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借金1000兆円は「成長+増税」で返せるか 消費増税と成長戦略の合わせ技でも力不足。
http://toyokeizai.net/articles/-/18069
2013年08月25日 長谷川 高宏 :東洋経済 記者
政府は今後の財政運営の指針となる中期財政計画を閣議了解した。国債や借入金などを合わせた国の借金は、今年6月末時点で1000兆円を突破。日本は国際的にも財政再建を求められており、9月5〜6日にロシアのサンクトペテルブルクで開かれるG20サミットで、財政再建の具体的な道筋を示さなければならない。そのためにまとめられたのが今回の中期財政計画だ。
国と地方を合わせた基礎的財政収支(プライマリーバランス=PB)のGDP(国内総生産)に対する赤字幅を「2015年度までに3・3%へ10年度比で半減、20年度黒字化」するという国際公約達成に向け、まずは今後2年でPBの赤字額を17兆円減らす。
20年度黒字化の方策はあいまいだが、これを実現するには単純計算で毎年GDPに対し1%相当の改善が必要だ。これがどれほど厳しい目標か、小泉政権時代の財政再建目標が1年当たり0・5%程度だったことを考えれば容易に想像がつくだろう。
中期財政計画の中で目を引くのは、経済成長に重きを置く記述だ。「GDPを増大させることにより、基礎的財政収支対象経費の対GDPを逓減」「経済成長を通じて税収の対GDP比の伸長を図っていく」。つまり、分母に当たるGDPを拡大することでGDP比でのPB赤字幅を縮小し、税収も増やす。安倍政権のキャッチフレーズどおりの「経済再生と財政健全化の好循環」だ。
ところが、アベノミクスが成功したとしても、20年度の黒字化は実現できない。中期財政計画と同時に公表された内閣府の試算(下図)によると、安倍政権のもくろみどおり名目3%成長が今後10年続く想定でも20年度に2%の赤字が残る。名目3%成長はバブル崩壊以降、一度も達成できていない数字だ。より現実的な2%成長だった場合、15年度以降は赤字幅すら減らない。
やっかいなのは、消費増税の先行きに不透明感が漂っていることだ。異次元緩和を仕掛けたリフレ派の金融政策ブレーンが増税先送りや毎年1%ずつの漸次増税を主張。これに応じるかのように、増税をめぐる集中検討会議を開くことを首相が指示し、事がややこしくなった。中期財政計画が閣議決定でなく「了解」となったのも、増税判断が決着していないからだ。このため内閣府試算も増税を前提にしていないと誤解する人も多いが、実は増税が前提だ。
■身内からも反発必至
消費増税は財政再建の切り札であり、10%への税率引き上げで新たに得られる税収は少なくとも10兆円を超える。とはいえ、消費増税を予定どおりに実行し、なおかつ3%成長が達成できたとしても15年度の赤字半減はギリギリで達成可能な水準であり、20年度黒字化は無理。金利上昇による利払い増で借金の絶対額も膨れあがる──これが現実だ。
増税の先送りや税率の上げ幅の縮小となった場合、財政再建はもっと困難になり、消費増税と一体となっている社会保障改革も含めて何もかも予定が狂う。野党のほか、超党派で増税に道筋をつけた与党議員からの反発も必至だ。政府としても、説得力ある代替策を示さなければ許されないだろう。
8月12日に発表された13年4〜6月期のGDP速報値は年率換算で名目2・9%増だった。増税の最終判断は9月上旬から10月初旬。安倍首相が抱える宿題は重い。
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