03. 2013年7月26日 23:06:49
: niiL5nr8dQ
「政府の借金」を冷静に考える 村上尚己「エコノミックレポート」 2013年7月26日 来週の重要経済指標、主要企業決算についてPDF版のレポートで解説しています7月24日レポート「日本の財政赤字を減らす確実な方法」について多くの賛意を示すフィードバックを頂いたが、批判的なご意見も頂戴した。その中の一つが、「日本の債務残高が200兆円以上増加しているのを勘案していない」である。 「日本の債務残高」という言葉使いが正確ではないが、メディアに登場する識者の中にも「政府債務は1000兆円を超えているから、日本の財政は深刻な状態」という言説を度々見かける。これを強調する識者は、一刻も早く増税すべきと唱えることが多い。 霞が関発の情報に頼る大手新聞からもこの点が頻繁に報道されるが、実際に日本政府の債務残高は1000兆円を超え、GDP比率で2倍以上という国は主要先進国の中で日本だけである。ただ、膨らんだ債務残高がなぜ問題なのかが、冷静に議論されることは余りない。 理論上、政府債務の返済は将来世代によって行われるため、政府債務拡大は「将来世代の負担」である。その負担を減らすために、現役世代の負担である増税で、政務債務の拡大を止めて、将来世代の負担をなるべく軽くする、というのは当たり前である。 筆者も、将来世代の負担を真剣に考えている。ただ、増税で税収が増える経済状況なら良いが、先日のレポートでも述べたが、増税でデフレ圧力が再び強まり名目GDPが縮小すれば税収は減る。再び1990年代後半と同様に公的債務が増えるリスクを懸念しているわけである。増税のタイミングとその程度を間違えれば、将来世代の負担が更に増える。 それでは、先の読者が懸念するような、「政府の債務残高の増大」が日本の財政問題に及ぼす影響はどの程度深刻なのか?メディアに登場する識者も大抵そうなのだが、それがどの程度深刻な問題で、日本経済の脅威であるかは実は曖昧である。「借金が増えて大変」という感情論ではなく、この点をデータを踏まえて考えてみよう。 政府債務残高が膨らみ過ぎることが引き起こす問題の一つは、債務による利払い負担が増えて、それが財政赤字を拡大させることである。利払い増加で財政赤字が増えてしまい、更に政府債務が積み上がる、という悪循環に陥ると財政政策が機能しなくなり弊害が甚大になる。 それでは、国債などの利払い負担が、日本の財政収支にどの程度影響しているのか?公的債務が増え続けているため、利払い負担も大きく増えていると思っている方も多いかもしれない。グラフでは、政府の利払い負担である、「財産収支(利子等の受取ー利子等の支払)」を示している。 最新データは2011年度だが、財産収支は3.8兆円の支払い超(支払>受取)である。2008年以降支払超が増えているが、1990年代よりも政府の財政負担は小さい。これは、公的債務残高が増えても、国債利子が大きく低下して利払い金額が減っているためである。 政府の利払い負担(財産収支の支払い超)は、公的債務残高が増えても、金利水準が低いままであれば大きく増えない。グラフで示しているように、財産収支よりも、経済成長や景気循環で税収は大きく動き、これが財政収支を最も動かしている。 名目金利の上昇で政府の利払い負担が増えて、それで更に政府債務残高が増えることが懸念されている。もちろん、名目金利「だけ」が上昇すればそういったことも起こるが、通常は名目金利が上昇する時は経済成長率が高まるので、税収がより大きく増える。だから、景気回復によって2000年代半ばに起きたように財政赤字は縮小する。このグラフが示す、税収と財産収支のデータを踏まえれば、それがなぜ起こるかは明白だろう。 政府債務残高が増え過ぎて、日本の財政が危機的な状況が起きているという認識は、「経済成長が起きず名目金利だけが上昇して、財政赤字が増え続ける」という特異な状況を懸念しているのだろう。ただ、なぜがそうした状況が起こるのか、筆者は真っ当な説明をほとんど聞いたことがない。ちなみに現在南欧諸国ではそれが起きているが、それは金融政策が南欧諸国のためだけには機能しないからである。http://www.monex.co.jp/Etc/00000000/guest/G903/er/economic.htm
