09. 2013年8月07日 15:30:39
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アングル:「デフレ原因は需要減」の声、極端な緩和が事態悪化させると懸念 2013年 08月 7日 13:04 JST [東京 7日 ロイター] - 日本のデフレは金融緩和の不足に原因があるとするリフレ派の主張に対し、原因は生産年齢人口の減少による「需要の低迷」にあるとの指摘が、有力なエコノミストの中でじわじわと広がりつつある。そのような主張を展開する中には、原因を「供給の減少」と読み違えて実施されている極端な金融緩和は、金融機能を損ない、かえってデフレを長引かせる結果になりかねないと指摘する向きもある。 <デフレの本当の原因> このところ民間企業や公的機関のエコノミストの間で、デフレの原因は消費意欲の高い「生産年齢人口」の減少にあるとの認識が多くなっている。 一方で、金融政策は危機時に採用された金融緩和(流動性供給)がそのまま長期化、固定化されている格好だ。 「少子高齢化が進んだ結果として、需要が減り、日本の潜在成長率は低下して、低成長時代に突入した。しかし、デフレの原因を『供給の減少』と読み違えてしまうと、金融緩和をすればインフレが起こるはずだとか、設備投資が増加するはずだとか間違った見込みが生まれてくる」と日本総合研究所調査部・主席研究員の藻谷浩介氏は言う。 厚生労働省は6月28日に発表した労働市場分析レポートで「1990年代半ば頃までは、生産年齢人口が増加するにつれ、実質GDPも上昇していたが、90年代半ば以降は、生産年齢人口が減少する中で、実質GDPの伸びが鈍化している」と指摘した。 生産年齢人口とは労働力の中核をなす15歳以上65歳未満の人口層を指す。 生産年齢人口が増えている局面、つまり「人口ボーナス期」には、相対的に物的資本が不足し、資本の収益性が高まり、企業部門では設備投資が盛んに行われる。 しかし、「生産年齢人口」減少に伴い労働力人口が減ると、個人消費は縮小し、企業の所有する工場やオフィス等の資本ストックに余剰ができ、資本の収益性は低下する。この結果、企業の需要である設備投資も減少する。 <『ゼロ金利のわな』と財政リスク> 「現役世代」の減少で需要・消費が落ち込み、ダラダラと低成長が続くなか、「金融緩和をこれ以上推し進めても、日本経済が抱える病理は解決せず、むしろ悪化するリスクがある」と藻谷氏は語る。 景気停滞を金融緩和によって解決しようとするマネタリズムの経済学は、思想としてマネーゲームを助長し、市場を乱高下させる側面がある。マネーゲームで収益機会を拡大できる一部の金融資本にとってはメリットがあり、そうした資本からの支援を受けて、学界でも一定の地位を維持してきた、と同氏は指摘する。 しかし、マネタリズムの思想に組して主要国が金融緩和を推し進めた結果、長短金利はゼロに収れんすべく低下し、イールドカーブはフラット化している。 「世界は『流動性のわな』を通り越して、『ゼロ金利のわな』に陥っている」と東海東京証券・チーフエコノミストの斎藤満氏は指摘する。ゼロは2倍しても、5倍してもゼロであり、日銀の異次元緩和もこの例外ではないとの見方だ。 ゼロ金利のわなとは「世界中で川の傾斜が無くなって、水がよどんだ状態だ」と斎藤氏は言う。 金融機関は十分な利ザヤを確保しようと貸出金利を高く設定すると、少なくとも大企業はゼロに近い金利で資金調達できるので、銀行からは借り入れしない。 一方、景気が不安定な時に不良債権化しかねない中小企業向け貸し出しもできない。結果的に信用創造が進まず、マネーが増えず、投資や生産が高まらない。 機関投資家は、リスクをとって外債投資しても、リスクに見合うリターンが得られないので、ポートフォリオ・リバランスも遅々として進まない。 金融機能がマヒする中で、異次元緩和に対する先入観を頼りに株を買い進んできた短期筋にも、さらに買い進むことに躊躇(ちゅうちょ)が生まれている。他方、債券価格の上昇は投資家を高所恐怖症に追い込み、市場は不安定な状況に陥りやすい。 「金融機能を正常化し、カネの流れを促すためには、川に傾斜をつけなければならない」と斎藤氏は提言する。 さらに金融危機時から日本が続けている大量の流動性供給は、本来、金利を下げることで設備投資を刺激するというような発想で考えられたものではなく、無制限の流動性供給によって金融システムを安定させることが目的だった。 しかし、現在では、無制限の流動性供給が経済全体の不安定化リスクを増幅させている面があるとの分析もエコノミストの一部から出ている。 一般に、現在の日本のような財政赤字や政府債務があれば国債の利回りが上昇し、市場が金利上昇という危険信号を発して、むやみに財政を膨張させることへの歯止めがかかる市場機能が作動するはずだ。しかし、政策当局がゼロ金利政策で金利を抑え込んでいるので、その機能が働かない。 