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来年春に5%から8%への消費税率の引き上げが予定されるなか、インターネットの広告や電子書籍などの市場で、消費税を巡ってある深刻な問題が浮上しています。
今の日本の税制では、海外にある企業から電子コンテンツをダウンロードした場合、消費税は課税されません。
こうした市場で「失われた」消費税収は、去年1年間に最大でおよそ250億円に上るという試算もあります。
なぜこのような問題が起きているのか。
社会部の岡田真理紗記者が解説します。
電子書籍は「非課税」?
インターネットを使って、小説などを端末にダウンロードして読む「電子書籍」。
専用の端末が相次いで発売されるなど、急速に市場が拡大しています。
しかし、その一方で、電子書籍にかかる消費税を巡って、不公平感が高まっています。
電子書籍で国内大手の紀伊國屋書店が運営するサイトでは、先月、出版されたばかりの電子書籍が消費税込みで1260円で売られています。
ところが、アメリカに本社がある「アマゾン」の電子書籍は、同じ本が1200円。
ちょうど消費税分の5%、60円安くなっています。
さらに、アマゾンのサイトには、「アマゾンが販売する電子書籍には、消費税は課税されません」と明記されています。
消費税の”抜け穴”
なぜ、販売する業者によって、課税される・されない、という違いがあるのか。
理由は法律の”抜け穴”です。
通常、消費者が物を買う場合、5%の消費税を代金に上乗せして支払います。
その消費税は、企業を通じて、国などに納められます。
しかし、今の法律では、外国にある企業は、日本に消費税を納める対象になっていません。
洋服や酒など、形のあるものの取り引きの場合、日本に商品が入るときには税関を通らなければなりません。
このとき、商品を受け取る輸入業者が消費税を日本に納めているのです。
一方、電子コンテンツの場合、税関を通ることがありません。
日本の消費者はインターネットを通じて外国の企業から直接商品をダウンロードすることができます。
この場合、今の税制ではダウンロードは「その企業がある国で行われた」と判断され、日本の消費者が買っていても日本では消費税がかからないのです。
失われる消費税収
問題が深刻なのは、こうした電子コンテンツの市場で外国企業のシェアが大きいことです。
特に電子書籍では、外国企業のシェアがおよそ5割と推計されています。
民間のシンクタンク、大和総研が試算したところ、電子コンテンツの分野で外国企業に対して消費税を課税できないため、去年1年間に最大でおよそ247億円の税収が失われたとみられることが分かりました。
このうち最も大きいのは、インターネットの広告で、133億円余りの税収が失われたと推計しています。
次いで、ネット上で顧客のデータを保管する「クラウド」と呼ばれるサービスで74億円余り、音楽ソフトの配信で11億円余り、電子書籍ではおよそ9億円に上りました。
失われる税収は、今後、市場の拡大に伴ってますます増えるとみられています。
日本企業の危機感
消費税分の価格差をつけられている日本の企業は、危機感を強めています。
インターネットの検索サイトで国内最大手のヤフーは、広告が最大の収入源です。
しかし、ヤフーの広告には消費税がかかりますが、競合するアメリカの検索サイト、グーグルの広告には消費税が課税されません。
マーケティング部門の担当者は、「1円でも安い価格で広告を出したい顧客は多く、同じ集客効果があったとしても非課税の方が効率がよく見えてしまう」と話しています。
6月には、同じ悩みを抱える紀伊國屋書店などに呼びかけて会議を開きました。
会議では、「今でも税率5%というハンディキャップを負っているのに、8%、10%へと税率が引き上げられたら初めから競争にならない」といった声が次々と上がり、税制改正に向けて一緒に政府への要望を行っていくことで合意しました。
その一方で、電子コンテンツの配信を海外から行う国内企業もあります。
去年新たに電子書籍事業に参入した楽天は、日本では消費税がかからないカナダの企業を買収し、日本語の電子書籍もカナダから配信しています。
ヤフーの関係者は、「日本の企業なのでできるかぎり日本で事業を行いたいが、格差が是正されないまま税率が上がれば生き残るために海外からサービスを提供することも検討せざるをえない」と話しています。
もし企業が次々と海外に機能を移してしまえば、雇用や税収が同時に失われることになります。
現実に追いつかない税制
この問題、すでに対策を取っている例もあります。
EUでは、外国の企業が国内向けに電子書籍などを販売する場合、税務当局に登録を義務づけ、国内企業と同じように消費税を徴収する法制度を、すでに2003年に導入しています。
日本では、財務省が去年、検討会を設置し、EUを参考にした課税方式を検討しています。
財務省は、検討会の報告書を取りまとめ、早ければことし中にも、税制調査会などで議論を始める可能性があるとしています。
しかし、来年4月に予定される消費税率8%への引き上げの前に格差が是正されるのか、はっきりとした見通しはたっていません。
情報通信産業が専門の野村総研の桑津浩太郎主席コンサルタントは、「ネットビジネスの変化の流れが速すぎて、現実が税制の議論を追い抜いてしまっている。外国企業との格差が是正されないまま消費税率が8%に上がるのは、日本企業にとって考えうる最悪のシナリオと言えるだろう。急いで議論し、消費税率が引き上げられる前に一定の結論を出すべきだ」と指摘しています。
国境を越えるネットビジネスの急拡大に追いつかない税制。 消費税率の引き上げを検討するうえで、危機感を持って対応する必要があると思います。
http://www3.nhk.or.jp/news/web_tokushu/2013_0809.html
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