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http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130819-00000515-san-pol
産経新聞 8月19日(月)11時30分配信
〈乗って残そう粟生(あお)線〉
神戸市の北部から西へ、兵庫県三木市、小野市へと延びる私鉄、神戸電鉄粟生線に乗ると、こんなポスターが目に入る。沿線住民に利用を促し、廃線の危機を脱しようというものだ。
同線は平成14年度以降、毎年10億円以上の赤字を出している。このため国や沿線自治体から補助金を受けて運営されてきたが、状況は改善せず、昨年度からは兵庫県などから5年間無利子の40億円の貸し付けを受け、生き残りを図るぎりぎりの経営が続いている。
国鉄の民営化、第三セクター化が始まって以来、こうした公共交通機関の改善策、延命策を全国で、頻繁に見聞してきた。過疎化や人口減少の中で、住民の貴重な移動手段を守るために自治体が、金と知恵を出すのは使命ともいえるだろう。が、需要をつくり出すために無理をして自治体職員が利用者になり、その費用を公費から支出するとなると、どうだろう。先月10日から鹿児島県が順次、職員300人を派遣している上海研修がそれである。
研修は、鹿児島空港の上海直行便を維持するために計画された。同便は14年8月に就航し、週4往復が運航されていた。しかし、昨年夏の反日暴動後、搭乗率が5割を切ったため、今年3月からは週2往復に減便された。定期便が消える危機感を抱いた同県が発案したのが、前代未聞の職員1000人派遣の研修利用だった。3泊4日で1人当たりの経費、すなわち支出公費は11万8000円。県民らの批判を浴びて派遣規模は300人に修正されたが、計画は順次、実施されている。
この問題を取り上げるのは、こうした政治・行政手法が同県ほど露骨ではないにしろ、公共交通機関以外にも対象を広げているからである。例えば、公立高校の統廃合が進む中で地元高校を死守しようとして、支援策を打ち出す自治体が増えている。長崎県松浦市は下宿費、通学用の船賃、補習費を最高半額まで補助することで入学希望者を集めている。北海道美瑛町は入学準備補助として3万円を支給するほか、修学旅行費用の半額、資格試験や進学模試の受験料の半額を補助している。北海道新得町に至っては、大学や短大への入学金を25万円まで補助するうえ、自動車運転免許取得費にも補助を出し、町職員への特別採用枠まで設けて入学希望者を掘り起こしている。
鉄道にしろ学校にしろ、地元には大切な機関である。なくなれば、さらなる人口減少を生み、税収も減って住民サービスが低下する。だから、公費投入は地域社会を守る必要な投資ということだが、人口減少はすでに日本の自然現象だ。自然の流れに逆らうにはとてつもない労力と費用が要る。それでもあえてやる価値と、将来への見通しを、それぞれの自治体が見いだしているのかを問いたい。
日本の人口は20年の1億2800万人をピークに減少基調に入っている。32年には全都道府県で人口が減り、52年には全国の7割の市区町村で人口減少率が20%を超える。人口は慣性で動く。日本ほど少子化が続けば、将来の親になる数が決まっているため、増加基調に戻ることは至難に近い。人口減少を前提とした国や社会の形を考えることが避けられないわけで、地方政治や行政はすでに、この大枠の中で政策を考える時代に入っている。
これからの日本に必要なことは縮小を恐れず、屈せず、効率第一の国づくりを進めることだ。この時代の変わり目が理解できず、目先の利益に目を奪われて小手先の政策を行えば、鹿児島県のような愚かな浪費になる。全国の自治体には、他山の石にしてほしい。(編集委員・安本寿久)
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