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中国・上海市(「Wikipedia」より)
中国、世界の“模倣品”工場化の実態〜悪質・巧妙化で広がる被害…危険なエアバックも
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20130821-00010002-bjournal-bus_all
Business Journal 8月21日(水)5時51分配信
商品・コンテンツにおける知的財産権(特許権・商標権・著作権・意匠権・実用新案権など)は、さまざまな条約・法律により、その権利が守られている。
しかし、それでもこれらの権利を侵して模倣品・海賊版がつくられ、堂々と売られている。これらの多くは東南アジアを中心とした国々でつくられ、世界中で売られている。
中でも悪質なのは、日本を抜いて世界2位の経済大国に成長した中国だ。中国当局も模倣品・海賊版に対する規制を強化し、摘発を行っているものの、その動きは遅く、法律面での不備も多い。そして、中国でつくられる模倣品・海賊版の手口は、ますます巧妙になり、悪質化している。
経済産業省の「模倣品・海賊版対策の総合窓口に関する年次報告(2013年度版)」http://www.meti.go.jp/press/2013/06/20130628004/20130628004.html を参考に、中国での模倣品・海賊版の悪辣な実態を見てみたい。
●突出する中国の模倣品・海賊版
模倣品・海賊版による日本企業の被害を国・地域別に見ると、中国による被害額が突出して大きい。政府の総合窓口に寄せられた相談案件も、中国に関する相談が最も多く、全体の6割にのぼる。
こうした中国による日本企業の被害は、模倣品・海賊版の、(1)製造国、(2)消費国、(3)輸出国の3つの側面で捉えることができる。
10年度の中国による日本企業の模倣被害を知的財産権別にみると、商標権侵害が2万709件(62.4%)と最も多く、次いで、著作権侵害が8758件(26.4%)、意匠専利権(意匠権)侵害が3450件(10.4%)、製品品質法違反が105件(0.3%)となっている。
中国は模倣品に関しても“世界の一大製造拠点”となっており、日本企業のあらゆる製品・商品の模倣品が生産されている。中国における模倣品の製造地域は、広東省、浙江省、江蘇省、福建省などの沿岸部を中心に広がっているが、さらには、内陸部へと拡大しているという指摘もある。
一方、模倣品の販売提供地域は、北京や上海などの大都市や広東省、浙江省といった沿岸部の地域だけでなく、すでに遼寧省、山東省など中国東北部や、四川省などの内陸部にも拡大している。
また中国による知的財産権侵害は、模倣品の製造に加え、海賊版の流通も深刻な問題となっている。中国の海賊版市場では、日本のコンテンツも、アニメ・映画・テレビ放送番組など、映像にかかわる海賊版DVDをはじめ、音楽やゲームソフト等でも幅広く被害が発生している。
OECD(経済開発協力機構)は、日本国内に流通する被害とインターネット上の被害を除く模倣品・海賊版の貿易被害額が、年間約2500億ドル(約24兆円)に上ると試算している。その大部分が“中国発の模倣品・海賊版被害”であると指摘されおり、中国で製造された模倣品は中国国内だけでなく、近隣の日本・台湾・韓国をはじめ、東南アジア諸国、UAEやサウジアラビアなどの中東地域や中南米地域、さらにはアフリカなどに輸出されている。
12年の日本税関による知的財産侵害物品の輸入差止件数は2万6607件だったが、実にその94.0%が中国(香港を除く)から輸入されたものだった。
中国における模倣品の輸出拠点は、香港・広東や上海といった国際港湾都市が中心。近年は、海路のほか、水際での取り締まりを避けて、陸路を利用して模倣品がロシアや中央アジア、東南アジアに流出するルートが存在し、こうした地域では、中国製の模倣品による被害が増加傾向にあると指摘されている。
●巧妙化・悪質化する手口
最近では、模倣品の手口が巧妙化している。他社と同一の商標を付けているといった従来の単純なものとは異なり、複雑な模倣品問題が生じている。
例えば液晶テレビでは、外形的には何も商標を付けておらず、一見、権利侵害がないような商品が、電源を入れると画面上に有名商標が表示されるものが販売されている。さらに悪質なものとして、どの商標を表示するかを選択できるものまである。
また、自動車用の偽造エアバッグでは、安全基準を満たしておらず、衝突時に膨張する力が弱かったり、ひどい物では膨張する際に部品が飛び散り、かえって人を傷つけたりするものもあり、身の安全を守るためのエアバッグが、深刻な危険をもたらすことすらある。
