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「中国夢」とは何なのか---北京オリンピック5周年記念日に考える経済発展の光と影 (現代ビジネス) 
http://www.asyura2.com/13/hasan81/msg/706.html
投稿者 赤かぶ 日時 2013 年 8 月 12 日 08:45:00: igsppGRN/E9PQ
 

「中国夢」とは何なのか---北京オリンピック5周年記念日に考える経済発展の光と影
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/36677
2013年08月12日(月) 近藤 大介 :現代ビジネス


「同一个世界、同一个夢想」(同じ一つの世界、同じ一つの夢)---2008年8月8日夜8時8分、中国人が一番好む末広がりの8の数字を、五輪に合わせて5つ並べた時間帯に、胡錦濤主席がこのスローガンを高らかに唱えて開会した、北京オリンピック。

あの興奮のビッグ・イベントから、丸5年が経過した。中国にとって、北京オリンピックとは一体、何だったのか。私は5周年の記念日に、北京オリンピックのメイン・スタジアム、通称「鳥巣」(ニアオチャオ)の前に立って考えてみた。

■高級レストランや高級ホテルはどこも閑古鳥

何と言っても今日は、「中国13億人の夢の祭典」と喧伝していた北京オリンピックから5周年である。当然、地元北京や中国各地から5周年を慶ぶ人たちが駆けつけて、「鳥巣」はお祭り騒ぎになっていると思っていた。

だが、正門南手の国家体育場南路に感慨深げに立っているのは、はるばる日本からやって来た私一人ではないか。気温34度の猛暑のせいか、道往く人も疎らで、彼らとて、懐かしげに眼前の「鳥巣」を仰ぎ見ることさえしない。いくら「人走茶涼」(人が去れば茶は冷める)と揶揄される中国社会とはいえ、あんまりではないか。

周囲を見渡すと、オリンピックの前後に何度も地上げされて、いまや1uあたり10万元(約157万円)もする超高級マンション群が聳え立っている。その一角にある「鳥巣」東脇の有名な高級広東料理店「阿亮蟹宴鮑翅楼」は、当時は中国の金持ちたちが押しかけていたのに、この日は閑古鳥が鳴いていた。

私はこの店に、2010年春、ある北京有数の富豪から案内されたことがあった。アワビ、フカヒレ、燕の巣・・・と、お大尽のような料理の数々に「五糧華冠」(マオタイと並ぶ高級白酒)まで出された。彼は5万8000元(約91万円)もの代金を、銀聯のゴールドカードで平然と支払っていたのを記憶している。

そんな思い出もすっかり、いまは昔である。その後、「鳥巣」の北側も回ってみた。北側には、田舎から出て来た観光客らしき一群が散見された。だが、オリンピック公園内に君臨する「北京北辰洲際酒店」(インターコンチネンタルホテル)も、ロビーを見渡すと、宿泊客がほとんどいないようで、ホテルの従業員たちは、ヒマを持て余していた。

聞くと、1泊1120元(約1万7500円)まで割引するという。5年前は1泊5万円近く取っていたので、落ちぶれたものだ。このホテルの2階にあるイタリアン・レストラン「意秀」にも、何度かランチ時に行ったことがあるが、不味いランチセットが一人あたり300元(約4700円)もしたものだ。いまは70元(約1100円)で食べられる。

オリンピック5周年の、このシラケきった様はどうしたのだろう? 当時、北京オリンピックの外交の事務方責任者だった外交官が知り合いで、オリンピック終了後、彼とこのホテルの1階の喫茶店で会ったことがあった。私が「北京オリンピックの成果とは何か?」と聞いたところ、彼は次のように答えたものだ。

「それは、アメリカに次ぐ38枚もの金メダルを獲得できたことではない。オリンピックという世界的イベントを成功裏に成し遂げたことで、われわれもアメリカと同様に世界で伍していけるという自信をつけたことだ。それまでわれわれ中国人は、強烈なアメリカ・コンプレックスを持っていたが、これからはもうアメリカを恐れることはない」

