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五輪が開催された、1964年当時の東京(数寄屋橋上空から)。2度目の開催なるか
2020年の夏期五輪は、東京で決まり?吉崎 達彦が読む、ちょっと先のマーケット
http://toyokeizai.net/articles/-/18108
2013年08月23日 かんべえ(吉崎 達彦) :双日総合研究所副所長 :東洋経済
■「賭け屋」の予想では、東京は、断トツの本命馬
そろそろIOC(国際オリンピック委員会)総会が近づいてきた。9月7日にブエノスアイレスにおいて、2020年の夏季五輪開催地が決まる。昨今では、「東京がもらったも同然」とばかりに、ニコニコしている人もお見かけする。ホントにそうなのだろうか。
試しに、“Olympic, 2020, odds”というキーワードでググってみよう。すぐにヒットするのがoddscheckerというサイトである。これは便利。いくつかのブックメーカーによるオッズが一目瞭然だ(8月21日現在)。
http://tk.ismedia-deliver.jp/mwimgs/4/3/-/img_43d558dfa89e474dad4bb333af20827d121316.jpg
競馬風に言えば、東京は断トツの本命馬ということになる。単純にギャンブルの問題としてとらえれば、東京の勝率はかなり高いと言えるだろう。
しかるに2020年の開催地を決めるのは、市場の声ではなくIOC委員たちだ。王侯貴族や実業家、スポーツ選手など104人の委員が、総会での無記名投票の一発勝負で決めてしまう。ゆえに事前の票読みはあんまり当てにならない。しかも委員の半数近くは欧州人であり、彼らの腹の中は読みにくい。IOCを「魑魅魍魎の世界」と言ってしまうと語弊があるが、永田町的な意味で「一寸先は闇」であることは、承知しておいた方がいい。
■「事前の票読み」は当てにならないIOC総会
ここで永田町的というと、日本人はつい「自民党総裁選」をイメージしてしまうかもしれない。「願いあげましては、○○派が何人、××派が何人、△%こぼれたとしても、積み上げれば過半数」みたいな計算である。ところがIOC総会の実態は、むしろ「民主党代表選挙」に近い。当日の開催都市のアピールを聞いて、その場の雰囲気で決めるという委員が少なくない。過去を振り返ってみても、結構なサプライズがあったりする。
例えば2009年のIOC総会では、真っ先に落とされたのがシカゴだった。あれはリーマンショックの1年後だったので、欧州人たちが最初からアメリカに腹を立てていた。しかも当時、飛ぶ鳥を落とす勢いだったオバマ大統領が、おっとり刀でコペンハーゲンに乗り込んできて、制限時間をオーバーして「シカゴ応援演説」をぶった。これが委員たちの癇に障ったらしい。つまり「あの子、最近ちょっと調子に乗ってるよね」的な場の空気で、投票が左右されてしまうのだ。だから「味方を増やすより、敵を作らない方が大切」と言われたりする。事前の読みはあまり当てにならないと心得ておくべきだろう。
2020年レースにおいては、当初はイスタンブールが有力とされていた。「イスラム圏で初の五輪」という大義名分は、それなりに重いものがある。ところがエルドアン政権に対する反政府デモが発生してから様子が変わる。「やっぱり時期尚早ではないか」という見方が強まり、ここから「安心、安全」を売り物にした東京が先頭に立つ。
ところが7月3日にスイス・ローザンヌで行われたプレゼンでは、スペインのフェリペ皇太子の熱弁がIOC委員の胸襟に沁みた。あのメッシ選手が、パレスチナで少年たちにサッカーを教えているというのである。これぞスポーツマンシップ。「メッシはスペイン人じゃなくて、アルゼンチン人だろう」などとは言いっこなしだ。13歳のリオネル・メッシ少年を発見し、スペインに招いて大選手に育てあげたのはFCバルセロナなのだから。
IOC委員の中には、さまざまな思惑がうごめいている。例えばフランス勢は東京支持と言われている。彼らの狙いは、最初のパリ大会から100周年を迎える2024年の五輪を誘致すること。それを考えたら、2020年はなるべく欧州から遠い東京にやらせる方が良い、という計算が働く。
