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FRBのバーナンキ議長は「引き際の美学」にこだわっているのだろうか(ロイター/アフロ)
秋の市場の波乱に備えた「日米密約説」とは?米国の出口戦略は、チャイナリスクの行方次第
http://toyokeizai.net/articles/-/17805
2013年08月19日 草食投資隊 :渋澤健、中野晴啓、藤野英人 東洋経済
米国の株価は過去最高値を更新中。リーマンショックから間もなく5年、ようやく米国経済に回復の兆しが見えてきました。そして景気の回復とともに注目されるのが、FRB(米連邦準備制度理事会)が、いつ出口戦略に着手するのか、ということ。9月有力説がある一方で、一部からは「QE4ever」(Forever、量的緩和は永遠に)などと揶揄する声も聞こえてくるなか、出口戦略の行方はいかに?
■米国の金融緩和は永遠に続く?
渋澤 先日、米国から議会のスタッフの視察団が来日してきてね、そのお世話をしていたんだけど、米国景気の現状はどうか聞いてみたんだ。最近、ようやく雇用も上向いてきたし、一部では金融緩和のペースを少し緩めるって話も出ているし、ちょっと気になるところでしょ。
中野 なんて言ってました?
渋澤 確かにリーマンショックがあった2008年に比べると良くなっているのは事実。ただ、ガッと勢い良く回復しているという実感はない。出口戦略については、「まだ当分はないんじゃない?」という意見もあった。QEは永遠に続くという皮肉で、QE4everなんて言葉も出ていたくらいだから(笑)。
中野 私はバーナンキFRB議長が出口シナリオを口にしたことで、うまくQE3のバブルの火を消したんじゃないかと評価していたんですが、出口シナリオはありませんか。なるほど。まあ、最近の米国景気を見ていると、良いが2で、悪いが1という感じですよね。上向きにはなっているけれども、はしゃぐほど良くはない。QE3をここで止める必要はないでしょう。
藤野 「いい塩梅の悪さ」といっても良いのではないでしょうか。たとえば雇用統計の非農業者部門雇用者数も、恐らく20万人の増加になると出口の話が浮上してくるのだけれども、今の水準はそこまでではない。16万人、17万人というように、絶好調に少し足りないくらいのところでウロウロしている。だから、QEを止めるとはっきり言わずに済むし、そのなかで景気はジワジワと上昇しているという感じを受けます。
■辞めるから、思い切ったことができる?
中野 でも、バーナンキさんとしては、来年1月にFRB議長を降りる前に、何とか蛇口を絞りたいところでしょうね。
渋澤 最後の最後に蛇口を絞って、さっと消える(笑)。辞める直前だからこそ、蛇口も絞りやすいんじゃないのかな。
中野 もしそうだとしたら、年末にかけてボラティリティは高くなりそうですね。でも、いきなりギューッと絞るようなことはしないでしょう。850兆ドルの資金供給を600兆ドル、あるいは500兆ドル程度まで絞るけれども、引き続き金融緩和は継続するという感じじゃないでしょうか。
藤野 状況次第でしょうね、出口戦略については。今、世界経済で一番懸念されているのは、やはりチャイナリスクでしょう。その行方次第で、出口戦略の行方が大きく変わってくると思います。
中国経済がさらに厳しい状況に追い込まれると、中国向けに鉄鉱石などを輸出しているブラジル経済がダメになる。そうなると、ブラジル国債を大量に保有しているスペインが苦境に追い込まれ、結果的に欧州債務問題が再燃する。そのリスクについては、IMFもEUも、バーナンキも知っている。そこまでの大問題にならなければ、少しずつ出口戦略に向かうシナリオも描けますが、その懸念が現実化したら、マーケットはクラッシュします。だから、隠し玉が用意されている。
■黒田バズーカ砲の第2弾の可能性
中野 それってなに?
