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2013年08月17日 日刊ゲンダイ
ワタミ、ユニクロ、佐川急便、ヤマト運輸……。
厚労省が9月に行う、いわゆるブラック企業の監督指導先には、こんな大企業の名までが挙がっているという。
具体的には、労働基準監督官が過重労働の疑われる約4000事業所を立ち入り調査するほか、9月1日には被害を受けている労働者からの電話相談も受け付ける。
では、我々が被害を訴えれば、労働基準監督署はブラック企業に「ガツン」とやってくれるのか。これが、思ったほど簡単ではない。
社会保険労務士の稲毛由佳氏がこう解説する。
「むしろ、訴えた当人には受難が待ち受けているかもしれません。理由は2つあります。まず、訴えた当人が、企業の不当労働の実態を立証しなければいけないこと。例えば、サービス残業の証拠としてタイムカードの記録を提出したとします。しかし、ブラック企業はある意味、確信犯的に不当労働をさせているので、〈タイムカードに記載されていても、労働していたとは限らない〉と反論し、決定的な証拠にはなりません」
ドロボーに金を盗まれたと訴えても、「おまえが立証できなきゃ逮捕しない」と言われるようなものだ。
しかも、企業によっては大人数の顧問弁護士を抱えている。個人でその連中を相手にするのは至難の業だ。
「2つ目は、匿名の通報では、なかなか勝ち目がないこと。やはり実名でないと、労基署も動きづらい。でも、ほとんどの人は会社に名前がバレるのが怖いから、二の足を踏んでしまうのです」(稲毛氏=前出)
労働基準監督官が全国で約3000人と少ないこともネックだ。
東京労働局中央労働基準監督署がこう言う。
「情報提供があれば、必ず監督官が企業を立ち入り調査します。ただ、人員の問題もあり、あす、あさってにすぐというわけにはいかないのが実情です」
後回しにされているうちに、闘争心は萎えてくる。次の仕事も探さなければいけない。こうやって、ブラック企業は逃げ延びるのだ。
リストラ部屋で仕事を与えられないといった個別のケースではどうか。
「労働基準法に〈労働者が望む仕事をさせる〉という条文は存在しません。したがって、極端に言えば、会社は労働者に草むしりさせてもよく、労基署ができるのは〈斡旋〉ぐらいです。離婚裁判の〈調停〉と同じで、お互い歩み寄りましょうと言えるだけ。それじゃあ、民事で争えるかというと、会社も訴えた人のウイークポイントを突いてきます。〈いかに無能な人材であるか〉を散々指摘され、心が折れる人が多いのです」(稲毛氏=前出)
労基署に期待してもムダかもしれない。
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