03. 2013年7月31日 01:24:04
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勝てる企業と、勝てない企業を分けるもの2013年7月31日(水) 横田 尚哉 コンサルタントとして、企業経営に深くかかわることが多いのですが、努力の割に全然前に進んでいない企業が目立ちます。日本の経済全体から見ると、とてももったいないと思います。努力することが企業の姿だというのなら、それでもいいです。しかし、前に進むことが企業の目的だというのなら、考え方を変えないといけないでしょう。 そこで、勝てる企業と勝てない企業では、何が違うのか。今回は、勝つための改善について、必勝法をお伝えしたいと思います。 コスト削減は3つしかない 原価を下げるための方法は、3つしかありません。単価を下げるか、数量を下げるか、係数を下げるかです。どんな業界、業種であっても、このどれかに当てはまります。そして、どの部分に、下げるための努力を集中するかが違うだけなのです。改善士として、コスト削減のお手伝いをすることがありますが、それぞれにコツがあるのです。 単価を下げるときのコツは、目的を変えるコトです。まず、単体での目的分析をします。役割、効用、働きといったもの(これをファンクションという)でいったんばらします。それぞれを必要か、不要かで分けるのです。多くの場合、不要なファンクションがあるのです。それが単価を高くしている要因なのです。それを取り除けば単価は下がります。 数量を下げるときのコツは、手段を変えるコトです。単価よりも、大きく効果が出るのが、数量です。ある目的を達成するための手段、方法、手順を、別の手段で達成することを考えます。そうすれば、一気に数量を下げることができるのです。 係数を下げるときのコツは、仕組を変えるコトです。係数とは、間接的に発生するコスト分です。これを減らすためには、ビジネスモデル全体の仕組みを変えることなのです。仕組み自体に無駄なコストが発生していることが往々にしてあるからです。 勝つためのコスト削減 勝つためのコスト削減の取り組み順は、「係数―数量─単価」です。まず、「単価」を考えたいところでしょうが、そうではありません。単価は、最後なのです。ビジネスモデル全体を見直し、仕組みにおける無駄を取り除くことが先決です。仕組みに無駄が残ったまま、単価を下げたとしても、ビジネスが回りにくくなるだけだからです。 こんな企業がありました。受託生産をビジネスとするその企業は、価格競争の結果、受託額の低下と作業量の増大に悩んでいました。経営者は、利益を確保することを優先し、まず、人件費単価を下げました。そうすると、従業員から不満がでました。次に、残業が増えたため労働時間を減らしました。その結果、客先と品質上のトラブルが増えました。 失敗の要因は、戦略を持たず、戦術的に取り組んだことです。最も目立つところに対応することは、近視眼的で、その場しのぎでしかないのです。優れた戦術をもって目の前の敵を倒したとしても、戦に勝てるとは限りません。 だから、コスト削減も戦略的に取り組んでもらいたいのです。この企業は、最初にビジネスの仕組みを見直すべきだったのです。そして、作業のやり方を変え、人件費は最後にするべきだったのです。価格競争に振り回された、典型的な企業です。 価格より価値に気を配れ たとえ価格競争で勝ったとしても、企業が存続できなければ意味がありません。「価格の魅力」ではなく、サービス価値、製品価値で勝つことなのです。価値は、価格と効用で計算できます。つまり、サービスや製品を得るために費やした価格に対して、得られた効用の比率です。式で表せば、(価値)=(効用)/(価格)となります。 もちろん、価格が売り上げを左右します。市場の反応は、とても敏感です。特に小売りでは顕著です。売価を10円下げたり、上げたりするだけで、数字となって表れてきます。価格競争力は、やはり重要な要素であることに、違いありません。 ただ、短期的販売力と長期的販売力で考えると、価格ではないのです。価格による魅力は、販売時点までの期待感に作用するものだからです。短命な魅力です。長期的な販売力を得るには、実用感に作用させることです。それが価値なのです。価値としての魅力は、販売時点以降も継続的に魅力を与えるからです。長期的に大きな差になります。 だから、価値に気を配っていくべきなのです。販売時点前後の第一ステージで勝つことよりも、それ以降の第二ステージで勝つことです。それを狙ってこそ、長期的な競争優位性を獲得できるのです。「効用の実力」で価値を高めていくべきなのです。 差別化の第二ステージで勝つ改善
最終的に勝つための改善はどのようにすればよいのでしょうか。第一ステージでの販売力を保ちつつ、第二ステージで大きく差別化を果たしたいところです。多くの企業では、第一ステージでの勝負に勝ち急ぐ結果、第二ステージで実力が伝わらず、再び第一ステージで四苦八苦する羽目になるのです。 悪循環を断つためには、一度、今の手段を手放し、「本質」を使った改善が必要です。その手順は、3つです。@本質を掴み、A本質で考え、B本質から創る、です。そもそも、使用者が誰で、何の効用を求めているのかを考えることです。 つまり、「誰のため?何のため?」と問いかけるコトです。手段は、時代とともに変わります。手段は、一時的な魅力にはなりますが長続きしません。本質をとらえておけば、手段を手放すことができます。手段を変えることができます。それが、本質からの改善なのです。1947年に生まれた「ファンクショナル・アプローチ」の原理なのです。 いま、日本に必要なのは、第二ステージで勝てる企業です。それに向かって企業が努力する時です。第一ステージで体力を消耗している場合ではないのです。1日でも早く、消耗戦から抜け出して、勝つ改善に取り組んでほしいものです。 このコラムについて 「明日の決定学」 経営とは、未来の行動を決定することです。過去の行動を調べ上げることでも、現在の行動を徹底追及することでもありません。社員が、そして企業が、未来にどのような行動を取ればいいかを決めていくのが経営です。過去にとらわれず、現在に縛られず、向かうべき未来を見て、感じなければなりません。これが「明日の決定学」です。 このことは、経営だけではないのです。普段の仕事でも、プライベートでも、日常の決定と、「明日の決定」があるのです。本を読んでも、人に聞いても、ネットで調べても、誰も決めてくれない自分の明日は、自分で決めなければならないのです。 筆者は、これまでも『長期計画の作り方が分かるようになる「感性」「知性」「理性」』、『80年周期のサイクルで世の中を観てみる』、『2012年度は経営指標が使い物にならない』などで、その重要性を伝えてきました。10年後、30年後を見すえた時代のうねりを感じるようにならなければならないのです。 本コラムでは、これからの時代を担う方のために、これまで見えなかった大きな潮流を読み取るコツをつかんでいただきたいと思っています。日常の喧騒から少し離れ、物事の本質を感じとれる力を身につけてもらいたいのです。 http://business.nikkeibp.co.jp/article/opinion/20130729/251674/?ST=print |