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週刊実話 2013年8月8日 特大号
政府の社会保障制度改革国民会議が、8月上旬にまとめる最終報告書に向けて最後の調整に入った。日本経済新聞によると、公的年金の支給開始年齢の引き上げを盛り込むことが、ほぼ固まったという。最終的に何歳から支給開始になるのかは未定だが、これが本当に実施されることになると、人生設計が崩れてしまうほどの影響がでてくる。
同会議は、なぜ支給開始年齢の繰り延べを言い出したのか。答えは明らかで、年金財政の破たんを防ぐためだ。
簡単な計算をしてみよう。現在年金の支給対象である65歳以上の人口は3079万人だが、70歳以上の人口は2259万人と27%少なくなる。つまり繰り延べで、年金財源をそれだけ圧縮できるということだ。
しかし、厚生労働省は年金財政のシミュレーションを行って、65歳支給開始でも問題ないとしてきたのに、なぜここにきて繰り延べを言い出したのか。
国民会議での詳しい検討内容が明らかにされていないので、正確なことは言えないが、おそらく一番大きな原因は、年金給付の削減が進まなかったことだろう。
'04年の年金制度改正でマクロ経済スライドが導入された。年金を支える現役世代の減少と平均寿命の伸長には、給付の削減で対応することになった。そのため、年金給付を毎年0.9%ずつ削減していくことにしたのだ。ところがデフレが続いたため、このマクロ経済スライドは一度も発動されないまま現在に至っている。もう8年間も引き下げが、放置されているのだ。
そのため、現在の年金給付は、本来の設計水準よりもおよそ1割も割高になっている。割高な年金を払い続ければ、年金制度がおかしくなるのは当然だ。だから年金制度の破たんを防ぐためには、今すぐ本来の年金水準に引き下げないといけないのだが、それが政治的にできない。そこで出てきたのが、年金支給開始年齢の繰り延べということなのだろう。
ただ、問題はある。厚生年金の支給開始年齢は3年に1度、1歳ずつ引き上げられている。今年60歳が61歳になったばかりだ。そして65歳支給になるのは、2025年、つまり12年後なのだ。もし70歳支給に変えるとすると、その後からになるから、2040年に完全実施ということになる。
これは、年金制度のほころびを若者につけ回すことにつながるのだ。本当にそれでいいのだろうか。
一つの問題は、若年層と高齢層のバランスだ。年金支給開始年齢繰り延べの影響を受けるのは、2028年に65歳以上になる人、つまり現在40歳以下の人たちだ。彼らはただでさえ受け取る年金より負担する保険料の方が多い世代だ。彼らにさらなる負担を押しつけることが、果たして社会的な公平の観点から許容されるのか。
もうひとつの問題は、年金支給開始年齢が70歳になれば、当然70歳まで働かざるを得なくなる。それが本当に可能かということだ。
しかし、年金支給開始年齢の繰り延べは、もはや止めようのないところに来ているのかもしれない。我々の防衛策の一つは、年金を60歳からの繰り上げ受給してしまうことだ。受給を開始してしまえば、繰り延べようがないからだ。自分がいつから年金をもらうか、真剣に考えるべきだろう。
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