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安心「経済政策・社会政策を行うに当たって、大切なことはその出発点がどこかということです。例えば、賃金について考えてみましょう。経済の原理でいえば、賃金は需要・供給で動くから、企業側に需要が多ければ賃金は上がり、少なければ賃金は下がる。賃金も自由競争に任せておけというのが古典派経済学の考え方です。
しかし、すでに1700年代の後半、イギリスで自由に任せていたら低賃金で生活できない人が出てきました。そこでスピーナムランド制度が1795年に制定されます。働いても生活できない人に政府が賃金の補助を行うのです。
ところが、これが経営者に悪用されます。どうせ政府が補助するからといって、経営者はどんどん賃金を下げていくのです。政府の税負担は増し、スピーナムランド制度は批判されます。
これは遠い昔の話と思うかもしれませんが、今もその考えはあるのです。I子さん、フリードマンの負の所得税というのを知っていますか」
I子「ワーキングプア対策として、働いても最低生活に満たない人に税を還すというものでしょう」
安心「近年、民主党が給付付き税額控除という言葉を使いましたが、これは負の所得税の変形です。消費税を上げる代わりに、低所得者対策としての軽減税率は採用せず、給付付き税額控除を採用するつもりでした。今、政権交代で消えてしまいましたが、すでにスピーナムランド制度で行われ、失敗済みです。
イギリスではその後、ウェッブ夫妻の考えで、1800年代の後半、ナショナル・ミニマムという言葉が出てきます。今日の生存権です。それに基づき最低賃金が設定されます。これは法の原理です。もっとも現在イギリスでは、最低賃金を保障し、それでも足りない低所得者にプラスして給付付き税額控除を採用しています。失敗を踏まえての対策でしょう。
経済の原理は自由です。法は公正が原理です。自由の弊害を除去します。とはいっても自由を否定するものではありません」
I子「共産不義の平等とは異なるのですね。自由を認めて、その弊害を是正するものですから、『最低』賃金という言葉がつくのですね」
安心「竹中平蔵氏は賃金を市場に任せろと言います。若者よ、豊かになる自由があるとともに貧困になる自由もあるとでも言うのでしょうか、これは1800代、あるいはそれ以前の考えです。豊かになる自由があるとともに、貧困になっても生存権により最低生活は保障しますというのが、1900年代のワイマール憲法から認められた現代の考えです。経済の論理だけで考えると、とんでもないことになります」
I子「でも先生、そのような人、多いですね。世の中をお金だけで見たり、逆に宗教だけで見たり、更に法律だけで見たり。色眼鏡で見ているのですね」
安心「視野が狭いというか、市場原理視野狭窄症とでも言いましょうか、マックス・ウェバーの社会学のように、経済、法、宗教などの総合的観点が必要だと思います。
とにかく最低賃金は、生存権から出ています。法の原理です。とはいっても、経済と法は全く対立するものではありません。ケインズは失業対策として公共事業の波及効果を強調します。本来は雇用保険、生活保護法などの社会保障で対処すべきでしょう。既に1919年のワイマール憲法では生存権が登場します。つまり法的救済です。しかし、ケインズはそれを景気浮揚策として位置づけたところが偉いのです。
恐慌後の1930年代から、自分の理論を発表するに当たり、ケインズは言っていました、今の学者や政治家は自由放任という旧来の理論にとらわれている、新しい考えが必要だと。I子さん、ケインズが生まれ変わり、現在のアベノミクスをみたら、何と言うと思う」
I子「ええー、そうですね、金融政策と言い、財政政策といい、いまの学者や政治家はケインズ政策にとらわれている。それは高度経済成長時代の理論だ、とでも言いますか」
安心「同志社大学・浜先生の言葉で、浦島太郎の経済学ということです。ケインズはいいます、公共事業より社会保障の方が波及効果は大きい、成熟国家戦略でいけ」
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