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8月1日、中国社会科学院によると、起業家の第1世代が引退を迎える年齢に差し掛かり、同国では今後3─8年で300万以上の民間企業が後継者問題に向き合う必要が出てくる。写真は6月、上海の復旦大学で撮影(2013年 ロイター/Aly Song)
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYE97200X20130803
2013年 08月 3日 14:38 ロイター
[香港 1日 ロイター] - 中国で不動産から医薬品、鉱山まで幅広い事業を手掛ける経営者の一人息子、ダイ・インタオさん(21)は、父親の会社を継ごうという気は全くなく、貴州省貴陽にある建設現場で働く道を選んだ。仕事場には毎日愛車のポルシェで通っている。
ダイさんは「ここで働くのは父親からお金をもらいたくないから」と実家を離れて暮らす理由を語り、「自由がすべてだ」と話す。
中国社会科学院によると、起業家の第1世代が引退を迎える年齢に差し掛かり、同国では今後3─8年で300万以上の民間企業が後継者問題に向き合う必要が出てくる。
こうした問題は中国に限ったことではない。しかし「経営のプロ」が少なく、創業者一族が事業乗っ取りを恐れて外部からの経営トップ招へいを嫌う傾向がある中国では、特に大きなリスクと言える。国内企業の買収なども少なく、第1世代の起業家にとって引退に向けた選択肢は限られている。
資産調査会社「Wealth-X」の推計によると、第1世代の起業家らが築いた事業の価値は6110億ドル(約60兆円)に上る。このため、後継者をめぐる危機は、世界第2位の経済大国となった中国の成長エンジンに大きなブレーキとなる可能性も出ている。
香港中文大学のジョセフ・ファン教授は、「ある国のすべての企業が同じ時期に後継者問題を抱えれば、その国にとってシステミックリスクにつながる」と指摘し、「後継者問題にうまく対処できなければ、国内経済には打撃となる」と警告する。
<より大きなチャンス>
中国本土ではほとんどの家庭が一人っ子で、海外で教育を受ける子どもも多い。そうした子どもたちは留学の結果、家業を継ぐことに興味を失い、より魅力的な仕事の機会を求めるようになっている。
家族経営と起業に関する研究機関で責任者を務める香港科技大学のロジャー・キング氏は、「新世代は、家業のために戻ることより大きなチャンスを見い出だすことが多い」と語る。
カナダとイタリアでファッションを学んだハン・ルルさん(29)も当初、父親が上海で営む外食チェーンに関わることに興味を持っていなかった。しかし、自分のスキルを「料理のデザイン」という形で活かせると気付いたという。
ミラノにある服飾・デザイン学校の名門校、マランゴーニ学院で学んだハンさんは「2年前になってようやく、飲食業とファッション業がともにライフスタイルにつながっていると考え始め、自分がフードビジネスからかけ離れていないと思うようになった」と話す。とはいえ、7つの店舗で500人以上の従業員が働く家業を継ぐ準備はまだできていないとも語る。
<世代シフト>
過去30年にわたる中国の大規模な経済改革は社会に大きな変化を引き起こし、今の若者世代は親たちに許されなかったさまざまなチャンスを手にしている。
「価値観やライフスタイルという点で、第1世代と第2世代の間に起きた社会変化は非常に劇的だ」と言うのは、中国欧州国際ビジネススクールの凱風家族伝承センター所長ジャン・リー氏。同氏は「伝統的な業界では、多くの企業が後継ぎがいないという理由で廃業の危機に直面している」と述べる。
家族経営企業は中国経済にとって極めて重要で、中国A株市場に上場する民間企業762社の4割近くがそうした企業だ。南東部・浙江省の製造業地帯のような場所では、こうした家族企業が靴やTシャツから眼鏡やライターまで、ありとあらゆるものを生産している。
中国では1000万以上ある民間企業が、国内総生産(GDP)の約6割を占める。中華全国工商連合会によると、2011年末時点では、民間企業の8割以上が家族経営と分類されているという。
経済への重要性が大きいことから、家族企業の後継者問題は投資家や政治家も注目している。また学界では、当面は経営のプロが選択肢にならないことが最大の問題だと指摘している。
香港中文大学のファン教授は「経営のプロのための成熟した市場は存在せず、暫定経営者の人材探しや雇用、昇進などの適切な奨励システムもない」と述べる。
美容業のリュー・ファン氏は、今のところ幸運な経営者の1人だろう。ロンドン留学から戻った息子が中国全土で56店舗を数える美容室事業に8年間携わり、会社を引き継いだ。息子のガン・チェンさんは「最初は、両親を助けたいだけだったが、やがて自分の中で責任感が大きくなってきた」と語った。
(ロイター日本語サービス 原文:Lavinia Mo、翻訳:橋本俊樹、編集:宮井伸明)
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