01. 2013年8月05日 16:49:26
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アングル:中国経済、日本企業から相次ぐ底入れの声 2013年 08月 5日 14:25 JST [東京 5日 ロイター] - 減速懸念が広がる中国経済に対し、4─6月期決算を発表した日本企業からは、市場が警戒するほど悲観的な声は聞かれない。都市化が進む内陸部で工事が継続しているほか、世界的に需要が高まるスマートフォン(多機能携帯電話)の増産投資が再開され、建機を手掛けるコマツ(6301.T)や、生産設備を供給する三菱電機(6503.T)などは受注が上向きつつある。一部で景気底入れを示唆する経済統計も見られ、キヤノン(7751.T)のように業績予想を下方修正した製造業にも、中国経済の今後の回復に期待する声がでている。 <キヤノンで身構えた市場> 主要企業のトップバッターとして登場したキヤノンが決算を発表した7月24日、市場は身構えた。「(従来の計画と)かなりの誤差がある」(田中稔三副社長)として、中国におけるデジタル一眼カメラの販売が下振れたことを主因に、12月通期の業績予想を下方修正したためだ。 影の銀行(シャドーバンキング)問題、金融引き締めなど、折しも同国経済に対する不安が強まる中で発表されたキヤノンの業績は、その後に続く日本企業の決算への警戒を高めた。いちよしアセットマネジメントの秋野充成執行役員運用部長は、キヤノンについて「それだけ中国や新興国、欧州の調子が悪く、先行きも暗くみているということなのだろう。(同社の現地販売の)実態が悪いことがうかがえる」と語っていた。 しかし、今回の四半期決算を見渡してみると、日本の製造業を中心に、中国経済の底打ちを示唆する声が少なくない。日本の自動車大手の中でも中国での売り上げが多い日産自動車(7201.T)は、4─6月期の同国販売が30万8000台と、前年比1%減まで下落幅が縮まった。 1ー3月期は尖閣諸島(中国名:釣魚島)問題が影を落とし、28万4000台と前年から15.1%減っていたが、その後は新たに投入した新車の売れ行きが好調、反転に転じた。足元は新車だけでなく、既存のモデルも販売が好調で、金融引き締めなどの影響は「今のところ一切出ていない」(田川丈二執行役員)という。 コマツは当初、中国における油圧ショベルの4─6月期の受注を前年比横ばいで計画していたが、6月は3割増と想定より上振れた。7月もプラス25%前後で推移した。コマツだけでなく、米キャタピラー(CAT.N)などを含めた建機全体の需要は、4ー6月期が前年比10%増と2年ぶりにプラスに転じた。地方で小規模の工事が多く、とりわけ住宅建設、農地の利水工事が目立つという。 コマツの杉木亮・常務執行役員は「底を打った感がある」と指摘。「政府による工事の認可件数も大幅な伸びを示しており、この先も上振れる可能性がある」と語った。 地方での工事の恩恵を受けているのは、社会インフラ整備に強い日立製作所(6501.T)や三菱電機も同じだ。沿岸部に比べて内陸部は依然として都市化に関連した工事が進んでおり、高性能な日本メーカーのエレベーターの需要が商業ビルなどで強いという。日立の中村豊明・副社長は、「昇降機の(受注は)相当増えている。先行きプラス要因に感じている」と説明。中国の景況感について「底を打った」と述べた。 三菱電機の場合、ファクトリーオートメーション(FA)の受注も上向いている。韓国、台湾と並び、中国でスマートフォンや液晶の生産向けに設備投資が増え、3月ごろからFAの受注が堅調。第2・四半期以降、業績に貢献してくるとみている。松山彰宏・常務執行役員は「前年度の第4・四半期に比べると受注が伸びている」と語った。 <リスクとして認識> もちろん各社とも、手放しで楽観しているわけではない。「当然、注意しては見ている」(日産の田川執行役員)、「リスクとしては認識している」(三菱電機の松山常務)などの声も聞かれた。日産の田川執行役員によると、現地の金融機関と取引が多い地元企業の中には、資金調達の条件変更を迫られているケースも散見されるという。 それでも一部のマクロ統計には、底打ちの兆しを読み取れる数字が出てきた。7月の製造業PMIは、中小企業の占める割合が高いHSBCによる数字が47.7と、11カ月ぶり低水準となる一方、大企業の動向を示す国家統計局によるPMIは50.3と、前月の50.1から上昇し、好不況の境目である50を上回った。3日に発表された非製造業PMIは54.1と、6月の53.9から上昇した。 日立の中村副社長は「GDP(国内総生産)は7─7.5%程度で当面は安定するだろう」との見通しを示す。 これまで海運の荷動きは、中国の鉄鉱石需要の低迷でばら積み船が鈍かった。しかし日本郵船(9101.T)は、鉄鉱石や石炭を中心に4─6月期は荷動きが増加した。さらに航空貨物も「中国のフォーワーダー(国際貨物混載事業者)から問い合わせが来ている」(日本郵船の磯田裕治・経営委員)という。 中国販売の計画が狂い業績の下方修正に追い込まれたキヤノンだが、田中副社長は「中国の景気はこの下期のどこかで景気が回復してくる」と期待を示す。「そうすれば当然、カメラの売り上げもいい影響が出てくる」。 (久保 信博 編集:北松 克朗)
