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ワタミ本社(「Wikipedia」より)
ワタミ、庄や…過労死ラインを超える長時間残業、なぜ“合法的に”横行するのか?
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20130726-00010002-bjournal-bus_all
Business Journal 7月26日(金)2時30分配信
とあるジャーナリストの、次の一言が印象に残っている。
「日本の社会は、どこで線を引くかという議論は好きだけど、実際に線を引く人(決断する人)はいない」
まさにその通りであり、昨今盛況を呈しているブラック企業の議論にも当てはまるポイントだ。例えば4月上旬、「日経ビジネスオンライン」(日経BP社)上で立て続けにユニクロを展開するファーストリテイリングの柳井正社長、ワタミの桑原豊社長が登場し、自社がブラックだと言われていることへの反論を述べていた。それに対し、労働問題の論者からも賛否両論の意見が噴出していた。
その論調はおおむね、次のように分けられる。
<賛成派>
厳しい労働環境であろうが、合意の上で入社した分には問題ない。それくらい高いハードルを要求して仕事をさせているからこそ、成果も挙げられるのだ。
<反対派>
そもそもそんなに働かせてる時点で労働基準法に違反している。成果を挙げていようが、社員が納得ずくであろうが、まずは適法に経営するところから始めるべきだ。
こうした議論は、「どこで線を引くか」という観点で考えてしまうと結論に至らないだろう。では、筆者なりに線を引いて論じてみたい。
まず「合法か否か」という点について。
ご存じの通り、日本の労働基準法において労働時間は「1日8時間、週40時間」と決められている。本来、従業員にそれ以上働かせることはできないはずなのだが、今や「残業がない会社のほうが珍しい」くらいであろう。
●長時間残業が合法的に認められるカラクリ
多くの人が疑問に思うのは、実質的に違法な状態がなぜ見逃されているのか、という点ではなかろうか。もちろん、それにはウラがある。「特別な労使協定」を結べば、この上限時間を超えて働くことが認められているからだ。その規定が労働基準法36条にあるため、「三六協定(さぶろくきょうてい)」と呼ばれている。この協定が結ばれれば、そこに定められた限度が労働時間の新たな上限となる。
ここ数年で社員の過労死が起きたケースとして居酒屋チェーン・「庄や」を運営する「大庄」や「ワタミ」の例があるが、それぞれ三六協定により、長時間の残業が合法的に認められていた。ちなみに前者は「月100時間まで」、後者は「月120時間まで」となっている。いずれも、厚労省の定める過労死ラインを超える労働時間なのだが……。
ネット上では大手ブラック企業が、「社員に残業を強いている」ことを非難されるケースがあるが、労使合意の上で三六協定が結ばれている以上、それ自体は「違法ではない」状態になることを認識する必要がある。もちろんこれはあくまで「残業させることができる」というだけで、当然その分の残業代は支払わなければならない。サービス残業をさせたら、その時点で違法状態になる。
本来であれば、そのような大企業には労働組合が存在し、社員にとって不当な内容の協定は拒否できるはずだ。しかし労使協調路線のためか、多くの組合では会社側と協議することもなく、社員は協定を受け入れてしまっている状態である。
同時に、違法になりうる状態を監督すべき労働基準監督署も、多大な残業の温床となりうる協定を見逃してしまっており、いずれも「合法的な手続き」のもとでハードワークが正当化されているということになる。
では、なぜ労基署がそんな残業天国状態を取り締まらないのだろうか? この件について説明すると長くなるため、また別途機会を設ける予定であるが、原因はシンプルである。簡単に言うと、「労働基準監督官の数が足りない」のだ。
全国に存在する民間企業は300万社とも400万社ともいわれるが、監督官は3000名程度しかいない。しかも、「未払い賃金問題」など早急に取り組まなければならない問題が山積みされており、労働者側から証拠を揃えて実名で被害を申告しなければ動けない、といった数々のハードルが存在しているのだ。率直に表現すると、労基署にとっては「優先順位が低い」問題なのである。
過大な残業問題は、労働者側が黙っている間は解決できない。なんとかするには先述のように、残業が常態化している確かな証拠と、複数社員による申告があれば労基署は動く。実際にマクドナルド、すき家、ショップ99などでは裁判となり、結果的に1分単位で残業代の支払命令が出されているのだ。
筆者としては、制度疲弊を起こしているシステムの改善を提起するとともに、表面的には無害な優良企業を装いながら、裏では悪質な違法行為を行っている会社をブラック企業と認定し、引き続き無慈悲に告発していく。地道にがんばる人が報われる社会を実現しなければならない。
新田 龍/ブラック企業アナリスト、ヴィベアータ代表取締役
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