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2013/8/23 日刊ゲンダイ :「日々担々」資料ブログ
出版された「成長戦略のまやかし」が提起したこの国の重大な問題点とこれからの行方
「再編の必要な業界を国が公表し、国に再編計画を認められた企業は優遇税制を受けられる」「ベンチャーキャピタルに出資した企業は法人税を減税する」――。安倍首相の長い夏休みが明けた途端、政府が秋に打ち出す「成長戦略第2弾」の中身を連日、大新聞が報じている。
今年6月に発表した成長戦略は期待倒れ。失望売りを招いて株価は暴落した。あの過ちを繰り返すまいと、安倍は「産業の新陳代謝策」など成長戦略の新たな柱づくりに躍起だが、ハッキリ言って無駄な努力だ。マトモな成長戦略など絶対に出てきやしない。
もちろん、安倍の無能ぶりも理由のひとつだが、最大の要因は別にある。安倍以外の政権与党の面々や、実際に戦略を書き上げる官僚たちが、誰ひとり決定的な過ちに気づいていないことだ。
ズバリ、政府が打ち出す成長戦略では、経済は成長しないという事実である。
この「失われた20年」の間、政権がコロコロと代わるたび、数多くの成長戦略が打ち出されてきた。竹中平蔵氏によれば、彼が政治家を辞めた後の7年間で、7つの成長戦略が打ち出されたという。そのたび、メディアや投資家は失望を繰り返してきた。成長戦略は、もはや失望されるために打ち出すようなものだ。なぜ、政府主導の成長戦略では成長できないのか。
◆デタラメ予測に基づくイカサマ成長戦略
その答えを明確に指摘しているのが、慶大准教授の小幡績氏の新著「成長戦略のまやかし」(PHP新書)である。この著書には、政府主導の成長戦略の根本的な過ちや、アベノミクスが完全に失敗している理由が語り尽くされている。この国の経済政策や国家運営の現実を知る上で必読の情報が満載だ。成長戦略の致命的な誤りについて、小幡氏はこう記す。
〈政府には、世界経済の将来を予測することはできない。それにもかかわらず、具体的な戦略を打ち出そうとする。成長産業に集中してカネを投下すると銘打たれた財政出動がなされる。しかし、将来の予測は正しくないから、この政策は必ず失敗する〉〈現在の世界経済の変化は激しく、将来は不透明であると同時にダイナミック、つまり、動的な変化が激しすぎて予測不可能である>〈だから、将来の予測に基づく政策は失敗する。これからは太陽光や電気自動車だ、あるいはミャンマーだ――そういった予測は無意味どころか、害のほうが大きい〉
いずれも、まさに今、安倍が犯している「過ち」である。小幡氏に話を聞いた。
「成長戦略第2弾の中身にある『再編が必要な業界』や『有力ベンチャー』が、どうして安倍政権に見抜けるのか。そこに不透明さを感じます。安倍首相は数々の有識者会議を立ち上げ、民間の知恵を借りています。政府に言われなくても、民間の方が再編の必要な業界を把握しているはず。どうせ、再編するなら業界全体で政府に優遇税制を求めよう。そんな陳情の結果、出てきた成長戦略ではないのか。そんな疑念すら湧いてきます」
日本経済の将来が安倍に見通せるなら、誰も苦労しない。デタラメな予測に基づく経済政策はイカサマだ。安倍政権が打ち出す成長戦略の害毒は計り知れない。
◆利益誘導を助長して成長を重ねる有害政権
成長戦略がまき散らす害毒の最たるものが、政権と企業の癒着だ。安倍は成長戦略の要として「規制緩和」を掲げている。この言葉には、どこか既得権益を打破するようなイメージがあるが、本当は違う。規制緩和こそ癒着の温床なのだ。
小幡氏の著書にはこう書いてある。
〈規制は、既存企業、既得権益の利害を優先してつくられる〉〈規制を緩和するとは、規制を残すということである。業界の秩序は保つということだ〉〈これは既存企業のメリットを強化するか、あるいは既存企業を弱め、新しく与党を支持するようになった企業を優先させるか、のどちらかということである〉
規制緩和のサジ加減ひとつで、時の政権は特定の企業に利権を誘導できるというのだ。利権を商売に利用しようと企む有象無象が確実に群がる。こうして癒着が生まれる。この構造を経済学では、レントシーキング(利益誘導的な政治活動)と呼ぶ。経済アナリストの菊池英博氏はこう言った。
「実は安倍政権の成長戦略はすべて、レントシーキングに毒されています。医薬品のネット販売解禁で、産業競争力会議の民間議員のひとり、楽天の三木谷会長が得をしたのが典型です。安倍政権が規制緩和の権限を振りかざせば、企業は利権をわがものにしようと安倍応援団と化す。ライバルに負けまいと、癒着競争にエネルギーを費やす企業も出てくる。その資金やマンパワーは、本来なら新規開発費用に振り向けられたものかもしれないのです。新たなビジネスチャンスが犠牲となりかねないし、政権の差配によっては淘汰されるべき企業が生き延びることだってあり得ます。これでは成長どころかマイナス効果しかない。百害あって一利なしです」
◆いい加減、昭和の発想から抜け出せ
どうして安倍の経済政策がダメなのか。その根本的な理由を小幡氏は〈経済活動の主役が企業と考えていること〉とズバリ書いている。
政府が特定の企業や産業、あるいは地区を指定し、そこに集中的に資源を投資して育てる。そのためには設備投資減税など、あらゆる企業優遇策も準備する。特定の企業が爆発的に発展すれば、新たな投資や需要が生まれる。投資が投資を呼んで経済全体が成長する――こうした安倍たちの発想そのものが、もはや時代遅れなのだという。改めて小幡氏が言う。
「かつての右肩上がりの時代には、投資が投資を呼ぶという高成長の好循環がありました。しかし、そんな時代はとっくに終わったのです。今の日本は基本的に設備過剰で、設備投資減税を打ち出せば余剰設備を増やすだけ。過剰生産によるデフレ要因にすらなり得ます。いつまでも“昭和の発想”を引きずっている場合ではない。アベノミクスの円安政策だってひどいもので、自動車業界など特定の企業を優遇するため、輸入物価高で消費者を苦しめている。為替のマジックで企業の利益は増えても、生産や雇用は増えないにもかかわらずです。今の時代に成長をもたらすのは企業ではない。新しいものを生み出す『人』です。安倍政権が企業優先の発想を切り替えない限り、この国に成長はありません」
この政権に経済再生再建を期待するだけムダだ。ほとんど絶望的な気持ちになってくる。
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