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都内で11日に行われた大賞の発表会。ワタミフードサービスに投票が集まった(写真はコラージュ)
http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20130812/dms1308121810007-n1.htm
2013.08.12
厚生労働省が取り締まりに乗り出すなど、従業員に過酷な労働を強いる「ブラック企業」への批判が高まっている。そんななか、とりわけ悪質なブラック企業をインターネット投票などで選出するイベント「ブラック企業大賞 2013」が11日、都内で行われた。ワースト(大賞)に選ばれたのは、大手居酒屋チェーンの「ワタミフードサービス」。投票者の7割超が「ブラック中のブラック」としてノーを突きつけたワケとは−。
「大賞は…ワタミ」
登壇者がこう告げた瞬間、集まった約100人の来場者から割れんばかりの拍手が起こった。
ただ、それは賛辞の拍手ではない。労働法違反や違反スレスレの過酷な勤務実態が社会問題化するブラック企業。その最たる会社を選び出すワーストだったからだ。
同賞は、首都圏の若者を中心とする労働組合「首都圏青年ユニオン」や労働問題を専門とする弁護士、大学教授らで構成する「ブラック企業大賞実行委員会」が主催し、今年で2回目。
ブラックと認定する基準は、(1)労働法違反による行政処分が出ている(2)過労自殺などの劣悪な労働環境による犠牲者が出て、それが労災であると認定されている(3)労働環境などをめぐって裁判になり、企業側が負けている−など。公式ホームページ(HP)上での投票のほか、イベント当日の来場者の投票数によって大賞が決まった。
前もって8つの会社・団体がノミネートされたが、ワタミフードサービスは「全3万501票のうち2万1921票を獲得」(大賞関係者)し、得票数は71%のぶっちぎりだった。
なぜ、これほど非難を浴びたのか。
「2008年に新人女性社員が自殺し、昨年2月に労災認定された。にもかかわらず、会社は遺族との直接面談にも応じず、損害賠償金の確定を求めた民事調停を申し立てるなど不誠実な対応を続けている」(同)のが選考理由。
同社の創業者で先の参院選に自民党から出馬し、初当選した渡辺美樹氏(53)の言動にも注目が集まった。自殺が労災認定された直後の昨年2月、短文投稿サイト「ツイッター」の自身のアカウントに《命懸けの反省をしなければならない》と投稿したものの、その後の対応が遺族ら関係者の反発を招いた。
実行委員の1人でアジア太平洋資料センター事務局長の内田聖子氏は「反省を口にしながら、いまだに遺族に会おうとしていない。そればかりか、そのまま参議院選挙に出て当選してしまった。自分の会社で従業員を死なせてしまっても政治家になれる、という悪い前例を作ってしまった」と語る。
不名誉な称号をワタミフードサービスはどう捉えているのか。見解を求めたところ、「『ブラック企業』自体の定義が明確でない中で、その定義が明確でないものに対する見解を述べる立場にないと判断している」(ワタミ広報)との回答が返ってきた。
折しも厚労省が、9月を「過重労働重点監督月間」に指定し、法令違反が疑われるブラック企業候補約4000社の立ち入り調査を公表したばかり。
企業の劣悪な労働環境実態がクローズアップされてきたことから、会場には大学生や若い社会人らの姿も目立ち、都内の大学生(21)は「自分も就職を控えた身で他人事ではない。自己防衛のためにもブラック企業の実態を知っておくべきだと思った」と真剣な表情だった。
大賞のほかに、研究者が過労自殺した東北大が「特別賞」、女性社員の過労死が労災認定されたクロスカンパニーが「業界賞」などを受賞した。実行委員会では今後、賞状を「郵送か手渡しで送る予定」(先の内田氏)という。
実行委員の1人で労働問題に詳しい佐々木亮弁護士は「ここに取り上げた会社や法人だけではなく、イメージのいい大企業でも実態はブラックという例はある。新卒の若者は、正社員から転落すると非正規しかないと思い詰めがち。こうした若い労働者が、ブラック企業の標的になる。企業文化にどっぷりつからせることで思考をまひさせるのが典型的な手口だ。待遇や企業のあり方に少しでも疑問を持ったときは1人で考え込まないで誰かに相談してもらいたい」と話している。
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