01. 2013年8月09日 09:16:41
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大前研一 『中国経済格差と香港金融市場〜中国の参考モデルとなる日本のM型社会』 ―――――――――――――――――――――――――――――――――― 中国格差問題 中国都市部の貧富の差 242倍 香港金融市場 融資の急拡大に警戒 中国経済改革 中小・零細企業の付加価値税を免除 ------------------------------------------------------------- ▼ 共産党革命以降、中国の貧富の格差はさらに広がった。 ------------------------------------------------------------- 北京大学の調査によると、中国都市部の最富裕層(上位5%)と 最貧困層(下位5%)の世帯年収を比較したところ242倍もの格差が存在し、 格差の幅も急速に拡大していることが明らかになりました。 かつてケ小平は「貧しい人は後から追いつけばいい」と述べていましたが、 今の中国社会は「持てる者がさらに持つ」という米国型になってしまいました。 格差のない社会を実現するはずの共産主義にもかかわらず、 改革以降、所得格差の矛盾が大きく開いてしまったという状況です。 このままいけば、劣位に置かれている人達のフラストレーションがたまり、 再びボルシェビキ革命のようなことが起こる可能性があると私は思います。 胡錦濤前国家主席の頃は、所得格差問題の是正は1つの大きなスローガンに なっていましたが、現在の習近平政府は所得格差問題よりも、 腐敗の撲滅などに力を注ぐこととで貧しい人達の怒りを抑えようとしています。 貧富の格差が広がっている中国ですが、統計手法によっては、 世界「最悪」の部類にはまだ入っていません。 所得上位10%の層の総所得に占める割合を見ると、 南アフリカなどは上位10%で全体の50%を占めています。 中国はまだ30%程度です。 また所得下位10%の層の総所得に占める割合を見ても、 中国は最低ではありません。(いずれも世界銀行による統計) この種の統計には日本は登場しません。 M型社会になりつつある日本ですが、 まだまだ貧富の格差が少ない北欧型の分布になっています。 ゆえに、中国に比べて日本の田舎は綺麗だし、 安全で安心していられるというメリットがあります。 今、中国でも日本のように地方に温泉を作ろうという動きがありますが、 日本は大いに参考になるということです。 ------------------------------------------------------------- ▼ シャドーバンキング→破綻という、日本がたどった道。 ------------------------------------------------------------- 香港金融管理局(HKMA)の報道官は、香港での融資の伸び率が5月は20% だったのに対し、6月に年率にして約40%に加速したことを明らかにしました。 これは非常に注目すべきニュースだと私は感じました。 すなわち、いよいよ中国の金融当局が「蛇口を閉め始めた」のでは ないかと思います。 だから中国本土の企業が、香港の銀行から借りるという 流れになったのでしょう。 これはかつての日本における「住専」と全く同じ流れであり、警戒するべきです。 総量規制と窓口規制の結果、ノンバンクへ資金が流れるという構図です。 中国でもメインバンクが絞ったために、シャドーバンキング、 さらに香港へ行き着いているのだと思います。 中国国務院(政府)は24日、李克強首相が主宰する常務会議を開き、 中小・零細企業約600万社に対して、商品の販売やサービスにかかる付加価値税を 8月1日から免除すると決めました。 中国に進出する日本企業が免税対象になるかどうかは不明です。 また一報で、中国国家審計署(監査院)は国務院(内閣)の要請により 全ての政府債務について監査を行うことを明らかにしています。 今の中国当局は、監査と免除が日替わりメニューで入れ替わっている印象で、 まるで落ち着きがありません。 かつて日本でも同じような状況がありました。 不幸にも厳しいタイミングに当ってしまった山一證券は破綻しましたが、 その後は救済に方針転換したため、破綻する企業はありませんでした。 今中国ではシャドーバンキングとして約350兆円の資金が裏口で動いています。 個人レベルで見ると預金した際の金利が3%から7%になるというのは 嬉しいことですが、借り手が5%〜10%の金利を返済できるのかというと、 難しいでしょう。 どこかのタイミングで方程式が崩れて、日本と同じように破綻するしかありません。 おそらく、今さら監査したところでもう間に合いません。 すでに「飛び降りても助からない高さ」に達していると私は思います。 まさに90年代なかばの日本と同じ状況です。 ------------------------------------------------------------- ▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか。 ------------------------------------------------------------- 上位と下位で242倍の平均所得の差がある中国。 この数字だけ見ると格差が深刻であることが直感的に分かります。 では、この状況をどう見ればよいのか? ここで大前は視野を広げ、世界の所得格差のデータをチェックしています。 すると中国が他国との中でどのような位置づけなのかが分かってきました。 |