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IOC委員を前に誘致アピールをする麻生氏(中央)ら〔PHOTO〕gettyimages
スクープ イスタンブール、マドリードに勝利 2020年逆転!オリンピック東京に内定
――これで株が上がり、東京は空前の建設ラッシュに。3000万人が日本にやってくる
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/36729
2013年08月19日(月) 週刊現代 :現代ビジネス
2020年オリンピックの開催地決定まであと1ヵ月。だが、招致活動の詳細を知る関係者の間では、東京開催はすでに揺るぎない事実になっている。東京の姿を激変させる「世界の祭典」。あとはもう、正式発表を待つだけだ。
■2回目の決選投票で東京に決定
2013年9月8日の日曜日は、日本中が明るいニュースで目を覚ますことになる。1964年以来となる56年ぶりの夏季オリンピックが、日本に、東京に戻ってくる。
2020年のオリンピック開催地は、9月7日(現地時間)にアルゼンチンの首都ブエノスアイレスで行われるIOC総会の投票により決定される。だが、その日を前にすでに大勢は決した。財務省の官僚たちは、東京オリンピック開催決定を前提に動き出している。
「招致推進議員連盟の会長を務めるのが麻生太郎財務大臣ということもあり、確たる情報を得ているのでしょう。省内はオリンピック開催で景気が良くなるので、消費税増税も支障がなくなったと考えているようです。
アベノミクスの第3の矢として放った『成長戦略』は、中身がないなどと批判を浴び、株価も揉み合いが続いていますが、オリンピック開催が決まれば株価も上がる。これぞ究極の成長戦略ということでしょう」(財務省担当記者)
思えば2016年のオリンピック開催に名乗りを上げた4年前は、1次選考でトップの評価を得ながら、実際の投票では、リオデジャネイロ(ブラジル)に逆転を許した。
今回、立候補しているのは東京、イスタンブール(トルコ)、マドリード(スペイン)の3都市。7月3日には、この3都市がIOC委員の前で開催計画を説明する「テクニカル・ブリーフィング」が行われた。
その様子を現地取材したスポーツジャーナリストの松瀬学氏が語る。
「現地取材の感触では、東京とマドリードが並んでいて、少し後からイスタンブールが追っているという印象でした。イスタンブールはデモなど政情不安があるうえ、インフラ面などでの整備不足も否めない。マドリードはスペインの財政危機がネック。計画、都市力を冷静に判断すれば、東京が有利です。
ただし、長らくIOCを牽引してきたサマランチ前会長(故人)がスペイン出身で、その息子がIOC委員を務めている関係上、義理でマドリードに投票する委員もいるでしょう」
松瀬氏が指摘するように、都市そのものの実力よりも政治的力学が働く投票では、マドリードがトップに立つと見る専門家は少なくない。ただし、これですんなり決まるわけではない。投票で過半数の票を獲得する都市がなければ、決選投票が行われるからだ。
スポーツ評論家の玉木正之氏も、
「おそらく1回目の投票では過半数の票を獲得する都市が出ず、上位2都市による決選投票が行われるでしょう。つまり、2回目の投票を見越しての説得が重要になってくるのです」
と分析する。
■9月8日午前5時に発表
日本側は決選投票に備えて、イスタンブール支持と見られるIOC委員に接触。「1回目の投票はイスタンブールでいいけれど、マドリードとの決選投票になったら東京に入れて欲しい」と根回しを徹底しているという。
日本側の戦略的なロビー活動に加え、マドリードを取り巻く環境も日本に有利に働いている。
実は2024年のオリンピックは、前回開催からちょうど100年が経過するパリでほぼ決まっている。つまり、2020年がマドリードになれば、2回連続ヨーロッパでオリンピックが開かれることになる。
しかも、スペインでは7月24日に列車事故が起き、79名もの死者を出したばかり。原因は運転士の不注意によるものだったが、事故現場はスピードの自動制御装置が働かない区間。オリンピックにおける大量の人員輸送を考えれば、鉄道の安全対策不備は大きなマイナス要因になった。
こうした事情も考えると、1回目の投票でマドリードに負けて、2回目の決選投票では東京がマドリードを逆転。東京でのオリンピック開催が発表されるのは日本時間で9月8日の午前5時。テレビ局ではTBSが深夜1時から、3都市による最終プレゼンや、投票の様子、そして決定までを長時間生放送することを決めた。このIOC総会で「東京」の名前が正式に呼ばれた瞬間から、日本は7年後の本番に向けて大きく動き出す。