■経済発展一辺倒で突き進んだ時代の揺り戻し

思えば胡錦濤時代の10年は、日本で言えば1980年代のようなイケイケドンドンの時代だった。北京オリンピックや2010年の上海万博を始め、ほとんど毎週のように「花博会」(花博覧会)「書博会」(図書博覧会)「婚博会」(結婚博覧会)・・・とイベントが目白押しだった。そのたびに華美な演出をし、世界中からその分野の著名人をカネに飽かして招待したりしていた。

ところが、新たに中国の指導者となった習近平は、この手のイベントが大嫌いなのである。昨年11月15日に、中国共産党トップの中央委員会総書記に就任するや、翌12月4日に、中国共産党中央政治局会議を招集して「八項規定」を発令した。これはいわゆる「贅沢禁止令」で、贅沢と腐敗の徹底的な取り締まりを始めたのである。

それ以降は、腐敗幹部たちを、次々に血祭りに上げている。これは、胡錦濤派幹部を一斉に粛清するという目的もあるが、贅沢腐敗幹部が大嫌いという、習近平の個人的意向も大きい。その意味で、習近平という指導者は、「ミニ毛沢東」なのである。「革命を継続する」のである。

ちなみにこの日、8月8日に犠牲となったのは、すべての中央官庁の上部に君臨する国家発展改革委員会の副主任(ナンバー2)で、国家エネルギー局長を務めていた劉鉄男である。劉鉄男は、北京オリンピックの推進役の一人でもあっただけに、何とも皮肉なものだ。あの華やかな開会式の日には、まさか自分が5年後に、公職と党籍を剥奪されて「汚職幹部」として厳重調査を受けるなどとは、夢にも思っていなかっただろう。

劉鉄男は、1996年から99年まで、東京の中国大使館に経済参事官として務めた親日派としても知られていた。今回は、名古屋市立大学から授かったという修士号も、学歴詐称の可能性があるとして、調査の対象になっている。

実はこうした「贅沢禁止令」というのは、これまでアジア各地で、開発独裁(一党による長期支配)による経済成長が一段落した段階で、共通して起こっている現象だ。経済発展一辺倒で突き進んできたことに対する、国民の揺り戻しが起こるからである。

一例を挙げれば、韓国初の文民大統領を標榜していた金泳三大統領は、1993年に政権に就くや、直ちに「贅沢禁止令」を発令した。政治家や公務員のゴルフ禁止、キーセン接待禁止、贈答品の授受の禁止といったものだ。当時、「青瓦台」(韓国大統領府)にランチに招待されたという日本人が嘆いていたが、両班風の高級韓定食フルコースが饗されると期待して行ったら、金泳三大統領と向かい合って、1杯のカルククス(刀削麺)を啜って帰ってきたという。

ところが、韓国はこの制度によって、景気の悪化を招いた。1997年の「IMFショック(国家財政破綻)」も、遠因としてこうした贅沢禁止令による景気の悪化があったのではないかと私は見ている。権力者や富裕層があぶく銭を使わなくなったので、社会経済が循環していかなくなったのである。

これと同じことが、2000年の台湾でも起こった。この年に政権を獲った陳水扁総統もまた、贅沢禁止令を発令し、天津街や林森北路などの夜の歓楽街が干上がってしまったのだ。陳総統は、国民党時代に職業として認めていた公娼制度も廃止した。汚職幹部から街のヤクザまで一斉摘発を受け、一部は香港に逃れた。

私が台北で、陳水扁氏にインタビューした時、「贅沢禁止令は水清則無魚(水清ければ魚棲まず)ではないですか?」と質問したら、ムッとされてしまった。その時は続けて、「人清則無友(人清ければ友付かず)とも言いますが」と畳みかけてみたくなった。それほど、陳氏をインタビューしていて、この指導者は経済オンチだということが、ひしひしと伝わってきた。

