01. 2013年8月07日 08:58:09
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【第7回】 2013年8月7日 草間雅子 [美的収納プランナー] 返信は早いのに仕事の効率が悪い 「メール処理依存症」になる人のダメな習慣 皆様、こんにちは。美的収納プランナーの草間雅子です。 これまでデスクや財布・カバンといったハード面での整理術をご紹介してきた当連載。今回は少し趣向を変え、PCの中身――なかでもビジネスパーソンの皆さんにとって欠かせない「仕事の生産性がアップするメールの整理術」をご紹介してまいります。 そこでまず、頼もしいパートナーをご紹介しましょう。企業の生産性向上のプロでいらっしゃる株式会社プロスタンダード代表取締役社長 若林雅樹さんです。 若林さんは、企業で働くビジネスパーソンに対して、経営工学に基づいたスキルを提供することによって、月10時間(30分/日×20営業日)以上の生産性向上を目指すという研修を行っていらっしゃる方です。また、実際の業務現場でそれらのスキルが生かされているかチェックを行うなど、フォローも実施されています。 そんな若林さんに、仕事で差がつく「メール処理術&整理術」を伺ってきました。 「美的収納」との共通点 時間の密度を高める! 今回、若林さんに「生産性向上」についてお話を伺うなかで、僭越ながら感じたのは、若林さんのお考えと私の家庭やオフィスにおける「収納」についての考え方との間に、多くの共通点があるということでした。 まず、その基本となるのが「有限である時間をいかに生産的に使うか」という点です。ここで、若林さんに見せていただいたこちらの表が非常に分かりやすかったのでご紹介します。 ※プロスタンダード様 提供資料 拡大画像表示 この「稼働時間」「準稼働時間」「非稼働時間」という言葉自体は、私にとって目新しいものでしたが、その考え方のベースは、私が「なぜ整理・収納をするのか?」という目的を考える上で、一番意識していた事と同じであり、それをこのように分かりやすく言語化・視覚化された表で見せていただいた事で、私自身の考えもスッキリしました。さすがは生産性向上のプロです!
若林さんが作られたこの表はオフィスを前提にしていますが、家に置き換えてみるとどうでしょうか。収納を使いやすく、効率化することで、まずは非稼働時間の中の無駄(=特に探し物の時間など)をなくすことができます。そして、日々のルーチン部分(=必要な家事)は準稼働時間に該当すると考えられますが、動線などを見直し、時間の短縮、密度を高めることで、人生の付加価値を生み出す“本当にやりたい事、夢”に費やす時間、すなわち稼働時間を増やすことが可能になります。そして、これこそがまさに、私が一番お伝えしたい「収納」の目的なのです。 ついつい有限ということを忘れてしまいがちな時間ですが、この表を見て「公私にわたり時間をどう使っているのか?今後どう使いたいのか?」を改めて見つめ直す事が必要だと感じました。 皆さんの時間の使い方はいかがでしょう? 1日のうち2時間15分も メール処理の時間に使っている!? 今日のテーマはメールの処理術&整理術ですが、これは、 ・仕事上、付加価値を生み出す“稼働時間”をどう増やしていくのか? ・つまり、準稼働・非稼働時間をどう短縮してゆくのか? という課題をクリアする上で、欠かせないスキルだと若林さんはおっしゃいます。 今やPCが主なアウトプットの道具である以上、そのスキルを上げる事で成果の質量が上がります。 「プロは道具を使いこなすべし!」 なるほどです。 プロスタンダード代表取締役社長 若林雅樹さん(左)と筆者(右) 若林さんによると、メール処理に要する時間は1日のうち、平均 約2時間15分(マッキンゼー調査)も占めているとの事。しかも、そのメール処理時間のうち、約9割の時間はおおむね準稼働・非稼働時間に該当するのだそうです。つまりは、結果に直結しない作業であるという事になります。この時間を極力短縮する事で付加価値を生み出す稼働時間を増やし、その密度を高める=質を向上させることが生産性を上げる事に繋がるのは、皆さん納得ですよね?
