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2013年7月31日 神州の泉
最近、東谷暁氏の本「郵政崩壊とTPP」(文春新書)を読んだ。
渾身の内容だった。
ほとんどは郵政民営化問題に費やされているが、神州の泉が今まで疑問に思っていたことが得心できたというか、そうとうに氷解できた凄い本である。
神州の泉は日本のエコノミストで最も根性のある人物は植草一秀氏だと確信している。
二度の国策捜査に見舞われても自説を曲げず、良いもは良い、悪いものは悪いと言い続けて絶対に崩さない。
エコノミストの東谷暁氏もそうとうな硬骨漢である。
東谷暁氏は日本文化チャンネル桜(チャンネル桜)代表取締役社長の水島聡氏が主宰する動画番組などにもよく出演されている。
TPP話題で、水島総裁が安倍晋三氏を擁護したとき、東谷暁氏は敢然とそれを否定し、TPPを推進する安倍首相を高く評価するのは間違っているとはっきり言い、一歩も引く構えがなかった。
全くその通りである。
ブログ「WJFプロジェクト」さんもはっきりと指摘されているように、TPP参加を決め、それに向かって猪突猛進する安倍首相を評価することは完全にダブルバインド(二重心理拘束)であり、ダブルスタンダード(二重基準)なのである。
この馬鹿な詐術に嵌った人々は、TPPは恐ろしい部分はあるのだが、アベノミクスで景気を少し上向き傾向にしてくれた安倍総理のことだから、ギリギリのところで何とか危険を回避してくれるだろうと、甘い期待や忖度を抱く。
この希望的観測はいたって危険である。
TPPはこのまま進むと絶対に回避できない。
米韓FTAで出てきている理不尽過ぎる韓国側のデメリットを見る限り、この日本もそこから数か月遅れて、さらに桁違いの大規模な不利益状況が生じることが確実となった。
早急に迫る心配は韓国の事例から、日本でもTPP批准締結前に国際法が数十もグローバル資本に都合が良いように改変される危険が目の前に迫っている。
そのことは「カレイドスコープ」さんに詳しく書かれている。
さて、その東谷暁氏の「郵政崩壊とTPP」だが、実に興味深いことが書かれている。
今日はそこから得た情報をもとに少し述べてみる。
まず、郵政民営化という構想そのものが米国の政権中枢とグローバル資本という、米国エスタブリッシュメントから出ていることは間違いないが、その実行に直接かかわった出先機関はUSTR(米国通商代表部)だった。
年次改革要望書からそれは確実に分かる。
郵政民営化が米国主導なのは変わらないが、その傀儡となってそれを日本国内で制度設計した人物が竹中平蔵氏であることはもはや周知の事実である。
しかし、東谷氏によるとこれは正確ではない。
郵政民営化におけるテクニカルな制度設計を担当していたのは高橋洋一氏であった。
このように言うと、いかにも高橋洋一氏がUSTRのお眼鏡にかなった黒い人物の一人、つまり売国奴の一人だったのかと思う向きもあるだろう。
全く違うのである。
高橋洋一氏がかつてコソ泥容疑で逮捕された時、いろいろな意味で違和感があり、これは権力筋に嵌められたと思っていた。
不思議なことだが、高橋洋一氏には奸計とか悪の仲間とか、そういうダーティなイメージがいっさいなかった。
なぜこの人は郵政民営化のテクニカルデザインの中心にいたんだろうと大きな疑念があった。
別に高橋氏を庇うわけではないが、彼は米国による対日戦略の中においては、真っ黒な竹中平蔵氏とはその立ち位置が異なり、国際政治、国内政治とは全く無関係な人である。(少なくとも主観的には。)
彼自身は数学の研究をした文脈から、テクニカルな制度設計には通暁(つうぎょう)するが、政治には全く興味がないそうである。
技術屋は技術を駆使できることが重要であり、そこから派生する政治的な出力には無頓着だったということになる。
ここから、あのコソ泥事件の背景が何となく見えてくる。
高橋氏には政治性がないから、当時の郵政民営化の内幕を何でもあけすけにしゃべってしまう危惧があったのだろう。
だから、権力筋はあのようなしょぼい事件をでっち上げて彼を口止めしたのである。
こういうことである。
郵政民営化のメカニカル、テクニカルな制度設計は高橋洋一氏が受け持った。
竹中氏はそれを利用して、郵政民営化を“政治的”な制度設計に置き換えただけなのである。
小泉政権が断行した小泉・竹中構造改革路線の基本設計図を描いたのは竹中平蔵氏であることが常識となっているが、実はこれは不正確である。
金融や財政における広範な分野の中で制度設計をやったのは高橋洋一氏であった。
高橋氏は金融・財政のデザインに関わっただけではなく、郵政民営化法という法律の中身にも深く関わっている。
東谷氏よれば、1992年に大蔵省と郵政省が金利を調整した「定額合意」の方程式のようなものを書いたのも高橋洋一氏であったという。
つまり高橋氏は、2008年のリーマンショック前に濫発されていた金融派生商品(デリバティブ)を設計していたシカゴ学派のような位置にあったと見なすべきだろう。
シカゴ大学と言えば、複雑系の科学研究などでよく知られているが、これらの超優秀な研究者たちが、おそらくシカゴ学派経済学者にそそのかされ、アルバイト的にその数学的な力量を動員させられ、いかがわしいデリバティブ商品を設計していたような気がする。
先進的な科学分野を切り拓いていた複雑系の科学者たちは、欲望にまみれたミルトン・フリードマンの弟子たちによって科学の精神を汚されたというのが、神州の泉の見立てである。
これと同じ位相によって、純粋なテクニシャンの高橋洋一氏は米官業利権複合体によってその力を利用されたのである。
1990年代から、政府中枢は財政・金融のテクニカルな問題が生じると高橋氏に意見を求めたようである。
高橋氏は郵政民営化についても、小泉首相や竹中氏には進言しなかった。
ただ、彼は郵政について彼らに問いかけられたとき、国営・公営化のままで税金を投入して維持していくか、完全民営化して国債以外の投資ができるようにするか、二者択一しかなく、その中間はない(これを彼はコーナー・ソリューションと言っている)と意見を言っただけだそうだ。
高橋氏がこの二者択一を提示したとき、小泉首相は民営化だと言ったそうである。
こうして郵政民営化は高橋氏を中心に広範な角度からデザインされたが、その設計書を竹中平蔵氏がパクって、自分なりに政治的な制度設計に焼き直したというわけである。
だから正確には郵政民営化の制度設計を中心的に行ったのは高橋洋一氏である。
「郵政崩壊とTPP」のほんの一端を参考に書いたわけだが、今、アフラックとの業務提携深化の問題は今後の郵政の命運を示しているから、十分に政治的な問題であり、竹中氏の罪業は強く指摘されなければならない。
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