これらの模倣品は、商標が付いていれば商標法で対応が可能だが、商標が付いていない、あるいは販売の直前まで商標を付けないものもあり、この場合には商標権侵害として取り締まりを行うことは難しい。
さらに、現在の中国の商標法では、日本と異なり、侵害を構成する使用態様として「輸出」が明記されていない。従って、問題となる商品に中国国内で登録されている商標と同一、または類似の表示が付されていても、「すべて輸出する予定であるから、中国で誤認混同を生じず、中国の商標権を侵害していない」という抗弁がなされる場合がある。
中国から模倣品が世界各国に輸出されているという実態がある中で、この抗弁が認められれば、権利者は中国という問題の根元の場所ではなく、輸出先である世界各国で対応することを強いられる可能性がある。
近年、中国当局の取り締まりが厳しくなるにつれ、それを回避するため、模倣品製造業者の手口は一層巧妙化、悪質化している。
11年に、日本企業が中国で直面した知的財産権侵害の手口で、最も多かったのは「見た目そっくりにつくり、商標を貼付せずに販売する手口」(34.0%)だった。こうした侵害手口(商標はずし)は、商標が貼付されていないため、商標権侵害とはならないが、日本であれば、デザイン模倣として意匠権侵害、または不正競争防止法の形態模倣品の提供行為等で救済を求めることもできる。しかし、現行の中国の法体系では、摘発が難しい。
次に多かったのが、「デッドコピーの模倣品に正規品と同程度の価格を設定し販売」(20.4%)となっている。中国の法規上、知名商品特有のデザインが模倣された場合(かつ他人の知名商品との混同が生じるとき)であれば、不正競争行為として行政処分の対象となることもあるが、知名商品とまでいえない場合は、現行法では法的対応が難しく、模倣品製造業者は、それを熟知した上で、デッドコピーを行っている。
このほか、巧妙化の手口としては、「中身と包装やロゴシールなどを別々の場所で製造し、販売時に合わせる(18.6%)」、「摘発を逃れるために、在庫を貯めず次々と出荷しているため、証拠品を押収できない」(16.5%)、「正規品であることを示す識別シールを模造して貼付」(14.6%)などがあげられている。
●一度摘発しても再犯を抑止できない
中国では、一度処罰されても、再び模倣品の生産を繰り返す事案が後を絶たず、大きな問題となっている。しかも再犯事例の多くは、同じ場所で模倣品の生産を再開しているが、最近は、当局の摘発を逃れるために再犯者の手口も巧妙化している。
摘発されやすい日中は正規品を製造する業者を装い、夜間や休日に模倣品の製造を行って当局の摘発を逃れている業者や、また、行政取締当局が、原則として、民家への立入捜査を行う権限を有していないことに目をつけて、工場ではなく、摘発されにくいマンションなどの民家で模倣品を製造する業者もいる。
また、中国では、違法経営額(5万元=約80万円)を超えない侵害行為は、行政上の摘発は可能でも、刑事罰の対象とならないことから、模倣品の生産量・在庫量・販売量を小口化したり、証拠となる帳簿を記載しなかったりする業者も増えている。このような業者は、仮に摘発されても、処罰が軽いケースが多いと報告されている。
中には、各省、各地方執行当局間の連携体制が未整備なことにつけ込み、生産場所を転々と変えて、模倣品を製造し続ける業者もいる。こうした地域を跨ぐ再犯については、仮に摘発されても、侵害者のデータが未整備なこともあり、再犯者として厳罰に処される可能性は極めて低いのが現状だ。
特に最近では、日本企業の申し立てにより行政摘発が行われた後、模倣品業者に処罰決定が下されるまでの間に、模倣品を持って逃亡するという例が数多く報告されている。しかも、内部規定により、逃亡者には処罰を下さないという地方執行機関もあり、この場合には、仮に再び模倣品業者が侵害行為を行って摘発されても、初回摘発時に処罰が下されていないため再犯行為に当たらず、逃亡者の逃げ得となっている。
このように中国では、再犯行為が横行しており、その要因として、(1)行政罰において、再犯行為に対する重罰規定が整備されていないこと、(2)刑事訴追基準の運用が、地方ごとに不統一で、刑事移送される侵害行為が極めて少ないこと、(3)模倣行為で得た利益に比べて過料が低いことから、抑止効果が働いていないこと、(4)さらには、摘発した模倣品製造業者の侵害履歴を適切に管理するシステムが未整備であること--などが挙げられる。
また、模倣品製造業者は、行政罰をビジネスコストのひとつと考えており、“罪の意識がまったくない”ことも、再犯が絶えない要因だ。
鷲尾香一/ジャーナリスト
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