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http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20130811-00010005-bjournal-bus_all
Business Journal 8月11日(日)18時23分配信
安倍晋三首相が、日米首脳会談後の記者会見で、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)について「聖域なき関税撤廃が前提でないことが明確になった」と述べたのが2月のこと。
マレーシアで開かれた、日本が初参加した第18回TPP交渉の全日程が7月25日に終了した。そしてその翌日26日に、日本郵政とアフラックの業務提携が発表された。
日本郵政は、2008年10月からアフラックのがん保険を販売しており、13 年 7 月現在、1000 局 の郵便局でがん保険を取り扱っているが、今回、新たに業務提携を強化することに合意したという。具体的な内容は、アフラックのがん保険を現在の20倍にあたる約2万局で販売することを目指し、順次、取扱局の拡大に取り組むとしている。また、日本郵政傘下のかんぽ生命はアフラックと代理代行契約を締結し、アフラックは日本郵政及びかんぽ生命にて取り扱う専用商品(がん保険)の開発を検討するとしている。
TPPについて、米国は日本との共同声明の中で、保険分野を残された懸案事項のひとつとしている。これは要するに、「かんぽ生命と民間企業との間での対等な競争条件を求めている」ということだ。そこで、米国資本であるアフラックが、水面下で業務提携の強化の働きかけを日本郵政に対して行ったのは間違いないだろう。また4月には麻生太郎財務相が、「かんぽ生命が新商品を申請しても認可しない」と異例の表明を行っている。
そして、日本が初参加したTPP交渉会議の翌日の、アフラックと日本郵政の業務提携強化の発表である。この提携強化は、日本政府がTPPに向けた米国への配慮であることがわかる。しかし、国と国との間の配慮であれば、国益の上にたつ配慮でなくてはならない。いや、日本郵政は民間の会社ではないか? と思う人もいるだろう。表面上は、確かに民間であるが、日本郵政の株は100%、政府が保有しているのである。
さて、それでは今回「配慮」が示されたTPPについて、改めて考えてみよう。ここかしこで、幾度も問われていることだが、そもそも日本のTPP参加は、国益に敵うのだろうか? まずは参加するタイミングが常軌を逸している。今回のTPP交渉はすでに「第18回」目なのである。これまでに決まったことは当然ながら変えられない。重要事項を決める会議に、あとから参加して主張をしても、通る可能性は低い。そして、日本は重要5品目、すなわちコメ、麦、牛肉・豚肉、乳製品、サトウキビなど甘味資源作物を守ると言うが、守るだけなら、なにも最初からTPPに参加する必要などないのだ。この参加によって日本が勝ち取れるもの、国益に敵うものはなんなのか?
関税の撤廃で貿易の自由化が進んで日本製品の輸出額が増大するとか、貿易障壁の撤廃で大手製造業企業にとっては企業内貿易が効率化し、利益が増えるというが、そんなに単純なことではないだろう。しかもTPPそのものが孕む、ラチェット規定、TPP離脱に対する訴訟リスク、スナップバック条項、NVC条項など、数えたらきりがないほどの問題点があるのだ。 ではなぜそんなものに参加するのか。米国の圧力に屈しただけとの見方もある。
●「聖域なき関税撤廃」のまやかし
今回のTPP参加への道筋を、おさらいしてみよう。自民党は昨年12月の総選挙では、農業関係者の票をとりこぼしたくなかったのだろう、TPPについては一定の距離を置いて様子をみるようなふりをしていた。政権に就いてからも、林芳正農水相は「聖域なき関税撤廃を前提条件としているならば交渉には参加しない」と公約通りの答弁を、2月の日米首脳会談の直前にしている(ただし、安倍首相は、「『6項目』をしっかりと念頭に置いて首脳会談に臨まなければならない」と曖昧な答弁だった)。これは裏を返せば、「聖域なき関税撤廃」にほんのわずかでも例外があるならば参加しますよ、という意味である。
