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2013-07-29 陽光堂主人の読書日記
安倍は先月、アベノミクスを支える成長戦略第3弾を発表しました。頓珍漢な発言で失笑された「GNI150万円増」構想や、楽天を利するだけの医薬品のネット解禁が話題となりましたが、その影に隠れる形で「国家戦略特区」なる仕掛けが施されました。
この「国家戦略特区」構想は中々容易ならぬもので、主謀者の竹中平蔵自らその重要性を強調しています。9日付の「マイナビニュース」によるインタビューの中で、竹中は次のように答えています。
(http://news.mynavi.jp/articles/2013/07/09/takenaka/index.html)
"アベノミクス"の仕掛人、竹中平蔵氏に聞いた!「日本経済、どうなりますか?」
…(前略)…
――アベノミクスの「第三の矢」は、構造改革で産業を強くする「成長戦略」です。6月14日、産業競争力会議がそのための政策「日本再興戦略」をまとめました。内容に何点をつけますか?
民間議員として参加している楽天社長の三木谷浩史さんは、日経新聞のインタビュー(6月12日付)で「75点」と答えました。その後の産業競争力会議で、副本部長を務める甘利 明内閣府特命担当大臣(経済財政政策)が「75点という評価の三木谷さん、ご意見をどうぞ」と言ったりして、みんなが笑いました。でも、私は三木谷さんの点数はいい線をいっていると思いますよ。
これから日本経済を成長させるには、日本の景色が変わるような大玉の改革が必要です。例えば、法人税の減税、農業への株式会社の参入、保険診療と保険外診療の併用を認める「混合診療」の解禁などです。しかし、今回のプランにはそれらは入っていません。だから、100点からはほど遠い。ただし、これらの政策は10年以上も議論が続いているんです。それをたった5カ月で実現するのは無理ですよ。
これまでの政権の成長戦略に点数をつけるとすれば、せいぜい40点くらいでしょう。今回の75点というのは、それよりはずいぶん評価ができるという意味です。何が評価できるのか。それは、長年規制が解決しない"岩盤規制"を突き崩す装置が入ったことです。
その装置とは、国主導で規制改革や税制優遇措置を導入する「国家戦略特区」の創設です。これをうまく使えば、"岩盤規制"が突き崩せます。私はこのプランを担当していたので、ここは大いに強調したい。もうすでにワーキング・グループを作り、活発な議論を重ねています。
実際、この数週間のワーキング・グループの動きで、"岩盤規制"が一つ崩れたんですよ。公立の学校を民間が運営できるように開放する「公設民営」です。ワーキンググループが関係省庁の担当者を呼んで、議論をぶつけ、大阪府と大阪市で認められることになりました。
私は会議でこう申し上げました。「"岩盤規制"はせいぜい10だ。総理といえども360度を敵にまわすわけにはいかない。毎年二つか三つ、目標を決めて突き崩していけば、3〜5年で達成できる」と。その決意と能力があるかどうかが、安倍政権の腕の見せ所です。
…(後略)… (下線は引用者による。以下同じ)
竹中らは、「日本の景色」を変えようとしているわけです。その一環として、農業への株式会社参入、混合診療の解禁を狙っています。これらは今後、実現することでしょう。
そして目下重要なのが、「国家戦略特区」の創設で、「岩盤規制」の突破口として導入されたことが判ります。大阪では、学校の民営化が進められることになりました。
日本維新の会の橋下共同代表は、こうした改革を進めるために代表を辞めるつもりでしたが、石原慎太郎らに説得されて留任することになりました。それでも大阪の「改悪」は推進されるでしょうが…。
三大都市圏を中心とする「国家戦略特区」の当面の目玉は、解雇を自由化することです。これは大企業の要望に沿ったもので、日本が韓国化することを意味します。
「しんぶん赤旗」は、27日付で次のように報じています。
(http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2013-07-27/2013072702_02_1.html)
「解雇金銭解決」特区導入も 産業競争力会議WGが方針
財界人らでつくる政府の産業競争力会議の国家戦略特区ワーキンググループ(WG)が検討している「国家戦略特区」の新たな検討課題として、カネを払えば不当解雇でも合法化される「解雇の金銭解決」など労働法制の規制緩和を盛り込むことが26日、明らかとなりました。
「国家戦略特区」は地域限定で規制緩和や税制優遇など大企業に対する支援を行うもの。「解雇の金銭解決」は政府の規制改革会議が検討していましたが、労働者の批判が強く、6月の答申では見送られたばかり。WGは、7月に行った財界人らの意見聴取を口実に、特区での導入について再検討することにしました。8月末をめどにまとめる予定。今秋から政府の審議会で議論が始まる雇用の規制緩和に向けた突破口にするねらいです。
特区による規制緩和については、第一弾としてマンションの容積率緩和などを行うための関連法案を臨時国会に提出。第二弾として雇用の規制緩和などを盛り込み、来年の通常国会に関連法案の提出をねらう考えです。
雇用の規制緩和をめぐっては、安倍内閣が大企業支援の「成長戦略」として、解雇自由の「限定正社員」、残業代ゼロの「裁量労働の拡大」、非正規雇用増大の「派遣労働の拡大」などがねらわれています。
現行法では、労働者を守るために解雇制限の規定が設けられていますが、特区ではこれを取っ払ってしまおうというのです。これが実現すれば、「追い出し部屋」を設けたり、無理に配置転換する必要もなくなります。何がしかのお金を払えば、直ぐにお払い箱にすることができます。
新自由主義の下では、人件費を圧縮しなければ勝ち残って行けません。世界中で最低賃金を争っている状況なので、賃金水準の高い日本のサラリーマンの手取りは減る一方です。
国民が新自由主義を心棒しているのなら致し方ありませんが、そんな人はごく一部しかいないはずです。新自由主義を採らない選択肢も有り得るはずですが、政府や御用学者はその可能性を示唆することすらしません。
彼らは多国籍企業の代理人に過ぎませんから、国民の利益など端から考えていないのです。皆この点に早く気付くべきです。今憧れの的の正社員も、いずれ限定正社員か非正規に転落し、解雇自由化の恐怖に晒されることになります。
許し難いのは、大多数の国民が生活苦に追いやられる羽目に陥るのに、アベノミクスによって豊かになると幻想を振り撒いていることです。金をジャブジャブにしたり、消費増税を謀ったりして国民からの収奪は激しくなる一方ですが、何を考えているのか、人々は無関心を装っています。きっと恐ろしくてまともに向き合えないのでしょう。
それでも、いずれ過酷な現実に直面することになります。今の流れは止められませんから、対応力のある人は早目に対処すべきです。
規制緩和は三大都市圏から始まりますが、これは「日本の景色」が既に破壊されていてやり易いからです。対象地域はいずれ全国に広がりますから、田舎に引っ込んでも餌食にされるのは時間の問題です。
国外脱出もまじめに考えた方がよいかも知れません。それには資力と強靭な精神力を必要としますから、万民向きではありませんが…。
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