2013年07月26日 第316回 米国の長期金利上昇は吉兆!?それとも凶兆!?(JPモルガン・アセット・マネジメント) <質問> 5月以降、米国の長期金利が大幅に上昇していますが、景気回復や株価に悪影響が及ぶのではないかと心配しています。実際、どの程度の影響があるのでしょうか? <回答> ご質問、どうもありがとうございます。今回はJPモルガン・アセット・マネジメントの鈴木英典がお答えします。 確かに、ご指摘の通り、このところ米国の長期金利は大幅に上昇しています。10年国債の金利で見てみますと4月末が1.67%、7月17日が2.53%なので、この2ヵ月ちょっとの間で0.8%以上も上昇したことになります。日本とドイツの10年国債金利は同期間で0.2〜0.3%程度しか上昇していませんので、米国の上昇はかなり突出しています。 さて、ご質問の金利上昇が景気回復や株式市場に及ぼす悪影響ですが、基本的に長期金利は物価や経済の状況を反映して上下に変動しますので、その変化が実態経済を適切に反映したものであれば、それは「害」というよりは、むしろ、「自然な成り行き」として起こる健全な反応だと考えられます。このところの米国景気は、雇用者数の増加や不動産市況の回復に表れているとおり、緩やかな回復が継続しているので、長期金利が上昇しても、決して不思議な状況ではありません。問題は、そのペースで、いくら実態を反映したものであっても、金利があまりに急激に上昇しますと、悪影響が心配されます。しかしながら、この点におきましても、このところの複数の米国中央銀行の関係者からの発言は最近の金利上昇を抑制することを意図しているように思われますので、今のところ過度に心配する必要性は低いと思われます。(もともと、金利上昇の直接のきっかけになったのは、米中央銀行のバーナンキ議長の量的緩和縮小発言だったわけですが。) ちなみに、1990年代と2000年以降では、長期金利と株式市場の関係が大きく変わっています。1990年代においては、金利が上昇すると株式市場は下落する傾向が見られましたが、2000年以降は、この関係がまったく逆になっています。つまり、金利上昇が株式市場の上昇を、また、金利低下が株式市場の下落を示唆するようになっています。この変化は、金利水準の変化、つまり、2000年以降の金利水準の大幅な低下とも密接に関連しているようです。もともと金利水準が高かった1990年代、さらなる金利上昇は、景気や株価にマイナスに作用したのに対して、2000年以降の低金利時代においては、景気の回復が金利上昇や株価上昇をもたらすという関係に変わったように思われます。 ちなみに、今から、ちょうど、10年前の2003年7月にも、米国景気の回復に基づく中央銀行の金融緩和政策後退見込みを反映して2ヵ月程度の間に米国の長期金利が1%程度も上昇しましたが、その後の6ヵ月で株式は約15%、しっかり上昇しました。今回も、状況は比較的似ていると思われます。つまり、結論的には、実態経済の改善が伴っている限りにおいて、ある程度の金利上昇は必ずしも株式市場に対する悪材料ではなさそうです。 コラム執筆:鈴木英典(すずき・ひでのり) JPモルガン・アセット・マネジメント株式会社 投資戦略ソリューション室長 JPモルガン・アセット・マネジメントのホームページにおいて、連載コラム「投資耳(ミミ)」https://www.jpmorganasset.co.jp/wps/portal/Column/Indexや「資産運用の井戸端トーク」https://www.jpmorganasset.co.jp/jpec/ja/promotion/column/index.htmlを執筆。
広木 隆「ストラテジーレポート」 2013年7月26日 下放れた日経平均
この仕事をやっていると、年に何度か、書くことがないという状況に出くわす。今もそうだ。当面の市場展望については、もう書いてしまっているのである。世間的には、与党圧勝、ねじれ解消を受けた参院選後の相場がどうなるのか、それを語るべきというところなのだろうが、それも書いてしまっているのである。 7月5日付け「7月末の日経平均株価予想 上昇相場第2幕が始まる」というレポートではこう述べた。 <調整完了、いよいよ上昇相場第2幕のスタートだ。日経平均は7月末には15,000円近辺まで上昇するだろう。> 材料として、@参院選、A第1四半期の決算発表、B水準感(テクニカル面)を挙げ、それぞれの観点から上昇相場第2幕のスタートだと述べたのだ。ご丁寧に - 自分の書いたものに対して「ご丁寧に」というのは、ちょっと変だが - C番目の要因で、2020年夏季オリンピックの開催都市として東京が選ばれる可能性についても言及した。考えられるシナリオは網羅したと思う。 事実、日経平均は7月に入ってからレンジを切り上げ、7月前半には14,000円台を固め、そして7月半ば以降は14,000円台後半での推移が続いてきた。<7月末には15,000円近辺まで上昇するだろう>と述べた通り、19日には一時14,953円まで上昇した。しかし、16,000円目前で急落に転じた5.23ショックの連想からか、この日も上昇から一転して400円近くにまで下げ幅を広げる場面があった。