焦点:中国で人民元など自由化めぐり縄張り争い、多国籍企業に困惑 2013年 08月 5日 14:40 JST [上海 5日 ロイター] - 中国で人民元や資本勘定の自由化をめぐる中国人民銀行(中央銀行)と国家外為管理局(SAFE)の縄張り争いが活発化しており、中国に拠点を構える多国籍企業はどちらの側につくか決断を迫られている。
習近平国家主席と李克強首相が改革姿勢を強める中、重要な改革分野をめぐって当局同士が反目し合っていることは決して望ましくない。 中国と深い貿易関係にある企業や海外のビジネス団体といった関係者らによると、自由化をめぐる試行プログラムをいくつも所管している2大当局間のあつれきを受け、中国で投資や貿易に携わる主要企業の意思決定に影響を与え始めているという。 欧州系多国籍企業の財務担当者は「試行プログラムはSAFEのもの、人民銀行のもの、それぞれがいくつもあるが、両者は互いにいがみ合っている。もし一方と契約を交わせば、もう一方からはつまはじきにされるかもしれない。そのため、どれを選択するのか、誰に何を言うのか、非常に気をつけなければならない」と話す。 その他4人の関係筋も人民銀行とSAFE間のいがみ合いに注意するよう忠告を受けたという。両社の仲の悪さは、中国や香港の金融界の一部では公然の秘密となっているもようだ。 試行プログラムの事情に詳しい多国籍企業の財務幹部は「われわれが受けたアドバイスは、人民銀行とSAFEはお互いに競っているため、どの試行プログラムにも参加するべきということだった」と語る。 いずれの関係者も中国でのビジネスに影響するとして、匿名を希望した。 SAFEと人民銀行の双方にファックスでコメントを求めたが、回答はなかった。 <争いの原因> 中国人民銀行とSAFEのいがみ合いがどのようにして始まったのかは定かではない。アナリストの中には、単純に権力をめぐるいさかいが原因だという見方もあれば、政策課題をめぐる意見の相違が原因だという見方もある。 中国にある海外ビジネス団体のある幹部は「人民銀行は(改革に対して)よりオープンなアプローチをとる一方、SAFEは自身をゲートキーパー(門番)とみなしている」との認識を示した。 人民銀行は国内のマネーサプライを管理し、中国の銀行に対する権限を中国銀行業監督管理委員会(銀監会、CBRC)とともに握っている。 一方、SAFEは中国の外貨準備を扱うほか、クロスボーダーの通貨の流れを管理している。 機構的には人民銀行がSAFEを管理することになっているが、アナリストらによると、実際には反目し合うことも多いという。 <さまざまな試行プログラム> ここ数年の急激な経済成長を受け、中国指導部は財政や金融、司法といった面における幅広い改革が将来の成長のためには必要だと指摘している。今年10月には、一段の経済改革に向けたロードマップを示すとみられている。 中国は資本勘定や人民元相場に厳しい規制を敷いているものの、現時点で通貨や資本勘定に関連した10件超の試行プログラムが実行中、もしくは実行される予定となっており、対外直接投資やクロスボーダー融資の容認などさまざまな面における自由化が検討段階にある。 試行プログラムに参加している多国籍企業には、英蘭系メジャー(国際石油資本)のロイヤル・ダッチ・シェル(RDSa.L)、韓国のサムスン電子(005930.KS)、英銀大手スタンダード・チャータード(スタンチャート)(STAN.L)、米半導体大手インテル(INTC.O)などが含まれている。 香港におけるオフショア人民元市場は試行プログラムの成功例だ。 <進まない改革> シティ中国の財務・貿易ソリューション部門責任者、Pei Yigen氏は、中国人民銀行とSAFEの関係はそれほど大きな問題ではないと指摘。試行プログラムの範囲が異なり、企業は最も適したものを選べばいいと語る。 同氏は「原資が限られていることを考慮すれば、現時点で1つの試行プログラムに集中するほうが企業にとって理にかなっている」と述べた。 JPモルガン(香港)の中国担当チーフエコノミスト、朱海斌氏は、より重要なのは中国政府の改革姿勢だと指摘する。 同氏は「私の懸念は、何度も改革と聞いているのに、依然として(中国政府の)具体的な行動を待っていることだ」と話す。 懸念を抱くエコノミストらは、中国が資本勘定の開放を1993年から約束しているのに、一向に進んでいないことに言及している。 試行プログラムの実施地域をめぐっても疑問の声が上がる。 前出の財務幹部は「構える拠点の違いによって、扱いが異なるのはやや不満を感じる」と話す。 