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スモールオーバーラップ 新衝突実験でトヨタ車ほかアノ人気車が最低評価 アメリカで始まった現実に即した試験とその結果に迫る
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/36618
2013年08月03日(土) ベストカー :現代ビジネス
昨年から北米で始まった新しい衝突試験の結果は衝撃的なものだった。ベンツのCクラス、アウディA4、レクサスIS、カムリといったプレミアムセダンたちが軒並み「プア」の最低評価。いったいどんな試験なのか?
昨年からアメリカで始まった『スモールオーバーラップ』衝突の試験は、ドイツ勢が最低評価になるなど、自動車業界に激震を走らせている。いままで衝突安全性はほぼ横並びだと思われていたものの、スモールオーバーラップ試験をしたら驚くほどの差がついたのだった。アメリカのメディアは事態の深刻さを認識し、キチンとした報道を始めた。ヨーロッパの『ユーロNキャップ』も基準改定に向けて動きそうだ。以下、日本で馴染みの薄いスモールオーバーラップについて紹介したい。
■SAFETY スモールオーバーラップという考え方はどうして生まれたか
1980年代に入り、ドイツのADAC(日本でいうJAFに相当)や、アメリカのIIHS(道路安全保険協会)は独自に自動車の衝突試験を開始。すると自動車メーカーによって衝突安全性がまったく違うことが明確になった。やがて「当局は何をしているんだ!」ということになり、EUもアメリカも衝突基準を大幅に引き上げる。日本も欧米のマネをして60対40のオフセット衝突モードを取り入れ、エアバッグの標準装備化を始めたのはご存じの通り。
数年すると大半の自動車メーカーが60対40のオーバーラップ衝突と、車体前面をコンクリートバリアに衝突させるというフルラップ衝突の対応を完了。
同じ試験問題を何年も続けて出されれば、誰だっていい成績を取れる。いまや60対40のオーバーラップ衝突は、日米欧の量販車なら当たり前のようにトップランクを取れるようになった。日本の『JNキャップ』(自動車アセスメント)を見ると、☆5つの満点か☆4つばかりズラリと並ぶ。
アメリカの保険協会は「少なくない試験費用を使うのにこのままでいいのか?」と考えた。事故で受けたダメージを改めて分析すると、死亡要因のトップが「60対40よりオフセット率の少ない衝突形態」(右下写真参照のこと)という結論に至る。考えてみれば60対40も70対30も80対20も、対向車と衝突する時は同じような確率で発生します。60対40なら平気で、80対20だと死亡するなんて理不尽。
そのほか、コーナーでアンダーステアを出し、壁に車体の左側を擦りつけた状態で電柱と衝突したり、道路から飛び出しているコンクリートの段差に衝突したりすると、車体前面の20〜30%が当たるという状況になる。決してレアケースじゃありません。考えてみれば60対40のオフセット率も、当時一番死亡事故が多かったから決められた。だとしたらオフセット率の低いモードを取り入れるのは当然の流れ。
しかもこの事故形態、ボルボは'80年代から「危険だ」という警鐘を鳴らし、いち早く社内基準に取り入れたという。保険協会としちゃ少しでも支払い保険金を払いたくない(これは自動車ユーザーにとっても正義)ため、さっそく試験モードに取り入れることを決めた。ちなみにIIHSのオフセット率は75対25。時速40マイル(約64q/h)は60対40の時と変わらない。これは死亡事故で最も多いオフセット率だという。
■スモールオーバーラップ衝突試験とは
40マイル(64km/h)40%オフセット (従来タイプ)
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従来の40%のオフセット衝突よりもさらに浅い25%、時速40マイル(約64q/h)でバリアに衝突させるもの。フロントサイドフレームよりも外側にバリアが衝突するため、フロントサイドフレームでのエネルギー吸収が難しく、キャビンに要求される強度が40%の時に比べて大幅に高くなる。
