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消費増税決断で、再び1ドル103円目指す
http://toyokeizai.net/articles/-/17643
2013年08月15日 高島 修 :シティグループ証券チーフFXストラテジスト
13日、日本経済新聞(朝刊)は一面で、安倍首相が消費増税と一体で法人税減税を検討するように指示したと報じた。実現の可能性が高まれば、との条件付きだが、これまでマチマチだった為替市場の消費増税に対する反応は、今後、「消費増税→円安」、「増税見送り→円高」という形に収斂していくことだろう。
そして、9月前半から10月前半と言われるが、実際に安倍首相が消費増税を決断することになれば、今年10-12月期にはドル円が年初来高値の103円台突破を試す可能性も浮上しよう。一方で万一増税見送りとなれば、思わぬ円高リスクが高まりかねない。
■ファンダメンタルズから見た、消費増税の影響
まず、消費増税が円相場に与えるファンダメンタルズ面での影響だが、「円安」と考えている。
日本の消費税は1989年の3%で導入され、1997年に5%に引き上げられた。昨年の秋に国会を通過した増税法案では、それを2014年4月に8%へ、2015年10月に10%へ税率を引き上げる予定である。
89年と97年の消費税の導入、引き上げの時を振り返ると、二度とも、ドル円は増税後1年ほど円安推移した。その時の日銀短観を見ると、増税を機に景況感が頭打ちとなり、その後大きく悪化していたことが分かる。90年は日本のバブル崩壊の年であり、98年には長銀の経営破綻など金融危機を経験した。そうした中で、米国を始めとした海外諸国との景況格差拡大が意識され、円安が促されたと考えるのが妥当であろう。
円安進行のもう一つの理由は消費増税に伴うインフレ率の上昇であろう。それに伴って実質金利が低下し、円安圧力が高まると考えられる。
昨秋以降の円安局面でも、一部は消費増税に伴う物価水準の上昇を織り込む必要もあり、債券市場の期待インフレ率(BEI)が急上昇した。名目金利の上昇が抑制される中、実質金利に相当する物価連動債利回りは急低下。物価連動債利回り格差が米ドル有利に拡大し、円安が促されてきた。
BEIは今年5月をピークに足元まで頭打ちとなってきた。その間、ドル円は円高で推移してきた。だが、消費増税が正式に決まるのであれば、BEIは5月の水準を超えて上昇する公算が高い。
しかも、この場合、日銀は消費増税後の景気悪化を防ぐために、追加緩和措置の検討を始める可能性が高まる。特に、財務省出身の黒田総裁は財政再建の必要性を強く認識していると見られる。実際、8月8日の定例会見の際、黒田総裁は「脱デフレと消費税増税は両立する」と言明。暗に、政府に法案通りの消費税引き上げを促した。事実上、これは消費増税時に追加緩和の準備があることを認めたに等しい。
BEIが上昇する中、日銀の緩和強化で名目金利の上昇は押え込まれ、実質金利は一段と低下する可能性が高い。為替市場では円安圧力が高まると考えるのが自然であろう。
■消費増税が国際収支に与える影響
今回、もう一つ考慮すべきなのは日本の国際収支である。思うに、昨秋以降の円安のファンダメンタルズ的な背景となったのは日本の国際収支の悪化であり、消費増税もこれに影響を及ぼす。
今秋に消費増税が確定的となれば、今年10〜12月期ぐらいからは、来年4月の消費増税を前に駆け込み需要が日本の内需を押し上げ始めるだろう。底堅い内需を背景に、輸入は改めて増加圧力を受け、貿易収支の悪化要因、ひいては円安要因として作用するはずだ。
もちろん、その反面、消費増税後は駆け込み需要が剥落、輸入が減少して貿易収支は改善するはずだ。だが、その時に米経済が堅調を維持していれば、上記した日米景況格差や実質金利差の拡大に市場の関心は集中。市場の中で特段、日本の貿易収支の改善が円高要因として材料視されることはないと思われる。
逆に消費増税見送りとなれば、駆け込み重要は発生せず、期待インフレ率の上昇や日米実質金利差拡大は想定しがたくなる。日銀の追加緩和観測も高まりにくくなるかもしれない。このように、ファンダメンタルズ面や政策対応面などを考慮すれば、「消費増税→円安」、「増税見送り→円高」と解釈するのが妥当だと考えている。
■消費増税のマーケット的解釈は?
ただ、これまでは、消費増税に対する為替市場の反応はマチマチで、いかにも、マーケット的な解釈・反応を示してきた。
つまり、一つには、消費増税に伴う景気減速が日本株を下落させ、リスク回避的な円高につながる反面、増税見送りは日本株にポジティブで、リスク選好が強まり、円安要因になるという解釈がある。その一方で、増税見送りは日本国債市場の下落を招き、アベノミクスへの失望感をかき立て、持高調整的な日本株安、円高につながるとの解釈もある。
安倍首相の消費増税に伴う法人税減税の提案は、こうしたマチマチだった為替市場の「マーケット的な解釈」を上述した「ファンダメンタルズ的な解釈」に収斂させることに貢献しよう。
ただし、ここで注意する必要があるのが、法人税減税そのものは本質的に、決して円安的な政策ではないということだ。潜在的には海外からの対内直接投資を増やす可能性があり、一方で日本企業による対外直接投資を増やす要因としては働きにくい。国際収支面のみに着目すれば、法人税減税はむしろ円高促進的な政策とさえ言える。
だが、アベノミクスの第3本目の矢である成長戦略に失望したマーケットは、秋の臨時国会で提唱されるであろう成長戦略第2弾において、法人税減税という分かりやすい政策が盛り込まれるか否かに注目してきた。
マーケット的に解釈するならば、法人税減税は「株高→円安」的な政策であり、消費増税という「株安→円高」的な政策を打ち消すものとして期待が高まる。こうして、消費増税に対する市場のネガティブな反応は、消費増税に伴う法人税減税の可能性の高まりによって、次第に緩和・中和されていく。
■10〜12月期に、ドル円は103円に再トライ
その結果、上述したファンダメンタルズ的解釈にマーケットの反応が収斂していくことが見込まれる。つまり、従来に比べ、「消費増税→円安」、「増税見送り→円高」との解釈・反応が為替市場で定着し始めるのではなかろうか。
9月上旬から10月中旬のどこかと言われる安倍首相による増税可否の判断に向けて、為替市場の反応はもう少し分かりやすいものになっていくだろう。もちろん、まだ法案通り、2014年に3%の消費増税になると決まった訳ではなく、状況はまだ不透明だ。現在、5月以降の上値抵抗線が位置している99円台を超えてドル高円安が進むことは、目先、そう容易ではなかろう。ここにレジストされる間は95円台への反落リスクはくすぶり続ける。
ただ、シティグループは60〜70%の確率で、来年に予定通りの消費増税が行われると見込んでいる。最終的に、安倍首相が消費増税を決断すれば、10〜12月期に100円の壁を突破し、5月の直近高値(103円台)を試す可能性が高まると見る。
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