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世界を震撼させる「10月ショック」に注意せよ [東洋経済]
http://www.asyura2.com/13/hasan81/msg/603.html
投稿者 金剛夜叉 日時 2013 年 8 月 07 日 23:25:14: 6p4GTwa7i4pjA
 

http://toyokeizai.net/articles/-/16608

「見せかけの株価上昇」のあとに、来るものとは?

「正直言って、日本株マーケットの今とこれからを、現状からどう判断すべきか、わからなくなってきました」

7月21日に投開票が行われた、参議院選挙の直後のことだ。私が率いる研究所(HPはこちら)とアライアンスの関係にある、市場データ分析の「猛者」とのやり取りの中で、そんな「嘆き」ともいうべきメールが飛び込んできた。その理由を私が尋ねると、「猛者」は、こんな風に返事を返してきてくれた。

夏マーケットの「通常パターン」があてはまらない?

「夏の日本株マーケットには、大きくいって2つのパターンがあります。7月20日前後に崩れ始め、そのまま崩れていってしまうパターン。この場合は秋に盛り返すことが前提になっています。そしてもうひとつが7月20日前後においてはぐずついた感じが続き、8月からはむしろ高騰となるというパターン。ただこの場合、8月末には外資勢の手仕舞いから始まり、崩落となるのが通例です」

参議院選挙の直前および直後の状況を見るかぎり、今回はここでいう2番目のパターンが当初はあてはまっていた。そうであれば、もはや答えは簡単ではないかと私が問いかけると、「猛者」はこう答えてきた。

「いえ、それがそうではないのです。まず顕著なのが、本来であればリスク分析上の観点でいうと“勝負”がつくべき日が、選挙後しばらくしてから株価が下落に転じたことで、どんどん後の時期にずれ込んできているということ。つまり“決戦の日”は8月になってしまったというわけなのです。

それでは、もはや先ほど述べたような第1のパターン、すなわち『秋まで下がり続ける流れ』になるのかといえば、そうとも言い切れないのです。今、日本株を売っているのは明らかに私たち日本人です。個人は来年度(2014年度)から各種税制が変更となり、税率がアップするのを控え、一貫して売却に転じています。そしてわが国の機関投資家たちも国債による損失が生じている場合や、公的ファンドの場合ならリバランスをする必要がある際に、容赦なく日本株を売り、利益を確定する動きに出ています。

主役は、依然として『外国人』

しかし、いわゆる『外国人』は違うのです。開示されているデータを見るかぎり、地域別に欧州から北米へと“選手”こそ変わりましたが、彼ら『外国人』は一貫して日本株を、しかも現物で買い続けています。つまり主役は今や日本人ではなく、外国人になってしまったというわけなのです。そのため、国内におけるデータ分析やアノマリーなどだけから判断するのは、たいへん難しい状況に突入しているというわけなのです」

私の研究所はグローバルマクロ(国際的な資金循環)に対する分析を通じて、マーケットとそれを取り巻く国内外情勢の“今”と“これから”を考えることを役割として担っている。そのような中で、この市場データ分析の「猛者」との出会いがあり、日々緊密なコラボレーションをアライアンスとして展開するようになった経緯がある。その一つの成果の一端を示すため、このたび『インテリジェンスのプロが書いた日本経済復活のシナリオ――「金融立国」という選択肢』(中経出版)を上梓した。

その中でも書いたが、わが国を代表する機関投資家たちに対して、投資のための日々の糧というべきデータを提供している「猛者」と、国内外の公開情報を分析し、地政学的リスクまで織り込みつつ、「外国人たちがどのようにわが国のマーケット、そして政治・経済を見ているのか」を提示する、私の研究所は実に相性がよい。なぜならば1998年に外為法が改正となり、世界中のマーケットを縦横無尽に駆け巡るヘッジファンドや投資銀行たち(以下「越境する投資主体」と記す)が、わが国のマーケットにおいてもわが物顔で動き始めて久しい中、その「頭の中」を探るには、われわれの行っている2つの方向性からのアプローチを重ね合わせるのがいちばん有効だからだ。

もっと具体的に言うと、こういうことだ。――「越境する投資主体」がわが国マーケットに対して猛爆撃にも似た集中投資を行う場合、それは極めて精緻な数値計算に基づいている。なぜならば「越境する投資主体」たち自身が自前のマネーを投資することは基本的にはないのであって、誰かから借りたものをわが国への投資に振り向けるのが一般的だからだ。