「ゼロ金利政策や量的緩和があれば、財政支出によって公的債務が膨張しても国債の金利は上昇しない。だから政治家は安易な財政出動を重ねる。その結果、国の借金は止めどなく膨らんでいく」(外資系金融機関エコノミスト)構造に陥りやすくなる。こうして間接的に金融緩和がコストを生じさせている点に一部のエコノミストは警鐘を鳴らしている。 安倍晋三政権は2日、経済財政諮問会議に中期財政計画の骨子を示したが、国・地方を合わせた基礎的財政収支(プライマリー・バランス)改善の目安となる数値などが明記されておらず、信頼に欠ける内容にとどまっている。 安倍首相は7日、「信頼に足る」中期財政計画を策定するとの決意を示したが、現在の日本の財政制度や社会保障制度(年金制度)は人口増加を前提に成り立っている。 今後、人口減(税収減)という現実を認め、給付削減・負担増を前提とした政策に転換していけるのかどうか、その点がこれからの主要な政策課題となりそうだ。 (森 佳子 編集;田巻 一彦)
焦点:新興国市場で苦戦する欧州企業、景気減速が業績を圧迫 2013年 08月 7日 13:13 JST [ロンドン 7日 ロイター] - 過去新興国市場に積極的に進出した欧州企業が、難しい局面に直面している。HSBC(HSBA.L)は循環的な「減速」と指摘、英ディアジオ(DGE.L)は「不安定な状況」、英蘭ユニリーバ(ULVR.L)は景気減速を「新たな標準(ニューノーマル)」と表現している。 いずれにせよ中国、ブラジル、インドなどでの景気減速は、今決算発表シーズンで欧州の大企業の足を引っ張る要因となっている。業種も銀行からウィスキー、食品や医薬品などさまざまだ。 欧州ではリセッションを受け需要が縮小、企業は新興国市場に活路を見出し積極的に業務を拡大した。モルガン・スタンレーが505の主要欧州グループを対象に実施した調査によると、これら地域は今年の売上高の33%を占める見通しで、1997年の2.8倍以上となる。 こうした動きは好調時には投資家を引き寄せたが、今やブームは去り事業はぜい弱。一部の国では、特有の問題も表面化している。 年初来の株価でみると、新興国市場への関与が大きい欧州企業の上昇率は5%にとどまっており、欧州全体の11%超に大きく後遅れを取っている。 マーケット・セキュリティーズの首席欧州ストラテジスト、ステファン・エコロ氏によると「投資家が新興国市場を安全な避難先と考えない傾向が強まっており、資金を欧州に戻しているようだ」という。 さらに追い打ちをかけているのが、ブラジルレアル、インドルピーなど一部の新興国市場通貨の下落だ。ユニリーバのポルマン最高経営責任者(CEO)は「誰も予想しなかったほど大幅で深刻」と指摘。海外における西側企業の価格決定力を脅かす要因となっている。 売上高や利益率に加え、現在の景気鈍化は他の弱点の露呈につながる可能性がある。 一例としてあげられるのがHSBCのブラジルとメキシコでの不良債権の急増で、同社株は5日に4%超下落した。スタンダード・チャータード(STAN.L)も韓国で問題を抱えている。 ブラジルでは、サノフィ(SASY.PA)も売上高の減少と過剰在庫に頭を抱えている。 <影響が大きい中国の変化> しかし、多くの企業にとって最大の懸念要因は中国だ。今年の成長率見通しは7%を上回っており、経済は依然順調なように思われるが、数年前の2桁成長からの減速の影響は大きい。 世界最大のタイヤ用合成ゴムメーカー、独ランクセス(LXSG.DE)は6日、中国の景気減速を理由に予想以上の業績低迷を警告した。 新興国の業況が先月4年ぶりに縮小したことを示す指標も発表されており、これら地域へのエクスポージャーが大きな企業の評価を圧迫する背景となっている。 構造改革も影響を与えている。特に中国では、成長のけん引役を輸出や投資からシフトさせようとする動きが顕著になっている。 中国の新指導部は贈答の慣例を取り締まっており、グッチを傘下に抱えるケリング(PRTP.PA)やLVMH(LVMH.PA)、レミー・コアントロー(RCOP.PA)など高級腕時計やバッグ、高級酒の関連企業が打撃を受けている。 またグラクソ・スミスクライン(GSK)(GSK.L)などの医薬品企業は価格設定や贈賄の疑いで調査対象となり、粉ミルクではネスレ(NESN.VX)やダノン(DANO.PA)が価格引き下げに追い込まれる事態となった。国営メディアによると、次は輸入高級車が標的となる可能性がある。 これまでは主要新興国市場が企業利益を支えてきたが、今後状況が変わることは明らかだ。ただ、ブームが失敗に終わるわけではない。 HSBCのガリバーCEOは、中国経済は依然成長が続いていることを指摘。ユニリーバは新興国市場のアイスクリーム市場で4割のシェアを確保している。 (Ben Hirschler記者;翻訳 中田千代子 ;編集 田中志保) |