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2013年08月10日(土) 歳川 隆雄 現代ビジネス
消費税率引き上げの最終決断の時期がずれ込みそうである。安倍晋三首相は当初、8月12日に発表される4−6月期のGDP(国民総生産)速報値(第1次)を見た上で、9月に入ってからの経済・景気動向を勘案して同下旬にも決定したいとしていた。
それが、ここに来て様相が少し変わったようだ。先ず、安倍周りの中では柳瀬唯夫首相秘書官(1984年旧通産省入省)が「(10月1日に公表予定の)日銀短観を見てからだ」と言い始めたということがある。決断時期の先送りを検討しているフシは、他からも聞こえてくる。
■麻生氏「14年4月5%→8%、15年10月8%→10%」 渡邉氏「15年10月5%→10%」
その最大の理由は、安倍政権内の消費増税を巡る意見の不一致である。
改めて指摘するまでもなく、「ナチス発言」で傷が付いたとは言え、麻生太郎副総理・財務相が依然として既定方針通り、来年4月に現行の消費税率5%を8%に引き上げ、15年10月に10%に再引き上げすべきだとの持論に強く拘っている。
一方、安倍首相も無視できぬ存在である、読売新聞グループ本社の渡邉恒雄会長兼主筆が14年4月の引き上げを見送り、15年10月に5%から10%に一気に引き上げるべきだと強く主張している。軽減税率導入問題が絡むため、新聞・雑誌業界も渡邉氏の主張に同調しているかに見える。
8月6日午後、衆院第1議員会館内第5会議室で超党派の国会議員でつくる「活字文化議員連盟」(会長・細田博之自民党幹事長代行)と日本新聞協会(会長・白石興二郎読売新聞グループ本社社長)、日本書籍出版協会(理事長・相賀昌宏小学館社長)などで構成する「税制・再販制度等に関する懇談会」が開催された。
新聞業界から2人、出版業界から3人が発言、両業界は同議連に対して消費税率引き上げの際に生活必需品などの税率を低くする軽減税率を新聞、出版物に適用するよう要望した。
当初、新聞業界サイドは新聞と書籍のみの適用という考えであったが、出版業界側から「出版物全て」の適用を強く求められ、最終的に「新聞、出版物」という表現となった。
それはともかく、この軽減税率導入問題は、連立のパートナーである公明党(山口那津男代表)も強く求めていることもあり、連立与党とメディア界との距離感を重視する安倍首相にとって思案の為所である。
■浜田本田両氏「14年4月からプラス1%/年で18年に10%」
それ以上に問題なのは、この数週間、安倍官邸にあって内閣官房参与の肩書きを持つ2人のアベノミクス(安倍首相の経済政策)ブレーンが「第3の選択」を主張し始めたことである。
今春の日銀総裁人事で「黒田東彦総裁」を推し、その後の異次元緩和政策を熱烈支援した浜田宏一米イェール大学名誉教授と、財務省OBの本田悦朗静岡県立大学教授のことだ。
浜田、本田の両氏は、脱デフレを最優先すると同時に、消費税率は来年4月から毎年1%ずつ引き上げ、18年に税率10%にすべきだと進言している。要は、税率の上げ方を見直せと言っているのだ。
3%の税率引き上げは、約7.5兆円、対名目GDP(国民総生産)比1.5%の国民負担となり、景気に勢いがある時でなければ、景気腰折れにつながるリスクがあるというのだ。
浜田氏はそもそも、脱デフレ優先・消費増税慎重派である。安倍首相の指示で消費増税関係閣僚、日銀総裁などで構成する「消費増税有識者会議」(座長・甘利明経済財政・再生相)が今月26日から31日まで開かれる。
そこで経済財政諮問会議(議長・安倍首相)の民間議員、経団連など経済3団体のトップ、民間のエコノミスト・経済学者など約40人から意見聴取を集中的に実施するが、浜田氏も含まれるのだ。
そして安倍首相がロシア・サンクトペテルブルクで9月6〜7日に開かれるG20首脳会議に出席する直前の同2日頃までに消費増税判断に向けた意見を提出する。議論噴出が確実な同会議での意見取りまとめは難航が予想される。それをも見越した上での、先述の「最終判断先送り」なのかも知れない。
いずれにしても、「安倍長期政権」の成否のカギを握るのは消費増税決断である。
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