そうである以上、「越境する投資主体」たちはこうした真の投資家たちに対する説明責任を負う。そのために手っ取り早い方法が数字を羅列する方法なのである。したがってまずひとつには、ここで「猛者」が日々行っている数値計算により、彼ら「越境する投資主体」が何を考えているのかが理解できるというわけなのだ。

しかしこれだけでは足りない。なぜならば「越境する投資主体」が投資を行っているのは必ずしもわが国だけではなく、文字どおりの「グローバル」、すなわち地球上のすべての国・地域がその対象だからである。そして「越境する投資主体」たちがその親玉とでもいうべき国際金融資本と共に行っているのが、これらのさまざまな国・地域においてそれぞれ異なる「山」と「谷」が見られるように、微妙なズレを生じさせることなのである。

そのことによってまずは盛り上がりを見せ始めたAという国に投資が行われ、それがピークを過ぎる頃には次のBという国が「エマージングマーケット」として登場し、といった具合に、マネーが国境を飛び越えて移動していく。

これがまさにグローバルマクロ(国際的な資金循環)であり、言ってみれば世界史の本質なのである。そしてたいへん興味深いのは、これら「越境する投資主体」や国際金融資本たちは、準備が整うと「こっちの水は甘いよ」とばかりにマスメディアを通じて世界中のマネーを呼び込むための宣伝工作を始めるということにある。そして「そのようなもの」として公開情報を分析することで、私たちは逆に彼らの意図と真の戦略を知ることができるというわけなのだ。これが私たちの研究所が研究している「情報リテラシー(information literacy)」である。

こうしたグローバルマクロの中における「さざ波」とでもいうべき公開報道の数々を追っていると、気づくことがある。それは普段であれば明らかにわが国についてネガティヴな評価しか下していなかったはずの米欧の「越境する投資主体」たちが、しきりに「次は日本、そう日本だ!」と叫び始める瞬間があるということである。

むろんそのように露骨な例ばかりではなく、むしろ分析するとそのようなメッセージとして解釈できる情報が広められる場合のほうが多い。だからこそわが研究所の出番ということになるわけであるが、いずれにせよ、そのようにして「マネーがわが国に押し寄せる予兆」を公開情報分析でとらえ、たとえば外交日程のような形でそのありうべきタイミング候補までもが現れれば、今度はその日をターゲットに集中的に分析を詰めていく。その繰り返しでグローバルマクロの波を体感することができるようになってくるのである。

先ほど触れた市場データ分析の「猛者」との会話の中で、非常に面白いと思うことがひとつある。それはこのように公開情報分析の観点から「ありうべき潮目のタイミング」として特定する期日と、この「猛者」が純粋に(=いっさいの主観を排して)公開された数値だけで特定したリスク集積局面の期日とが、ほぼ間違いなく重なっているということなのである。そしてこれらが合わさることで、後者は数値分析という意味での客観的な証拠を提供しつつ、前者はその「意味」を公開情報の示す文脈から説明することが可能になるというわけである。これはわが国の機関投資家およびその付属シンクタンクはもとより、世界中の研究機関でもまだ開発されていないまったく新しいメソッドであると自負している。

外国人が一貫して買っている事実を、無視するな

話を日本マーケットに戻す。――「いつもとは違って見えづらくなってきた」と嘆く「猛者」に対して、私は次のように切り返した。「なるほど。しかしここはやはり基本に立ち返るべきではないでしょうか。まず『外国人』たちが今年(2013年)5月23日のショックにもかかわらず、一貫して日本株を買い増し続けてきたという事実。このことが持つ重大性から押さえていくべきです」

なぜこのことが重要なのかというと、米欧の「越境する投資主体」たちは先ほど述べたとおり「自分のマネーで勝負している」わけではないのが一般的だからだ。つまり彼らの背景には彼らの投資行動によって莫大な収益を上げたいと願って資金を提供している無数の投資家たちが控えているのである。そうである以上、彼らは必ずこの「日本株投資」という(これまでであれば前代未聞の)投資行動を通じて、十二分なほどの収益を上げられると確信しているはずなのだ。

そうである以上、ここで日本株の上昇局面が途絶え、後は崩落し続けると考えるのには、かなり無理あがると言わざるをえない。

そしてもうひとつ。今こそ、いわゆる「復元力の原則」を思い出すべきでもあるのだ。つまりこういうことだ。――もし今、「上げ」がマーケットで顕著であるならば、必ずこれに対する反作用としての「下げ」が、それ相応なスピードで生じることになる。なぜならば「上げ」はマーケットに対する「作用」であり、ほかの森羅万象と同じくマーケットにおいてもそれに対する「反作用」が生じるはずだからだ。つまりこれが「下げ」ということになってくる。

