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2013/7/26 日刊ゲンダイ :「日々担々」資料ブログ
参院選の街頭演説で、「私たちは景気回復の入り口に立っている。この道しかない」と繰り返していた安倍首相は、一気にアベノミクスを推し進めていくつもりだ。本人は「日本を覆っていた暗く重い空気は一変した」と、アベノミクスに絶対の自信を持っているらしい。
しかし、すでにアベノミクスは破綻したも同然だ。それは、日本より一足早く「大胆な金融緩和」を実施したアメリカを見れば一目瞭然である。かつてない金融緩和を実施した後始末に困り果て、ニッチもサッチもいかなくなっている。
「FRBのバーナンキ議長は、昨年秋から導入した量的緩和策“QE3”を、早くやめたいのがホンネです。副作用が大きすぎて、いつまでもつづけていられない。でも、やめたくても、簡単にはやめられなくなっている。大胆な金融緩和によってマネーをジャブジャブにし、株価を上げ、景気を下支えしたのは良かったが、やめた途端、金利が上昇し、株価を下落させ、世界中の景気を悪化させる恐れが強まっているからです。量的緩和策をどうやってやめればいいのか、いわゆる“出口戦略”に呻吟している状態です」(東海東京証券チーフアナリスト・斎藤満氏)
実際、バーナンキ議長は、“出口”探しに四苦八苦している。6月19日の記者会見で「年内に金融緩和を縮小したい」と語ったが、市場が乱高下したため、7月10日の講演では「縮小は急がない」と軌道修正している。5月22日に緩和縮小が近いことを示唆した時は、東京株式市場は1143円も暴落してしまった。
「大胆な金融緩和」を始めるのは簡単だが、やめるのは大変なことなのだ。
◆「異次元の金融緩和」に出口はあるか
アメリカでさえ容易に“出口”が見つからないのに、アメリカを超える「異次元の金融緩和」に手を染めた日本に“出口”が見つかるとは思えない。
なにしろ、黒田日銀が実施している「次元を超えた金融緩和」は、ケタ違いだ。
FRBだって市中に流す資金量は約3兆ドルと国家予算規模にとどめているのに対し、日銀の供給量は2年間で270兆円と、国家予算の3倍である。
やめた時のハレーションを考えたら、恐ろしくて、やめるにやめられないだろう。
「いま日銀は、毎月7兆円分、政府が発行する国債の7割を購入することで、市場に資金を流している。国債を買い占めている状態です。もし、買わなくなったり、購入額を減らしたら、最大の買い手がいなくなるのだから、国債が暴落し、金利がハネ上がることは間違いありません。東京株式市場も暴落必至です。しかし、常軌を逸した“異次元の金融緩和”は、いずれやめなくてはいけない。黒田日銀は、ギリギリの判断を迫られることになりますよ」(経済評論家・広瀬嘉夫氏)
安倍首相から「金融緩和に不熱心だ」と、どんなに厳しく責められても、ガンとして「異次元の金融緩和」を実施しなかったのは、“出口”を見つけることの難しさを、よく分かっていたからだ。
バーナンキ議長は、そんな白川総裁を信頼していたという。
なのに、安倍首相は白川総裁のクビを切り、黒田新総裁に「異次元の金融緩和」をやらせているのだから、狂気の沙汰というしかない。
◆銀行が次々潰れ国家財政も破綻
問題は「異次元の金融緩和」をやめた時、日本経済がどうなるのかだ。
たとえ、黒田日銀が二の足を踏もうが、嫌でも「異次元の金融緩和」をやめざるを得ない時がやってくる。いつまでも日銀が、大量に国債を買うわけにはいかないからだ。
永遠に買いつづければ、「中央銀行による直接引き受け」とみなされ、国債の格付けが急降下し、市場の力によって暴落させられてしまう。
「異次元の金融緩和をやめた途端、国債が暴落し、金利が高騰するでしょう。まず、金融機関が大打撃を受けることになる。数百兆円の国債を保有しているからです。国債が巨額な不良債権となって、バタバタと倒産していくでしょう。それ以上に深刻なのは、国家財政です。ただでさえ1000兆円の長期債務を抱える日本は、重い金利負担に喘いでいる。もし、金利が1%上昇したら、金利負担は4兆円も増える。5%なら20兆円です。とても、いまの税収では返済できない。消費税率を15%、20%にアップさせる大増税を行い、社会保障を大幅に削減せざるを得なくなります。日本の有権者は、出口も、結末も考えずに劇薬のアベノミクスを支持しているようですが、常軌を逸した金融緩和の行き着く先は、見えていると思う」(広瀬嘉夫氏=前出)
白川総裁が断固、拒否した「異次元の金融緩和」は、どう考えても無理があるのだ。
◆そもそも景気回復につながらない政策
このまま「アベノミクス」をつづけさせたら、日本経済は破滅へ一直線である。
そもそも、安倍首相は「国民の所得を150万円増やす」などと口にしているが、どこまで国民生活を考えているのか、怪しいものだ。本気で日本経済の将来を考えているのなら、多くの経済学者が「危険だ」と警告を発している「異次元の金融緩和」を実施するはずがない。とりあえず参院選までに株価を上げればいい、という発想だったのではないか。
「日銀は次元を超えた金融緩和を行っていますが、大事なことは、企業がお金を借りたいと思うかどうかです。いくら市場に資金を供給しても、それが企業にまで届かなければ景気はよくならない。いま、企業に設備投資をしたり、雇用を増やすマインドがあるとは思えない。あったとしても、280兆円もの内部留保を抱えているから、銀行から借りる必要がない。これでは金融緩和を行っても、あり余った資金が株や不動産に流れるだけです」(経済ジャーナリスト・荻原博子氏)
衆参で圧倒的な多数を握った安倍首相は、この先3年間、国政選挙がないのをいいことにして、やりたい放題やるつもりだ。3年後、日本経済も国民生活も破壊されているだろう。日本はもうオシマイなのかもしれない。
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