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租税回避 −グローバル企業による課税の公平性からの逸脱行為
http://president.jp/articles/-/10274
PRESIDENT 2013年8月12日号 公認会計士・税理士 柴山政行 構成=高橋晴美 図版作成=ライヴ・アート
6月に開催された主要国首脳会議(G8サミット)で対策に向けたルールづくりが合意されるなど、グローバル企業による租税回避が問題になっている。租税回避は何らかの方法で税の負担を軽くする1つの類型だ。
日本国憲法は84条で立法によらなければ課税はできないという、「租税法律主義」を定めている。つまり、法律に基づいて課税が行われるということだ。
もちろん、その法律に反する行為は「脱税」となる。ただし納税者は、その負担をなるべく軽くしたいと考えるのが常で、法律に従いつつ条文が想定する常識の範囲内で税負担を軽くする行為を「節税」と呼ぶ。そして、形式上法律には従っているものの、条文の想定する常識の範囲から外れた、いわゆる“グレーゾーン”の行為が租税回避なのだ。
いいかえると、それは社会通念に照らし合わせてみて不自然なことである。祖父が孫を養子にしたり、相続人を増やして基礎控除を多くするために養子縁組をしたりすることなどは、以前から議論の対象となってきた。これによって相続税などを低くしようとするのは、場合によっては課税の公平性を害するとも考えられてきたのだ。
最近話題になっている租税回避は、税率の低い国に子会社をおき、そこに利益を集めて税負担を軽くするというもの。
たとえば、税率が高いA国にある本社が、税率の低いB国にある子会社に製品を原価に近い価格で販売する。次にB国の子会社は税率の高いC国の孫会社に利益を乗せた高い価格で製品を売る。製品を安く売ったA国の本社、高く買ったC国の孫会社は利益が抑えられ、高い税率でも税負担が小さくなる。一方、B国の子会社は高い利益を挙げているものの、税率が低いので税負担は小さくなるというカラクリだ。
各国にある個別の会社ごとに納税をするが、決算はグループ連結で行う。結果、税負担を低く抑えたうえ、その分だけ最終利益に上積みした好決算を株主に示すことができて、企業にとっては“一石二鳥”なのだ。
ここでいうB国の役割を果たすのが、税金がゼロ、または税率が極端に低い「タックスヘイブン(租税回避地)」と呼ばれる国や地域だ。英領のケイマン諸島やマン島、ガーンジー島の法人税はゼロないし非常に低税率として有名だ。税率を決めるのはもちろん各国の自由。産業がない国や地域では、企業誘致を図るために税率を抑えることがある。
しかし、欧米では財政の悪化から増税や歳出削減などで国民の負担が増しており、租税回避を図る企業、それを容認している税制のシステムに対して批判が高まっている。グーグル、アマゾン、スターバックスなど多額の利益を挙げるグローバル企業が、軒並みタックスヘイブンを使って税負担を逃れていると報じられたことも大きな影響を与えている。
同じ経済取引ならば、誰がそれを行っても同じ額の税金を払うべきという考え方は、当然と思うはず。これが課税の公平性であり、今回の租税回避はこの公平性を害するものとして問題視され、対策の必要性が論じられているのだ。
メスを入れるとすれば、1つひとつの事例をチェックしていくしかない。前述の例では、A、B、Cの3つの国が、「親会社から子会社への販売価格は低すぎないか」「子会社から孫会社へ高く売りすぎでは」など、合同で調査する必要がある。移転価格の問題にも関連しうる話だ。とはいえ、調査をするにも数多くの壁に直面する可能性が高い。
ただし、ゆきすぎた租税回避は各国の国民のなかに大きな不公平感を生み、社会基盤の不安定化をもたらしかねない。今回のG8の取り組みも必要不可欠なものと考えられる。
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