そしてこの原則を応用するならばこうも言えるのだ。将来的に「下げ」が明らかに見える状況なのであれば、むしろそれを惹起させるためにも「上げ」が生じるはず。やや抽象的に聞こえるかもしれないが、このことは「カラ売り」を考えてもらえばわかりやすいはずだ。

つまり、将来生じる「下げ」でカラ売りすることで利潤を得るためには、その分、今はむしろ「上げ」ておくべきだということになってくるのである。そうした高低差がなければ、そもそも「面白いカラ売り」が成立しない以上、「越境する投資主体」はまずは「上げ」を演出すべく派手に動き回る。単純に聞こえるかもしれないが、彼らとその親玉というべき国際金融資本が行っていることは、とどのつまりこのことだけなのである。

複合的なリスクが重なって、炸裂する?

そうである以上、気になるのが「果たして近い将来、日本マーケット、そして世界マーケットを崩落へと導くような要因があらかじめ見えているのか」なのである。なぜならば繰り返しになるがそこで「下げ」が見えている以上、その前はむしろ「上げ」がわが国として国際社会におけるマーケットでは演出される可能性が極めて高くなってくるからだ。

こう説明したうえで私は、「猛者」に対し、「これから炸裂することになるリスク要因」として次のものを列挙し、説明した:

●米国のデフォルト(国家債務不履行)危機

●英国の不動産証券化バブルの崩落(第2の「サブプライムショック」)

●「ユーロ」崩壊に向けたリスクの急上昇

●アルゼンチンにおける再度のデフォルト(国家債務不履行)危機

●中東における大戦争の開始とその泥沼化

●中国における官製「信用危機」の進展

これらとその後のありうべき展開について、私の研究所はまとまった形で先般公表した次第である(詳しくはHP参照)が、一目見ておわかりいただけるとおり、これらはそれぞれが点と点としてわが国においても報道されているが、「そのようなもの」として語られてはいないものなのだ。そこに国内メディアだけではなく、海外メディアを縦横無尽にチェックし、分析し続けること、すなわち公開情報インテリジェンスの綾がある。

これを聞いて、「猛者」はこう答えてきた。「なるほど。しかし仮に一つひとつのリスクが単体で起きた場合、マーケットが動かされたとしても影響はたかだか1週間でしょうね。ちょうど2009年に発生したドバイショックのようなものです。原田さんはこれらのリスクがいったい、いつ、どのような形で炸裂することになると考えているのですか」

「端的に言うならば、これらのリスクはまとまってやって来る可能性が日増しに高まっています。もっと具体的に言いましょう。これらのリスクが炸裂するのは今年(2013年)9月後半から11月上旬までの間、とりわけ10月です」

再び、強烈な円高?

かつて私はこのコラムの中で「複合リスクの同時多発的な炸裂の可能性」について触れたことがある(→記事はこちら)。そこでも述べたことであるが、要するにこれから生じるリスクの炸裂は決して単体で生じるものではないのである。むしろそれらは「複合リスク」と言うのにふさわしいくらい相互に絡み合っており、かつ「同時多発」とでもいうべき炸裂の仕方をするのだ。その結果、世界は、そして国内外のマーケットは極端な崩落、もっといえば「瓦落(がら)」というべき時を迎えることになる。「もはや金融資本主義は終わった」といった論調が横行するのは間違いない。

こうした展開、すなわち「10月ショック」とでもいうべき流れの中でわが国はというと、ほぼ間違いなく生じるのが「強烈な円高転換」である。そしてそれと同時に「金(ゴールド)」への国際マネーの収斂も起きて来るはずである。なぜならば、これらはいずれも今回の金融メルトダウン以降、「いざという時に購入すべき金融商品」として好んで買われてきた経緯があるからだ。そしてその結果、日本株は未曽有の円高ショックに見舞われ、「円安誘導による日本株上昇」を内実とするアベノミクスに支えられてきた第2次安倍晋三政権は、たちまち瓦解の危機に瀕することになる――。

「それではわが国も再起不能になってしまいますね。それでもなお、わが国が世界中で生じる阿鼻叫喚にも似た大混乱の状況から、抜け出す道のりはあるのでしょうか」

「猛者」から電子メールでこう尋ねられた私の脳裏には、ふとある「嫌なこと」が頭に浮かんだ。もっともそれは何ら根拠がないことではない。

1929年に始まる世界大恐慌の前に、わが国では1927年に昭和金融恐慌が発生していた。だがそうした昭和恐慌の前に、ある「決定的な出来事」が起こっていた。それは「関東大震災(1923年)」である。

