01. 2013年8月13日 15:14:46
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【第242回】 2013年8月13日 週刊ダイヤモンド編集部 朝日生命保険社長 佐藤美樹 わかりやすい介護保険が好調 今後の基金償還は銀行と相談 総資産5兆6505億円(2013年3月末時点)と、大手生保とはいえない規模にまで縮小した朝日生命保険だが、いまだ保有契約高は30兆円を超え、営業職員数は約1万2000人を抱えるなど、一定規模の存在感を保っている。その朝日生命は、先駆けて介護保険に注力したり、新システムを構築することで保険ショップ向けの廉価な医療保険を開発するなど、新たな取り組みを始めている。一方で、基金の償還を先送りするなど、先行きに不透明感を残してもいる。 さとう・よしき/1949年12月5日生まれ。慶応義塾大学経済学部卒業。1972年朝日生命入社。金融法人部長や営業企画部長を経て2003年執行役員営業企画統括部門長。04年取締役営業企画統括部門長、05年取締役経営企画統括部門長を経て08年に社長に就任。 Photo by Toshiaki Usami ――昨年から介護保険の販売に力を入れています。
わが社はどちらかというと第三分野に注力する方針です。この分野は、ニーズがまだまだ伸びるというよりも、ニーズが新たに生まれている分野です。とりわけ、それが顕著なのが介護分野です。寿命が延びるに従って、人生の最後のほうは誰かの手を借りて生きていかねばなりません。これまでは家族が支えてきましたが、その家族も少なくなってきており、他人の手を借りねばならなくなってきたということです。そういった期間が誰にでも訪れるようになりました。 これは新たに生まれている領域だと考えています。とりわけ人口の多い団塊世代の介護の問題は、10年後から本格的になってきます。その準備を気にされる人が増えていると感じていますので、介護保険に力を入れています。 ちなみに、昨年下期から、手術をしていても3年たっていれば加入できるような、告知内容を緩和した引受基準緩和型の保険も販売を開始しています。これも高齢化対応のひとつです。 ――今、販売している介護保険はどういった商品内容ですか。 公的介護保険に連動しており、要介護1から保障される内容で、わかりやすさにこだわっています。また、保険料は従来の半分から7割程度に抑えました。非常に好評なのと、介護保険の分野では他社より先行していることもあって販売は好調です。 ――介護保険の販売件数は何件ぐらいですか。 昨年1年間の販売件数は6万4000件で、累計では8万件となっています。終身保険に介護特約がついたものを除くと、業界トップクラスの売れ行きです。 ――やはり女性の加入が多いのですか。 確かに、介護は男性にはピンときづらいですね。身内などに経験があれば別ですが、理屈ではわかっても、自分が奥さんや親の介護をすることになることを実感として持ちづらいためです。一方、女性の方が感覚として介護の必然性を感じやすいこともあってか、比較的若い女性であっても関心は高いですね。 営業職員であれば、40歳ぐらいの女性によく販売しています。銀行窓販では、みずほ銀行さんで売っていただいていますが、60歳ぐらいの女性が多いですね。 それに、民間の介護保険の普及率はおそらく14%程度にすぎません。つまり、86%は未加入で白地の状態です。当社では、企業に行って40歳以上の社員の方を集めていただき、介護制度についてセミナーなども行っています。 ――介護の分野は、公的介護保険についても制度がまだ固まっていません。それ故、今、民間の介護保険に加入しても不十分ではないかとの指摘があります。 弊社の商品は、公的介護保険に完全に連動した設計にして いますので、将来の制度変更にも対応できるようになっています。また、公的なデータがあるので将来推計した上で商品設計しています。 第三分野は引き続き注力 ――先日行われた金融審議会(首相の諮問機関)では現物給付がテーマのひとつとなりましたが、どのように対応されますか。 現物給付には、なかなか難しいハードルがあります。この介護施設に入れますよ、といったところで、30年後には老朽化していたり、価格も変動していたりするかもしれません。1年間ぐらいの短期であれば問題ありませんが、30年先などの話になれば難しい。 Photo by T.U また、介護施設ではなくて病院の話ですが、弊社にも朝日生命成人病研究所附属病院があります。この病院は日本橋にありますが、近郊の方しかサービスを受けることができません。そういったジレンマを抱えており、介護施設でも同様だと考えています。
