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2013年07月26日 在野のアナリスト
今日の東京市場は大幅下落となりました。欧州系が大商いだったものの、最終的に傾きはなく、円高が要因とする意見もありますが、最近の為替と株式の市場連動性は薄れています。結論としては、日本市場への見方の変化が、じわりと影響し始めた点が、今回の動きに含まれています。
総務省発表の6月消費者物価指数が、コアCPIで前年同月比0.4%上昇、と14ヶ月ぶりにプラス転換しました。電気代、ガス代、ガソリン代の大幅上昇などが要因であり、これはコストプッシュ型の悪性インフレです。しかも、小売売上高などは今年上期も前年割れ、貿易統計をみても、金額ベースでは円安で上昇しているものの、数量ベースはマイナスが続いています。輸出産業も数量が増えて、始めて従業員への賃金や雇用へと反映させる、インセンティブが働きます。つまり、今は企業が国内に設備投資せず、ましてや賃金など労働環境の改善にもつながらない事態が、進行中なのです。
これが懸念される安倍ノミクスの悪循環、『デフレ脱却 = 景気悪化』シナリオです。デフレ脱却を、景気回復の最優先においている安倍ノミクスですが、そこで悪性インフレが起きることにより、消費鈍化、生活困窮といった事態になる。悪性インフレと認識されると、家計も企業も防衛的になり、景気悪化の溝を深くしてしまう。今、そんな段階に入りつつあります。
キャノン、信越化学、日産などの決算が嫌気された、とするのも、円安による金額ベースの輸出採算性の改善を、数量ベースの減少が相殺した。業績回復に懸念が強まったことが要因です。日本企業は、世界レベルの株価収益率でみると桁違いに悪い、と言われます。これを、労働市場が流動化していないこと、に原因を求める論調もありますが、私は与しません。欧米の失業率にくらべ、日本は確かに低いですが、小泉改革以降、労働市場の流動化をすすめたものの、企業の株価収益率は改善しませんでした。失業率の低さは人口減社会では当然です。日本企業の病巣はそこではありません。
よく共産党などは、企業の内部留保を賃金に反映させろ、と主張します。問題は、内部留保を活用するインセンティブが企業にないこと、です。従業員のやる気をだすなら、賃金への反映でもいいですし、株主還元策なら配当や自社株買いがあります。企業買収や設備投資でもいいでしょう。そうした目的もないのに、企業は溜め込む。それは年金や保険などの長期投資家にとっても、企業の突然死を防ぐ意味で都合いい。つまり経営者の保身のために内部留保が存在し、利益を生み出さない死に金を大量に保有していることが、日本企業の収益率が悪い原因となっています。
特に、ディマンドプル型の良性インフレに移行したいなら、尚更労働市場への打撃は避けるべきときです。安倍政権の、労働市場の流動化など、日本にとってまさに致命傷になりかねない愚策です。そして問題は、リーマンショック以降は縮む先進国にかわって、新興国が成長することで、世界経済は保たれていましたが、それは欧米の金融緩和がもたらした効果であり、金融主導の側面がありました。米FRBが緩和縮小に言及しただけで、ステージが変わった。さらに、米国一国が堅調でも、新興国全体が同時に低迷する景気には、対応しようがない。ここから、世界全体のパイの縮小による、長期の景気低迷が懸念される段階にきています。
そこにきて、労働市場を流動化させれば長期失業者をうみ、労働の質の低下をおこし易くします。そして縮む経済のパイに対応するため、企業は設備投資へも消極的になる。実は、今回の景気のピークは5月につけたのではないか? と囁かれるのも、米緩和縮小によるシミュレーションをみて、金融政策による経済拡大の限界を、企業が感じ始めた点が挙げられます。日本は最後発で金融緩和のステージを上げた、その結果として起きつつあることは、景気悪化を助長しかねない悪性インフレであることは、より示唆的なのかもしれませんね。
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