若林さんの言葉で私自身、ドッキリしたのが「メール処理依存症」という言葉!!そして、「1日中メール処理すれば、仕事は“片付く”が“やるべき仕事”は終わらない」という言葉にはさらにドッキリ!! 確かに、メールを沢山打っていると、ものすごく仕事をしている気になったりするものですが、メールはあくまでも、一連の仕事の“プロセス”として必要なだけで、目的そのものではない。おっしゃる通りですよね。 そう語る若林さんご本人も、仕事がうまくいっていなかった時期はメール処理が主体になっていたそうです。常時ちらちらと受信トレイをチェックし、都度返信することで作業が中断され集中力が落ちるといったことは皆さんも経験があるのではないでしょうか? これは、まさに収納も同じです。片付けそのものが目的になってしまい、どうして片付けるべきか?の先にある、本来の目的“本当にやりたい事”が二の次になっている事が多々あるのです。 メールソフトは開きっぱなしにするな! 処理時間を短縮する4つの方法 では、どうすればメール処理の時間を縮めることができるのでしょうか? まず、1日のメール処理時間を以下の通り細分化しましょう(本文の内容を考える時間を除く)。 @読む A書く・送る B探す C振り分ける それぞれを効率化させるためのキーワードは以下になります。 @読む → 時間・回数制限 A書く・送る → タイピングスピード、辞書登録、ショートカットキーの活用 B探す → フォルダ分けのスキル・検索力 C振り分ける → フォルダ分けのスキル (※Pro Standard様 提供資料) 以下、それぞれのポイントを若林さんに伺ってまいりました。 @読む → 時間・回数制限を設ける(2〜3回/日) メールチェックは1日2〜3回までに回数制限(ソフト自体閉じる)。9割以上の人がメールソフトを1日中開きっぱなしにしていると言いますが、これでは仕事の集中力が途切れてしまいます。先ほどから申し上げているようにメール処理自体は仕事の目的ではないので、思い切って回数制限を設け、それ以外の時間はソフトごと閉じてしまう。これで業務効率が上がったという実例があります。 ここで疑問に感じたのが、「即、返信しなくても大丈夫?」という点です。若林さん曰く、「返信が遅れてとやかく言われるのは、そもそもの信頼関係に問題があるのでは?早く返信する事よりも、仕事やサービスの本質的価値を上げることに注力すべき」とのこと。おっしゃる通りですよね。ただし、業種によってはスピード返信が必須の場合もあり、一概には言えませんので、ご自身の状況に応じてご判断くださいね。 タイピング速度が3倍アップすれば 年間90時間もの差がつく! A書く・送る → タイピングスピードの向上、辞書登録、ショートカットキーの活用 処理を速くするスキルのうち、“メール送信”に関する部分ですが、タイピングのスピードは業務のほとんどがPCなしでは回らない今となっては、生産性に与える影響は非常に大きいものがあります。若林さん曰く、1年で見ると150文字/分 の人と450文字/分打てる人では、年間で90時間(11営業日)差がつくというデータがあるのだそう。数字で見ると歴然、これは大きな差ですよね(※250文字×20通/日を打つと仮定した場合)。 短時間でメール本文を打てるように、よく使う単語や文例を辞書登録しておくことが有効です。 「いつ」→いつもお世話になっております。 「おて」→お手数をお掛けしますが、何卒よろしくお願いいたします。 など。ただし、デメリットもあります。それが辞書登録によるタイピングミスです。これには細心の注意を払うべきでしょう。若林さんもかつての上司の方から「お詫びのメールだけは、辞書登録は使わず手打ちするように」と言われたのだとか。お詫びのメールで、いかにも辞書登録によるタイピングミスのものが届いたら、怒りが倍増しそうですものね。気をつけたいものです。 ご存じない方のために、念のため。