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C子がドアをたたいた。
C子「Cです。入ってもいいですか」
安心「どうぞ」
C子「今日の講義の医療制度問題について、もう一度わかりやすく説明してください」
安心「わかりました。では……
医療制度問題の視点には二つあります。それは公正と効率です。公正は保険料または税徴収の方法、効率は費用のかからない仕組み、と考えてよいでしょう。かなり複雑ですから、今日はとりあえず公正について説明します。
日本の医療制度は保険方式を採用しています。例えば、サラリーマンは健康保険に加入します。公務員や私学の教職員は共済組合に加入します。それから外れた自営業者、パート、定年退職者は国民健康保険に入ります。75歳以上の老人は後期高齢者医療制度に入ります。
健康保険や共済組合は、折半といって保険料の半分を会社、政府(国、地方)、学校が払いますが、国民健康保険では折半がなく、低所得者には苦しい制度です。保険料を払えないと、病院に行って全額負担しなければならないのです。保険料を払えない人が全額負担できるわけがない。だから病院に行けない」
C子「生存権が保障されないということですか」
安心「その通りです。雇用にも悪影響を及ぼしています。正社員の場合、保険料の半分を会社が払う。パートの場合は、概ね週労働時間30時間以上が加入条件となっています。そこで経営者はパートの労働時間を30時間未満にする。また20時間を越えると雇用保険に加入させなければならない。そこでまた20時間未満の労働にする。結局、パートの労働時間が20時間未満になって、生活を保障するはずの年金・医療・介護などの社会保険や雇用保険が逆に、パートの労働時間を減らしているのです」
C子「先生、私の友達のお母さんはパートだけど、年金・医療・介護保険、払ってないよ。どうして」
安心「それは夫の被扶養配偶者になっているからです。夫の社会保険に入り保険料は払わなくてよいのです。折半だから会社の負担が回っているようなものですね。さらにパートで働いても年収130万円未満であれば、そのまま被扶養配偶者でいいんです」
C子「へー、働いている独身女性は保険料、払うんでしょう。なんか不公平みたい」
安心「そうなんです。制度が共働きや約40%の非正規雇用の時代に合っていないんです」
C子「先生、どうすればいいの」
安心「今日は厚生労働大臣だね。では改革案……
ズバリ、税方式にすることです。保険方式をやめる。こうすると、不公正の問題は解決します。保険料を払った人も払えない人も平等に医療が受けられる。会社の場合、折半がなくなるから経営者の負担が無くなり、雇用が増える。低所得のパートの負担も消えるか少なくなる」
C子「でも、その分税金が高くなるでしょう。消費税がピーンと跳ね上がって……」
安心「そうでもないのです。現行の所得税の税率を変えるだけで十分。1980年代の日本は格差が先進国の中で最小だった。その理由は所得税率が高額所得者に厳しく、最高税率60%だった。その後高額所得者を優遇し、最高税率40%になった。現在、政府も上げるつもりだが、不十分です。1980年代に戻せば税収は伸びる。消費税を上げる前にこちらが先です。
サラリーマンの経費に当たる所得控除も一律にすべきです。現在、低所得者ほど低く、高額所得者ほど高い。低所得者の最低控除は65万円、高額所得者の上限は245万円。おかしいですね。こき使われる平社員の靴の方が社長の靴よりは速く痛みます。先生は一律に130万円ほどと考えています。この額は年収約300万円の人の控除額です。一律だから公正といえます」
C子「なるほど」
安心「ところでC子さん、アダム・スミス、知っているでしょう」
C子「知っています。経済活動は自由にしておいたほうがうまくいくという自由放任主義でしょう」
安心「経済的にはその通り。しかし一方で、スミスは共感を強調しています。当時は経済学、道徳哲学が分離していなかった。共感がなければ世の中はうまくいかない。自由放任は原則として正しいが、世の中はそれだけではうまくいかない。このようにスミスは考え、共感の大切さを強調しました。社会保障で言えば、イギリスが医療で税方式を採用しているのも、その伝統が生きているのでしょう。
医療保険制度には3方式があります。ドイツ型の国営保険方式、スウェーデン・イギリス型の税法式、アメリカ型の民間保険方式です。民間医療保険は保険料が払えなければ医療を受けられないという限界があり、生存権に反しまう。アメリカでは、それが問題になり、オバマ大統領が努力しています。また国営保険方式は格差の少ない国では採用できるが、格差が大になると保険料が払えず医療を受けられない人が出てきます。結局、公正の目でみると税方式がよいのです」
C子「先生、私、キリスト教系の学校で、人々への思いやりを厳しく教えられました」
安心「アメリカのように市場原理ですべてが解決すると考えるのは誤りです。アメリカで国営保険が出てこないのは、市場原理を信奉しているからです。もっともアメリカでも、低所得者にはメディケイドという日本の生活保護法に当たるものがあり、65歳以上の老人と障害者にはメディケアという国営保険があります。それ以外は民間保険に入ります。
アメリカでは長く国営保険の必要が叫ばれてきましたが、高額所得者が自分たちのお金で他人の医療費を払う必要はないと言って反対しています。これは共感のない市場原理がいかに殺伐としているかの証明です」
C子「共感と言っても、日本ではそんなにはキリスト教が普及していないし、どうしたら思いやりを教えられるの」
安心「そこなんです。宗教や道徳を強制することはできません。これは個人の問題だからです。結局、社会制度として解決するほかはないのです。そのためには社会的合意が必要です。私は日本国憲法の第12条にその原理があると思います」
C子「ええー、日本国憲法にそのようなことが書いてあるのですか」
安心「第12条には『この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない。又、国民はこれを濫用してはならないのであって、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負う』とあります。
ここに権利の濫用禁止とともに公共の福祉のために使う責任が示めされています。スミスの共感を法的に言えば、権利を公共の福祉のために使うということでしょう」
C子「驚きました。日本国憲法はそこまで言っているのですね」
安心「日本国憲法の精神を国民に理解してもらう。これが一番良いことです。
残念ながら、安倍内閣は憲法の意味が理解できず、変えようとしています。困ったことです」
C子「本当に困りますね」
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