他方、IOCは、スペイン人であるサマランチ会長の時代が長かった(1980年〜2001年)。現在の委員の多くは、サマランチ前会長とサマランチ・ジュニア現理事の二代にわたるお世話になっていて、その義理もあるから「少なくとも1回目は、マドリードに投票する委員が多い」との観測もある。何しろ今回のIOC総会は、ロゲ現会長の後任人事や新競技の採用なども決めることになっている。委員たちの間で、どんな取引やら票の貸し借りやらが行われているか、ほとんど見当もつかない。
■2度目のプレゼンの方が、重要だ
仮に1回目の投票でマドリード、東京、イスタンブールという順になったとしよう。過半数の得票を得る都市がなければ、上位2都市による決選投票になる。東京としては、ここはイスタンブール票を取り込まなければならない。従って、1度目よりも2度目のプレゼン内容が重要になってくる。東京招致を目指すスピーチライター陣は、今頃はこの辺の段取りに頭を悩ませているはずである。
結論として、東京招致実現の確率は半々くらいであろう。少なくとも、卓上のまんじゅうをスッと手にするような戦いではない。結果が判明するのは、日本時間では9月8日の日曜日午前5時ごろ。その成否は、政治と経済の両面で大きなインパクトを与えるはずである。
ところで11日間にわたる夏季休暇を終えた安倍首相は、今週末から外遊三昧の日程に入る。まずは24日からの中東・アフリカ歴訪である。行先はクウェート、バーレーン、カタール、ジブチの4か国。バーレーンを除く3か国には、それぞれ1人ずつIOC委員が居るので、「ひとつよろしく」なんて話も出るのかもしれない。
中東・アフリカの次は、ロシア出張である。9月5〜6日には、サンクトペテルブルクで行われるG20に出席する。会議そのものの重要性は薄いが、習近平国家主席や朴槿恵大統領との「立ち話会談」があるかもしれないのが注目点。もっとも確率的には低いと見ておくべきであろう。余談ながら、中国は3人、韓国は2人、北朝鮮は1人、香港にも1人のIOC委員がいる。この辺が「票田」にならない点が、日本外交の辛さである。
ロシアでの安倍首相は、「心ここにあらず」かもしれない。G20は早々に退席し、そのまま政府専用機で冬の南半球に飛び、ブエノスアイレスに飛ぶ。「東京に、皆さまの清き一票を!」という最終プレゼンテーションを買って出るはずである。
これでめでたく五輪開催地が東京に決まれば、「お見事」ということになって安倍首相は喝采を受ける。ダメだった場合は、「やっぱり、猪瀬さんが良くなかったかなあ」などと表だっていわなくても、さりげなく東京都知事を悪者にできる。勝てば官軍、負ければ知らんぷり、というおいしい構図が以前の「読み筋」であった。
■東京招致の正否は、日本経済にとって大きな分かれ道
ところが、麻生副総理の「ナチス発言」で調子が狂ってしまった。「東京降ろし」を狙っている国から見れば、これぞ絶好のネガティブキャンペーンのチャンスである。「右傾化している日本での五輪開催はいかがなものか」と言えてしまうわけだ。これで負けてしまったら、安倍政権に批判が集中するかもしれない。以前は安倍首相にとって「秘かな楽しみ」であったオリンピック東京招致は、今では乾坤一擲の勝負になっているのだ。
ゆえに9月8日以降の安倍内閣の求心力は、IOC総会の結果次第で天と地ほどに変わってくるはずである。
東京招致の成否は、日本経済にとっても大きな分かれ道となる。もちろん、東京が勝つ方が景気にプラスであることは間違いないし、ダメだった時の「東京2連敗」ショックは相当に深いものになるだろう。
とりあえず東京が選ばれたその瞬間に、「消費税増税先送り」の議論は吹き飛ぶはずだ。なにしろ東京五輪が決まったら、公共事業をたくさんやらなければならない。「お客様が来る前に、恥ずかしくないように」という日本人的な美学には、どこか抗しがたい魔力がある。前回の1964年東京五輪の際に慌てて作った都市インフラは、すでに半世紀を経て老朽化が進んでいる。地震への備えも必要だ。「この際、首都高を全部地下に埋めてしまえ」みたいなことを言い出す人もきっといるはずだ。
夢のある話としては、以前から何度も出ては消えている「お台場カジノ構想」がある。2020年に膨大な外国人観光客が東京を訪れるということになれば、この際、特区でも何でもいいからやってしまえ、という話になるのではないか。
ちなみに筆者の以前からの持論では、お台場と沖縄と福島の3か所限定でカジノ解禁、というのが良いと思う。ギャンブルを愛する者の一人として敢えて申し上げるが、ギャンブルは社会悪でもある。「地域振興」などの名目で、安易にカジノの数を増やさないようにしたいものである。
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