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8月4日 東京新聞「こちら特報部」 :「日々担々」資料ブログ
職場で嫌がらせを受けるパワーハラスメント(パワハラ)の訴えが増え続ける中、難しい資格の取得を求める「資格ハラスメント」が問題化しつつある。取得できないと降格、果てはリストラ対象の可能性をほのめかされる。休日返上で試験勉強を要求し、精神的にも肉体的にも疲弊する新たなパワハラの実態とは−。 (荒井六貴)
「仕事と関係のない資格で、意味が全くない。資格の試験勉強で精神的に追い込んで、辞職させることを狙っているとしか思えない」
勤務先の会社から国家資格の取得を求められた社員Aさんはこう訴える。
情報システム関連のIT技術者を派遣する会社で、社員は約千五百人。ジャスダックに上場もしている。四十代のAさんは「IT業界は将来性があり、食いっぱぐれがない」と入社した。十年以上、主に金融機関やマスコミのシステムセンターなどに派遣されて働いてきた。
会社が資格を求め始めたのは二〇一一年の春だ。上司は「個人のスキルアップを」と命じ、社員にそれぞれ取得を求める国家資格のリストを示した。
Aさんは独立行政法人・情報処理推進機構が認定する「情報処理技術者」を取るよう要求された。システムを構築、運用する技術者らに対する国家資格で、レベルは十二段階。年間約五十万人が申し込み、上級では合格率は一割強と合格はたやすくない。
同年秋の試験が近づくと、上司は「来年度の昇格や降格に影響する」とプレッシャーをかけるようになった。しかし、平日は約十二時間働き、土日に出勤することもある。休みを削って勉強したが不合格だった。
同年十二月、人事評価規則が変更され、「国家資格や検定を一つ以上、保有することが昇格の条件」と社内でルール化された。六段階の評価で、段階ごとに必要な資格の種類が明記された。評価によって、給与が増えたり減ったりするという。
上司は「不合格は、降格の対象にもなる」とさらに強く言うようになったが、Aさんは今年になっても合格できていない。このままでは降格し、四百万円超の年収を減らされる可能性が大きい。
◆新人事評価後 早期退職100人
Aさんは、資格取得の要求をリストラを加速させるための手段とみる。実際、会社側は今年、事業の見直しで早期退職者を募集。資格の影響もあってか、約百人が応じ、人件費を年間五億円以上削減したという。
Aさんは「派遣先の企業は若い人材を求めるため、四十歳を超えると仕事が減る。会社は難しい試験を利用し、退職に追い立てている。休めず、自殺に追い込まれた労災事案と同じように感じる。労働組合もなく、助けを求める手段もない。若くなく転職も難しい。資格が必要なら入社しなかった」と憂う。
Aさんの会社の担当者は「勉強は常に必要で、資格は昇格のための一つの要素。降格をさせるためではないが、取得しなければ人事評価が下がる可能性はある。パワハラでも退職勧奨でもない」と主張した。
だが、Aさんが求められている情報処理技術者の資格は、一〇年の事業仕分けで、「資格を得てもシステムを構築できるようにはならない」「実務に役立たない」などとやり玉に挙げられたものだ。
仕分け人だった内田勝也・情報セキュリティ大学院大学名誉教授は「この資格はほとんど実務に関係のない不必要なもの。無駄な資格のために勉強するよりも、社員同士で経験を共有するなど実務を磨いた方がよい」と指摘した。
全国の労働局などに寄せられるパワーハラスメント相談は右肩上がりで増え続けている。一一年度は〇六年度の二倍で、約四万六千件だった。
◆厚労省が定義 6類型を規定
「職場内の優位性を背景に、適正範囲を超えて精神的・身体的苦痛を与える、または職場環境を悪化させる行為」
厚生労働省は昨年、パワハラをこう定義し、「暴行など身体的な攻撃」「脅迫など精神的な攻撃」「不要・不可能な仕事を強制する過大な要求」など六つの類型も規定した。同省賃金時間室の担当者は、「資格ハラスメントは、過大な要求の類型に含まれる可能性が大きい」と指摘した。
個人加盟の労働組合「東京管理職ユニオン」の鈴木剛書記長によると、〇八年のリーマン・ショックの前後から、資格の取得や語学の習得を強要されているという相談が寄せられるようになったという。「資格は実際に仕事で必要なものや有用なものがあり、会社側は資格のない人をリストラのターゲットにしやすい。退職勧奨理由として使われやすい印象を受ける」
企業側が資格取得を要求し、休日を返上して勉強を続けた社員が過労で倒れたケースもある。
建設会社「鉄建」の埼玉県内の支店で働いていた五十代の男性社員は〇〇年、技術士試験の終了直後に、脳内出血で倒れ、左半身まひの障害を負った。
男性は、会社から社内で技術士を百人にする取り組みの候補に指名され、平日は十二時間の勤務後二時間、休日は朝から夕方まで勉強を続けた。「合格しなければ」という職場のプレッシャーは相当だったという。
男性は労災認定を求めて大阪地裁に提訴し、〇九年の判決で、「試験勉強には業務性があり、精神的負荷は相当だった。障害は、技術士試験を含めた業務が原因だった」と認められた。
労働問題に詳しい上智大の山口浩一郎名誉教授は「社員の技能は、社内で身に付けさせるというのは、日本の企業の良い面でもあるが、行き過ぎは問題だ。資格の取得は、個人の自由意思を尊重しなければならない」と説明する。
日本労働弁護団事務局次長の指宿昭一弁護士は「資格を取得した社員を昇進などで優遇することに問題はないが、資格取得を悪用して退職を迫るようなことをするのは、パワハラの一種だ。社員に資格を取らせたいのなら、勤務時間内に勉強をさせるべきだ。社員の生活を壊したり、健康を害したりするほどの過度の要求は許されない」。
<デスクメモ> 「お子さんを説得してほしい」。リストラで親に圧力をかける企業もあると聞く。これもパワハラだ。先日、飲み屋街で、課長らしき人が二十代の男性に「辞表を出せ」と怒鳴っていた。続く言葉は「セクハラじゃねえぞ」。部下を思う指導だとしても、泥酔してろれつが回らない時はやめた方がよい。 (文)
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