独立系のエコノミスト、アンディー・シエ氏は「中国人は2000年もの間、官僚主義的なやり方に慣れ親しんでいる」と述べ、試行プロジェクト方式は時代遅れだと批判。「中国全体にわたって適用することで意味のあるものになる」と述べた。 一方、同氏は、最も重要なのは、官僚機構における改革派間の争いではなく、改革派と既得権益層との争いだと指摘。そうした争いによって、中国の経済改革派は主要な利害関係者の気をそらしているだけでなく、いかなる改革も望まない層にも安心感を与えている、との認識を示す。 同氏は「中国を変える唯一の方法はダムを開き、マネーの流出を認めることだ」と述べた。 (Pete Sweeney記者、執筆協力 Saikat Chatterjee in HONG KONG, Koh Guiqing in BEIJING and the Shanghai Newsroom;翻訳 川上健一;編集 宮崎亜巳)
焦点:アジアの輸出産業、米景気回復も引き続き低迷 2013年 08月 5日 16:24 JST [香港 5日 ロイター] - 米経済は回復しつつあるかもしれないが、アジア各国の輸出産業の低迷は続いており、米景気回復の恩恵を受けていない。 東南アジアの主要輸出国、日本、中国、韓国、台湾、タイ、香港、およびシンガポールの第2・四半期の輸出の伸びは、前年比9%減少した欧州向けの低迷が目立ち、伸びが鈍化したか、もしくはほぼ横ばい状態となった。 中国と近隣アジア諸国との貿易は拡大しているものの、欧州や日本からの需要減退を補うほどの力強さはない。米景気回復がアジア輸出を支援するとの年初に高まっていた期待はしぼみつつある。 輸出はアジア地域の経済生産の約35%を占める。一方、米景気回復をけん引しているのはアジア各国で製造される家電への需要ではなく、住宅市場の好調やシェールガス分野への投資だ。 こうした状況は、アジア各国が世界的な金利上昇や欧米への投資資金シフトによる打撃を乗り切るのを一層困難にするだろう。日本の株式市場へ海外からの投資は続いているものの、野村のデータによると、外国人投資家は5月以降、125億ドル相当のアジア株を売却している。UBSの首席投資ストラテジスト、ケルビン・タイ氏は「現時点でこの地域へ投資する魅力はない」と指摘する。 <主要国市場に回復の兆し、アジア各国の輸出は依然低迷> 貿易統計の数字をみると、いくつかのサプライズがある。円安により日本の円建てベースの輸出は拡大したものの、需要は引き続き低迷しており、ドルベースでの輸出は第2・四半期に14%減少した。 一方、ウォン高にも関わらず、韓国の輸出は1%増加。中国向けは輸出は、工業機械、自動車部品、スマートフォン(多機能携帯電話)、テレビ、冷蔵庫などに対する需要が伸び、13%増加した。 これは景気減速に直面する中国にとっては、良い兆候かもしれない。工場は受注拡大に備えており、投資や輸出に依存する経済から脱却し内需主導の成長を目指す中国の取り組みは、サムスン電子(005930.KS)やLG電子(066570.KS)、現代自動車(005380.KS)などの製品に対する消費者の購買意欲を高めていることを示唆している。 現代証券のエコノミスト、Lee Sang-jae氏は「中国政府は内需拡大を推し進めており、韓国の輸出業者はその恩恵を受けているようだ。中国の個人消費は経済全体の成長を大きく上回るペースで拡大している」と指摘する。 韓国が世界的な輸出の需要をけん引すると期待しているエコノミストや投資家は、韓国の好調を他のアジア諸国にとっての希望の兆しとみている。 シティグループ(香港)のストラテジスト、マーカス・ロスゲン氏は、こうした楽観的な見方は、先週発表されたユーロ圏の明るい製造業購買担当者景気指数により、顕著になったと指摘する。 また、ドイツ銀行の首席アジアエコノミスト、マイケル・スペンサー氏は米供給管理協会(ISM)が1日発表した7月の製造業部門景気指数が2年ぶり高水準を記録したことをとりあげている。 ただ、こうした楽観的な見方は、前四半期の欧米向け輸出の数字には反映されていない。欧州連合(EU)向けの中国からの輸出は8%減少、日本からの輸出は20%減少した。米国向け輸出は2.4%減少。香港からの輸出が21%減少したほか、日本からは7%減となった。 欧米の指標に改善の兆しがみられるものの、アジア各国の購買担当者の景況感はまだ上向いていない。HSBCとマークイットの調査では、中国、韓国、台湾の新規受注は減少、日本では伸びが鈍化している。 HSBCのアジア経済リサーチ部門のフレデリック・ニューマン氏は、このことは、アジア各国にとり急速な回復の可能性が低いことを示している、と指摘し「全般的に主要国市場は改善しているものの、その影響は新興市場国には及んでいない」との見方を示した。 (Wayne Arnold記者 Choonsik Yoo記者;翻訳 伊藤恭子;編集 田中志保) |