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古巣にダメ出しをした山口前副総裁 Photo:Jiji
国債の買い過ぎでついに債務超過へ 黒田日銀のXデー
http://shukan.bunshun.jp/articles/-/3028
週刊文春 2013年8月29日号
黒田東彦総裁の就任以降、日銀は異次元の緩和を行い、毎月7〜8兆円もの国債を市場から買い上げている。2014年末までに日銀が買い入れる長期国債の残高は190兆円まで増える見込みだ。
その一方で、日銀はデフレ脱却を目指し、2年後にCPI(消費者物価指数)2%達成を目標としている。これにともない、金利は確実に上昇する。金利が上昇すれば、国債の価格は下落する。すると、国債を大量に買い溜めている日銀のバランス・シートは必然的に悪化することになる。
「金融緩和を続ければ続けるほど、日銀は自らの保有資産を目減りさせる宿命にある。近い将来、日銀は債務超過に陥る可能性もある」(大手機関投資家幹部)
長期金利が2%となると仮定した場合、現在の10年物長期国債の金利(0.7%台)は一気に1.2%上昇する。すると、「日銀が保有する国債には16兆円もの評価損が生じる」(債券アナリスト)と試算される。これに対し、日銀の備えとなる債券取引損失引当金と法定準備金の合計は5兆円足らず。保有資産の含み益を加味しても債務超過は免れない。
もし日銀が債務超過になったら、日本はどうなるのか。
「円は通貨としての信用を失い、空前の円安が予想される。黒田総裁は債務超過の可能性について、日銀内に緘口令を敷いています」(市場関係者)
日銀は国債の会計処理について、含み損を表面化させにくい「償却減価法」という特殊な方法を適用しているため、債務超過は杞憂との指摘もある。しかし、日銀といえども東証に株式を上場する銀行。こうした稚拙な手法はいずれ市場のマイナス評価を招く。
黒田総裁は8月8日の会見で、消費税率引き上げ先送りについて「財政規律の緩みや財政ファイナンスなどが懸念されると長期金利に跳ね返り、せっかくの金融緩和の効果が減殺(げんさい)される」と釘を刺した。その真意は、国債の暴落懸念にある。
世界最悪の財政状況下での異次元緩和は、いわば「壮大な実験」である。
だが、日銀前副総裁の山口廣秀氏は「成功する確率は1割程度」と周囲に語っている。自らが債務超過に陥るリスクを冒しても、日銀は「壮大な実験」に賭けるのだろうか。
文森岡 英樹 (ジャーナリスト)
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