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http://bylines.news.yahoo.co.jp/ogasawaraseiji/20130814-00027259/
2013年8月14日 11時35分 小笠原 誠治 | 経済コラムニスト
法人税を減税したらどうかね、君!
安倍総理が法人税の実効税率を下げるように関係機関に指示したことが判明したと報じられています。
貴方は、この法人税減税の話をどうお思いになるでしょう?
何故、企業ばかり優遇するのだという意見が予想される一方で、法人税率が高すぎると、国内企業の海外脱出を促し、そうなると雇用の機会が失われ、さらには税収自体も減少してしまうではないか、というような声も予想されます。
いずれにしても、何らかのメリットがあると考えるから法人税の減税を主張する人がおり、そして、そのような考え方に同調するからこそ総理も法人税を減税したらどうなのかと示唆しているのだと思うのですが‥
法人税を減税すると日本経済にどのようなメリットがあるのか?
(1)法人税率が低いと、海外企業の日本進出を促進することができる。
(2)反対に、法人税率が高いと、国内企業の海外脱出に歯止めが利かなくなる。
(3)法人税を引き下げることによって、設備投資を促進することができる。
まあ、以上のようなことが以前から言われているのですが、このうち(3)の設備投資を促進することができるという意見は最近では余り聞かれなくなる一方で、総理は、(1)の海外企業の日本進出を促進する効果を強調し、そのまた一方で経済界は、(2)の理由、つまり法人税を引き下げないと日本から脱出するが、それでもいいのかと言っているのです。
ここで、貴方にまたお聞きしたいと思います。どう思います? 法人税の減税に賛成しますか?
私は、賛成とか反対と言う前に、国民の生活に大きな影響を与える税制について、総理が思いつきのような感じで言及することにそもそも納得が行かないのです。
だって、そうでしょ? 税金を誰に掛けるか、誰が税金を支払うのか、という国民や企業にとっての死活にも関係する話を、そんなに軽々しくして欲しくない、と。もちろん、税制をより良いものにするために絶えず検討を重ねることが求められるとしても、結論を示した上で、その方向に誘導するような総理の言動が望ましいものでないことは明らかではありませんか。
それに、そもそも法人税の減税について、麻生副総理はかねてから反対しているではありませんか。海外との競争を強いられる製造業は全体の25%にしか過ぎず、そのための法人税の減税は望ましくない、と。法人税を支払っている企業は一部にしか過ぎない、と。
総理と副総理が反対の意見なのに、どうやって意見をまとめていくのでしょうか? だから、私は、「思いつき」だと言っているのです。
それに、仮に法人税率が低いことが、海外から企業を誘致する効果があったとしても‥或いは、国内企業の海外への脱出を防ぐ効果があったとしても、しかし、法人税を引き下げれば、益々税収が少なくなるのは必至。だとしたら、法人税の減収を穴埋めする財源を同時に示さないければ、税制改革の案として成り立たないのです。
そうでしょ?
その一方で、総理は、プライマリーバランスの赤字を2015年度までに半減して、そして2020年度までに黒字化するなんて言っている訳ですよね。そんなことできる訳がないじゃないですか。
法人税を減税する代わりに、どこに財源を求めようとするのか? 消費税をさらに上げるというのか?
しかし、安倍総理は、ご承知のように来年の4月に消費税を引き上げることさえ、未だに決めかねているのです。そのようななかで、法人税を引き下げて、消費税をさらに引き上げるなどと総理が言う筈がない。
だとすれば、どこに財源を求めるのか?
その肝心なことについては後回しするようなことを、過去30〜40年ほど続けてきた結果が、こんなに巨額な借金の山なのです。
或いは、海外からの企業誘致が成功を収めれば、日本経済が飛躍的な発展を遂げるから、そうなれば、税収も自動的に増える筈だ、と考えているのでしょうか?
多分、そういうことなのでしょう。つまり究極の上げ潮路線。増税などするべきではなく、減税をすることによってむしろ税収は上がるのだ、というあま〜い考え。幾らNHKであまちゃんの流行っているからと言って、それは甘すぎる!
それに、仮に日本だけが法人税率を異常に低くして、海外の企業を引き抜くような行動に出れば、それこそ海外からバッシングを受けるのは必至。海外にとっては、日本ほど叩きやすい国はない!そして、日本ほど叩かれて、態度を改める国はない! だから、海外は日本を思うようにコントロールする術を心得ている。そんな日本が、本当に海外から企業を惹きつけるほど法人税を引き下げることができる筈がない。
となれば、法人税を引き下げるとは言っても、余り目立ったことはできない。つまり、何の効果もない法人税の減税となる恐れが大なのです。
しかし、何の効果もないというのは正しくはありません。効果はあるのです。それは、国に納める法人税が少なくて済むようになるので、株主や企業経営者は大助かり。
当然、幾ら税金をまけてもらったかが分かるのです。そして、それを政治家もちゃんと分かっている。
この後、どのようなことが行われやすくなるのかお分かりですよね。
税金を負けてもらったら、そのお礼をしなければと考えるのが人情。しかし、違法なことはできない。結局、企業の政治献金が増える、と。
しかし、その一方で税収が減るのは確実だから、消費税を益々上げる必要が出てくる。
それが分かっていて、そのことについて今は考えない。
そんな人々が政治家をやっていて、どうして国民が安心して暮らすことができると言うのでしょう。結局、自己防衛しかない、と。年金だって、本当に予定の年齢に達したときに支給されるかどうか分かったものではない、と。
そうやって自己防衛するから、消費が活発にならないという事情もあるのです。
以上
小笠原 誠治
経済コラムニスト
小笠原誠治(おがさわら・せいじ)経済コラムニスト。1953年6月生まれ。著書に「マクロ経済学がよーくわかる本」「経済指標の読み解き方がよーくわかる本」(いずれも秀和システム)など。「リカードの経済学講座」を開催中。難しい経済の話を分かりすく解説するのが使命だと思っています。
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