日本でも、少し形は違うが、昨年までの民主党政権は、それまでの自民党の「金権政治」と訣別した質素な政権だった。民主党政権は贅沢禁止令は出していないが、与党の政治家はもとより、霞が関の官僚たちも慎ましくしていた。民主党時代の3年間は、私はちょうど北京で勤務していたので、評論する立場にはない。

だが、たまに帰国して旧知の現職大臣と会食しても、1円単位まできっちりワリカンだったのには驚いた。中国社会にワリカン制度はないからだ。2011年3月に前原誠司外相が、5万円の不正献金を受けたとして大臣を辞任した際には、北京の政治家たちは目を丸くしていた。「中国で同じことをしたら、北京はもとより全国津々浦々まですべての政治家が消える」と語り合っていたものだ。そしてやはり、日本も同様に、民主党政権時代に景気は悪化した。

■「贅沢禁止令」の発令で移民が大ブームに

ところが、その中国でも、いよいよ本格的な贅沢禁止令が始まったのである。5月のGWに北京を訪れた際には、国務院の旧知の経済官僚と夕食を共にした時、彼自身、まだ半信半疑のところがあった。そのためか、「外国人を接待する時は構わないから」と言って、派手に振る舞ってくれたものだ。

一方で、今回彼と会食したのは、日本で言うところの定食屋のような普通の食堂だった。もしかしたら、彼は今回は自腹で払ったのかもしれない。あれだけ酒好きな男なのに、「これからまだ仕事があるから」とか言って、持参したペットボトルのミネラル・ウォーターを、チビチビと飲んでいた。

この経済官僚曰く、「こちら北京の東側はまだマシだが、西側の高級レストランは、壊滅状態だよ」。北京で「西」と言えば、それは人民解放軍を意味する。首都を防衛する北京軍管区の大部隊が駐屯しているからだ。

そういえば、8月1日は建軍86周年だったが、習近平主席(230万人民解放軍を統括する中央軍事委員会主席でもある)は、先週のこのコラムでも書いたように、この記念日の前に連日、軍服を着て「西」を訪れて、訓示を垂れていた。軍への贅沢禁止令を徹底するという目的があったのだろう。

ともかく、中国も例外ではなく、贅沢禁止令の発令と共に、景気は悪化していった。それは、株価の流れを見れば一目瞭然だ。東京にも支店がある北京ダックの一番の有名店「全聚徳」は、贅沢禁止令が出た翌日の株価は28.01元だったが、8月6日の終値は、14.78元と、47%も下落した。同じく、湖北・湖南料理の老舗「湘鄂情」は、8.10元から3.79元へと53%も下落し、倒産間近と言われている。

そうなると、富裕層や腐敗幹部たちが考えることと言えば、移民や国外逃亡である。いま中国では移民の大ブームで、高級住宅街の入口では、斡旋業者が「あなたも移民しませんか?」と言ってチラシを配っている。斡旋業者に聞くと、富裕層は一般に、子供→妻→資産→本人という4段階で移民を果たすパターンが多いという。移民なのか逃亡なのかは分からないが。

ちなみに、2000年から2011年までに国外逃亡した幹部は1万8487人に上り、持ち出し総額は少なくとも、541.9億元(約8,500億円)を超えるという。これは主に胡錦濤時代の統計で、習近平時代になってからは、さらに急増しているとのことである。

思えば、北京オリンピックの時のスローガンは、冒頭述べた「同じ一つの夢」だった。そして、習近平政権の唱えるスローガンが、「中国夢」(チャイニーズ・ドリーム)である。だが「中国夢」をかなえた人は、次々に国外へ移民してしまう。そんな社会は、やはりどこか不健全である。


 

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コメント
 
01. 2013年8月12日 16:23:46 : 9NKiiqErzo
中国のホテルで17000円でランチが1100円なら日本と同じかむしろ高いくらいだね。・・・落ち着くべき水準になったというべきだ。

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