では、オリンピックが決まった後、どんなことが起きるのか。
1964年の東京オリンピックでは東海道新幹線が開通し、カラーテレビが普及。日本中がオリンピック景気に沸いた。今回の東京オリンピックは「コンパクト五輪」をコンセプトに、晴海に建設予定の選手村を中心に半径8km以内のエリアで競技と式典を行う計画だが、そこから得られる経済波及効果は大きい。
たとえば、東京2020オリンピック・パラリンピック招致委員会と東京都スポーツ振興局の試算によれば、今回の東京オリンピックの経済波及効果は約3兆円というが、元東京都副知事で作家の青山やすし氏は「3兆円というのは直接的にカウントできる効果だけで、本当の経済効果は計り知れない」と語る。
「たとえば、'64年の東京オリンピックでは『道路の拡幅と立体交差』をキーワードに都市構造を改造しました。新たに作った首都高速道路はあらゆる道路と立体交差するということで、高架式かトンネルを掘って地下を通した。
実はこうした立体交差式の道路はニューヨークやロンドンなどの大都市にもほとんどない。東京も渋滞はありますが、ニューヨークやロンドンなどと比べればかなりマシなのは、そのおかげです。
もともと、オリンピックで選手団や観客をスムーズに運ぶことを目的に考えられた立体交差ですが、結果的に現在まで50年以上も、日本の経済成長に貢献したと言えます。その効果は3兆円とか5兆円といったオーダーではありません」
折しも日本はアベノミクスの真っ最中。一時期の勢いはないとはいえ、オリンピック開催による「オリンピノミクス」が加われば、再び株価も上昇気流に乗っていく。
現に「2020年東京オリンピック内定」のムードを察知した株式市場では「オリンピック関連銘柄」として、建築・運輸・観光関連企業の名前が挙がっている。意外なところではフィットネスクラブを経営する企業やスポーツ用品メーカーも関連銘柄と見られている。これは、前回の東京オリンピックで日本中にママさんバレーブームが起きたように、日本人のスポーツ熱の高まりが期待できるから。いかにオリンピック効果とそれに対する市場の期待が大きいかを物語る。
「オリンピックが行われる2020年頃までの経済状況を見通すと、アベノミクスが成功して、デフレから脱却できれば、日経平均株価は2万円を上回ってもおかしくありません。
オリンピックには消費を活性化させる効果が少なからずあり、開催直前がもっとも消費が増えるでしょう。デジタル家電を買い換えたり、観戦ツアーに行ったりという国内の需要が増え、外国人観光客もたくさん来ます。そのころまでにアベノミクスの効果が出ていれば、日経平均で3万円超えもあるでしょうね」(第一生命経済研究所・永濱利廣氏)
本誌は今回、東京オリンピックが決まってから開催までの7年間で、日本にどんな変化があるか、各界の専門家に話を聞いた。
徹底比較!東京オリンピックが日本を変える
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競技会場などの施設については、開会式やサッカーなどが行われるメイン会場・オリンピックスタジアムは前回と同じく国立霞ヶ丘競技場を改修して使用。同様に国立代々木競技場や日本武道館も改修して使用する計画になっている。全35会場のうち、15会場はこれら既存施設の改修で対応し、20施設を新設する。
しかも、この20施設のうち、突貫工事で作られる仮設会場は9施設。残る11施設はオリンピック後も恒久的に使う計画があり、東京が本格的な建築ラッシュに沸くことは間違いない。
そのなかでも、劇的に変わると見られているのが、お台場である。
■インフラは大丈夫か
大阪商業大学の谷岡一郎学長が言う。
「2020年までにはお台場にカジノが完成しているでしょう。カジノと聞くと単なるギャンブル施設を思い浮かべる人もいますが、国際的には買い物もショーも楽しめる統合型リゾートという感覚です。
その経済効果は、シンガポールを見ればわかります。カジノが解禁されたシンガポールでは2010年以降、二つのカジノが作られ、それぞれ約5000億円が投資されましたが、すでに投資分は回収、昨年1年で合計6000億円の収益が出たとされています」
オリンピック観戦に来た外国人観光客がもう一泊してカジノに寄れば、その移動にかかる料金や、食事代、宿泊代も日本に落ちる。谷岡氏によれば、2018年にはお台場カジノが実現する可能性があり、政治評論家の浅川博忠氏も「秋には国会にカジノ実現のための法案が提出される。その直前に東京オリンピック開催が決まれば、追い風になるのは間違いない」と言う。
