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米金利上昇局面で金相場が反発している理由
http://bylines.news.yahoo.co.jp/kosugetsutomu/20130824-00027514/
2013年8月24日 12時12分 小菅努 | 大起産業(株)情報調査室室長/商品アナリスト
内外の金相場が戻り歩調を形成している。COMEX金先物相場は、6月28日の1オンス=1,179.40ドルをボトムに、既に2ヶ月近くにわたって戻り歩調を形成しており、1,400ドルの節目回復も視界に入り始めている。TOCOMの金先物相場も、6月28日の1グラム=3,750円をボトムに、4,400円台まで切り返しており、「金価格のダウントレンドは終わった」といった議論も多く見掛けるようになっている。
米債券市場では、9月の債券購入縮小を見据えて金利上昇圧力が強くなっており、本来であれば、少なくともドル建て金価格は下落して然るべき相場環境とも言える。米10年債利回りは7月末の2.6%水準に対して2.8〜2.9%水準まで急伸しており、無金利資産である金相場に対しては強力な逆風になるためだ。
では、なぜ金価格は米金利上昇に逆行する形で戻り歩調を維持しているのだろうか。米金融緩和策の縮小見通しを背景とした金価格のダウントレンドに、何が修正を迫っているのだろうか。
■米金利上昇局面でのドル安
一つ目の理由は、「米金利上昇→ドル高」のロジックが成立していないことだ。確かに、米債券購入の縮小議論は新興国市場からの資金流出傾向を加速させており、対新興国通貨ではドル高基調が確立している。ドル/円相場も強含みに推移しており、一部通貨に対してはドル高圧力が強くなっていることは間違いない事実である。しかし、対ユーロに関しては寧ろドル安圧力が強いのが現状であり、これが「米金利上昇→ドル高→ドル建て金価格下落」のフローにブレーキを掛けている。
ドル相場に追い風が吹いていることは間違いないが、為替市場ではそれ以上にユーロ圏経済の回復傾向・見通しや、債務問題が一服していることが材料視されていることで、「ユーロ>ドル」のパワーバランスになっているのが現状である。対ユーロが最大の構成通貨になっているドルインデックスは、逆に6月中旬以来の安値を更新しており、結果として米金利上昇局面におけるドル安という歪んだ相場環境が、米金利上昇のネガティブ効果を吸収している。
■株安逆行のコモディティ高
二つ目の理由は、コモディティ市況が総じて堅調地合を保っていることだ。6月は中国経済のハードランディング懸念などからコモディティ市況は急落地合を形成したが、7月以降は安値是正の動きが目立っている。米緩和策縮小を警戒して資産価格に対しては調整圧力が強くなっているが、7月に原油価格が急騰したのに象徴されるように、コモディティ市況は逆に戻り高値を更新している。
資源を貪欲に消費してきた中国経済が減速していることは否めず、コモディティ市況の先行き不透明感は依然として強い。しかし、マネーサプライや住宅価格、貿易収支などの各種経済指標を見る限りは、6月の中国経済に対する悲観ムードはオーバーシュートだった可能性が高くなっており、それがコモディティ市況の底打ち感を促している。
これは、購買力指標としての金価格に対してはポジティブな動きであり、実際の所は7月以降の金価格上昇はこの動きに連動しただけとの評価も可能な状況になっている。
■現物需要からのサポート
第三に、アジア地区の現物需要が旺盛なことだ。ロンドンからスイス向けの金輸出量は、前年同期の83トンから798トンまで急増していることが確認され、欧米投資家の現物売却が、アジア市場にシフトしているとの観測が裏付けられている。ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)によると、4〜6月期は宝飾需要が前年同期比+40%、バー・コイン投資が同+78%に達している。
上場投資信託(ETF)市場からの売却圧力を吸収するレベルには達しなかったが、ここにきてETF売却の動きが鈍化している(逆に買い越し圧力も強まり始めている)こともあり、短期需給バランスが供給超過から供給不足に転換している可能性が浮上している。
中国国内の金価格に対するプレミアムは、30ドル前後に達した7月との比較では抑制されている。しかし、現在も中国金価格は東京金価格に対して15ドル以上のプレミアムが加算された状態にあり、同国内需給の引き締まりが窺える状況にある。
7月にマイナス圏に沈んだ1ヶ月物フォワード・レート(GOFO)も低迷状態が続いており、その影響でリースレートが年初来高値を更新していることも、現物需給の引き締まりを示唆している。
金リースレート(1ヶ月物)
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■膨大なファンド売りの買い戻し
第四に、依然としてファンドが膨大な売りポジションを抱えていることだ。COMEX金先物市場におけるファンドの売りポジションは、7月9日に過去最高となる14万3,657枚を記録した後、6週連続で減少している。
その間もファンドは買いポジションの拡大を見送っており、7月以降の金相場上昇は「安値が買われた」というよりも、単純に売り方ファンドの撤退(=買い戻し)による動きであったことが確認できる。
ただ、ファンドは売りポジションを急速に縮小しているとは言え、まだ4月中旬から下旬の水準に回帰したに過ぎず、更に大きく買い戻す余地を残している。7〜8月の売りポジション解消は5万2,705枚に過ぎず、残り9万0,952枚の行方次第では、反動高が継続する可能性もある。
COMEX金先物市場 大口投機筋の売りポジション
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以上の四点が、7月、8月の金価格反発の原動力と考えており、こうしたポジティブ材料が持続するか否かが、9月以降の金価格の値動きを決定付けることになるだろう。
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