このテストを始めたIIHS(米道路安全保険協会)によれば、毎年正面衝突事故で1万人以上が命を失っているが、前席の乗員が死亡または重傷となった前面衝突の交通事故のうち、約4分の1が、スモールオーバーラップ衝突に該当するという。IIHSのランド所長は「テストにより、車体設計をどうすれば乗員を保護するためになるかを調べるステップになる」とコメントしている。
日本でもこういったテストが行なわれ、結果が公表されることが望まれる。
■SAFETY スモールオーバーラップとこれまでのオフセット試験の壊れ方の違い
スモールオーバーラップ試験の写真や動画を見ると、明確にわかる。60対40のオフセット衝突は、バリアから受ける衝撃を3つくらいの方向に振り分けて吸収しています。右ハンドルであれば、車体の右側の強固なフレームを潰すことによってエネルギーの大半が消費。さらにエンジン/ミッションのマウントも後方にズラすことにより、これまた大きなエネルギー吸収材として使う。その上で剛性を確保したキャビンにより、車体全体の骨格に逃がす。
75対25のスモールオーバーラップは、そもそも右側のメインフレームの外側に大きな入力が入ってしまう。これで最も大きな「衝撃吸収材」を使えなくなる。さらにエンジン+ミッションもない部分であれば空振り。「最悪」と評価された車種の衝突動画を詳細に分析すればハッキリわかるのだけれど、フロントタイヤまでバリアが容易に進入。そのままAピラーの付け根に衝突しているのだった。
どんなに強固なキャビンを作っても、衝突エネルギーが集中したら厳しい。現行レクサスISなどはAピラーまで完全に座屈(入力に耐えきれず屈服して折れ曲がる)しちゃっている。こうなると乗員の頭は接近してきたAピラーと激突。Aピラーの構造たるや思い切り強固。これに後述の通りエアバックも介せず激突したら、どんなダメージを受けるか想像するだけで恐ろしい。
ということで重要なのは、エアバッグだ。左ハンドルでスモールオーバーラップ衝突をすると、基本的に車体が左側にズレる。一方、拘束されていない乗員は慣性の法則により、衝突時のベクトルをキープして直進。車体から見ると左前方のAピラーに向かって行くことになる(右の試験の写真を御覧ください)。したがってハンドルから展開されるエアバッグの左側に衝突し、続いてサイドエアバッグでカバーされるという流れ。
ところが、である。あまりに車体変形が大きいと、ハンドル自体内側&上方を向いてしまい乗員は空振り。さらにサイドエアバッグが開かない車種まであるのだから恐ろしい。また、サイドエアバッグが展開しても乗員の頭をまったくサポートしてくれないケースも。いずれにしろ硬い構造物にエアバッグを介せず激突したら致命的なダメージを負うこと明白だ
■SAFETY スモールオーバーラップの成績を向上させるには何が必要か?
スモールオーバーラップも普通のオフセット衝突も基本的な対応方法は同じ。とにかく「強固なフレームで吸収する」しかないそうな。最も簡単な対応方法を考えるなら、左右のメインフレームを外側にズラせばいいワケ。ただハンドルの切れ角との関係もあり、簡単に外側にズラせず。特に小回り性能を重視したり、幅広のタイヤを履かせようとしたら、メインフレームは内側に位置せざるを得ない。
プリウスV(プリウスα)の場合、Aピラーが跡形もなく潰され、エアバッグは空振り、タイヤがキャビンに進入するなど厳しい結果だ
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そこでタイヤから前方のメインフレームの形状を外側に広げるなど工夫するしかない。興味深いことにホンダやマツダの一部車種(ハッキリ書けばアコードとシビック、アテンザです)は、完成していたモデルに手を加えることでスモールオーバーラップ対策をしている。マツダに聞いてみたら「14sほどの部材を使い補強しました」。効果はキッチリ現われており、IIHSの評価で『A』を獲得。すばらしい!