「帝都」を瓦解させたこの大震災から復興を遂げるため、わが国は東京市、横浜市(いずれも当時)のための外債を発行し、ニューヨークやロンドンで売りさばいた。なぜならば当時のわが国に単独で復興するだけの余力がなかったからだ。このことによって米欧からマネーを吸収し、復興事業を大車輪で始めることに成功したわが国は、ほかよりも早く始まった金融恐慌にもかかわらず、その後の「世界大恐慌」では重症を負わずに済んだとういわけなのだ。

そして現在=2013年。わが国の政府債務の対GDP比は「200%」を優に超え、悲劇的な状況になっている。「いざ有事」となっても、国内でファイナンスは大いに困難なのである。一方、仮にここでいう「10月ショック」が世界で発生するならば、国際社会のほうがむしろわが国の力を頼ることになるはずだ。するとそこで事の良しあしは別として、わが国の富、すなわち国富が国外へと流出していくことになる。「国際協調」「グローバルガバナンス」「人道支援」といった名目で、だ。

だからこそ、仮にこれを巨視的な観点から食い止め、むしろそうしたグローバルマクロの流れを逆向きへ(「国外から国内へ」)と向けたいというのであれば、生じるべきことはただひとつしかないのである。世界が束でわが国に襲い掛かってくる「10月ショック」以上の巨大なリスクの炸裂、しかも「人知を超えた世界におけるリスクの炸裂」が生じることである。当然、それは巨大なコストを伴うものであり、かつ必ずや「人命」という尊い犠牲までをも生んでしまうものである。――「大地震」という単語が、PCの画面を見つめる私の脳裏に浮かんだ。

「原田さん、少し考え過ぎましたね。酷暑のせいでしょう。まさに真夏の夜の夢。今日のところはブレイクとしませんか」

しばし呆然としていると、市場データ分析の「猛者」がメールで呼びかけてきた。はっとわれに返った私はつくづく思った。「真夏の夜の夢は、あくまでも“夢”であってほしい」と。

しかしそれでも日本株マーケットで暑い「8月の陣」は始まる。「すぐそこの秋に控える瓦落」をにらみつつ、程なくして急激に反転する中で。
 

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コメント
 
01. 2013年8月08日 09:30:16 : e9xeV93vFQ

JBpress>海外>The Economist [The Economist]
ドイツ総選挙:予期せぬ物議
2013年08月08日(Thu) The Economist
(英エコノミスト誌 2013年8月3日号)

スパイ事件の新事実発覚と連立の計算がアンゲラ・メルケル氏の勝利を難しくする可能性がある。

「世界で最も影響力のある女性」、4年連続でメルケル独首相に
メルケル首相は依然高い支持率を誇っているが・・・〔AFPBB News〕

 洪水が収まり、ドイツ人はお決まりの夏の儀式に戻っている。アンゲラ・メルケル首相は、2年間同じドレスを再利用した後で新調した青い洋服をまとい、毎年恒例のバイロイト音楽祭鑑賞に出かけた。その余裕がある有権者は、海辺に向かっている。

 9月22日の議会選挙に向けた選挙運動は、まだ熱戦の局面を迎えていない。それはメルケル氏と対抗馬のペール・シュタインブリュック氏が1度限りのテレビ討論に挑む9月1日に始まる。

 メルケル氏にとって、こうした季節的な無関心は思いがけない幸運だった。というのも、それが1年前には誰も予想できなかった物議と同時に訪れたからだ。

 米国と英国の諜報機関による世界的なスパイ行為に関するエドワード・スノーデン氏の暴露で、両国の最も親密な同盟国の1つであるドイツほど大きく揺れた国はない。

スノーデン氏の暴露で大揺れ

 ドイツ市民に対する英米の監視活動の詳細はいまだに不明で混乱しているが、ドイツのハンス・ペーター・フリードリヒ内相が先日嘆いたように、多くのドイツ人は既に「何千人もの米国人が椅子に座って我々の電子メールを読み、我々の電話を聞いているという完全に馬鹿げた話」を信じている。

 ゲシュタポと旧東ドイツの諜報機関シュタージの記憶から、ドイツ人はプライパシー侵害に対して敏感だ。メルケル氏にとって最も危険なことに、7月の世論調査はドイツ人の79%がメルケル政権が監視活動について知っていたと思っていることを示している。メルケル氏は、米国側からの説明を待つと述べ、「ドイツの地ではドイツの法律が適用されなければならない」と主張している。