本番に向けて確実に姿を変えていく東京に、どれくらいの数の外国人が訪れるのか。
日本政府観光局の統計では昨年1年間で日本を訪れた外国人観光客は約835万人。国交省は「観光立国」を旗印に、2019年までにこの数を2500万人に増やす計画を立てている。もちろん、ここにはオリンピック効果は含まれておらず、観光客に選手団やその家族、通訳や報道関係者なども含めれば、2020年の1年間で、3000万人ほどの外国人が日本に訪れることも想定される。
「ただでさえ、いまは円安で外国人観光客が増えていますが、観光地としての日本・東京をアピールするのに、オリンピックは格好の機会。それを一過性にせず、リピーターとして取り込むことが、ビジネス的には重要です」(経済評論家・山崎元氏)
せっかく日本に来たのに、空港は不便、道路は渋滞で電車は満員というのでは印象は最悪。現在の都内交通機関はオリンピックで外国人や日本人観光客が大量にやってくれば完全にキャパシティオーバーだから、交通インフラの整備は今すぐ手を付けなければならない課題となる。
まずは空港。航空ジャーナリストの坪田敦史氏は「北京首都国際空港もオリンピックに合わせて大きく変わり、便利になった。羽田もインフラ整備が行われるでしょう」と言う。具体的には国際線の深夜発着のため、滑走路を拡張。空港へのモノレールなども24時間化が検討されている。
次に都内の移動手段である道路。
「首都高には修繕が必要な老朽化部分が9万7000ヵ所もあります。そもそもコンクリート建造物の寿命は50~60年とされ、ロンドンでのオリンピックが1908年、1948年、2012年と開かれたように、道路を改修すべき時期と同じ間隔なんです。ロサンゼルスも1932年と1984年開催ですから同様。東京も前回オリンピックから56年ぶりになりますので、首都高の改修にはちょうど良いタイミングです」(モータージャーナリストの清水草一氏)
東京都は3・11を機に、建造物の耐震化を目標に掲げており、「復興オリンピック」というテーマ的にも、首都高の改修・耐震強化は防災都市・東京のアピールになる。同時に2014年には首都高中央環状線が全線開通し、現在は約40分かかる羽田-新宿間の所要時間も半分に短縮される見通しだ。
鉄道評論家の川島令三氏は「鉄道網も整備が進む」と語る。
「まず都営地下鉄の24時間化が本格的に検討される。また、都営浅草線の一部にバイパス線を新設することで、羽田-成田間を直通約50分で結ぶ計画にも弾みがつく。ゆりかもめは、東京駅まで延び、東京湾をぐるっと一周させる計画があり、これでお台場を訪れる観光客の利便性が格段に高まることになります」
■日本人が自信を取り戻す
オリンピックを前に、日本の実力が再認識されれば、国際的な地位も上がる。いまはアジアの盟主の座を中国に奪われた格好だが、2020年頃には中国経済が傾いていると指摘する専門家が多いだけに尚更だ。
「経済が落ち込めば、中国は対外的な自己主張を弱める可能性があります。中国の指導者が国際協調路線を取るようならば、オリンピックが外交関係を好転させるいい機会になるかもしれません」(外交政策研究所・宮家邦彦代表)
もちろん、逆に中国が東京オリンピックをボイコットするような暴挙に出る可能性もあるが、その場合、オリンピックを外交的に利用するのかという国際的批難を浴びるのは中国のほう。日本は門戸さえ開いておけばいい。
最後に、1964年のカラーテレビのように、家庭に急速に普及するものについて触れておこう。家電メーカー各社にとって、オリンピックが一大商機となるのは今も昔も変わらない。
「来年から、現在のフルハイビジョンの4倍の解像度を持つ4Kテレビ用の試験放送が始まりますが、これは技術的に日本のアドバンテージは少ない。注目はフルハイビジョンの16倍の解像度があるスーパーハイビジョンの8Kテレビ。この8Kは2025年の放送を目指していましたが、総務省はこれを2020年に前倒しすると発表したばかり。明らかに東京オリンピックが開催されることを前提にした計画です。
8Kの技術開発は日本が進んでおり、今度の東京オリンピックは世界で初めて8Kで収録、放送されるオリンピックになる。この技術で世界を圧倒するチャンスです」(IT・家電ジャーナリストの安蔵靖志氏)
今回の東京オリンピック開催決定は、何より日本人が明るさと自信を取り戻す契機になる。
再び日本の底力を世界に見せつける晴れの舞台・東京オリンピック。2020年に向けた号砲が鳴り響くまで、あと1ヵ月だ。
「週刊現代」2013年8月17日・24日号より
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