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ホンダは一段と入念なオーバーラップ対策を行ない、シビックなどマイナーチェンジで『G』評価を得ている。聞いてみるとオフセット衝突と同じノウハウを使えば充分に対応は可能らしい。続々公表されるスモールオーバーラップの評価を見ると、緊急対応でも『A』評価なら取れるというイメージ。こうなるとユーザーのためにお金をかけるかどうか、という企業判断になる。
■SAFETY ホンダがよくてトヨタ、ベンツが最低評価なのはなぜか?
スモールオーバーラップの動画を見ると、意外なことが起きている。アコードやシビックは真正面からガチンコでバリアに突き刺さり、車体がバリアの位置で停止しています。それで良好な結果を出した。25%というオーバーラップの量で完全に車重を受け止めている、ということ。こらもう立派だと思う。アメリカのメディアやIIHSも手放しで誉めているほど。なんせバリアから動いていないということは、二次衝突しないということを示していますから。
同じホンダで『G』評価を得たアキュラTLは、スモールオーバーラップ対応をしていないのに高い評価を得た。動画を見たらバリアに弾かれ、高い速度を保ったまま前方に走っていく。バリアに当たっても速度がゼロになっていないのだ。スズキのキザシも同じ状況での『G』評価。当たった後の二次衝突で厳しい衝撃を受ける可能性を残す。IIHS内で審議の対象になっているらしい。今後の大きなテーマになるだろう。
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いずれにしろ基本的にスモールオーバーラップ衝突に対応させるという強い意識を持って開発された車種以外、相当厳しいモードであることは間違いない。そうそう。ボルボはIIHSが試験を始める前から社内基準としてスモールオーバーラップ対応にしていたそうな。スバルも幅広い水平対向エンジンを搭載しているため、メインフレームの位置が外側にあり、対応していないのに『A』評価。これまたすばらしい。
■SAFETY 日本の自動車事故対策センターの取り組みは遅れていないか?
結論から書くと「完全に遅れている」。私はベストカーで自動車アセスについての原稿を書くたびに「今のままの衝突モードを続けている意味などない!」と主張してきた。国交省から天下ってきたり、派遣されている自動車アセスの担当者に聞くと、理屈にもならない主張を繰り返すのみ。かといって欧州でスモールオーバーラップを取り入れ始めたら、日本もやらざるを得まい。ただ「来年からやります」といったら、自動車メーカーから「約束と違うだろう!」とボコボコにされる。時期についちゃ、ユーザーやメディアの反応で決まると思う。
ここにきて「安全基準はEUと共通にする」とか「TPP」も進んでいる。自動ブレーキ装置の普及もEUが'14年からと決めたため、日本は追随するといわれ始めた。世界の流れから考えると、日本で売られるクルマも数年スパンでスモールオーバーラップ衝突対応になる可能性大。基本構造から対応すれば、コストも重量増も最小限で済む。大いに歓迎したい。
■SAFETY 結論として日本車は安全か?
答えは簡単。「日本車は」というより「スモールオーバーラップに対応しているクルマ」であれば、世界トップクラスの安全性を持つ。逆に現状だと、フルラップ衝突やオフセット衝突は世界中横並び。スモールオーバーラップで『P』評価となってしまったモデルは、韓国の現代ソナタより安全レベルが低いということになる。これは大きな問題だ。
可及的速やかにスモールオーバーラップ対応を行なうべきだと思う。今年とか来年買うクルマについちゃ未対応車でも仕方ない。されど2年後に買うならスモールオーバーラップ対応ボディを選ぶことをすすめておく。絶対的な安全性もさることながら、真剣に考えているか? メーカーの姿勢が問われるからだ。
ちなみに日本で販売される日本車で初めてのスモールオーバーラップ衝突対応車は、アコードHVになると思う。輸入車であれば、V40などボルボの各車ということになります。
「ベストカー」2013年6月10日号より
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