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消費増税を巡り、安倍晋三内閣が明確な方針を打ち出せずにいる。政府は景気や物価への影響を検討する有識者会合を開くほか、政府内では消費増税と合わせて法人税の実効税率引き下げも浮上している。景気の腰折れを防ぐべく、増税に走りがちな財務省をけん制する意味合いはあるだろう。しかし、度重なる歳出拡大、減税圧力は財政再建にどのような影響を及ぼすだろうか。ゴールドマン・サックス証券の西川昌宏金融商品開発部部長に聞いた。
--- 消費増税の決断が先送りになっている。
西川:官邸の財政状況に対する認識が不足していると言わざるを得ない。消費税率の引き上げに関しては消費税法の附則に『経済財政状況の激変にも柔軟に対応する』という、いわゆる景気条項があるのは確かだ。だが、ここでいう激変とはリーマンショック並みを意味するとされてきた。現在はそのような状況ではない。むしろ今、引き上げなければ当分は無理とも言える状況だ。そもそも、今になって増税の影響や税率の引き上げ方について複数の方法を検討すること自体が問題だ。この様な検討をするのであれば、先の参議院選挙の前に国民に伝えるべきではなかったか。
法人税率の引き下げも慎重に議論しないといけない。法人税は税の中でもっとも税収弾性値が高い。つまり、経済成長に伴いもっとも増収が見込める税目だ。これを引き下げてしまっては、もともと達成が極めて困難な2020年度の基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)の黒字化が一段と遠のく。法人税率が実際に引き下げられ、かつ影響が主に2016年以降に発生するような方法がとられた場合、政府は2015年度の予算ベースでの財政健全化目標(PB赤字の半減)を取り、2020年度の目標達成は捨てることを決心したとさえ言えるだろう。
税収は見積り、支出はリアル
そもそも、プライマリーバランスを目標にしたことにも問題がある。税収は見積りであり、支出はリアルだからだ。予算を立てる際には当然、税収の見積もりを作るが、強気に見込むことで、支出面で大盤振る舞いをすることが可能になる。中期財政計画では、一般会計の赤字額を2013年度の約23兆円から、2015年度には約15兆円と約8兆円削減することになっている。これは最低限の目標なのに、許容範囲ととらえ、ぎりぎりまで歳出追加や減税を行う可能性が高い。その意味で、2014年度の予算が71兆円(2013年度の予算額70.4兆円と社会保障の自然増1兆円を足し合わせた金額)からどこまで膨らむかに注目するべきだろう。
--- 財政の状況はどう考えれば良いのか。
西川:よく家計にも例えられるが、2012年度は税収が44兆円ほどなのに対し、歳出は98兆円。その他の収入を含めても支出の5割を借金(国債の発行)で賄っている。これはヘンだ、いつかは持たなくなる、という感覚がまず必要だ。
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もっとも、財政がいつまで持続可能かは誰にも分からない。先日も日本の借金が1000兆円に達したとの報道があった。国内総生産(GDP)の200%を上回るが、途上国では政府債務のGDP比がより低い水準で財政破綻にいたることもあったし、政府は相応の資産を持っているのでネットすれば債務の水準はそれほどではないとの指摘もある。ただ、やはり国の借金が非常に多いこと、また、仮に財政への信認が失われれば金利や物価の上昇を通じて非常に大きなコストを国民に強いることは理解する必要がある。
繰り返しになるが政府債務は今、1000兆円という水準にある。500兆円の時に立て直そうとした方がラクだったのは明白だが、1500兆円に膨らんでから再建するよりは今から取り組んだ方がずっとラクだ。コトが起こってからでは遅い。喫煙者がガンにかかってから治療を始めても大変なのと同じだ。
長く債券市場を見てきた者として当面を見渡せば、生命保険会社が満期までの期間が長い国債を保有したいとのニーズはある。ただ、無限に買う訳ではない。2020年代の前半には、国債の消化に影響が出てくる可能性は否定できない。経常収支が黒字のうちは、国内で国債を消化できるとの指摘もあるが、赤字に転落する少し前から金融市場が不安定になるシナリオは否定できない。
日銀は株と為替を取り、債券市場をないがしろにしている
--- 日銀への評価は。
西川:日銀はすさまじい額の国債を購入している。日銀が量的・質的緩和で表明しているペースで買い続ければ、2020年代の早い段階で、日本のあらゆる利付債の6割を日銀が持つ計算になる。日銀は『私が財政ファイナンスではないと言っているのだから財政ファイナンスではない』と言う。しかし、利付債の過半を持った時、周りはどう見るだろうか。
債券市場から見ればアベノミクスは1本の矢、すなわち金融政策でしかない。それは債券市場をないがしろにし、為替と株を取ったということだ。債券市場は日銀が大量に買い入れているために流動性が落ち、その結果として売買が細っている。景気などのシナリオにも左右されるが、試算では国債の市中消化額はほぼ一貫して増加が続き、2020年度には180兆円に迫る。残高が増えていくほど、予測がつかない事態が起きる可能性は高まっていく。
仮にデフレから脱却し、日銀が金融政策の正常化に踏み出そうとすれば国債の保有額を減らさないといけない。うまく行かなければ現在の仕組みから正常化に舵を切ることはできない。デフレ脱却がうまく行っても行かなくても、日銀は綱渡り的な運営をいずれ迫られる。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20130820/252434/?n_cid=nbpnbo_bv_ru
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