藤野 黒田バズーカ第2弾ですよ。出口戦略が遠ざかるのはもちろんですが、これに黒田バズーカの第2弾を放つわけです。そこまでのセーフティネットはできあがっている。米国としては、黒田バズーカ第2弾に期待しているので、その代わりに1ドル=100円程度の円安には目をつぶる。そういう話し合いは出来ているはずです。
中野 債務上限の引き上げに関する問題が秋口に出てくると思いますが、その辺について、来日した議会スタッフの人たちは、何か言ってましたか。
渋澤 今回、来日した米議会のスタッフは、民主党と共和党、両方のスタッフが一緒だったのだけど、お互いに何をどうするかという話は一切出ていなかったんだよね。今はお互いに立場を譲らない状態なんじゃないかな。まあ、それでも最後の最後には何とかする、ということなのでしょう。
■米国経済は、今後一段と復活する
藤野 いろいろな要因を見ても、米国経済がここから大きく悪化する感じはしませんね。あの国のすごいところは、とにかくどんどんアントレプレナーが現われて、そこに資金を提供するリスクテイカーがいるということです。
渋澤 しかもシェールガスで今後はエネルギーコストが大幅に下がる。安いエネルギーコストでイノベーションが進み、人材の流動性も高い。そのうえ法人税も引き下げる。起業家が儲かる土台が着々と築かれている。
中野 経済のダイナミズムを感じますよね。今、米国の経済は大転換点に差し掛かっていると思います。米国の製造業は一時期、本当にダメになりましたが、それさえも復活してきた。今後10年、世界経済の覇権を握るスタートラインに差し掛かっているのではないでしょうか。米国経済はメガトレンドになると思います。
藤野 日本の経営者でそこを見ていたのが、ソフトバンクの孫正義さんですよね。一時期は中国にベッドしていたけれども、米国の大手通信会社であるスプリント・ネクステルを買収して、一気に米国市場に参入した。恐らく10年以上の歴史観を持って、これから攻めるのは米国市場だと判断したのでしょう。その先見の明は本当にすごいと思います。あと信越化学工業。テキサスに新しい化学工場を造りました。明らかに、米国経済にベッドしてきている。
中野 トヨタ自動車や富士重工業も米国マーケットに力を入れていますよね。先見の明がある企業は、もうあまり中国にはこだわっていなくて、米国に目を向けています。
渋澤 今回、来日した議会スタッフは全員、初めての日本だったんだけど、日本のテクノロジーに対するリスペクトが非常に強いんだよね。
たとえば新幹線の技術なんか、その典型。日本からすれば、中国は確かにマーケットの規模が大きくて、ビジネスを展開していくうえでの魅力はあるんだけど、国が完全な民主主義ではない。歴史の問題も整理できていない。ここが非常に難しいところで、どうしても一歩、踏み込めないところがある。
でも、米国は民主主義国家で、歴史の問題も概ね整理できている。そのコンフォート・ゾーンが非常に深いんだな。その意味でも、日本企業にとっては米国マーケットの方が商売はしやすいはず。加えて米国の経済が本当にこれから盛り上がっていくならば、日本にとって米国のマーケットは、とても重要な位置を占めるようになると思うな。
■目先円高が続くなら、ドルを買うチャンス
中野 金融市場に関していえば、為替がどうなるか。米国の実体経済が良くなれば、確実にドル高が進むと見ているのですが。
藤野 もともと昨年の秋口から円安ドル高へと転じたのは、米国に景気回復の兆しが見えてきたからですしね。アベノミクスが円安を促したのではなく、もともと円安になる素地ができていた。安倍首相はそこにうまく乗った形になったわけです。このまま米国の景気が回復に向かえば、為替はもう一段、円安になるでしょう。
中野 1ドル=110円近辺が居心地の良い水準。そこまでは自然に行くのではないでしょうか。現状、円高に向かう材料はないといっても良い。
渋澤 その割にはなかなか円安に行かないけどね。まあ、円高になったら米ドルを買うチャンスだと見ています。
中野 そうなんですよ。今、円高が進む理由が分からない。8月に入ってマーケットが薄くなっていることもあると思うのですが、いきなり1ドル=96円台に入ったりしている。今、円を買う理由なんて、どこにもないですよね。
藤野 結局、夏休みで外国人投資家の参戦も少なく、マーケットが品薄だから、先物などに振らされて変な動きをしているだけなんだと思いますけどね。それにしても、外国人投資家がいないから品薄で、マーケットがかく乱されるって言いますけど、これって変な話ですよね。
もっと日本人が買えばいいじゃん、って僕なんかは思うんですけど。外国人投資家に依存した日本のマーケットって、情けないじゃないですか。もっと日本人が自国のマーケットで取引をして、分厚い市場にしていけば、いちいち外国人投資家の動向に一喜一憂することもなくなります。
中野 本当にその通りだと思います。
渋澤 草食投資隊の地道な活動が、いつか日の目を見る時が来るさ。今夜も、その活動の一環でバーベキュー(笑)。大勢の投資家さんが集まるんでしょ。なんか夏休みっぽいよね。
藤野 そう。今夜だけは肉食投資隊ということで(笑)。
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