辞書登録の方法は、Windowsでは「ツールボックス」→「単語の登録」で行うことができます(参考:http://office.microsoft.com/ja-jp/word-help/HA010230132.aspx)。 次にショートカットキーの活用ですが、Outlookを使用の場合、例えばメールの作成・送信には、以下のショートカットキーで画面を開き、送信までを済ませることが可能です。 新規作成:Ctrl+N 返信:Ctrl+R →本文を打って 送受信:F9ボタン (その他ショートカットキー参考:http://office.microsoft.com/ja-jp/outlook-help/HP001230396.aspx) ショートカットキーは左手だけで操作できるので、キーボードからいちいち右手をマウスに移し、カーソルを移動して各ボタン(新規作成・送受信)をクリックするより格段に動きの無駄がなくなります。 ひとつひとつで短縮できる時間はわずかだとしても、日々のことですから塵も積もれば、ですよね!目の前でサクサクとショートカットキーを操る若林さんがとてもスマートで、思わず歓声を上げてしまいました。 メールフォルダの並べ方・名前の付け方は? マウス動線を縮めろ! 次にB「探す」とC「振り分ける」にうつりましょう。 B探す → フォルダ分けのスキル、検索力 C振り分ける → フォルダ分けのスキルアップ これは、フォルダの階層の作り方によって格段に効率の上がるところ。これこそ、皆さんにとって最も悩ましい作業のはず!私も悩ましい! 伺ったポイントは以下の2点です。 1、フォルダの並べ方…使用頻度順に上から 2、フォルダの名前の付け方…頭に番号を振る まず、1「フォルダの並べ方」について見ていきましょう。これについては、使用頻度順に上から並べることによってPC上のカーソルの動線の無駄が減ります。収納で言うと、どこにどう収めるべきか?よく使うモノ(使用頻度の高いもの)を取りやすい上の段の引き出し、または引き出しの手前、にしまう事と同じです。 日常生活もPCの中身も、慣れるとつい不便に鈍感になってしまうもの。しっかりと意識づけていきたいところです。 フォルダも作り過ぎると、どこに振り分けるのか選択肢が増えて時間がかかる上に、振り分けるまでの動線が長くなります。ましてや、画面スクロールが必要なぐらいフォルダが多いのは相当な時間のロス!若林さん曰く、「既に画面スクロールが発生している方はフォルダ階層の抜本的構造改革をオススメしたい」とのこと。引き出しも受信箱もわかりやすく、サッと仕舞えることが大事で、フォルダの階層が深いというのは、引き出しの中に箱があって、更にその中に箱があって…という状態に等しいと言えるでしょう。 次に2「フォルダの名前の付け方」についてです。これは、「10」「20」「30」とフォルダ名の頭に使用頻度順に番号を振る事で、よく使う引き出しを一番上に持ってくる事ができます。ここで、「10」の次を「11、12」と詰めてしまうと、間にフォルダが追加できず、追加すべきフォルダが発生する度に、番号の振り直しが発生してしまいます。皆さん“あるある”ではないですか? なので「10」の次は「20」としておくことで、11〜19にフォルダが挿入できます。 これを収納に例えるなら、しまう場所にパンパンに詰め込まず、ゆとりを持たせるということでしょうか。ややスペースを開けておくことで、モノが増えても対応できるのです。ちょっと足すといっぱいになって、引出しそのものの場所を変えなくてはいけないシステムは、非効率だという事です。 以上、家やオフィスの収納の効率化には様々なアイデアがあった私も、メール処理の効率となると…考えもつかない事ばかりで、若林さんのお話には、始終ブンブン首を振ってうなずきっ放しでありました。 次回(8月21日公開予定)も引き続き、仕事の生産性アップ強化企画第2弾としてプロスタンダードの若林雅樹さんに、「スケジューリング&タスク整理術」ついてお話をお伺いします!どうぞお楽しみに! (文/構成=勝俣絹枝) |