そして、日米首脳会談直後の共同声明では、「日本には、一定の農産品、米国には一定の工業品というように、両国ともに二国間貿易上のセンシティビティ(重要品目)が存在することを認識しつつ、両政府は、最終的な結果は交渉の中で決まっていくものであることから、TPP交渉参加に際し、一方的に全ての関税を撤廃することをあらかじめ約束することを求められるものではないことを確認する」と謳い、さらに「両政府は、TPP参加へのあり得べき関心についての二国間協議を継続する。これらの協議は進展をみせているが、自動車部門や保険部門に関する残された懸案事項に対処し、その他の非課税措置に対処し、及びTPPの高い水準を満たすことについての作業を完了することを含め、なされるべき更なる作業が残されている」と表明している。
いまひとつ理解しにくいのだが、よくみるとこれは「仮訳」とされているものだった。公式文書が5カ月たっても「仮訳」のまま放置されているとも思えなかったので、正式な翻訳を外務省のウェブサイトを探したがみつからなかった。そこで、外務省の北米第一課に問い合わせをしてみると、なんと「仮訳」しかなく、「本訳」される予定もないとのことだった。
●安倍政権の公約違反
ともあれ、「一方的に全ての関税を撤廃することをあらかじめ約束することを求められるものではないことを確認」した安倍政権はこの時点で、TPP参加への道を加速させ、一部のメディアも政府と足並みを揃え始めるが、これはとても不思議だ。なぜならば、TPP参加への可否は「聖域なき関税撤廃」だけで決まるものではないのだ。
なによりも自民党自身が、昨年の衆議院解散総選挙における政権公約集「J-ファイル 2012 総合政策集 自民党」というリーフレットの中で、「聖域なき関税撤廃」だけではないことを明記しているのだ。それは、「TPPに関しては、政府が国民の知らないところで、交渉参加の条件に関する安易な妥協を繰り返さぬよう、わが党として、判断基準を政府に示しています」として、
1、政府が、「聖域なき関税撤廃」を前提にする限り、交渉参加に反対する。
2、自由貿易の理念に反する自動車等の工業製品の数値目標を受け入れない。
3、国民皆保険制度を守る。
4、食の安全安心の基準を守る。
5、国の主権を損なうようなISD条項は合意しない。
6、政府調達・金融サービス等は、わが国の特性を踏まえる。
としている。
安倍政権は今回、「6」の公約違反を犯した。前述した日本郵政とアフラックの業務提携強化である。これは明らかに「金融サービス(等)のわが国の特性」を踏まえていない。事実、かんぽ生命と現在提携している日本生命は、「5年以上にわたり、さまざまな面で協力を行ってきた経緯もあり、今回の話については遺憾です。今後については、かんぽ生命と話をしていきたいと考えています」とコメントしている。
一方、アフラック日本は「この提携は(政府保有企業と民間企業の)対等な競争条件が実現されている事例だ。日米間の交渉にもいい影響がある」と述べているが、わが国の金融サービスの特性を踏みにじっただけである。
しかも、これがTPPに関する最初の公約違反ではない。「4」の公約もすでに破られている。安倍政権発足からわずか1カ月で、BSE(牛海綿状脳症)対策で実施している米国産牛肉への輸入規制が、10年ぶりに大幅に緩和されたのだ。輸入条件だった月齢を「20カ月以下」から「30カ月以下」に拡大した。米国では月齢16〜22カ月での食肉処理が一般的なので、今回の措置は規制緩和ではなく事実上の規制解除、野放しになったといっていい。確かにBSEはピーク時には世界全体で年間約3万7000頭も発生していたが、昨年はわずか12頭だった。規制緩和に踏み切った背景に、発生が世界中で激減して、感染リスクがなくなったとの判断があるのもわかる。
しかし米国には前歴がある。05年に「20カ月以下」の輸入が解禁された直後に、危険部位が混入していることが発覚し、再び輸入を停止したことがあるのだ。その間に米国で根本的な改善が行われたとは到底思えない。安倍政権が成立してから7カ月だが、すでにTPPに関するたった6つの公約のうち、2つも反古にされている。TPPをめぐる安倍政権の動きは、危険を孕んでいるといえよう。
久保田雄城/メディア・アクティビスト
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