03. 2013年7月31日 00:13:44
: niiL5nr8dQ
アイルランドの「特許の崖」、輸出の伸びに打撃 2013年07月31日(Wed) Financial Times (2013年7月29日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)バイアグラ登場から10年、人気依然衰えず ファイザーの「バイアグラ」は6月にアイルランドで特許期間が満了した〔AFPBB News〕 アイルランドのコーク州リンガスキディにあるファイザーの工場。200エーカーの広さがあり、「バイアグラ」を生産している同工場の電気炉はかつてほど忙しなく動いていない。 「小さな青い錠剤」と呼ばれるバイアグラは6月、特許期限が切れる「パテントクリフ(特許の崖)」のために競合のジェネリック医薬品からの保護を失った大型薬の仲間に加わった。パテントクリフによって、企業収益は減少し、アイルランドの輸出主導の景気回復が著しい打撃を受けている。 「医薬品の特許切れによる需要の落ち込みに対処するため、我々はアイルランドで複数の事業活動を縮小した」。ファイザーの対外供給担当バイスプレジデントのポール・ダフィー氏はこう語り、「だが、これは業界全体の問題だ」と付け加える。 大型薬が続々と特許切れ、医薬品産業が大きいアイルランドに打撃 過去18カ月間、ファイザーは需要の急激な落ち込みに対処するため、やはりコーク州にある隣接施設を閉鎖したほか、工場を1つ売りに出し、アイルランド全体で数百人の従業員を削減した。 アイルランドでは、ほかにも数社が特許切れの打撃を受け、年間10億ドル以上の売り上げを生んできたイーライリリー、武田薬品工業、メルクの医薬品が今、ジェネリック医薬品との競争にさらされている。 2016年までに数十の医薬品が特許の保護を失う。これは大手製薬企業にとってグローバルな問題だ。しかし、世界5位の医薬品輸出国であるアイルランドは、同産業の規模のために特に打撃を受けやすい状況にある。 アイルランドの化学製品と医薬品の輸出額は2011年までの5年間で25%以上増加した。2011年に記録した560億ユーロという数字は、アイルランドの国内総生産(GDP)のほぼ3分の1に相当する。医薬品産業の急成長は、金融危機時にアイルランド経済を安定化させ、2011年に同国経済を穏やかな成長軌道へ戻すうえで重要な役割を果たした。 メリオン・ストックブローカーズのチーフエコノミスト、アラン・マッケイド氏は「ここ2〜3年、輸出部門が経済成長の主たる原動力だったことは疑いの余地がない」と言う。 だが、弱い世界経済と特許切れが相まって輸出の急激を招いた。今年1〜5月期の医薬品と化学製品の輸出金額は216億ユーロと、前年同期比で7%減少した。アイルランドの公式貿易統計によると、同じ1〜5月期の製品輸出総額は同6%減の384億ユーロだった。 エコノミストらは、アイルランド経済が今年第1四半期に景気後退へと逆戻りし、2012年同期と比べGDPが0.9%縮小した理由として輸出の落ち込みを挙げる。だが、パテントクリフがアイルランド経済にどの程度の影響を与えることになるかについては議論が起きている。 「パテントクリフは確実にGDP統計を落ち込ませている」。グッドボディ・ストックブローカーズのエコノミスト、ダーモット・オリアリー氏はこう語る。「これは、アイルランドを支援している諸外国・機関が恐らく、救済プログラムから抜け出そうとしているアイルランドには以前考えていたほど財政再建の手を緩める余裕がないと感じていることを意味している」 パテントクリフの影響は誇張されているとの声も だが、デイビー・ストックブローカーズのエコノミスト、コナル・マック・コイレ氏は、パテントクリフの影響は誇張されていると言う。アイルランドの雇用に占める医薬品業界の割合は1%に過ぎず、同業界のアイルランド経済に対する付加価値は輸出数値が示唆するほど大きくないからだ。 「医薬品の輸出収入の減少はサービス輸入を減少させることにもなる。これは主として多国籍医薬品企業の本社に支払われる特許権使用料で、これがアイルランドのGDPに対する影響を限定する」と同氏は説明する。 ファイザーのコーク工場では、経営陣が「リピトール」とバイアグラの販売減少に対処しようと躍起になっている。同社は6月、リンガスキディに3000万ドル投資して新設備を建設すると発表した。医薬品を少量生産できる設備で、開発中のよりニッチな医薬品の新製品群に適したものだ。 「リピトールは類稀な製品だった。年間売り上げが130億ドルに上る製品を代替するのは難しい」とダフィー氏。「だが、新製品の開発が進むにつれ輸出額は必ず上向くと信じている」 投資促進機関のIDAアイルランドの最高経営責任者(CEO)、バリー・オリアリー氏は、パテントクリフが輸出に悪影響を及ぼしていることを認める一方で、企業は輸出量を挽回できる新たなバイオテクノロジー設備に投資していると話している。「10年前、バイオ製薬工場は1つだったが、今や工場数が10を数える」と同氏は語る。 By Jamie Smyth
|