フランクリンさんは「フェア・ペイ・キャンペーン(公平賃金運動)」という組織を起ち上げ、ホワイトハウスのインターンも賃金を受給する権利があると訴えだした。 同団体だけでなく、「キャンペーン・フォー・アメリカズ・フューチャー(米国の未来に向けた運動)」という団体も、オバマ大統領にインターンへの賃金支払いを訴えている。すでに8000人の署名を集めてさえいる。 「米国には最低賃金法があるにもかかわらず、インターンに適用されないのは不適切です。オバマ大統領は最低時給賃金の引き上げを目指していますが、インターンだけに支払わないのはどうなのでしょうか」 ロンドンではインターンが突然死、過労死の疑いも 英ロンドンでメリルリンチの学生インターン死亡、過労死か バンクオブアメリカ・メルリンチの支店(ニューヨーク)〔AFPBB News〕 ただ、ホワイトハウスを含めた連邦政府は今のところ、連綿と続いているインターン文化を壊すつもりはない。それは無給インターンを経ずして正規のポストを獲ることは難しいという現実があるからだ。 実際、多くの連邦議員は、若かりし頃に議会でインターンを経験している。それが流れだった。 今夏、英ロンドンでドイツ人インターンが突然死した。バンクオブアメリカ・メリルリンチのロンドン支店で7週間の予定で働いていたモーリツ・エルハルトさん(21)は、亡くなる直前、3日連続で翌朝6時まで仕事をしていたという。 宿泊先の風呂場で死亡しているのを発見されたが、過労死かどうかは不明だ。無給インターン問題と並んで、インターンの労働環境が見直される契機になりそうである。 ただ無給インターンを受け入れる側にも法的な論拠がある。米労働省が定めた「公平労働基準法(FLSC)」のガイドラインには、民間企業が一定条件を遵守すればインターンへの支払い義務は生じないと明記されている。 例えばインターンが正規社員の立場を脅かさないとか、企業はインターンの活動から利益を得てはいけないといった内容だ。インターンからビジネス上の恩恵を受けない限り、無給インターンを使用できることになっている。 日本でもインターンが実習生としてではなく、労働基準法第9条の労働者とみなされる場合は、雇用者側に賃金の支払い義務が生まれるが、それ以外では無給でかまわない。 そうは言っても、実家や大学から離れた場所でインターンをする場合、家賃や食費を自分で支払わねばならず、無給というのは出費がかさむだけとなる。 現実のインターンの生活は困窮するケースさえあり、いくら学生であっても、最低時給賃金くらいはほしいというのが本音だ。 日本やその他の国に飛び火する可能性も 無給をいいことに過重労働させる職場もある。前述したバンクオブアメリカ・メリルリンチのエルハルトさんの場合もそうだった。 企業側にインターンなのだから長時間労働をさせても構わないとの意図はなかったのか。それとも、本人が一生懸命働く姿を示すことで、本採用を得ようとしていたのか。彼の場合は年間4万5000ポンド(約700万円)という高額のインターンで、賃金に関しては例外的な存在ではあった。 関西の某大学の就職コンサルタントが日本の現状を説明する。 「日本では大学3年生が夏休み期間中にインターンをすることが多いです。近年は大学がキャリア教育に力を入れているので、大学が仲介をしています。ただインターンはほとんどが無給です。賃金は支払われるべきではないでしょうか」 米国の訴訟の動きが発端となって、日本を含めた各国に飛び火し、インターンの賃金支払いについての議論が巻き起こる可能性がある。今後、インターンにも最低時給賃金か、それに見合った額が支払われることも十分にある。 インターンは職業経験が不足しているのが常である。実際は会社の一部署に配属されても実務ができない学生がほとんどで、即戦力にならない。そのため、最初はコピー取りやお茶汲みをはじめとする雑務が中心になる。 企業側は、そうしたインターンに賃金を支払う必要はないと考える。同時に、多くの学生は経験が得られれば無給であっても致し方ないと思う。インターン先で上司に気に入られれば、正社員としての道が開けることもある。 米国では2012年、無給インターンの37%が正社員として入社。また有給インターンの場合は割合が60%に達する。社員になれるのであれば、無給インターンは致し方ないのか。 ただ前述したように、日米を問わずインターンの業務内容によって企業側が利益や効果を上げた場合は、「労働者」という範疇に入るため、賃金の支払い義務が生じる。線引きはケース・バイ・ケースだが、オバマ大統領は今後どういう判断を下すのか注目される。 |