となれば、保険金を直接、介護施設に支払うかたちのほうが現実的だと思います。まだ本格的に検討している訳ではありませんが、お金であればオールマイティーですので、介護施設と提携すれば可能だと思います。 ――介護保険の利益率は医療保険に比べて低いと思いますが、どれくらいの水準でしょうか。 確かに医療保険よりは落ちますが、医療保険と一般の死亡保障の真ん中あたりといったところです。 ――医療保険や介護保険など第三分野に注力する方向に変更はありませんか。 第三分野については人口動態も変わってきていますので、引き続き注力していきます。中期経営計画のコンセプトも「『生きる』ことを支える」です。また、シニアだけではなく、独身者も増えていますので、働けなくなったときの保障なども重要になっています。その点からも第三分野は引き続き力を入れていきます。 ――保険ショップ向けに、保険料が2〜3割安い医療保険を販売すると発表しました。 この保険は、営業職員が得意とするマーケット以外のお客さま向けに用意しました。顧客のニーズを捉えてスピーディーに商品を供給しようと考えています。そのため、従前のシステムに加えて、新たに代理店向けのシステムを作りました。昨年の秋口から開発を進めており、その第一弾の商品となります。 営業職員チャネル以外では、三つの販売チャネルを柱に考えています。電話で保険販売を行うテレマーケティングと保険ショップ、銀行窓販です。このチャネルは営業職員と競合しませんし、伸びています。 ――三つのチャネルの特徴はどのようなものですか。 先行しているのはテレマです。セゾンカードやオリコカードなど提携しているカード会社が14社ほどあります。販売しているのはシンプルな医療関係の保険で、さらに充実させていきます。中には、カード発行カウンターでの対面販売もあります。 また、生命保険にも関わらず、書面のやり取りだけで完結するシステムを取っています。 銀行窓販については、4月の保険料値上げ以降、各社同様に低迷しています。今後は、銀行でも介護保険にも力を入れていただきます。銀行にはシニアのお客さまも多いので売れると期待しています。 保険ショップについては、介護が売れ始めています。ショップは若いご夫婦のお客さまが多いですが、幅広い年齢層のお客さまが訪れ始めているようです。 商品を供給しているショップの店舗数は約270店舗で、委託会社数は60社ほどになります。課題は稼働率のアップです。ただ、今回、投入する新商品によって飛躍的に稼働率が上がると期待しています。 基金償還はリファイナンスを含めて相談 ――営業職員チャネルの状況はいかがですか。定着率の低さや高齢化が問題視されています。 職員数は横ばいです。かつて新卒の方を採用したことがありますが、若い人の定着率は低いのが実態です。現在は、30歳代後半から40歳代で、会社に勤めた経験がある人を採用したいと考えています。今年6月からそういった方を採用し、固定給制を導入しています。試験的にスタートしたばかりですが、状況を見極めようとしています。 ――次に、業績面についてですが、足元の状況はいかがですか。 4月から標準利率の引き下げがありましたので、一部貯蓄性商品、年金などの保険料が上がりました。それによって銀行窓販含めて、各社同様に売り上げは減っています。ただ、弊社が力を入れている第三分野や、死亡保障は堅調に推移しています。 ――運用のほうはいかがですか。 リスク性の高い株式などは残高を減らしています。また、年末からアベノミクスによって各指標がよくなっていますので、いい決算内容となりました。 ――3年連続で基金の償還を見送りましたが、今後の見通しはいかがですか。 財源的には、前期の決算時に償還できるメドは立っていましたが、年度末の市況はアベノミクスによる期待によって急回復したものですので、先行きの不透明感が拭えませんでした。そこで償還したはいいが、また財務的にリスクを抱えることは避けようと考え、今年度はリスクバッファーを維持することにしました。 今後については、あくまで決算時点の市況や財務状況、資本政策などを踏まえて総合的に判断することとなりますが、リファイナンスを含めて銀行と相談しながら償還に向けて取り組んでいきます。 (「週刊ダイヤモンド」編集部 藤田章夫)
トップ > WEB記事 > テレサ・アマビール&スティーブン・クレイマー/HBRブログ Leadership 給料は、企業から社員へのメッセージとなる 2013年08月13日 テレサ・アマビール,スティーブン・クレイマー このエントリーをはてなブックマークに追加テレサ・アマビール&スティーブン・クレイマー/HBRブログのフィード 印刷 給料は、企業から社員へのメッセージとなるバックナンバープロフィール 1 2 » 社員のパフォーマンスを最も高める要因が「進捗」であるならば、「報酬」は重要ではないだろう――これは誤った認識であると筆者らは言う。進捗を左右する「インナー・ワーク・ライフ」と報酬は相関するのだ。 企業のリーダーは、最も価値のある資源は社員である、と臆することなく表明する。だが多くの人にとって、これは口先だけの決まり文句に聞こえる。ギャラップとヘルスウェイズは2008年1月から、最低1000人以上の米国成人を対象に「幸福度指数」を測定する世論調査を実施している。2011年の結果では、米国民が過去のどの年よりも、雇用に不安を感じていることが明らかになっている。なぜだろうか。我々は、約12000の業務日誌を分析し、また調査対象となった人々と対話を重ねることで、少なくとも1つの原因を突きとめた。すなわちマネジャーは、社員を評価しているということを彼らにどう伝えればよいのかわかっていないのだ。実際、マネジャーは無意識に逆のことをしてしまっている。