その後は、すなわち今週は5.23直後とは違って非常に安定した推移をしてきた。上値は概ね14,800円台、下値でも14,500円を割ることがなかった。 ところがここにきて、その狭いレンジの保ち合いを下放れてしまった。本日、日経平均は午後に一段安となり、400円を越える急落となった。まるで1週間前の再現だ。5.23ショックのあと、決まって木曜日が大幅安となることから「暗黒の木曜日」などという言葉がマーケットで喧伝されたが、これでは「暗黒の金曜日」だ。 これといった下げの要因は見当たらない。考えられるとすれば2つだ。ひとつは、決算発表シーズンの序盤戦でややネガティブな発表が目立ったこと。もうひとつは為替が円高気味に振れたことである。 決算発表 これまで発表された主要企業の決算でポジティブなものを挙げれば、 日本電産: 4-6月期上振れ分を通期上方修正で◎ 翌日の株価は10%高と急騰 ダイハツ: 4-6月期として最高益 通期据え置きも上振れ必至で株価急伸 日電硝子: 4-6月期の経常利益が市場予想を上回り、一時ストップ高 それに対してネガティブな方は、 キヤノン: 通期下方修正、ネガティブ・サプライズ 信越化学: 初めて開示した通期予想がコンセンサスに届かず 株価はいずれも売られて大幅安となった。 確かに、キヤノンや信越化学という国際優良銘柄の業績がぱっとしなければ、市場全体への重石となるのは仕方ないのかもしれない。しかし、信越化学が公表した会社計画は2014年3月期の経常利益1800億円と前期比6%増益のみ込み。市場のコンセンサスに届かなかったとは言え、それは市場コンセンサスが高過ぎるか、会社側が保守的なのかのどちらかだ。塩ビや半導体シリコンウエハーも好調で、ここまで売られるような業績ではない。 僕は、企業をカバーするアナリストではないからあくまで感覚的な物言いになるが、キヤノンだって保守的過ぎる気がする。キヤノンの第2四半期(4-6月期)の営業利益は前年同期比6%増の984億円となりアナリスト・コンセンサス通りである。つまり、足元が下振れした下方修正ではなく先行きを弱く見ての下方修正だ。中国、欧州でのデジタルカメラの不振が足を引っ張るとの見立てである。しかし、最近のPMIなどから欧州景気は意外に早く持ち直す可能性もある。加えて為替レートの前提が円高過ぎるので、その分は確実にバッファーがある。 来週はいよいよ決算発表も佳境を迎える。ピークは31日の300社の発表だ。良好な業績の確信度が高い自動車は、31日にホンダ、富士重、8月2日にトヨタがある。シャープ、ソニーの発表は8月1日。4〜6月期の営業黒字転換との報道でシャープは一時3%高と逆行高を演じる場面があった。来週は企業業績に対する見方も好転してくるのではないかと思う。 ドル円
円高方向に動いている。昨日の東京時間から円高に振れ、海外でもそのトレンドが継続。本日の昼過ぎには、一時98円70銭を割り込んだ。昨日の米国で、ウォール・ストリート・ジャーナル紙が「FRBは、事実上のゼロ金利政策を継続する目安とする失業率の水準について7月30〜31日の連邦公開市場委員会(FOMC)で議論する」と報じたことから、利上げのハードルを高める可能性が意識され、それが金融緩和長期化期待につながったとされている。 バーナンキ議長が繰り返し言っているように、緩和縮小についての既定路線はない。経済次第である。よって市場の思惑や観測も揺り戻しが幾度もあるのは当然だ。しかし、米国経済の向かっている方向はどちらか?と問われれば、それは景気回復の途上に間違いなくあり、それゆえ米国の金融政策が向いている方向は、量的緩和の縮小であることは間違いない(それが即、ゼロ金利解除につながらないということもバーナンキ議長が強調している点だ)。 一方、日本はこれから異次元緩和でマネタリーベースを増やそうというところ。金融政策の方向性が日米で真逆である。この要因ひとつとっても、ドル円相場の円安・ドル高は基調として不可逆的だろう。繰り返すが、相場だから何度も綾戻しはある。しかし、その「綾」にいちいち反応するべきではなく、トレンドに眼を向けるべきである。 ドル円の一目均衡表で雲の上限は98円76銭。まさにマーケットはその水準を試しに行っている。おそらくここはサポートされるだろう。円高も超短期のスパンではここがピークであろう。
日本株相場が企業業績失望懸念と円高が材料で売られたとするなら、来週は戻りを試す展開となるだろう。来週は月末月初で重要な経済指標の発表が目白押しだ。ドルが買い戻される展開はじゅうぶん想定できる。 http://www.monex.co.jp/Etc/00000000/guest/G903/strategy/index.htm |