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「三菱航空機 公式サイト」より
MRJ、相次ぐ開発延期で“ニッポンの”小型ジェットに暗雲?世界での受注競争に影響も
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20130828-00010003-bjournal-bus_all
Business Journal 8月28日(水)3時23分配信
三菱航空機は、開発中の国産初78〜92席クラスの地域路線向け小型ジェット旅客機・三菱リージョナルジェット(MRJ)について、2015年中の就航を目指し今年第3四半期(10〜12月)に初飛行を予定していたが、15年4〜6月に大幅に延期した。
米プラット・アンド・ホイットニー社製航空エンジンなど海外メーカーからの部品調達が遅れたためだ。「部品納入で米ボーイングなどが優先され、後回しにされてしまった」という関係者の話もあるが、MRJの開発延期は3度目となる。
事業化を決めた08年当初は、11年に初飛行、13年に納入を開始する予定だった。だが、09年に主翼の材料を複合材から金属に変更したことにより初飛行を12年第2四半期、第1号機納入を14年第1四半期に見直した。12年には親会社の三菱重工業の工場の検査体制不備などから、初飛行は13年第3四半期、初号機の納入を15年半ばに変更した。そして今回、初号機納入を1年以上延期し、17年4〜6月とした。再三の延期、スケジュール変更で、世界市場での受注競争に影響が出るのは避けられない。
MRJの現在の受注は325機。内訳は確定165機、オプション契約160機だ。ローンチカスタマー(新型航空機の最初の発注者)は全日本空輸(ANA)だった。08年3月27日、全日空は25機(オプション=仮発注10機を含む)を発注した。三菱重工はANAの発注を受けて、MRJの開発を行う専門会社、三菱航空機を08年4月1日付で設立。三菱重工が64%、トヨタ自動車など9社が計36%を出資した。
ANAは三菱航空機に役員を送り込んでおり、両社は一蓮托生の関係だ。ANAの犬飼賢一・整備本部技術部部長が三菱航空機入りして執行役員・航空機安全統括室長になっている。ANAでは「納入が遅れるのは残念だが、正確な情報を把握して対応する。三菱航空機には燃費効率、信頼性、機内快適性の高い飛行機を造ってほしい」とコメント。納入の遅れについては「小型機ネットワークや機材計画の見直しをして、事業計画に影響が出ないようにする」とした。
三菱航空機は2010年に米トランス・ステイツ航空から100機(うちオプション50機)、12年には米スカイウエストから200機(うちオプション100機)を受注。合わせて325機となった。MRJの採算ラインは400〜500機とされている。
受注325機といっても、詳細に見てみると、確定165機の内訳は米国のエアライン2社と全日空の3社だけ。オプションも同様である。受注に広がりをみせていないことがわかる。
開発の遅延が重なったことで、受注の上積みは難しい。今から注文しても、機体が納入されるのは20年以降になってしまうからだ。発注済みの航空会社からオプション(仮契約)のキャンセルを突きつけられる恐れも出てきた。
●政府、三菱重工も力を入れる国家プロジェクト
3度目の延期になったのは経験不足が原因とみられている。三菱重工はボーイング787など旅客機の主翼の製造や自衛隊機、自社開発のビジネスジェット機を造った経験はあるが、旅客機をゼロから開発するのは、オールジャパンによる初の国産旅客機「YS−11」(1962年初飛行、72年生産中止)に参画以来、50年ぶりだ。
政府は次世代を担う産業として航空宇宙分野の育成に特に力を入れており、MRJは、その象徴である。三菱重工は航空宇宙部門から700人近い技術者を投入、総開発費は1800億円に及ぶ。このうち3分の1程度を国が負担する。新たな国産旅客機の開発は海外航空機メーカーの下請けに甘んじてきた日本の航空機産業、中でも三菱重工の悲願だった。三菱重工にとって社運を懸けた国家プロジェクトである。
MRJの設計や型式証明の取得、販売などを手がける三菱航空機の本社(名古屋市港区大江町)は、製造を担当する三菱重工大江工場に隣接する通称「時計台」にある。
MRJが参入するリージョナルジェットは、地域路線向けの小型旅客ジェット機である。1日当たりの運航距離が6000キロ前後で、78席と92席の2タイプがある。
航空業界の巨人であるボーイングやエアバスは、100席以下の旅客機を手掛けていない。100席以下の小型リージョナル旅客機は現在、北米、欧州で3400機が飛んでいる。この市場はカナダのボンバルディア(シェア64%)とブラジルのエンブラエル(同35%)との2社が二分する寡占状態だ。今後20年間で、このクラスの小型ジェット機は5000機程度の需要が見込まれるとあって、ロシアの軍用機メーカーのスホーイ社が11年に出荷を開始、中国の国営企業も開発に乗り出した。最後に参戦したのがMRJだった。エンブラエルは18年に燃費性能がいい次世代機を投入する予定という。
●完成までに立ちはだかる課題
MRJの部品点数は90万点に及ぶ。主要パートナー企業のうち17社、70%が米国籍だ。日本製を使いたくても国内には民間航空機向けの部品メーカーが十分に育っていない。主翼や胴体などの製造、最終組み立ては三菱重工が行うが、エンジンは米プラット・アンド・ホイットニー社が開発した最新鋭の次世代型エンジンを採用した。このエンジンは燃費性能と低騒音など環境性能に優れているという。
MRJの最大の売りは、2割優れているという燃費性能だ。競合機に比べて年間の燃料費を1億円セーブできるという。燃料高に悩む航空会社にとって魅力的な機種だ。
海外の航空会社から注目が集まったのは12年に米スカイウエストからオプションを含め200機の大口受注を獲得したからだ。同社は毎日4000便を運航する米国最大の地域航空会社である。MRJの定価は1機4200万ドル(1ドル100円で換算して42億円)。オプション分も含めて1兆3650億円の受注を、すでに確保したことになる。確定機数165機で計算すると6930億円である。
山登りに例えるなら、航空機開発では初飛行まで行って、やっと5合目といわれている。2500時間に及ぶ試験飛行を行い、地上では想定していなかった問題が見つかれば、見直す必要があるからだ。最大の難関は型式証明の取得だ。墜落すれば、大惨事が避けられない旅客機は、航空法で厳しい安全基準が課せられている。機体の安全性を客観的に証明して、国から型式証明と呼ばれる設計承認を得る必要がある。「飛行機を造ることよりも、安全性を証明するほうが難しい」といわれるゆえんだ。
MRJは完成にこぎ着けることができるのか? 三菱重工は、「世界シェア5割を目指す」と意気軒高だが、開発が遅れると、ボンバルディア、エンブラエルの先発2社に加え、ロシアや中国勢にもシェアを奪われかねない。中国もさることながら、技術力のあるロシアが侮りがたい競争相手になるとの見方もある。
編集部
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