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http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20130809-00017275-toyo-bus_all&p=1
東洋経済オンライン 8月9日(金)8時0分配信
9月から始まる新学期を前に、米国ではBack-To-School Salesと呼ばれる新学期商戦が山場を迎えつつある。新学期商戦といっても、学用品だけでなく、衣類や鞄などのアパレル関連、パソコンやタブレット端末、スマートフォンといったIT機器、また、独り暮らしを始める大学生向けの家具・家電製品まで、幅広い需要が見込まれるのが特徴だ。米国の小売業者にとっては、年末のクリスマス商戦に次ぐ繁忙期となる。
全米小売業協会(NRF)のアンケート調査によれば、今年の新学期商戦の売り上げは725億ドル(約7.1兆円)と、過去最高を記録した昨年から約13%減少する公算だ(図)。
昨年が前年比プラス22%と急増したことを考慮しても、やや精彩を欠く内容である。調査担当者によれば、今年は家計の倹約意識が高まり、昨年購入した品を使い続けるなどの動きがみられるという。
ただ、こうした大型の消費イベントでは、セール最終盤の値下げ動向を見極めて購入に動く世帯も少なくないとみられ、期間終了間際に売り上げが伸びる可能性は十分に残されている。新学期商戦の結果はクリスマス商戦の行く末を占うとも言われるだけに、最後までその動向からは目が離せない。
■ 消費は4〜6月期減速、先行き不透明
実際の消費の動きを見ると、4〜6月期の国内総生産(GDP)では、物価変動を除いた実質ベースの個人消費が前期比年率プラス1.8%(1〜3月期は同プラス2.3%)とやや減速した。給与税減税の失効や富裕層に対するブッシュ減税の廃止など、年初に行われた大幅な増税措置の割には健闘したと言えるが、総じて見れば、今年前半の消費は力強さに欠けるものとなった。
先行きの消費については、今のところ強弱入り混じる状況だ。
消費者マインドを表すカンファレンスボード消費者信頼感調査を見ると、現状指数が7月にかけて4カ月連続で上昇した。これは、2008年5月以来、約5年ぶりの水準で、消費意欲は回復基調にある。
一方、消費の源泉となる所得面で、先日発表された7月の雇用統計が弱い結果となったことは気掛かりだ。非農業部門雇用者数は前月差プラス16.2万人(6月は同プラス18.8万人)と伸びが鈍化した。5〜6月も合わせて2.6万人下方改訂されており、20万人前後の堅調な結果を見込んでいた市場にとっては、期待外れの内容と言える。
また、7月は時間当たり賃金が前月比マイナス0.1%(6月は同プラス0.4%)と予想外の低下となったことに加え、週当たり労働時間が34.4時間(6月は34.5時間)と減少した。ならしてみれば、雇用・所得環境の回復傾向が続いているという見方に変わりはないが、そのペースは足元でやや鈍っているようだ。
■ 企業部門は生産や設備投資で回復の動きが進展
こうした中、春先以降に弱さがみられた企業部門では持ち直しの動きが進んでいる。企業業況を表すISM製造業指数は、7月に55.4(6月は50.9)と大幅に改善した。内訳を見ると、生産指数が2004年5月以来の高水準まで急上昇したほか、先行きを占ううえで重要な新規受注指数も改善し、製造業の回復ペースが足元で力強さを増しつつあることを示唆している。
実際の生産動向を見ると、製造業ではITや自動車関連などを中心に幅広く生産が拡大し、5〜6月と増産基調にある。海外経済の減速や歳出削減などによる受注の伸び悩みを背景に、春先から在庫調整圧力が強まっていたが、足元ではそうした在庫削減の動きが緩和しているもようだ。
また、企業の設備投資も上向きつつある。4〜6月期の実質設備投資は前期比年率プラス4.6%(1〜3月期は同マイナス4.6%)と、2四半期ぶりのプラスとなった。内訳を見ると、建設投資の大幅な落ち込みに歯止めがかかったこともさることながら、IT関連を中心に設備機器投資の増勢が拡大したことが寄与している。
設備投資については、先行指標となるコア資本財(国防・航空機を除く資本財)の受注が4カ月連続で拡大しており、回復基調は当面続くとみられる。これまで先延ばしにされてきた更新投資の実施に加え、能力増強に向けた設備投資が徐々にではあるが出始めているようだ。
■ 懸念された金融市場の混乱も一服
このように、実体経済の回復が進みつつある中で、懸念材料となったのが5月中旬以降にみられた金融市場の動揺である。
5月22日の議会証言や6月19日のFOMC(連邦公開市場委員会)後の記者会見で、バーナンキFRB(連邦準備制度理事会)議長が量的緩和の縮小に関して予想外のタカ派発言を行ったことで、金融市場は大きな混乱に陥った。
S&P500株価指数は、5月中旬からの約1カ月間でおよそ6%低下。また、超低金利政策の解除時期が早まるとの見方が台頭したことから、5月初に1.6%台だった10年物国債利回りは6月中旬にかけて2.6%前後まで急上昇した。このような金融面の変調を受け、市場では実体経済に悪影響が及ぶのではないかとの懸念が広がったのは周知のとおりである。
しかし、そうした懸念とは裏腹に、足元の金融市場は落ち着きを取り戻している。危惧された実体経済に対する悪影響も、おおむね限定的なものにとどまりそうだ。
たとえば、国債利回りの上昇を受けて住宅ローン金利が急騰したことから、住宅市場では先行きを不安視する声が強まったが、これまでに発表された指標は総じて住宅販売や価格の回復傾向が続いていることを示している。業界内でも、ローン金利上昇の影響があるのはカリフォルニアやハワイ、ニューヨーク都市部など、高価格帯物件が中心の地域に限られるとの見方が大勢だ。
また、社債利回りの上昇によって企業の資金調達に支障が出ることを心配する向きもあるが、銀行の貸出余力が十分にある中で、企業向けの貸出態度が相当程度緩和していることを踏まえれば、資金調達が急速に困難化する可能性は低いだろう。
■ 9月以降の「新学期」は波乱も
金融市場の動揺が一服したことに加え、GDP統計やISM指数、雇用統計といった重要指標の発表を曲がりなりにも乗り切ったことで、景気に対する過度の懸念は和らいでいる。市場関係者にとっては、ここ数年と異なり穏やかな夏休みとなりそうだ。
ただ、休み明けの9月以降は再び一波乱ある可能性が残っている。9月17〜18日に開催されるFOMCでは、量的緩和の縮小(テーパリング)が始まると見込まれるほか、10月にかけて、バーナンキFRB議長の後任指名が行われると予想されているからだ。
市場は9月FOMCでのテーパリング開始をほぼ織り込んでいるとはいえ、実際に量的緩和の縮小が発表されたときに、どれだけの反応が生じるかを予測することは難しい。
また、FRB議長の後任人事に関して、市場ではイエレン現FRB副議長の昇格が圧倒的に支持されているものの、オバマ政権内にはサマーズ元財務長官を押す動きもあり、まだまだ予断を許さない状況である。FRB議長職は金融政策の見通しに大きくかかわる重要ポストだけに、穏やかな夏休みの後に待つ米国経済の「新学期」が波乱含みなものとなる可能性には、十分注意をしておく必要がありそうだ。
服部 直樹 みずほ総合研究所エコノミスト
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