 野党である中道左派のドイツ社会民主党(SPD)、緑の党、旧共産党の左翼党は、メルケル氏を守勢に立たせておこうとしている。彼らは、7月に行われた議会の委員会証言の際に首相府長官を務めるロナルド・ポファラ氏を厳しく追及し、あと2回同氏を質問攻めにする機会を与えられている。新たな事実が発覚すれば、ポファラ氏は辞任せざるを得ないかもしれない。

 フリードリヒ内相もプレッシャーを受けている。同氏は詳細を知るために既にワシントンへ飛んだが、まだ納得のいくものは何も持ち帰っていない。

 ユーロ危機が弱まり、ドイツのグリーンエネルギーへの転換が有権者の興味を呼び起こすには複雑すぎるため、9月の選挙はもう結果が分かっているように見え始めていた。スパイ騒動はそんな選挙戦で生じた意外な展開だが、この事件でさえ、針を大きく揺り動かすことはできないかもしれない。


 メルケル氏率いるキリスト教民主同盟(CDU)とバイエルンの姉妹政党キリスト教社会同盟(CSU)から成る中道右派の「統一会派」陣営は、今も大差で先頭を走っている(図参照)。

 ドイツ国民が直接首相を選んだとしたら、メルケル氏は地滑り的大勝利でシュタインブリュック氏を破ることだろう。世論調査では62%の有権者がメルケル氏を選ぶと答えている。

 だが、重要なのは、政治的に見て、そして計算の上で、どの政党が議会で過半数の議席を持つ与党を形成できるか、ということだ。

連立の計算

 メルケル氏が表明した目標は、これまで不安定なパートナーだったにせよ、このまま自由民主党(FDP)との連立政権を維持することだ。議会で議席を獲得するのに必要な5%の得票率をFDPがクリアすれば、それは可能だ。

 一方、シュタインブリュック氏が望む連立相手は緑の党だが、この組み合わせは過半数に届かない可能性が高そうだ。左翼党との3党連立は、数字上は可能だが、左翼党は中道左派の主流派からいかれた党と見なされており、そのルーツが東ドイツにあることで汚点が付いている。

 そのため、より可能性の高い2つの結末は、メルケル氏の陣営と中道左派政党のうちの1つ、特にあまりイデオロギー的でないSPDとの連立だ。メルケル氏は既に1期目にSPDと組んでかなりうまく政権を運営した実績があり、再び連立を組むことに抵抗はないだろう。

 これまで2通りの連立政権を運営した唯一のドイツ首相として、メルケル氏はイデオロギーにはこだわっておらず、この1年、最低賃金の問題から、子供を持つ女性への年金増額、家賃値上げの制限に至るまで、やや左寄りの観測気球を上げてきた。

 CDUとSPDの連立政権は現に、52%の有権者が望んでいると言っているものだ。実際、69%の有権者は、両党の違いがもう分からないと述べている。シュタインブリュック氏にとって、これはひどく腹立たしいことだ。昨年秋の指名以来、シュタインブリュック氏はへまばかりやってきた。

 同氏は、SPDの党首ジグマール・ガブリエル氏と反目し合っている。SPDの他の大物は、精彩のない選挙運動家ばかりだ。直近では7月29日、人気の高いブランデンブルク州首相でSPD元党首のマティアス・プラツェック氏が、6月に脳卒中を患い、健康に問題があるため、8月中に辞任すると述べた。

どう転んでも「大きな災難か小さな災難」の違い

 政策に関しては、「大きな災難か小さな災難か」という違いがあるだけで、結果はどれもパッとしない、とシンクタンク、ケルン・ドイツ経済研究所(IW)のミヒャエル・ヒューター氏は言う。

 小さな災難というのは、成長の減速と雇用の減少という犠牲を払って、一部の人の年金を増やすというCDUが提案するような考えのこと。一方、大きな災難というのは、投資を抑制することになる所得税増税や富裕層への新たな税金の導入というSPDと緑の党による取り組みのことだ。

 ユーロ危機に関しては、せいぜいSPDが他のユーロ圏諸国の緊縮財政について若干寛大なくらいで、メルケル政権とシュタインブリュック政権との違いは小さいだろう。連立の計算が拮抗しているうえ、まだ2カ月近くスパイ事件に関する新事実が出てくる可能性があることから、選挙戦は驚くほど流動的なままだ。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/print/38411


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