これらの業務日誌は、我々が呼ぶところの「進捗の法則」を明らかにした。人々が仕事に満足して、心からやる気を感じるために最も必要なことは、「有意義な仕事で進捗を得る」ことである。この研究結果をThe Progress Principle(未訳。関連論文「進捗の法則」は本誌2012年2月号)として出版したところ、その実用的な意味合いについて多くの質問を受けた。最も重要な(そして厄介な)質問は、報酬に関するもので、このような具合だ。「もし進捗が、意欲を高めるインセンティブや他の要因よりも重要であるなら、マネジャーは報酬についてはそれほど気を配る必要がない、ということなのでしょうか――進捗の支援こそが重要なのだから」。最もひねくれた質問は、「進捗の法則は、組織が給料を下げて手当をカットすることを正当化できるのではないか」というものだった。これらは誤解にも程がある。 我々の考えでは、社員が適正な(場合によっては手厚い)報酬を受けるべき理由は、少なくとも3つある。 第1の理由は、単純に、正しい行いだからである。 第2の理由として、社員に十分な報酬を与えることは、企業にとっても最大の利益につながる。進捗の法則には、2つの側面がある。すなわち、有意義な仕事で進展を得ることにより、人々は満足を感じるが、同時にさらなる進展を求めるようになる、ということだ。私たちはこれを、インナー・ワーク・ライフの効果と呼んでいる。つまり、職場での出来事に対して個人が経験する感情、認識、モチベーションの絶え間ない循環である。このインナー・ワーク・ライフがプラス方向の時(業務への満足感と内発的な興味を感じ、組織を前向きにとらえている時)、社員のパフォーマンスはよくなる。創造性と生産性、責任感が高まり、周囲の人々に平等に接するようになる。インナー・ワーク・ライフの質が悪い時には、パフォーマンスは低下する。また他の研究結果では、社員が所属する企業に対してマイナスの認識を持っていると、その企業の収益力は将来的には弱まっていく可能性が高いことが示されている。 そして不十分な報酬は、インナー・ワーク・ライフにマイナスに作用する。実際、アメリカ心理学会が行った最近の調査では、労働者の49%が「不十分な給料は職場でのストレスを高めている」と回答している。個人的な経済状況を心配し気を取られていれば、職場で創造的な解決策を生み出すことに意識を集中できないだろう。
十分な報酬が重要である第3の理由は、マネジャーのほとんどが気づいていない。すなわち報酬を渡すことは、決して給与明細を渡すだけの行為ではない、ということである。それは企業にとって1人ひとりの社員がどれだけ価値があるかを伝えるメッセージだ。たとえば、社員は心の中でこう呟くだろう。「報酬を多くもらえるのは、自分が高く価値されているからで、仕事も重要であるということだろう。けれども報酬が少ないと、会社にとっての自分の価値を疑問に思うし、仕事に重要性がないように思えてくる。自分に価値を置かない彼らのために、頑張る必要はないだろう」 ある優秀な女性ソフトウェア・エンジニアが記した日誌から、具体的な例を紹介しよう。彼女が所属する部門は過去にスピンオフされたが、再び同じ会社によって買収されることになった。このことを知った日の記述だ。 「今日、私が勤めるホテル・データは、ドリームスイート・ホテルの100%子会社になると聞かされた。私は28年前にドリームスイートに採用された。けれども1年半前、この会社は26年間勤めてきた私に辞表を提出するよう要求してきた。逆らえば解雇され、受け入れたとしても、ホテル・データでの仕事はあるが28年前に約束した待遇はすべて白紙にされる、という状況だった。26年間勤務してきた私に、一体何という扱いをするのだろう。私は1年半のあいだ、私を追い出した会社のために(クライアントとして)働いていたことになる」 人は過小評価されていると感じた時、できるだけ早い機会に会社を辞める。では、転職の機会が訪れる可能性が最も高い人とは、どのような人だろうか。それは、企業が求める技術や能力を持っている人、つまり企業が失ってはならない優秀な人材である。年が明ける前に、彼女は他の多くの同僚と同様、よりよい環境を求めて辞職した。会社が発するメッセージが、あまりにも無分別で軽々しくなってしまったからである。 皆さんにとって、報酬は価値を示すメッセージの他にどのような意味があるだろうか。 HBR.ORG原文:Valuing Your Most Valuable Assets October 10, 2011
テレサ・アマビール(Teresa Amabile) ハーバード・ビジネススクール(エドセル・ブライアント・フォード記念講座)教授。ベンチャー経営学を担当。同スクールの研究ディレクターでもある。
スティーブン・クレイマー(Steven Kramer) 心理学者、リサーチャー。テレサ・アマビールとの共著The Progress Principle(進捗の法則)がある。 |