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TPPに乗じて拡大、したたかなアフラック
http://toyokeizai.net/articles/-/17267
2013年08月10日 岡田 広行 :東洋経済 記者
かつての敵だった日本郵政と提携し、地盤を強化。
2011年1月、日本郵政の齋藤次郎社長(当時)は記者会見でこう述べていた。
「かんぽ生命保険ががん保険の分野に進出することについて、米国、特に通商代表部(USTR)が深い懸念を持っていると伺っている。米国側とすれば、アフラック(アメリカンファミリー生命保険会社)などが約8割のシェアを占めているわけですから、そういう懸念を抱かれるのは、ある意味当然ではないか」
それから2年半後の7月26日、日本郵政はアフラックとの提携を発表した。日本郵政はすでに約1000の郵便局で、アフラックのがん保険を取り扱っているが、それを約2万の郵便局に拡大するほか、79あるかんぽ生命の直営店でも販売する。また、傘下の日本郵便およびかんぽ生命で取り扱う専用商品をアフラックが開発する。
がん保険分野で7割の国内シェアを握り、40年にもわたる日米保険摩擦を戦い抜いてきたアフラックにとって、今回の提携は歴史的な勝利だった。かんぽ生命のがん保険への進出を阻止したのと同時に、全国津々浦々に張り巡らされた郵便局ネットワークを使うことによる販売拡大の道が開けたからだ。
アフラックのチャールズ・レイク在日代表は、かつてUSTRの日本部長として日米保険協議でタフネゴシエーターぶりを発揮してきた人物。そのレイク氏は記者会見の場で、これまで民業圧迫と批判してきた日本郵政について「ウィン・ウィンの関係になる」と笑みを浮かべた。
一方、上場を目指していた日本郵政にとっては、追い込まれた末での決断だった。株式会社化されてはいるが、政府が100%の株式を握る国有企業であるがゆえに業務面で手かせ足かせをはめられ、身動きが取れない状態だったからだ。新商品の認可が実現しないこともあり、かんぽ生命の12年度末保有契約件数は、ピーク時の4割強にまで落ち込んでいた。
■郵政を翻弄したTPP
上場実現には収益基盤を強化しなければならないが、4月12日には麻生太郎金融担当相が、かんぽ生命に今後数年間、外資が圧倒的なシェアを握るがん保険や単品の医療保険(いわゆる第3分野商品)を認可する考えがないことを明らかにした。
折しもTPP(環太平洋経済連携協定)交渉と並行して進められる日米協議に際して、両国で非関税措置の見直しに取り組むことで合意。両国の文書に記載された個別項目の中に「保険」が盛り込まれた。ところが、協議開始に先立って大臣自らが「本件とは関係ない」と言いつつも参入禁止を断言したのである。かんぽ生命をめぐる一件は、TPP交渉入りの“持参金”と見なされた。実際、日本郵政はマレーシアでのTPP交渉参加のタイミングで、今回の提携を発表している。
5月末まで郵政民営化委員長として民営化の監視役を務めた西室泰三氏が日本郵政社長に就任して、1カ月余りでの素早い決断だった。日本郵政は、アフラックの商品を販売し手数料収入を得ることで、収益の拡大につなげることができる。
これに不快感をにじませたのが、それまでかんぽ生命と業務提携を結んでいた日本生命保険だった。同社は08年2月以来、がん保険など商品開発や事務・システムの構築などで提携関係にあったが、今回のアフラックと日本郵政の合意は「寝耳に水」(日本生命)。今後については協議していくとしつつも、「今回の話は遺憾」とのコメントを発表した。
アフラックは、日本のビジネスでグループ全体の利益の8割を稼いでおり、今回の提携を利用してさらに強固な地盤を築くことになる。かんぽ生命の業務拡大阻止で共闘してきた国内外の保険会社にとっては、出し抜かれた格好になったうえ、今後大きな脅威となるだろう。
(撮影:尾形文繁 =週刊東洋経済2013年8月10-17日合併特大号)
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